新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
「みんなで川の字になって寝ましょうよ!」
「却下!加持さんが言ってたじゃない!ミサトの寝相は最悪だって!」
「ごめんねー葛城三佐。ペンペンに慰めてもらってちょ♪」
「そんなぁー…」
「クァックァー?」
夕食後。ミサトの提案は、アスカとレイにより速攻かつ食い気味に一蹴された。
石鹸やら桶やらで滅多打ちされた割にピンピンしていた彼女だったが、
さすがにこれは凹んだ模様。
共に暮らし、
20分後、女子中学生組の部屋。
「…うん、うん、あたしは大丈夫だよー?
あはっ、やだもぅ!なに泣きそうな声になってんの!心配しすぎだって!
明日には第3に帰るからさ、あ、お土産買ってくからねー!
うん、じゃーまたね!おやすみー!」
レイは寝間着代わりの浴衣に身を包み、携帯を片手に布団に横たわっている。
表情と明るい声、そして足を交互に揺らす上機嫌な仕草を見ていれば、
「…相変わらず、砂糖吐くぐらいのバカップルぶりね。ブラックコーヒーが欲しくなるわ」
「アスカっち先生ー、寝る前のカフェイン摂取は身体に良くないですぞー?」
「皮肉よ、皮肉っ!解りなさいよっ!」
こんなやり取りも何度目になるだろう。
天然なのかスルースキルが振り切れているのか、レイに嫌味は通じない。
「あんな風に甘やかして…シンジの奴、そのうちダメになるわよ?」
「甘えられる時に甘えといた方が、いいガス抜きになるんだよ。
それにさ、絆っていうか、温もりっていうか…
こう…『生きて帰ろう!』って気になるじゃん?」
「そんなの、ただの依存!共生関係なだけじゃない!
ようするに傷を舐め合ってるだけなのよ、アンタらバカップルは!
…いい、バカナミ?アタシ達は、常に危険と隣り合わせなの。
依存する相手が消えたら、残された方は心がブッ壊れるわよ?
アタシがパイロットに選ばれた時なんて…っ!?」
アスカは、ふと何かを思い出したように言葉を途切れさせた。
勢いに任せ、余計な事まで言いそうになったのを、辛うじて喉の奥に留める。
きょとんとしているレイを前に、アスカは一つ咳ばらいをした。
「と、とにかく!そんな甘ったるい態度で一緒に戦われたって、迷惑だわ!
人類を守るパイロットの誇りって奴は、アンタ達にはないのかしら!?」
「ないなぁ、そーゆーのは」
「はぁっ!?」
レイの即答に、アスカの声が裏返った。
パイロットである事にプライドを持つアスカは、聞き捨てならぬとばかりに片眉を吊り上げる。
レイは「よっ」という掛け声に合わせて上体を起こし、
「元々あたしのパイロット適性はギリギリだったし、碇くんも望んでパイロットになった訳じゃないからね。
今でこそエヴァが使徒を倒すのに一番有効だけど、それ以外でも勝てるんなら別にいーよ」
「まったく…同僚がこの有様じゃあ、今まで必死に訓練してきたアタシがバカみたいじゃないの」
アスカは溜め息をつき、ガシガシと後頭部を掻く。
その様子に、レイは小首を傾げた。
「アスカっちの自立心や向上心は、本当に凄いって思うけどさ。
パイロットにだって『エヴァに乗る以外の幸せ』があったって良いっしょ?
最終的には碇くんが…うぅん、誰もエヴァに乗らなくて済むんなら、それがいいと思う」
「…っ!!」
レイの言葉に悪意はない。
アスカとて、戦いが終わるならそれが一番いいと
だからこそ余計にイラついた。
エヴァに乗る事こそが、アスカの
不機嫌な顔を隠すようにレイに背を向け、自分の布団に
「もういいわ、寝る。おやすみ」
「ん、おやすみー。電気消すよー」
「……」
レイの緩い声に、アスカは答えなかった。
「…寒っ!超さっむ!クーラー効き過ぎじゃね!?」
深夜、寒さに目覚めたレイは、自分の両肩を抱いて震えた。
『切』のタイマーをつけ忘れた彼女自身にも落ち度はあるのだが、
年代もののエアコンは少々融通がきかず、設定温度を1度下げただけでやたらと寒くなる。
隣を見れば、アスカの背も震えているのが見えた。
「あー、やっぱアスカっちも寒いかー。
風邪引いちゃまずいよね。お布団を掛け直さないと…」
「…ッ…」
「ん?」
ギュッと目を閉じたまま、小さく呟くアスカ。
レイは耳を寄せ、それを聞き取ろうとする。
「…ニヒト…テーテ…」
「多分…ドイツ語、かな?意味は解らないけど…」
目尻に浮いた涙。きつく歪められた表情。
アスカの震えは寒さのせいだけではないのが伺える。そして…
「ママ…ママァ…」
「お母さん、か…」
断片的に聞こえる
いつも強気で、自信家のアスカが、こんなにも縮こまっている。
アスカと母親に何があったのか知る
(え、と。確か、こうやって…)
レイは添い寝するような形で、アスカと向き合う。
左手で背を抱き寄せて、右手を頭の上に乗せる。
シンジが自分にしてくれた、心地良い、安心する撫で方を真似て、ゆっくり、ゆっくり。何度も、何度も…。
しゃくり上げるようなアスカの呼吸は、次第に「すぅ、すぅ」と静かなものに転じていった。
(そーいや、碇くんも小さい頃にママが亡くなったんだっけ。
記憶はほとんど無いって言ってたけど…
この優しい撫で方って、本能で覚えてたのかな)
「……バカナミ……?」
うっすらと、アスカの目が開いた。
意識は、まだボヤけている。
暖かいものに包まれる感触とともに、嫌な夢が不意に掻き消えて…
頬の横に、生温い水が流れた跡があって…
でも、目の前の戦友はそれを馬鹿にせず、微笑みながら、頭を撫で続けるだけで…
「違う…違うの…アタシは…もう、泣かないって決めたの…
自分で考えて…一人で生きるって…決めたのに…」
「知ってるよ。アスカっちは、強い子だもんね。
これは、あたしが寝ぼけて、夢を見てるだけ。
だからさ…今は、いいんだよ?」
「…っぅううぅっ…!」
普段のアスカなら、プライドに遮られるはずの行動…
だが、夢で抉られた
レイの胸に顔を埋め、
アスカの涙が浴衣を濡らしても、レイは撫でるのを止めなかった。
「…ムカつくわ」
「ん…」
「顔も、声も、匂いも。ママとは全然違うはずなのに…」
レイは、己の背にすがりつくように回されるアスカの両手を、穏やかに受け入れる。
(なんで、こんなに落ち着くのよ…)
アスカは再び眠りに落ちる。
今度は、悪夢は見なかった。
原作の鬱要素をちょっとずつ持ってきて
ちょっとずつ削ってくだけの簡単な作業
アットホームな職場です 特務機関NERV