新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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|_ ̄;)戦闘はまだです。ザトウムシが遠い…


51、リナレイさん、真っ暗なネルフ本部にIN(前編)

レイ達三人は、メインゲート以外の扉を片っ端から調べたが、軒並み無反応。

 

本部に連絡を取るべく携帯電話を確かめてみたところ、全員が『圏外』。

緑色の公衆電話も試してみたが、呼び出し音すら鳴りはしない。

有線・非常回線ともに完全不通の状態だ。

 

一部故障などという生易しいものではなく、大規模な停電…。

正・副・予備の三系統からなるNERV本部の電源が一度に落ちるという、

()()()()()()()()()()()()()が現実となっている。

 

緊急時のマニュアルに従って『第7ルート』と呼称される非常地下通路へと向かった三人は、

薄闇の中で「07」と赤くナンバリングされた扉の前に立っていた。

 

扉の横には『緊急時のみ(EMAGENCY ONLY)』と注意書きされた手回し(クランク)式のハンドル…

普段は電子ロックで閉じられていて、無理に開けようとすれば警報が鳴る仕組みだが、

それらが動かない今、この『手動ドア』が役に立つ。

 

「ほーら、シンジ。()()()()よ」

「…男女で仕事を分けるのは、前時代的だって言ってなかったっけ?」

「あーもうっ!いちいち細かい事ばっかり覚えてるわね!

適材適所!アンタ、女に力仕事やらせる気?」

「わ、解ったよ。アスカって、こういう時だけ人に頼るんだもんなぁ…」

「大丈夫大丈夫。碇くん、前に比べてだいぶ筋肉ついたし、楽勝よ。

ほらっ、腰落として!上腕(じょーわん)背筋(はいきん)っ!

意識して、いってみようっ!」

「うん、やってみるよ」

「ふーん、バカナミ相手には素直じゃないの。

彼女の前だからってカッコつけちゃってさー」

「っ…うるさいなぁ…うぅんっ…!」

 

少女達に答えつつ、シンジは開閉装置の前に踏ん張り、レバーに両手を掛ける。

軽々とは行かぬまでもクランクは確実に回り、両開きの金属扉はゆっくり開いた。

ふぅ、と一息つくシンジ。レイは彼の背をポンポンと(ねぎら)うように叩いて微笑み、暗がりの中に半歩ほど踏み入れて二人を振り返る。

 

「お疲れー碇くん。んじゃ、行こうか!」

「ちょっとバカナミ、なにリーダー気取ってんの?勝手に仕切らないでよ!」

「んー、アスカっちがリーダー張りたいんなら、別に構わないけどさ。

本部の構造解る?あたしは大体頭に入ってるけど、慣れないとマジで迷路だよ?」

第3(ここ)に一番長くいるのは綾波さんだからね…。

素直に任せた方がいいんじゃないかな?()()()()、だろ?」

「うぐっ…!そ、それは…」

 

シンジに自分の言葉を返され、アスカは口籠った。

シンジがこの街に訪れてからせいぜい数ヶ月、アスカが来日したのは更に後…

基地構造の点では、年単位で過ごしているレイと比べれば差は歴然だ。

 

プライドが先行し、リーダーシップを取りたがったアスカだが、

この非常時…真っ暗な本部の中で迷ってしまったら、大惨事どころではないのは理解している。

リーダーとは威張るだけでなく『何かあった時に責任を取る』のが仕事なのだから。

 

「とゆーことでアスカっち()()

不肖、綾波レイ…ご命令とあらば見事、本部発令所までご案内致しましょう!」

「へっ…?」

 

人差し指を立ててみせたレイに、アスカは間の抜けた声を上げる。

アスカにリーダーの名目を譲りつつ、自分がナビゲートできる形をレイは提案した。

 

少女達のやりとりを見てクスクスと笑うシンジ。

「むっ」と喉声を搾って彼を睨んだアスカだったが、やがて諦めたような笑みを浮かべた。

 

「あぁ、もう…アタシの負けよ。じゃあ、()()()()()()、バカナミ!」

了解(イエス・マム)命令(オーダー)、承りましたっ!」

 

ビシリ、と敬礼を決めるレイ。

改めて三人は、暗い基地の中へと歩を進めていく…

 

 

 

 

いつもならばエレベーター、エスカレーターを使い、

5分と掛からず行けるジオフロントまでの道が、今はとてつもなく長い。

 

暗い道を照らす灯りは、アスカが身に着けた腕時計のライトのみ。

この停電がいつまで続くか解らない以上、携帯電話のライトは使うことを避けてバッテリーを節約している。

 

「うわっ!?」

「ほら、碇くん、あたしの手ぇ取って」

 

実質、裏道のような第7ルートは、整備のための予算がほとんど行き届いておらず、コンクリートも配管も剥き出しになったままである。

シンジはデコボコの足場に(つまづ)き、危ういところでレイにフォローされた。

 

「こんな時までイチャつかなくてもいいでしょうが、このバカップ…!」

「はい、アスカっちも」

「っ…!?」

 

差し出されたレイの左手に、アスカは言いかけた文句を飲み込んだ。

何秒かの間があり、アスカはおずおずとその手を掴む。

 

体温が低いのか、レイの手はひんやりと冷たく…

なのに、適度に力を入れた柔らかい掌は、何故か温もりと安心感があった。

その感触に、温泉旅館での一件を思い出し、顔を背ける。

暗さで紅潮した顔が解らないのは、アスカにとって幸いだった。

 

暗闇の中…危なげない足取りで二人の手を引くレイが、しばらく進んだあと、ハッ、と息を飲む。

 

「なによバカナミ」

「あたし…気づいちゃった」

「どうしたの、綾波さん。ま、まさか、道を間違えたとか…?」

「右手に美少年、左手に美少女…

今のあたしって両手に花じゃね!?」

知らんわこのバカッ!

 

ベチィッ!音量こそ小さいが、やたら通る打撃音が暗闇に響いた。

 

(いった)ぁーい!両手塞がってる時に本気(マジ)デコピンはひどいよアスカっちー!」

()やかましいッ!大体アンタは非常時にしょーもない事ばっかり…!」

「二人とも、静かに!何か聞こえる!」

「なによシンジ!?」

 

涙目のレイと、噛みつくアスカの喧嘩を遮り、シンジは頭上を指さした。

 

「車の音だ…それにこの声…日向さん!?」

 

鉄骨の隙間から、かなりのスピードで走る車のヘッドライトが漏れていた。

スピーカー越しの作戦オペレーターの声が、うっすらと聞こえる。

 

事実上、スーパーコンピュータ・MAGIが市政を運営している第3新東京市において、

ほぼ形骸化してはいるものの、市議選挙は行われていた。

日向マコトは非常事態ゆえにNERV権限を行使し、偶然通りかかった選挙カーを接収したのだろう。

 

『…徒……近……!使徒…接近中…!ただちに…』

「「使徒接近!?」」

 

日向の声は途切れ途切れだったが、かろうじて聞き取れた言葉に、アスカとシンジが声を揃えた。

 

「メガネくんが、あんなに焦ってるって事は…こりゃー急がないとヤバいな。

よし、近道しよう!二人ともー、ちょっと手ぇ離すよー」

「近道?あるの、そんなの?」

 

驚いたように問うシンジに、レイは壁の一つを指さす。

正確には、壁にしつらえられたタラップと、ブリキ製の四角い穴だ。

 

「バカナミ、まさか…」

「イエス・マム!通風孔(ダクト)であります、アスカっち隊長。

ここを通れば時間を遥かに短縮できるものと愚考いたします、マム!」

 

楽し気に、そしてわざとらしい程に、先程の設定を蒸し返すレイ…。

苦虫を噛み潰すが如きアスカの表情は、暗闇に紛れた。


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