新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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65、リナレイさん、相互互換テストにIN

緑成す山々。 水面を揺らす湖。 青空と田園。 降り注ぐ太陽の光。  

風に揺れる一面のヒマワリ畑…。 第3新東京市の美しい夜景…。

 

レイの意識は、順々に切り替わっていくイメージの中に浮かんでいた。

 

(あー…落ち着くー…癒されるー…

そうそう、『夢』ってのは、こう…穏やかーなヤツじゃなくちゃね。

なーにが悲しゅうて自分の顔面の ※※※検閲削除※※※ 画像なんぞ見なきゃイカンのかってーの)

 

ここしばらくの夢見のせいか、『何でもない風景』が逆に幸せだと感じてしまう。

イメージがまた変わっていく。夕日…オレンジの雲…赤い空。

 

(っ…! 赤。赤かぁ…夕焼けは綺麗だけど、あんまり好きな色じゃないなぁ…。

例の夢のLCLの海とか。血の色とか。警告ランプとか。色々思い出しちゃう。

あと赤といえば…弐号機? いや、弐号機ちゃんは許すわ。

かわいいかわいいアスカっちに免じて

 

そんな取りとめのない思考を境に、イメージが切り変わった。

思い浮かべた勝気な赤髪の少女の姿が現れたのをはじめ…

景色が消え、闇を背景にして泡沫のごとく、いくつもの人物像が目の前を流れていく。

 

(…碇くん? 葛城三佐? 赤木博士?

あたしの知ってる人達…あたしを知ってる人達…)

 

続いて浮かぶのはNERVのオペレーター達や、2年A組のクラスメート達の姿…

彼らが通り過ぎた後、レイは暖かな光に包まれた。

 

(あたし以外の誰かが、『ここ』にいるのを感じる。

誰だろう? この感じ…幸せな感じ…碇くん…?

うぅん、()()が似てるけど、違う。

…女の人だ)

 

『レイ……レイ……』

 

レイ。綾波レイ。自分の名。自分を表す記号。

名前を呼ばれて、宇宙のような、水のような…不安定な場所に、自分の姿が見えてくる。

暗く何もない空間に、プラグスーツ姿で頼りなく浮かぶ自分を、その光が守ってくれているような感じがする。

 

『レイ……ふふっ……そう。もういいの?』

 

(…優しい声。

なんでだろ…? この人に名前を呼ばれるのは、初めてのはずなのに。

凄く安心して、懐かしい感じで、泣きそうになる…)

 

レイが手を伸ばす。光には実体はなく、暖かな空気に触れているような、不思議な感触があった…。

 

 

……

 

………

 

 

NERV本部・第二実験場…使徒襲来前、エヴァンゲリオン零号機が暴走し、ようやく修復された場所である。

現在は第一回・機体相互互換試験の最中。

つまりは、零号機と初号機のパイロットを入れ替えてデータ取りを行っていた。

 

強化ガラスの向こう、白い実験棟では初号機が壁に拘束具で繋がれ、直立している。プラグ内にいるのはレイ。

彼女が初号機に乗ったのは、第三使徒サキエルとの戦いでシンジと二人乗り(タンデム)をして以来のことだ。

 

「レイ、気分はどう? 久しぶりの初号機だけど…」

『……』

「レイ?」

 

技術オペレーター・伊吹マヤ二尉は、被験者からの返答がない事に童顔を傾げた。

マイクはちゃんとオンになっているし、音量バーは反応している…。

別のデータに目をやったマヤは「えぇ…」と困惑に眉を寄せた。

 

「どうしたの?」

「先輩、それが…」

 

後ろから覗き込むリツコへ振り返るマヤ。

彼女が指さしたのは、脳波の波形パターンを表すグラフだった。

 

「…レム睡眠の状態ね。レイは夢を見ているわ」

『はァ!? バカナミの奴、テスト中に寝てるわけ!? やる気あんのアイツ!?』

『さっき、あんな状態だったからね…綾波さん、あんまり眠れてないんじゃないかな』

 

リツコは溜め息をひとつ。弐号機と零号機のプラグからも、それぞれの反応が返る。

マヤは苦笑いしつつ、コンソールに視線を戻した。

 

「…でも凄いですね。シンクロ率は、零号機の時とほぼ同じですよ?

レイ自身は、機体とパイロットの相性があるって言っていましたけど…

そんなことは微塵も感じさせないデータです」

「…ちょっと待って、それはレイが起きていた時のデータ?」

「いえ、今現在です。つまり眠ったままで…」

マヤ! シンクロ全面カット!

寝ぼけたままA.T.フィールドでも展開されたら、大惨事になるわよ!?」

「っ!? はっ…はい!!」

 

A.T.フィールドは盾であると同時に、強力な武器にもなるのは今までの使徒戦でも証明済である。

声色を急に変えたリツコに、マヤは慌ててキーを叩いた…。

 

………

 

……

 

 

レイはまた、別のイメージを見ていた。

陽だまりの中…自分の大きなお腹を幸せそうに眺めながら擦る女性。

傍らには、あまり良いとは言えない目つきで…それでも精一杯彼女のお腹を優しく見つめようとしている、不器用そうな印象の男が立っている。

年の頃は、三十代半ばだろうか。

 

「あれ…さっきの女の人だ。

隣にいるのは…碇司令!? うっわ、若ッ!!

じゃあアレか、あの人は碇くんのママ? 

んで、お腹の中にいるのは…」

 

『あなた。名前、決めてくださいました?』

『あぁ。男だったらシンジ。

女だったら…レイ、と名付ける』

「!?」

 

独白に被さるような若夫婦の会話に、レイは身を乗り出した。

少なくとも、乗り出そうとした。

夢の中ゆえ、実際に出来たかは解らないが。

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってヤング司令!?

今っ! いますっげー聞き捨てならない言葉が聞こえた!!

その話もう少し詳しくおぅわわわわわっ!?

 

 

 

ガクガクと身体が揺れる感覚。

レイの意識は、現実に強引に引き戻された。

 

夢は夢として全て消え、レイを取り囲んでいるのは無機質なエントリープラグ。

電化が解けて、オレンジ色に戻ったLCLが満ちている。

 

オペレーティングルームからの干渉でプラグスーツを揺さぶられ、眠りから引き起こされたのだ。

モニターパネルには、額に青筋を浮かせた赤木リツコ博士の引きつった笑顔が。

その隣には、弐号機プラグから呆れ顔を送るアスカのパネルがある。

 

『…おはようレイ。テスト中に寝るなんて、貴女も図太くなったわね』

『ねぇリツコ。どうせなら電気ショックでもくれてやれば良かったんじゃないの?

プラグスーツにそういう機能あるんでしょ? 心肺蘇生用のヤツ』

『流石に命に関わるような起こし方はしないわよ。()()()()()はね』

「ス、スマセン…真面目にやります…」

 

今のところは、イコール、場合によっては選択肢を排除しない、とも聞こえる。

無論、アスカの案は冗談の範疇ではあるのだが、それに答えるようなリツコの()()()()()()()は洒落にならないと、レイは低頭して謝る。

レイと同じように恐怖を感じたのか、マヤが軽く身を震わせた後、一度深呼吸して問いかけた。

 

『改めて聞くわね? 久しぶりの初号機だったけれど、気分はどうだった?』

「んー、そうだなぁ…優しい感じがした、かな?」

『優しい?』

 

鸚鵡(おうむ)返ししたマヤに対し、レイは穏やかな笑顔を浮かべる。

 

「…うん。断片的なイメージだけ覚えてるんだけど…

()()()()って、あんな感じなのかな、って」

『っ!?』

 

息を飲んだのは、マヤではなく、その後ろのリツコ。

彼女の狼狽に気づく者はいなかった。

 

 

被験者と機体を変え、実験は続いていく。




シンクロの深さやテスト被験者自身の変化により、原作では先の話数で起こるはずのイベントが前倒しに発生しています。
エヴァさんとの好感度で変化するイベント。ギャルゲーかな?(すっとぼけ)

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