新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

79 / 80
前回までのあらすじ

第十三~第十六使徒は、みんな一緒くたにロンギヌスの槍で貫かれた後
凄く雑な感じでお空の彼方に飛んでった

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※エイプリルフール(2019/4/1)投稿です。
ストーリーは可能性の一つであり、確定ではありません。


2019エイプリルフール
??話「世界の中心で碇くんへのアイを叫ぶリナレイさん」


「♪~~」

 

一人の少年が、上機嫌な鼻歌と共に海岸を歩む。

曲はベートーヴェン作曲、交響曲第9番第4楽章『喜びの歌』。

整った横顔は、火星(マルス)の如き夕焼けに染まっていた。

 

涼やかな風に銀髪を弄ばれながらメロディーを紡ぐ姿は幻想的だ。

白シャツに黒の学生ズボンというありきたりな格好ですら、彼の際立った容姿を引き立てている。

 

 

ざ、ざ。砂を踏む足音はもう一人ぶん。

背中越しに感じる新たな気配に、少年は歌と足を止めた。

 

 

「歌は良いねぇ。歌は心を潤してくれる……人間(リリン)の生み出した文化の極みだよ。

そう感じないかい? 綾波レイさ「どっせいおりゃあああ!!」うぉぉっ!?」

 

背後からの気合と殺気に、振り返りざまの少年は目を見開いた。

咄嗟に身を反らし、乱入者……綾波レイの飛び蹴りを、頬を掠める形で回避。

 

「ちぃっ、外したっ!? やるじゃーないの!」

 

ずざざざ、とレイの足が砂浜に()()()()()の跡を残した。

第壱中学校指定の女子制服、エメラルドグリーンのスカートがフワリと翻る。

 

腰を落とした半身の姿勢で左腕を弓引き、右掌底を眼前に……

歌舞伎の見得にも似た、攻撃的な構えを取るレイ。

少年は肩を竦めた。

 

「スカート姿のまま、ずいぶんと大胆なご挨拶だね。

()以外の男……特にボクに見せてもいいのかい?」

初心(うぶ)未通娘(おぼこ)じゃあるめーし、見えた所で別に減りゃあせんわ。 

それともアレか? 『きゃーっ、このパンツ覗き魔~!』とか言うとでも思ったか!? 

どこの世界線のあたしだよ!?」

「それも()()()()()()()()()()だっただろう? 否定することはないさ」

 

左手をズボンのポケットに突っ込み、右手で前髪を掻き上げる気障な仕草を自然にやってのけた少年に、レイは不機嫌に鼻を鳴らした。

 

「スカしたヤツめ。()()()()()()か、渚カヲル」

「これは驚いたな、綾波レイ。『今回』キミと接するのは初めてのはずだけれど……

あぁ、赤い海(LCL)の中で全てを知ったのか」

 

 

言うほど驚いていない様子で少年……渚カヲルは微笑んだ。

その正体は第十七使徒タブリス。最後のシ者。

その役割は(おおむ)ね、どの周回でも同じだ。

 

傷ついたシンジのもとに現れ、性別を越えて彼を魅了し、拠り所となる。

そして彼の目の前で、あるいは彼の手で死に、心の傷をさらに抉る。

 

だが今回に関しては、レイも、クラスメート達も、NERVの面々も、今のところは全て無事。

第3新東京市も激戦で消耗してこそいるが、未だ要塞都市としての機能を保っている。

ゆえに、シンジの心は壊れていない。何より、彼の隣にはレイがいる。

 

 

それでも、渚カヲルはこの街に現れた。彼がもたらすのは福音か。あるいは終焉か。

口元のみを持ち上げるアルカイック・スマイルからは、その真意は読み取れない。

 

 

「ボクを、実力行使で止めに来たのかな?」

「実力ぅ? バカ言っちゃいけない。

保安部(クロフク)をようやっと撒いたってのに、A.T.フィールドを出してガッキョンガッキョンぶつかり合おうモンなら、我らがスーパーコンピューターMAGI様にバレバレだわ。

個人的なエゴで、あんたを張り倒しに来ただけだよ。

()()()()()()()は、絶対譲らないからなぁ!?」

 

 

レイは飛びかかる。

初手での上段回し蹴り。スカートの中身は相変わらず考慮しない。

しなやかに伸びたレイの蹴り足を、カヲルは片腕でガードしながら後方に飛んで衝撃を逃がした。

 

カヲルは上体を屈め、水面蹴りを放つ。

レイに取っては軸足を狙われた形だが、彼女はその一本足で跳躍回避した。

 

 

レイもカヲルも、そのスペックは並の人間とは一線を画している。

片や第二使徒(リリス)の魂を宿し、第十一使徒(イロウル)第十二使徒(レリエル)を取り込んだ少女。

片や最初の使徒(アダム)に最も近い、光や粒子すらも遮断する『結界』とまで言われるA.T.フィールドを持つ最後の使徒。

 

力を使おうものなら、この辺り一帯が誇張でなく消えるだろうが……

そんな人外の二人は、夕暮れの海岸で前世紀の不良漫画よろしく素手喧嘩(ステゴロ)に興じていた。

 

 

「ボクの想いは変わらない。シンジくんを幸せにしてみせる。それだけさ」

「本当に碇くんの幸せを考えてるんなら、毎回のごとく()()()()()()()()()()()トラウマ刻むな。

黒ヒゲ危機一髪かっつーの」

「各周回でのボクの死は、ただの結果だ。それは申し訳なく思ってるよ」

「どーだか!」

 

レイが顔面狙いの右ストレートを放つ。

だが、カヲルの掌がゆらりと流れてレイの手に伸びた時、彼女は慌てて攻撃を中断し、距離を取った。

 

相手に外傷を与えずに無力化する事に()けた、合気道の関節技。

獰猛な獣のように攻めかかるレイに対し、カヲルの反撃は静かで優雅だった。

 

 

「手首を取らせてはくれなかったか。勘が鋭いな」

「戦い方まで碇くんに似せやがって。嫌味か! それとも手加減(なめプ)か!」

「キミを舐めている訳じゃない。彼へのリスペクトさ。

それに、ボクの性的趣向とフェミニズムは相反することはないよ。

同性愛(ホモ)異性愛(ヘテロ)は等価値なんだ。

ボクにとってはね」

「自分の名台詞を自分で台無しにすんなっての。さぁて、どう攻めるか……」

「もうやめてよ、綾波さん、カヲルくん!」

 

 

シンジの静止の声が割り込んだ。走ってきたのか、息が荒い。

毒気を抜かれたレイは一息ついて苦笑した。カヲルもまた構えを解く。

()()()()()()()()()である。当人が出てくれば、矛を収めるしかなかった。

 

 

「んもー碇くんってばー……

このタイミングで『私のために争わないで』とか、完全にヒロインムーブですやんか」

「ハハ、シンジくんらしいよ。今回は時間切れだね。この場は引くとしよう」

 

シンジがここに辿り着いたという事は保安部も周囲に再展開、待機しているだろう。

一度撒かれたとはいえ、NERVの黒服達は優秀だ。

 

「カヲルくん」

「なんだい、シンジくん」

 

立ち去ろうとした背が振り返る。あの穏やかな笑みを浮かべて。

 

 

「僕は全て思い出したよ。

カヲルくんには、感謝してる。

けれど今回は、綾波さんと生きることに決めたんだ。

だから……ごめん」

「いいさ。シンジくんが決めたことなら。

戦いが終わって、キミと彼女が結婚という形で結ばれても、それはゴールじゃなく、旅の始まりにすぎないんだよ。

もし旅に疲れ果てたら、ボクはいつでもキミを受け入れよう」

「ふん、残念だったな。

シンちゃんとの間に子供が生まれたら、碇司令のことを『ゲンじぃじ』って呼ばせる約束をしてるんだ。

あたしが、綾波レイが、容易い相手じゃない事を教えてやる!」

「あの強面の御父上が『じぃじ』とはね。フフッ、確かにキミ達は手強い相手だ。

じゃあ、次は戦場で会おう。結末がどうなるかは解らないけれどね」

 

そう。彼らの戦いは、これからだ。




完(クソデカ赤文字)

長らく放置してすみませんでした。
原作からネタを色々前借りしすぎたこともあり、展開がだんだん難しくなってきて筆が進みませんでした。

エイプリルフールということで『ありえるかもしれないエンディングのひとつ』です。
エヴァンゲリオンなのにエヴァが出てきやしねぇ。

第十三使徒以降の物語は流石に改めて書く予定です。
さすがにソードマスターヤマト並に団子刺しは、あんまりっちゃあんまりだでな……

更新予定未定、不定期投稿ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

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