未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第四話(第二十四話)

雷山が隊首会議場に着くとすでに雷山を除く全隊長が揃っていた

 

「あっ!雷山君やっと来た!せっかく私が遅刻しないようにと思って呼び行ったのにいないなんて、ひどくない?」

 

他の9人は並んでいたが、狐蝶寺だけは入り口付近で雷山の到着を待っていた。その狐蝶寺は雷山が付くと開口一番で文句を言いながら近づいてきた

 

「悪い、ちょっと新しく入ってきた奴らの指導をしてた」

 

「へぇ、熱心だね。私なんか山吹ちゃんに任せっきりなんだ」

 

「それはそれでどうかと思うがな…」

 

「…雷山、狐蝶寺、早う位置に着け」

 

元柳斎がそう言ったものの狐蝶寺がなかなか着こうとしなかったため、雷山と銀華零がが無理やり定位置に狐蝶寺を固定した

 

「…皆揃ったの。では諸君これより隊首会を執り行う」

 

隊首会の始まりと共に杖を突く音が議場に響き渡った

 

「まずは各隊の新入隊員配属の件、ご苦労であった。新入隊員の処遇は各自に委任する。さて、前置きはここまでにして本題に入ろう。四楓院隊長報告を」

 

「はい」

 

元柳斎に指名された四楓院朝八が一歩前に出た

 

「先日の六道死生による反乱の最中に西流魂街39地区”鑢鐚(やすりびた)”にて旅禍と思われる者が現れたと報告があった。現在調査中でこれから私も現地に赴くつもりだが万が一相手が隊長格以上の実力を持っていた場合甚大な被害が予想されるためもう二人の同行を願いたいと思う」

 

「そこで儂と四楓院隊長が協議した結果、五番隊隊長・雷山悟及び十一番隊隊長・大澄夜剣八両名に同行を願いたいということになった」

 

「なるほどな。了解した」

 

「了解しました。山本総隊長」

 

二人の返事を確認した元柳斎は朝八に定位置に戻るよう促した

 

「ではこれより四楓院朝八、雷山悟、大澄夜剣八の三名には”鑢鐚”に向かってもらおう。他に報告することがある者はおるかの?」

 

数秒の沈黙ののち誰も言う事がないと判断した元柳斎は隊首会を終えることとした

 

「以上を以て解散とする。各々仕事に戻ってくれ」

 

隊首会が終わった雷山はそのままの足で五番隊舎へと戻った

 

「戻ったぞ。椿咲、俺がいない間に何か起きたか?」

 

「いいえ。何も起きませんでしたよ?それとも、私が何かやったと思ってるんですか?」

 

「どうしてそういう解釈になるんだよ。まあいい、帰って来て早々なんだが、俺は今から西流魂街39地区”鑢鐚”まで行かないといけなくなった。だから悪いんだがまた留守を頼めるか?」

 

「ええ、構いませんよ?”椿咲南美久しぶりの隊長体験”っていう訳ですね!」

 

「ゔ…おい、あの悪夢を思い出させるんじゃない…あの後どれだけ他の隊から苦情が来たことか…」

 

「わわっ!冗談ですよ!冗談!!」

 

その後雷山は四楓院、大澄夜と合流し”鑢鐚”へと出発していった

 

「それにしても珍しいな。自信家のお前が俺たちに同行を頼むなんてな」

 

目的地に向かう道中雷山が四楓院に問いかけた。普段隠密機動のみで調査する四楓院が今回に限って他の者に同行を頼むと言うのは雷山にしてみれば珍しいことだった

 

「この前の影内の襲撃がそれほどトラウマになったのか?」

 

「ふん…あの程度の敵がトラウマになるなど笑い話もいいところだな」

 

「と言いつつも、今影内の斬魄刀を使われたら奴の能力に蝕まれて苦しむんじゃないか?」

 

「黙れ雷山。いくら貴様が私よりも古くから護廷十三隊に属している隊長でもこの場の指揮権は私にある。私を侮辱することは許さぬぞ…!!」

 

「はいはい、精々気を付けますよ」

 

「……雷山隊長。一つ聞きたいことがあるのだがいいか?」

 

「なんだよ?今更聞くこともないだろうに」

 

「雷山隊長が護廷十三隊結成当初からいる最古参の隊長と言うのは本当か?」

 

大澄夜がそう言った時、雷山は無言で立ち止まった

 

「…それは噂か何かか?」

 

「ああ、噂として聞いたことがある程度なんだが…」

 

「はぁ…まさか、あいつの一件であまり知られたくない事が露見してしまうことになるとはな」

 

「六道死生と知り合い同然のように話していたから、もしやとは思っていたが…やはり雷山隊長は初代護廷十三隊の隊長なのか」

 

「…ああ、そうだよ。俺は護廷十三隊結成当初からいる隊長だ。お前らから見れば、初代護廷十三隊五番隊隊長と言ったところかな。あと、一応言っておくがこの前の六道の反乱は俺達とは無関係だからな。もし俺達がお前らの敵だったらお前らはなすすべなく全滅していただろうしな」

 

「はははっ!!それは間違いないな!!」

 

頭に手を当て大澄夜が大笑いし始めた

 

「黙れと言っているだろう。もうすぐ”鑢鐚”なんだぞ。もう少し静かにしたらどうだ」

 

「それにしても旅禍なんて久しぶりに聞いたな。穿界門もなしにどうやってここまで来たのか…」

 

「それをこれから調査する手筈だ」

 

その瞬間朝八の目の前に隠密機動の死神が現れた

 

「ご報告いたします。………」

 

雷山の位置からは隠密機動の死神の声が小さく最後の方は聞こえなかったが何かしろの報告を受けていることは明白だった

 

「…そうか。お前たちは引き続きこの辺りの捜索を続けろ」

 

隠密機動の死神は「はっ!」と言う声と共に瞬歩で消えた。

 

「どうやら最後にこの辺りで見失ったそうだ。ここからは別れて探すとしよう」

 

報告を受けた朝八は雷山、大澄夜に言った

 

「おいおい、それじゃあわざわざ俺達が来た意味がないじゃないかよ」

 

「まあ、そう言うな雷山隊長。四楓院隊長、旅禍と思われる者を発見した場合はどうすればいいんだ?」

 

「抵抗するようなら反撃して構わないが殺すのはやめてくれ。あくまで無力化させれば良い」

 

「何故生け捕りにする必要があるんだ?そのまま倒せばいいだろ」

 

「いや、相手がどのようにして尸魂界に来たというのが知りたいからな。今後の対策を立てるためにどうしても生け捕りにせよとのことだ」

 

「なるほどな」

 

(まあ、その対策(むな)しくこの後も黒崎達を始めとした旅禍達が尸魂界に乗り込んでくるわけなんだがな…)

 

雷山は未来へ行った時にこれから先に起こることの記録を見て知っているためその対策が無駄に終わることも察していた。しかし、今ここでそれを言えば良からぬ影響を与えかねないと思っているためそれを口外することはなかった

 

「なるほど了解した。生かして捕らえればよいのだな」

 

「頼んだぞ。では、散開しよう」

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「―――――――――と言って別れたはいい物の、あれから誰にも会わないな…」

 

雷山は四楓院、大澄夜と別れた後旅禍を探しながら森の中を彷徨っていた

 

「それにしても”あくまで無力化してくれ”か。俺が手加減しても相手が必ずしも死なないという保証がないしなぁ…全く難儀なことだ」

 

雷山は一度立ち止まり辺りを見回した。しかし森は静寂に包まれ、人影はおろか虚すらいる気配が全くなかった

 

「この辺りにはいないのか…?」

 

そう思った時だった

 

「…ん?この霊圧…誰だ?」

 

雷山は左前方に僅かな霊圧を感じ取った。その方角を見てみると、前方20m程にある草むらの中に人影がうずくまっているのを発見した

 

「さっきの霊圧はあいつのか。まあ、流魂街の住人が霊圧を持っていることはたまにあるから不思議じゃないが…一応声をかけてみるか」

 

雷山は瞬歩を使い距離を詰めた。近づいてみるとその正体は少年であったが何より気になった事が

 

(こいつ…明らかに何かから身を隠しているな)

 

「おいそこのお前。そんな所で何してんだ?」

 

雷山に声をかけられた少年はビクッと驚いたように振り向いた

 

「あ…あ…」

 

振り返った少年の顔はひどく怯えた表情をしていた

 

「やれやれ、そんなに驚かなくてもいいだろ。それで、何してんだ?」

 

「あ…あ…うわああぁぁ!!」

 

少年は雷山の問いに答えることなく全速力で逃げて行った

 

「あっ、おい!?逃げるなよ!!」

 

雷山はその時”縛道の一”『塞』をかけたが少年は縛道がかかる直前横へわずかに移動し逃れた     

 

「ッ!?」

 

その事は雷山にとっても大きな誤算だった

 

「おいおい、いくら手加減したと言っても死神でもない奴が鬼道を避けるだと!?くそっ!!こうなったら…」

 

雷山は瞬歩で少年の前に先回りした

 

「これでどうだ!!」

 

しかし少年はそれを察知していたかの如く進路を変えなおも逃げて行った

 

「間違いない、あいつは俺の気配を感じ取っている。どうりで隠密機動もあいつを見つけ出せなかったわけだ…」

 

雷山はめんどくさいと言いたげにため息を吐いた

 

「はぁ…流魂街の奴にあんまり能力を使うってのは良くないんだけどなぁ…まあ、この際仕方がないか…『雷斬』」

 

雷山はその場で始解し少年の後を追い森の奥へと消えて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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