問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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ちなみに、神様がギフトゲームで報酬稼いだり、戦った相手のコミュニティから金を巻き上げていたりするので、“ファミリア”の財政は大変潤っています。


斑ロリ

『いただきまーす!』

「「い、いただきます...」」

「ああ、召し上がれ」

 

風呂から上がるとすぐに夕飯が出てきたので、みんなで食卓を囲んだ。白夜叉や店員さんも一緒に食べている。

 

「ん?どうしたのだマスター?なにやら元気が無いように見えるが...。それに静謐も」

「な、何でもないよ、うん。なあ静謐ちゃん?」

「...はい」

「?」

 

ネロが心配そうに俺達を見てくるが、やましい事があるだけに今はそれが心に刺さる。くっそ、あの時エミヤが来なければ、もしくはもう少し早く来ていればこんな事にはッ...!

 

「そう言えば、英霊とか聖杯戦争について教えてくれるって約束だったな。凌太、説明してくれないか?

 

鍋をつつきながら、十六夜がそんな事を言ってくる。

 

「あ、ああ。それは別にいいけど、俺よりエミヤの方が詳しいだろうから、エミヤに説明してもらった方が分かりやすいと思うぞ?」

「そうか。じゃあオカン、説明頼む」

「だから母親では無いと何度言えば...。まあいい。聖杯戦争についてだったな。ではまず、君達は聖杯というものを知っているかね」

「キリスト教の、最後の晩餐に使われたっていうあの聖杯か?」

「ああ、その認識で構わない。その聖杯は『願望機』と呼ばれる魔術礼装としても用いられている。そして、その『万能の願望機』を求める7人のマスターと、彼らと契約を交わした7騎の英霊達がその覇権を争うのが『聖杯戦争』と呼ばれる儀式だ。英霊とは、過去から未来まで、あらゆる英雄英傑の魂を信仰などによって精霊の領域まで押し上げた人間側の守護者の事だ。それら英霊達を、聖杯の力を借りて召喚し、使役する。そして勝ち残った1組のマスターの英霊に聖杯は下る。まあ簡単に言えばそんなところか」

 

十六夜と白夜叉、そして黒ウサギ以外は話に付いてこれていない様子だ。まあ、俺も半分くらいしか理解できてないけど。

 

「ふぅん。じゃあ凌太は聖杯戦争に参加してるってことか?」

「ああ。ただ、俺が参加してる聖杯戦争は普通の聖杯戦争じゃないらしいけどな」

「というと?」

「俺も詳しくは知らないんだけど、とある人物によって人理が焼却されたんで、その原因を潰そうぜって感じだな」

 

 

〜特異点や聖杯探索についての説明中〜

 

 

「なるほど。なかなか面白い事になってるんだな」

「人類の危機を面白いとか言っちゃう十六夜さんマジパネェ」

「ヤハハ!」

 

愉快そうに笑う十六夜だが、かたや白夜叉や黒ウサギは神妙な顔つきになっている。まあ、人類滅亡なんて聞いたら普通ああなるよな。

 

「そう言えば、おんしが使っていたあの雷の恩恵はなんなのだ?先程話に出てきた魔術というやつか?」

 

白夜叉は俺の能力にも興味を持った様で、そう聞いてくる。まあ、以前“???”などと言うよく分からん恩恵が発覚しているし、気になるところなのだろう。

 

「そんなところだな。ただ、あれは普通の魔術とは訳が違う。正確には神から簒奪した権能だよ」

「簒奪?神仏とゲームをして恩恵を授かったのか?」

「いや違う。神を殺して、その神が持つ能力の一端を奪って“神殺しの魔王”ってやつになったんだよ」

「「なッ!?」」

 

絶句。まさに開いた口が塞がらないといった風の白夜叉と黒ウサギ。問題児達は彼女達が驚いている意味がよく分かっていないのか、首を傾げている。

 

「なあ黒ウサギ。神殺しってのはそんなに驚く事なのか?確かに神を殺すのはヤバいのかもしれないが、箱庭じゃ珍しくないんじゃないのか?」

「な、何を言っているんですか十六夜さん!“神殺し”とは正真正銘、紛う事無き最強の魔王、人類最終試練(ラストエンブリオ)の1つですよ!?重要なのは“神仏を殺した”という点では無く“神殺しである”という事です!彼らは明らかに意思を持って人類と神霊を撃滅しにかかっている、いわば怪物そのものなのですよ!?」

「いやいや、そんな大した事じゃないから。なんなら黒ウサギでも余裕でなれるよ?神殺しの魔王」

「なッ!?」

 

本日2度目の開いた口が塞がらない状態。これは根本的な“神殺し”に対する認識が違うっぽいな。いや怪物ってところはあながち間違いじゃないけど。

 

「多分2人が想像してる“神殺し”とは違うと思う。これは前の前の世界での出来事なんだけど、俺達みたいな神殺しを成し遂げた奴らを総称して神殺しの魔王、カンピオーネって呼んでたんだよ。“まつろわぬ神”っていう神様達が現世に現界して跋扈(ばっこ)してる様な世界でさ」

 

その後20分程、まつろわぬ神、神殺しの魔王(カンピオーネ)、簒奪した権能、等について説明した。

なんとか箱庭での“神殺し”との違いは理解出来たらしい。

 

誤解(?)が解けた後は、俺が今まで経験してきた異世界冒険譚や十六夜達“ノーネーム”のペルセウス戦等を話して盛り上がったのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

――境界門・舞台区画。“火龍誕生祭”運営本陣営。俺達はその来賓席に来ていた。

 

『長らくお待たせ致しました!火龍誕生祭のメインギフトゲーム・“造物主達の決闘”の決勝戦を始めたいと思います!進行及び審判は“サウザンドアイズ”専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』

 

黒ウサギが満面の笑みを振りまくと、歓声以上の奇声が舞台を揺らした。

 

「うおおおおおおおお月の兎が本当に来たああああああああぁぁぁああああ!!!」

「黒ウサギいいいいいい!お前に会う為にここまで来たぞおおおおおおお!!!」

「今日こそスカートの中身を見てみせるぞおおおおおおお!!!」

 

...最早犯罪者の域である。神聖化されたアイドルとか、そういう次元じゃないな、これ。

 

「やはり余もあのステージに立つべきなのではないか?いや、絶対に立った方が盛り上がると思」

「ステイ」

 

目をキラッキラに輝かして今にも飛び出そうとするネロを窘める。

 

「そう言えば白夜叉。黒ウサギのミニスカートを絶対に見えそうで見えない仕様にしてるってのはどういう了見だコラ。チラリズムなんて趣味が古すぎるだろ。昨夜語り合ったお前の芸術に対する探究心はその程度のものなのか?」

「そんなことを語っていたの?」

 

馬鹿なの?という久遠の声は十六夜と白夜叉には届かなかった。

白夜叉は、双眼鏡に食らいついていた視線を外して不快そうに十六夜を一瞥する。

 

「フン。所詮、小僧もその程度の漢であったか。そんな事ではあそこに群がる有象無象となんら変わらん。おんしは真の芸術を解する漢だと思っていたのだがの」

「...へえ?言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中身を見えなくする事に芸術的理由があると言うんだな?」

 

まるで決闘前の様な緊張感が走るが、話の内容は低レベルだ。全く、これから春日部の決勝戦が始まるってのに...。続きはよ。

 

「無論。考えてみよ。おんしら人類の最も大きな原動力は何だ?エロか?成程、それもある。だが時それを上回るのが想像力!未知への期待!知らぬことから知ることの渇望!――何物にも勝る芸術とは即ち...、己が宇宙の中にあるッ!」

 

ズドオオオオオン!!

という効果音が聞こえた気がする。

 

「なっ......己が宇宙の中に、だと...!?」

「そうだッ!真の芸術は内的宇宙に存在するッ!乙女のスカートの中身も同じなのだ!見えてしまえば只々下品な下着達も――見えなければ芸術だッ!!」

 

ズドオオオオオン!!

という効果音がまた聞こえた気がした。

 

「...馬鹿なのか?」

 

そんなエミヤの、心からの呟きが2人に届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、春日部の決勝戦が恙無く開始された。相手はあのジャック・オー・ランタン。かの有名なカボチャのお化けだ。

前半は春日部が優勢だったのだが、あのカボチャ、本気を隠していた様で後半は春日部の防戦一方。結局、春日部の敗北という形でゲームは終了した。というか“不死”とかどうやって倒すんだよ。

 

「...オイ白夜叉。アレ、何だ?」

 

唐突に、十六夜が上空を指差して白夜叉に問う。気になったので俺もその方向を見上げると、そこには夥しい数の黒い封書が舞っていた。

 

「黒く輝く“契約書類(ギアスロール)”......まさか!?」

 

黒ウサギが落ちてきた黒い封書を手に取ってそれを開ける。

 

 

『ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMELIN”

 

・プレイヤー一覧 : 現時点で三九九九九九九外門境界壁の舞台区画に存在する参加者、及び主催者の全コミュニティ。

 

・プレイヤー側 ホスト指定ゲームマスター : 太陽の運行者、星霊 白夜叉。

 

・ホストマスター側 勝利条件 : 全プレイヤーの屈服、及び殺害。

 

・プレイヤー側 勝利条件 : 一、ゲームマスターを打倒。

二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

“グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

読み終えた瞬間、最初の変化が始まった。

突如として白夜叉の全身を黒い風が包み込み、彼女の周囲を球体が覆ったのだ。

白夜叉の抵抗も虚しく黒い風は勢いを増し、その場にいた白夜叉以外の全ての者を一斉に吹き飛ばす。

 

「ちっ!」

 

俺は舌打ちと共に舞台側へと着地する。見ると、俺達“ファミリア”と“ノーネーム”が舞台側、“サラマンドラ”一同は観客席へと飛ばされていた。

 

「魔王が現れた。......そういう事でいいんだな?」

「はい」

 

十六夜と黒ウサギのやり取りが続く中、俺は上空を見つめる。ちょうど、4つの人影が壁から飛び降りて来ているのだ。おそらく、というか確実にアレが魔王御一行だろう。

 

「ま、詳しいルールは分からんが、とりあえずアイツら倒せばいいんだろ?十六夜達はどれの相手をする?」

「俺は黒い奴、レティシアがデカイ奴だ」

「了解。じゃあ俺らは白い奴とちっこい奴だな」

 

確認を取ると同時に十六夜は嬉々として身体を伏せ、舞台会場を砕く勢いで境界壁に向かって跳躍した。

てかマジはえぇ。弾丸か何かなの?

 

「んじゃ、俺らも行くか。念のため宝具の準備もしててね」

「「「了解(した)(うむ!)」」」

 

レティシアも飛んでいってしまったので、俺達は4人で走って行く。やっぱり空飛べる恩恵とか欲しいなあ。

 

 

 

 

境界壁には結構すぐに着いたのだが、既に戦闘は始まっていた。上空1000M位の壁際で十六夜と黒い軍服の男が、その下の地上ではレティシアとデカブツ&白い女&ちっこい少女が。

...十六夜君は何で壁に直立不動で立っているのかな?アイツ今までに出会ったどんな英雄英傑よりもバケモノじみてるよな。

 

「遅くなってすまん。これから白と斑ロリは俺らが受け持つ」

「ああ、頼む。さすがに3対1はキツかったところだ」

「なんなら全部俺らが相手してもいいんだけど?」

 

レティシアの近くまで行き、そう伝える。すると、最後の俺の言葉に相手の斑ロリと白い女性が食いついてきた。

 

「何ですって?私達を、貴方達みたいな無名の人間如きが同時に相手取る?...舐められたものね」

 

明らかに不快感を醸し出しながら俺を睨む斑ロリ。

 

「ああそうだ。何なら1人でも殺れるんじゃないか?まあ慢心したらダメだと偉い人も言ってた気がするから皆でかかるけど」

 

挑発。これ以上無いという程の月並みな挑発である。これに乗ってくれたら嬉しいんだが...。

 

「...いい度胸ね。死んでその蛮勇を悔やみなさい」

 

よし乗ったぁ!これは僥倖。というかチョロ過ぎるぜこの娘。

 

「ってことで、全部貰うけどいい?」

「まあ、相手もその気ならしょうが無い。任せたぞ、同盟者殿」

「おう、任せろ。てことでネロ、よろしく」

 

魔王の中には、星を砕く程の一撃でなければ倒せない相手もいると聞く。だが、今の俺達にそんな攻撃力は無い。いや本気出せばどうとかじゃなく、試した時点でこの街ごと皆吹き飛ぶ。ならばどうするか、簡単な事だ。

 

「うむ、任せよ!そこの少女らも中々に愛らしい容姿だが、マスターの命とあっては仕方ないな!――春の陽射し、花の乱舞!皐月の風は頬を撫で、祝福はステラの彼方まで!開け、ヌプティアエ・ドムス・アウレアよ!」

 

ネロの宝具、『星馳せる終幕の薔薇(ファクス・カエレスティス)』の発動。世界の上から黄金劇場を投影するという大魔術。

さて、先程の答え合わせだ。相手に攻撃が届かない場合はどうするか。

 

「――相手を弱体化させればいいじゃない」

「なっ...!」

 

それが誰の驚嘆の声なのかは分からない。レティシアかもしれないし、あの斑ロリや白い女性かもしれない。だが、もう遅い。既に捉えた(・・・)

 

「さて、ここからはずっと俺らのターンだ。覚悟しろよ、魔王様?」

 

これから始まるは魔王の蹂躙。完膚なきまでに、奴らの全てを打倒する。

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