救援要請来てた...
「さて、今回みんなに集まって貰ったのは他でもない。なんかヤバイ事になってるからみんなで乗り切ろうぜって話だ」
夏。もうセミも忙しなく鳴き始め、若干煩わしいなー、と思ってきた今日この頃。
『
「ヤバイ事?また何か厄介事を持ち込んできたのか、あのご老体は」
やれやれ、と肩を竦めるのは我らがオカン・エミヤ先生。今日は日曜の為職務はお休みだ。
「いや、今回爺さんは関係ない。というか俺が悪い」
そう言って、もう一度部屋を見渡す。
今回、俺の急な呼び出しに応え、このクソ暑い中わざわざ俺の部屋まで出向いてくれたのは、エミヤ、静謐ちゃん、ネロ、モードレッド、シャルロット、ラウラの6人である。声を掛けた全員が集まってくれた。ありがたい。
「回りくどい言い方しないでさっさと要件を言えよ、マスター」
棒アイスを咥えながら催促をかけてくるモードレッド。白いへそ出しタンクトップ(俺はキャミソール亜種と呼んでいる)とショートパンツだけという何ともラフな格好だが、まあ布一枚を巻いていた時期よりかは幾分マシだろう。
「えー、じゃあぶっちゃけるわ。...先週、カルデアからの救援要請があったんだけど、スマホ全然見てなくてさ。ついさっき確認した」
「ブゥッ!」
俺の話を聞いて、エミヤが飲んでいたお茶を吹き出した。わあ、テンプレートだぁ。
「ちなみに内容はこう。
『凌太君ッ!至急、至急カルデアまで来てくれないか!?アメリカが...立香ちゃん達が危ないんだ!これを聞いているなら、早くッ!』
...もう一度言うと、この録音音声は1週間前のものです」
「それはマズイな...」
「だろう?てことで、諸君らには明日にでも旅立てるよう準備して欲しい。あ、シャルロットとラウラは来なくていいよ。お前らには国や学校もあるしな。一応、俺達居なくなるよって報告の為に呼んだんだ」
ぱんぱん、と2度手を打ち、解散の意を伝える。まあ準備とかはほとんど要らないのだが、エミヤは教員採用の為、色々と手続きが必要だろう。
英霊陣はその合図で部屋から出ていき、各自準備を始める。まあ、仲の良かった連中に暫く留守にするという報告等が主だろうか。相川とか。
「嫁。そのカルデアとやらに行くとして、いつまで帰ってこないんだ?」
「分からん。2度とこっちに来ない事は無いだろうけど、もしかしたら1年後か2年後、或いは10年後なんて事もあるかもな」
「え!?そ、そんなに長く!?」
「本当に分からないんだよ。半年後くらいにひょこっと現れるかもしれないし。次はいつ何処で何が起こるかなんて分かったもんじゃねえ。だってこっちには駄神がいるし」
あの爺さんが絡むと最悪死ぬからな、俺。
「ふむ。ならば私もついて行こう。夫婦とは、いついかなる時でも共に在ると聞いている」
「ぼ、僕も!」
2人して付いて来ると言い張るが、そうだな、少しシュミレーションでもしてみるか。
1、シャルロット&ラウラ特異点にイン
2、少なくとも、アルトリア達が居て死にかける様なガチの戦場、もしかしたらそれ以上
3、俺は力を十全に使える状態では無い
4、死
結論、2人共に死亡...。ダメじゃん。
「死ぬだろうからダメ。それに、さっきも言ったけど、お前らには国があるだろ。2人は代表候補生なんだし、ここで死ぬのは本意じゃないだろ?」
「っ...それは、そうだが...」
ドイツという国の命運を握っていると言っても過言では無いであろう立場のラウラは、流石にこれで尻込みする。軍所属なのだし、当たり前だろう。ま、IS学園を卒業して、それでも俺達について来たいと言うのならば、その時は連れて行くが。
「...僕は、フランスに居場所なんてないと思う。デュノア社は未だに経営難、僕の正体がフランス政府にバレたら十中八九牢屋行きだし...。それなら、愛国心なんかよりも、好きな人と行動を共にする事を優先するよ、僕は」
そういやそうだった。余りにも自然と女子に戻って再入学してきたからすっかり忘れてたけど、コイツお国にバレたらヤバイ隠し事してたんだった。
「...とにかく、今回はダメだ。ガチで死ぬかもしれないし。...卒業後、その時になっても俺達について来たいと思うのならそう言え。その時は2人共連れてってやるよ」
という訳で、遅くとも2年半後にまた此処に来る事になりました。
シャルロットもラウラも、ついて行きたいという思いは変わらないと豪語していたので、恐らく近いうちに“ファミリア”へと入る事になるだろう。まあ、俺が生きていればの話だが。
アルトリアやその他強力なサーヴァント達が居ても尚死にかける様な戦い、ねぇ...。普通に怖いんですけどそれ。
* * * *
「やりたいこと、行きたい場所、見つけたら〜♪迷わないで、靴を履いて、出掛けよう〜♪ということでタイ○マシンに乗ろうと思います」
「まさかあの秘密道具に乗ることになるとはな...」
正確にはタ○ムマシン型の時空遡行機らしいが。
いや、机の引き出しを開けたら真っ暗な空間が広がっててさ。その中にポツンと乗り物が浮いてたんだよ。で、その乗り物の形がまんまタイムマ○ンだったって訳。
その乗り物に行き先を入力すると、その世界まで送っていってくれるらしい。ガチの秘密道具じゃねえか。
「よーし、みんな乗ったなー?んじゃ、出発進行ポチッとな」
「おい、その機械が爆発しそうな掛け声はやめてくれないか」
自爆フラグのセリフを吐き、意気揚々と出動ボタンを押す。エミヤの突っ込みにも大分慣れた。というかコイツ、漫画やアニメのネタにヤケに詳しいな。
「アラホラサッサー!」
「やめろと言っている!!」
と、こんな感じでタ○ムマシンは動き出し、暗闇の中を暫く進んだ後、いつもの如く、前方に現れた光へと飛び込んでいく──
のかと思ったら、いきなり急カーブして、俺達だけ光の中へと放り出された。
「「なんでさー!!」」
「おお!奏者とエミヤの声がハモった!」
「それは今関心することなのか!?」
もうぐだぐだである。
* * * *
「へー、ここがカルデアかー」
光を抜け、モードレッドが第一声を上げる。そっか、モードレッドはカルデアに来るの初めてなんだっけ。
光の先はカルデアのマイルームだった。俺が前に居た時と何ら変わっていないところをみると、誰もこの部屋を弄ってはいないのだろう。
「とりあえず管制室に向かうか。ロマンやダ・ヴィンチちゃんもそこに居るだろうし」
「そうですね旦那様♡」
..................。
「......OK、大丈夫だ。落ち着け俺」
「あらあら、そんなに汗をかかれて...。風邪を引いてしまいますよ?」
「元凶が何を言ってやがる」
何事も無いように、俺に気取られる事も無く俺の隣に居た緑がかった髪の少女。うん、まあ清姫だよね。何をナチュラルに俺達の会話に入ってきているのだろうか。
「清姫さん、お久しぶりです」
「おお、清姫か。久しいな」
「...すまないマスター。彼女の接近に全く気が付かなかった」
「大丈夫。俺もだ」
「え?誰、コイツ?」
「お久しぶりです、静謐さん、ネロさん、エミヤさん...。初めまして其処な新人サーヴァント。後で少しお話があります...。その前に
「落ち着け、落ち着くんだ清姫。俺は安珍じゃない。だからチロチロ出してる火を収めろ」
「あらあら、またそんな嘘を...。燃やそうかしら」
「ステイ。本当に待ってくれ清姫さん。俺は悪くない筈だ。そう、その安珍とやらが悪いのであって、俺じゃない。OK?」
「つまり、貴方が悪いという解釈ですよね?」
「違います。俺の前世は多分ツチノコとかだから」
「レア度的に言うとあながち間違ってないのか...?」
エミヤが真剣に悩み始めた。ねえ、考えてないで助けてオカン!
俺は基本、向けられた好意には応えるようにしているが清姫の場合は別だ。だって清姫が好きなのは安珍なのであって俺ではない。そんな、自分以外の奴に向けられた好意にどうやって応えろというのか。...無理じゃね?
その後もなんやかんやあって、何とかマイルームから出る事が出来た。
が、また此処で問題が生じたのである。
「セイバァァァ!!」
ネロに襲いかかるジャージ姿の変態を殴り飛ばし、ついでに軽い電撃を喰らわせる。不審者撃退だね。
「さて、確か管制室はここを右で...」
「ちょ、無視!?私は無視なのですか!?殴った挙句に無視とか、貴方さてはドSですね!?」
「マスター、そこを右に曲がったら次は左だ」
「ガッテム!!」
五月蝿いなあ。てか気絶させるつもりで雷打ったのに普通に立ち上がりやがったぞアイツ。
...ん?あの顔はアルトリア顔...?
「ち、父上ぇ!?」
「む?そちらのセイバーはモードレッド卿...。キャメロットだけでは飽き足らず、このカルデアの窓まで叩き割りに来たのですかこの不良息子は!!」
不良息子...。え、もしかしてあれアルトリア顔じゃなくてアルトリア本人?
「...久しぶりだな、アルトリア」
「誰の事ですか?アルトリア?知らない子ですね。私のコードネームはヒロインX。昨今、社会的問題となっているセイバー増加に対処する為に召喚されたサーヴァントです。ということで私以外のセイバーは死ね」
「何を言っているんだこの子は」
懲りずに再度ネロに斬りかかって来たので殴り飛ばす。学習しないなぁ。
「じゃ、行くか」
「うむ、そうだな」
「私は少し食堂に寄ってもいいかね?」
「ん、後で飯食わせてね」
「了解した」
「え、みんな父上スルーなのか!?折角、あの父上が俺を息子って言ってくれたのに!」
「ほらモードレッド、置いてくぞー?」
「......ああ、アレがマスター達の通常なんだな。今やっと理解した...」
モードレッドの奴、今何かを悟ったな。
ということでヒロインXという謎キャラを放置して、俺達は管制室へと向かった。
* * * *
その後は誰にも遭遇すること無く、暫く歩くと管制室へと到着した。
「おっひさー。いや、待たせてマジで悪い」
と、無遠慮に管制室の扉を開けてそう言う。中にはポカンとした表情の藤丸さんとロマンの姿があった。
少しの間沈黙が続いた後、ようやくロマンが口を開く。
「...えっと、凌太君?いつ帰ってきてたのかな?」
「ついさっき」
「伝言を聞いたのは?」
「昨日」
ガクッと項垂れるロマン。いや、だから悪かったって。
「え、じゃあ次は凌太君も私達と一緒に来れるの?」
「おう。藤丸さんが嫌じゃなければな」
「全然そんなことない!寧ろ歓迎するよ!今まで何度死にかけたことか...。凌太君が居れば少し安心出来る!」
「お、おう...」
若干涙を浮かべる藤丸さんを見る限り、今まで相当な冒険をしてきたのだろう。一緒に行くのが楽しみのような怖いような...。死なないように頑張ろう。
「せ、先輩ッ!大変です、通路の真ん中でヒロインXさんが倒れて......って、え!?凌太さん!?いつから居らしてたんですか!?」
「10分くらい前から」
血相の変えて管制室に駆け込んできたマシュは、俺達を発見すると驚きの表情を浮かべた。まあ、予告無しで来たからね。しょうがないネ。
「それに、そこに居るのはモードレッドさんじゃないですか!お久しぶりです!」
「あ、本当だ!凌太君再来のインパクトで気が付かなかったよ...」
「は?誰だお前ら。俺と会ったことあるか?」
「え?いえ、この間ロンドンでお会いしましたよね?」
「ロンドン?知らねぇな、覚えてねぇ」
「そ、そんなぁ...。私と培った愛は偽物、虚像だったとでも言うの!?」
「はぁ!?愛ィ!?俺とお前がぁ!?」
「先輩、嘘をつかないで下さい」
「ますたぁ?今、嘘をついたのですか...?燃やし...」
「ごめんなさい軽いジョークです。だからその炎引っ込めてお願い」
...カオスすぎるしぐだぐだすぎる。なんだこれ。
* * * *
「んんっ!さて、思わぬ助っ人である凌太君も到着した事だし、次の特異点のブリーディングを始めよう。判明した第6特異点だが、時代は13世紀。場所は聖都として知られるエルサレムだ。正確な年号は──」
と、ロマンの説明が続くが、正直そこまで世界史の知識がある訳ではない俺には分からない事が多い。まあとりあえず聖杯取ればいいだろうと思い、適当に聞き流す事にした。
今回出向くメンバーは全員で8名。俺、静謐ちゃん、ネロ、藤丸さん、マシュ、ダ・ヴィンチちゃん、織田信長、邪ンヌだ。
エミヤは食堂でアルトリアズに捕まり出撃不可、モードレッドはヒロインXを追って何処かに消えた。...もうちょいファザコンを隠す努力を続けようよ、モーさん。
藤丸さんの方も、何やら「コスト的に4人が限界かな...」などと呟いてこの面子に決まった。コストってなんだろう。
邪ンヌと俺の間で少しイザコザがあったが、まあ俺がトドメを刺したのだからしょうがない。暫く怒鳴り散らすと、鬱憤が晴れたのか俺に対する敵意も少しは和らいでいた。
織田信長も女の子だったんだね、と軽く驚愕したが、まあ慣れたよ。
その後も、特異点の難易度がEXだとか、ダ・ヴィンチちゃんの出撃にロマンが物申したりとか、まあ色々あったが、俺達は無事レイシフトに成功した。ああ、ついでにフォウくんも付いてきたよ。
そして現在。
「目が、目がぁ!!」
俺の目に襲いかかる異物を涙を流し必死になって取り除きながらそう叫ぶ。マジで目が痛いんだが!!
「ここがエルサレム!?砂漠じゃないの!?」
「こんなところがエルサレムであってたまるかー!」
「先輩、皆さん!とりあえずあちらの岩陰へ移動を!このままだと飛ばされてしまいます!」
とまあ、砂漠の砂嵐の中に放り込まれていた。最初から死活問題に直面したんだが。流石難易度EXと言ったところか。先が思いやられるなぁ...。