プリキュアR   作:k-suke

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第11話「R 対 R」

 

 

ネローベ学園 中庭

 

 

 

理香「いや〜なんか久しぶりだね。四人でお昼食べるのって」

 

 

 

理香がさもワザとらしく、場を明るくしようと言った。

 

確かに私が風邪を引いて二週間以上欠席したと思ったら、今度は雪菜が入院していたのだから、こうして四人で一緒に食事をするのも一ヶ月ぶりぐらいになる。

 

雪菜「そうね。ごめんね心配かけちゃって」

 

久美「元気そうでよかったよ、ねぇ美里」

 

久美もその場を取り繕うようにそう言い

 

 

美里「う、うんそうだね」

 

私は目を泳がせながらそう返事をした。

 

 

雪菜「みんなありがとう。気遣ってくれて…。でも私なら大丈夫。きちんと今やるべきことがあるから。落ち込んでなんていられないよ」

 

雪菜はそう言ったが、どこかその笑顔は張り付いたようなものだった。

 

 

雪菜がこうなってしまったのは完全に私の所為である。

 

未だに右手には包帯を巻き、手づかみでたどたどしくサンドイッチを食べる雪菜を見て(さすがにまだお箸が使えない)私はいたたまれない思いだった。

 

 

美里(私は雪菜の夢を奪った…。今更もう引き返せない…。この地獄を果ての果てまで歩いていくしかない…)

 

 

私は自分が踏み込んでしまった復讐という名の泥沼に溺れていっているように感じていた。

 

 

 

 

雪菜もまた、一緒に食事をする友達を見ながら思っていた。

 

雪菜(みんなに気を使わせてしまって…。それもこれも全部あいつのせいだわ。キュア・インフェルノ、この人たちの爪の垢でも煎じて飲めばいいのに)

 

 

誰も知らないことだが、雪菜の心のうちにもまた暗い炎が宿っていた。

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

アカンコウ「チクショー、バッキャロー。な〜にがプリキュアだってんだ、くそったれ〜」

 

 

クジャク「あんなタイミングでもう一人プリキュアが出てくるなんて卑怯だよ、反則だよ」

 

 

ゴロリン「そうでまんねん。ど〜んな悪役レスラーでもいきなり二人掛かりになるなんてしないでまんねん」

 

 

三獣士はあの敗北からこっち四六時中自棄酒を煽っていた。

 

 

洋館の中は大量のビールや酎ハイの空き缶で溢れかえっており、酒の匂いが充満していた。

 

 

ゴロリン「あんなに苦労してバイトして、食事まで切り詰めて、やっとの思いでギリギリまで追い詰めたのにまた敗北するなんて、なんてみじめなトリオなんでしょう。お〜いおいおいおい」

 

ゴロリンが涙ながらにそう言った。

 

 

アカンコウ「あんた泣き上戸だったのね。でも泣くな、一番悪いのはそもそもなんのサポートもせず無茶な命令下す大神獣なんだ。あのバカヤローのせいなんだよ〜」

 

 

クジャク「そうだよ。現場の苦労も知らないでえっらそうに命令だけしてさ。あ〜んな上司ってのはいっちばん嫌われるんだよ〜だ」

 

 

完全に出来上がっているアカンコウとクジャクもずっとクダを巻いていた。

 

 

 

そんな時、急にあたりが暗くなったかと思うと不気味な声が響き、不気味なモヤのようなものが現れた。

 

大神獣「三獣士よ。何をしている」

 

 

低い声で大神獣がそう尋ねてきたが、完全に泥酔状態である三獣士は膝まずこうとはしなかった。

 

 

クジャク「はれ〜大神獣ら。ろ〜ひたろ〜」

 

 

大神獣「二人目のプリキュアが出現したという。もはや猶予はない。至急ブラックエナジーを収集せよ」

 

目の前の三獣士の状態を無視して、大神獣は指令を下した。

 

 

アカンコウ「そ〜んなの簡単にできるわりゃないれひょ〜。大体何? いつも一人のあんたが三人もいるりゃない。余計にぶらっくえなり〜がひつよ〜になるでひょ〜」

 

 

大神獣「何を言っている。我は唯一無二にして至高の存在大神獣である! 複数の我が存在するとは何事!!」

 

アカンコウの言葉に大神獣は敏感に反応しどなりつけた。

 

 

 

ゴロリン「アカやんてば、か〜んぜんに酔っ払っとりますな〜。ほら大神獣はあっちに一人だけれすよ〜」

 

と言いながらもゴロリンは、アカンコウの頭のつもりなのかクッションを抱きかかえて、見当違いの方向を向いていた。

 

 

 

大神獣「貴様たち。我の話を聞いておるのか。至急ブラックエナジーを収集せよ」

 

 

クジャク「うるひゃいな〜も〜。わ〜ったわ〜った。確か予備のべーすアニマルがあったよね〜」

 

 

アカンコウ「は〜い。前に作ったやつの改良版が」

 

 

大神獣「よし、至急出撃せよ!!」

 

 

そう言い残し、モヤのような大神獣は姿を消した。

 

 

 

 

クジャク「らってさ〜しゅっぱ〜つしんこ〜!!」

 

 

アカンコウ・ゴロリン「「いえっさ〜!!」」

 

 

その言葉を最後に全員酔いつぶれて、寝込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

ネローベ学園 放課後

 

 

 

 

私たちは、四人で通学路を歩いていた。

 

 

美里「雪菜、荷物持つのに疲れたらいつでも言ってね」

 

雪菜「ありがとう美里。でもあんまり気を使わなくてもいいわよ。こういうのもリハビリの一環なんだから」

 

 

私は利き腕が不自由になってしまった雪菜を気遣い、いろいろなことを申し出ている。

 

 

美里「でも無理しないでね。授業のノートだって取り辛そうだったじゃない。

なんなら、私のノートのコピーでも…」

 

 

すると

 

 

雪菜「それこそ遠慮するわ。成績下がりそう」

 

雪菜はオーバーに肩をすくめてそう言った。

 

 

久美「同感」

 

理香「右に同じ」

 

 

美里「あのね…」

 

 

 

はっきり言って、自分でもおせっかいがすぎると思う。でも、こうでもしないと私自身がやりきれなかった。

 

 

久美や理香はおろか、雪菜さえもこうして笑って私と一緒にいてくれている。

 

でも、雪菜を傷つけて夢を奪ったのは他ならぬ私だ。

 

もし、そのことを知られたら私はこうして一緒にはいられない。

 

いや、本来はとっくの昔に私にはみんなといる資格はなかった。

 

自分勝手に戦い、多くの人を理不尽に傷つけた。

 

 

こんな私に、誰かと笑い合い穏やかな時を過ごすなんてことが許されるはずがない。

 

 

美里(私は…これからどうするべきか…。もうわかってるよね…)

 

 

 

 

そんなこんなで、いつの間にか雪菜と別れる十字路にたどり着いていた。

 

 

美里「じゃあね。なにか手伝えることがあったらいつでも言ってね」

 

雪菜「ありがとう。いろいろ心配してくれて」

 

 

美里「な〜に。私の時もいっぱい助けてくれたじゃない。そのお礼だよ。困った時はお互い様」

 

 

久美「そうそう私たちは友達だよ」

 

理香「遠慮しないでいいって」

 

 

久美や理香の言葉に雪菜は少し涙ぐんでいた。

 

 

雪菜「ありがとうみんな。私は幸せよ、こんないい友達がいて。これからも友達でいてね」

 

 

久美「もっちろん!!」

 

理香「ずっと友達だよ!! ねぇ美里」

 

美里「えっ? う、うん。そうだよ」

 

 

みんなには内緒にしていることだが、ピアノが弾けなくなってからこっち雪菜はいろいろ追い詰められていた。

 

 

もちろん夢を壊されてしまったことも大きいが、それよりもこれまで音楽家のサラブレットとして期待をされていた分、その筋の人間が手のひらを返したように冷たくなったことがショックだったのだ。

 

その中には彼女がずっと教えを受けてきた先生も含まれており、正直参っていたのだ。

 

 

雪菜(みんなは私個人と一緒にいてくれている。ピアノを弾ける私じゃなくて…)

 

 

雪菜にとって、友人の存在は非常にありがたいものであった。

 

 

 

雪菜(それでも許せない!! あいつだけは!!)

 

雪菜の中の怒りは絶えず研ぎ澄まされていた。

 

 

 

 

 

 

私は雪菜たちと別れて一人になったのを確認した後、カバンに話しかけた。

 

美里「ねぇ、あのキュア・コキュートスって子もプリキュアなんだよね」

 

 

メル「そ、そうだメル。一体どうしたメル?」

 

ここ最近、必ず怒鳴りつけられていたメルは、急に丁寧に話しかけられたことに困惑していたようだったが、お構いなしに話を続けた。

 

 

美里「私が恨まれる心当たりなんてもう数え切れないし、あの子の言う通り地獄に落ちることは決まってるだろうからさ。全部終わったらあの子に殺されてもいいかもね」

 

私は何かを悟ったように空を見上げてそう呟いた。

 

この間はコキュートスも一緒に倒してやるなんて考えていたが、少し時間を置いて冷静になると私に彼女を倒す理由はないことに気がついたのだ。

 

 

メル「な、なんてこと言うメル!? そんなこと冗談でも言っちゃいけないメル!!」

 

突然のことに驚きの声をメルは出した。

 

 

美里「冗談を言ってるつもりはないわ。あいつらへの復讐を終えたら私は空っぽだもの。今更、私だけが幸せで平和な時間を過ごせるなんて思ってないしね」

 

 

メル「美里…。違うメル…コキュートスはインフェルノと一緒に戦った正義のプリキュアメル。コキュートスに殺されるなんてあっちゃいけないことメル…」

 

 

私の言葉にメルは涙まじりにそう言った。

 

 

美里「ならなおさらよ。私は自分が正義の味方だなんて思ってない。コキュートスが正義の味方なら、私は倒される敵役よ」

 

 

メル「美里…。 !!!」

 

 

メルが何かに気がついたような表情をしたので、私も何があったかを理解した。

 

しかし、いつもなら血がのぼる頭が今日は妙に冷静だった。

 

 

美里「あいつらか…。じゃ行きましょう。準備して」

 

 

メル「ダメメル…死にに行くなんてそんなこと…」

 

 

美里「大丈夫。全部終わったらってこと。まだまだ死ぬわけにはいかないから」

 

 

私はおそらく初めてであろう笑顔をメルに対し向けてそう言った。

 

 

その笑顔に何も言えなくなったか、メルはスマホに姿を変えて私の手の中に飛んできた。

 

それを掴むと私は大きく深呼吸をした。

 

美里「よし。プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

次の瞬間、私は赤い光とともに深紅のドレスに身を包み、仮面を装着していた。

 

 

 

インフェルノ「この赤いドレス都合がいいわね。私が死ぬとき血まみれの体を誤魔化せるから…」

 

 

私は自分の深紅のドレスを見てそう呟いた。

 

 

もっとも、今の私に赤い血が流れていればだが…。

 

 

 

 

 

 

数十分前 オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

クジャク「う〜頭痛い。じゃあ取りあえず行こうか」

 

頭痛に顔をしかめながらも、クジャクは出撃を促した。

 

 

アカンコウ「は〜い。以前銀行強盗に使ったときのベースアニマルの改良版タカ型メカのホーク2号くんです…」

 

額に冷えピタを貼りつけながら、いかにも気持ち悪そうにアカンコウがそう解説した。

 

ゴロリン「う〜気持ち悪いでまんねん。完全に二日酔いでおま。もうちょっと時間置いてからにしまへんか」

 

 

いつもの元気は何処へやら、今にも吐き出しそうな感じでゴロリンがそう提案した。

 

 

クジャク「でもね。早く行かないと何されるかわかんないかんね。出撃さえすりゃ気分良くなるんだから、おだててりゃいいの」

 

 

アカンコウ「そうそう。私たちがいないと何にもできないくせに偉そうなんだら。適当に太鼓持ちやって機嫌とってりゃいいのよ。それでプリキュアを倒せりゃ目一杯恩を売ってやりゃそれでいいの」

 

 

 

そんなことを言いながら、兎にも角にも三獣士は出撃した。

 

 

 

 

 

オーエエドー市内 市街地

 

 

 

ビルの屋上にて、タカ型メカが甲高い声をあげていた。

 

 

特に何をしているわけではないが、その巨体に市民たちは恐れおののき避難していた。

 

 

 

 

一方タカ型メカのコックピットでは

 

 

 

クジャク「おぇ〜気持ち悪い。もう少し静かに動かせないのかい…」

 

ゴロリン「この揺れはちょっと…」

 

 

アカンコウ「もうしばらくの辛抱ですよ。こうしてれば直にあいつらが来ますから…」

 

 

最悪の体調の中、三獣士がプリキュアの到着を待っていた。

 

 

そんな時、ようやく空に光るものが現れた。

 

 

ゴロリン「あっ来ましたで」

 

クジャク「よ〜し戦闘開始!!」

 

アカンコウ「負けてもよし。勝てればなおよし。ほんじゃ行きましょうか」

 

 

 

 

 

私が火の玉になって市街地に着くと、そこにはビルの屋上で甲高い声を上げているタカ型メカがいた。

 

 

いつもなら怒りの感情で頭がいっぱいになるのだが、今日は妙に頭が冷めていた。

 

 

インフェルノ「暴れてないなら傷つく人は増えないし。都合もいいか」

 

 

そんなことを呟きながら近くのマンションの屋上に私は着地し、いつもの名乗りをあげた。

 

 

 

インフェルノ「地獄からの使者 キュア・インフェルノ!!」

 

 

 

 

 

インフェルノ「ヤァアアア!!」

 

私は向かいのビルの屋上にいるタカ型メカに向かって大ジャンプして殴りかかった。

 

 

そして鈍い音とともに、タカ型メカは姿勢を崩してビルの屋上から転落していった。

 

 

 

しかし、さすが鳥型というべきか、地面に激突する前に体勢を立て直して再び舞い上がってきた。

 

そしてそのまま、私の頭上を取りミサイルを発射してきた。

 

 

インフェルノ「くそ!!」

 

私は大ジャンプしてミサイルをかわし(当然流れ弾は屋上に着弾し、ビルは半壊した)そのままタカ型メカの高さまで行き、攻撃を加えようとした。

 

 

 

 

インフェルノ「!! 何!?」

 

 

 

急に足が冷たくなったと思ったら、何かに足を引っ張られるような感覚があった。

 

と思う間もなく、私はそのまま空中から引き摺り下ろされ地面に叩きつけられた。

 

インフェルノ「イタタ。何なのよ?」

 

 

痛みに顔をしかめながら足を見ると、私の足には氷でできた鉤爪とロープが絡まっていた。

 

そして、そのロープの先にいたのは彼女だった。

 

 

コキュートス「絶望の果てより来りしもの キュア・コキュートス」

 

 

インフェルノ「キュア・コキュートス…」

 

 

 

 

遡ること十数分前

 

 

 

ミプ「雪菜。大神獣の闇の力を感じたミプ!!」

 

 

典型的な日本家屋とでもいうべき自宅に帰り着いて、一息ついていた雪菜にポケットの中からミプが話しかけてきた。

 

一緒に連れ歩くには不便だということから、普段外出している時にはスマホの姿になってくれるように、雪菜が頼んだのだ。

 

ミプの方も多少疲れるが、利き腕が不自由になっている雪菜の事情も考慮してそれを了承したのだ。

 

 

雪菜「なんですって!? じゃああいつも間違いなく来るわね…」

 

雪菜は暗い光を目に宿しながら静かな声でそう言った。

 

 

ミプ「雪菜…間違えちゃダメミプ。戦うのは大神獣の方ミプ」

 

雪菜「いいじゃない別に。このプリキュアの力が本来何に使うものだろうと、今現在は私の力なんだから。どう使うかは私が決める!! それに大神獣とかいうのともちゃんと戦うわよ。 インフェルノを殺されてたまるもんですか!!」

 

 

ミプ「雪菜…」

 

 

ミプは悩んでいた。

 

先に見つけた少女は、戦いの恐怖からプリキュアになることを拒んだ。

 

だから雪菜を見つけて、戦ってくれることを了承してくれた時はすごく嬉しかったのだ。

 

 

しかし、現実はこれである。

 

確かに戦ってくれてはいるが、ミプが描いていた理想とはかけ離れてしまっている。

 

千年以上前コキュートスとインフェルノは、最初の頃こそなんの接点もないもの同士だったが共に戦い続けるうちに絆を深め、無二の親友となっていった。

 

 

そのため、今現在この二人が戦うのを見るのは心苦しいものがあった。

 

 

雪菜「どうしたの? 行くわよ」

 

ミプ「わかったミプ…」

 

 

ただ、どう理屈をこねくり回そうとも、大神獣が復活しかかっている以上プリキュアは必要であり、経緯や方向性はどうであれ戦ってくれる以上雪菜を止める理由も感情論以外思いつかない。

 

 

ミプは力なく頷くしかなかった。

 

雪菜は、まだ不自由な右手でスマホになったミプを掴むと、左手でたどたどしく鍵の形のアプリをタッチした。

 

 

雪菜「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

次の瞬間、一気に周辺温度が何十度も下がったかと思うような寒々しく冷たい光が雪菜を包んだ。

 

 

それが収まった時には、青い仮面を装着し、白を基調にして水色で縁取りした寒々しさを感じるドレスに身を包んだ少女だった。

 

 

そのまま、青白い玉に変化するとコキュートスは窓から飛び立った。

 

 

 

 

 

そして現在

 

 

 

コキュートス「インフェルノ。今度こそ決着をつけてあげるわ!!」

 

 

私は足に絡まったロープを熱で焼き切るように解くと、憎悪のこもった冷たい目で私を見つめ、ゆっくりと歩いてくるコキュートスに対して叫んだ。

 

 

インフェルノ「待って!!」

 

コキュートス「何? 命乞いなら無駄よ」

 

 

 

インフェルノ「違う!! 別に私はあなたになら殺されてもいいって思っている」

 

コキュートス「なんですって?」

 

 

私の言葉にコキュートスは戸惑い動きが止まった。

 

 

 

インフェルノ「あなたがどこの誰なのかは知らない。でも私が傷つけた人の一人だってことはわかる。でも必ず償いはする。あいつらさえ倒せば私の目的は達せられる。そのあと煮るなり焼くなり好きにして」

 

 

私は精いっぱいの自戒の念を込めてそう訴えた。

 

 

しかし、コキュートスは肩を震わせながら叫んだ。

 

コキュートス「ふざけないで!! あなたは私の未来を、夢を奪っておきながら自分だけはのうのうと目的を達成しようとしている!! そんなこと許さない!! 今この場であなたを殺してやる!! 目的も何もかも叶えられないまま無念さを抱えて死になさい!!」

 

その叫びとともにコキュートスは右手を刃に変えて斬りかかってきた。

 

 

 

コキュートス「な!?」

 

しかし、私はその一撃を必死に受け止めていた。

 

 

インフェルノ「…冗談じゃないわ。死んでもいいとは言ったけど、あいらを倒す前に殺されてたまるもんか。あいつらへの復讐を邪魔するなら、あんたから先に倒してやる!!」

 

 

私は怒りとともに刃をへし折り、コキュートスに殴りかかった。

 

 

しかし、コキュートスは私のパンチを紙一重でかわすと勢い余って前のめり気味になった私の背中を上から殴りつけた。

 

 

インフェルノ「げはっ!!」

 

背中からちょうど肺の上を殴られた私は、おかしな声を出しながら地面に叩きつけられた。

 

 

コキュートス「死ね!!」

 

コキュートスは、私のへし折った右手の刃をもう一度作り出すと、倒れ込んだ私に向けて突き刺してきた。

 

 

 

インフェルノ「だぁりゃあ!!」

 

しかし私はすんでのところで横に転がってそれをかわし、同時にコキュートスのボディにキックを食らわした。

 

 

 

コキュートス「ぐう…」

 

コキュートスが呻き声とともにお腹を抑えている間に、私は少し距離をとって体勢を立て直した。

 

 

しかし、それがいけなかった。

 

 

距離ができたことで時間を稼げたのはお互い様であったから。

 

 

私が距離をとった隙に、コキュートスは右腕を大きな瓢箪のような形に変化させた。

 

さっきはその先が鉤爪だったが、今回は先端が棘の付いた氷の球いわゆるモーニングスターというものになっていた。

 

コキュートス「受けなさい。クリスタル・スター」

 

 

彼女は右腕を振りかぶり、その氷球につながったロープを振り回すようにして私にぶつけてきた。

 

 

インフェルノ「くっ!!」

 

私はすんでのところでそれをかわしたが、氷球のぶつかった地面は一瞬で凍りつき、しかも大きく陥没していた。

 

 

コキュートス「まだまだー!!」

 

 

私に攻撃がヒットしないことにイラつき出したか、コキュートスはめちゃくちゃに氷球を振り回してきた。

 

 

攻撃をかわしながら、私は勝機を感じた。

 

 

インフェルノ(この子さっきからただ力任せに振り回してるだけ…。おまけに足元がふらついてる…。振り回すのを支えるだけの力がないんだ。いける!!)

 

事実、コキュートスは球を振り回すというより、球に振り回されるように攻撃していた。

 

私はバックステップでもう少し距離を取り、攻撃を誘った。

 

すると案の定、距離をとった私に向けて大きく氷球を振り回してきたが、その勢いを支えきれずコキュートスは体勢を崩した。

 

 

私はその隙を見逃さず、攻撃をかわした後、一気に距離を詰めて懐に入り込み右腕をとった。

 

 

インフェルノ「これさえ抑えちゃえば、あんたなんか怖くないのよ!!」

 

 

私はコキュートスの右腕を左脇に抱えながら、何度となく膝蹴りをコキュートスのボディに食らわせた。

 

 

 

コキュートス「ぐぅっ、調子に…乗るなぁ!!」

 

ダメージを受けたコキュートスは気合一発私を振りほどき、今度は右腕の先を鉤爪に変えてきた。

 

コキュートス「クリスタル・ビュート!!」

 

その言葉とともに打ち出されたロープ付き鉤爪は私の右腕を絡め取った。

 

 

インフェルノ「なんの!!」

 

私たちは綱引きの格好になったが、地力は私の方が上であるらしく、私がロープを引っ張るとコキュートスはそれに引きずられるような格好になった。

 

 

インフェルノ「こないだのお返しよ!! まともに動ければあんたなんかに!!」

 

私は先の戦いで何度も地面に叩きつけられたお返しとばかりに、ロープを引っ張ってコキュートスを何度も投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

 

 

コキュートス「くっそ、舐めるなぁ!!」

 

しかしコキュートスも負けてはおらず、投げ飛ばされた後タイミングを見計らって同じように私を投げ飛ばしてきた。

 

 

インフェルノ「こんのー!!」

 

 

 

 

 

 

一方

 

 

 

 

クジャク「なんだいあいつら? 一体何しに来たんだい、仲間割れか?」

 

 

自分たちそっちのけで争い合う二人のプリキュアを見てクジャクが呆れたようにそう疑問をぶつけた。

 

 

アカンコウ「よし! なんか知らんがチャンスだ。あいつらを一気に片付けてやる!!」

 

そう言うとアカンコウはタカ型メカ ホーク2号の翼を広げさせ、一気に上昇させた。

 

 

 

 

クジャク「おいおいおい。勇ましいこと言っといてさ、ただ逃げてるだけじゃないのかい!?」

 

アカンコウ「ご心配なく。超高空から急降下し、あいつらが争いあっている中、一気に奇襲をかけるのです。まさに漁夫の利作戦です!!」

 

 

クジャク「えばれるほどかっこいい作戦かい。むしろ情けないよ、あたしゃ」

 

 

そうこうしている間に、タカ型メカ ホーク2号は上空10,000メートルにまで上昇していた。

 

 

ゴロリン「高度10,000メートル準備OKでおま」

 

アカンコウ「よし、急降下体当たりだ!!」

 

その叫びとともに、タカ型メカ ホーク2号は地上のプリキュアを目掛けて一気に急降下していった。

 

 

 

ゴロリン「距離9,000メートル…8,000メートル…7,000…5,500…」

 

 

ゴロリンのカウントダウンを聞きながら、アカンコウは勝利を確信していた。

 

 

アカンコウ「勝てる!! 今日こそは勝てるぞ!! ウップ」

 

 

突然変な声を出したアカンコウにクジャクは慌てて尋ねた。

 

クジャク「ど、ど、どうしたんだい? え?」

 

 

アカンコウ「い、いえ。な、なんでもありません」

 

アカンコウは脂汗を流し、口を押さえながらそう返事をしたが

 

 

アカンコウ(ま、まずいな。ここにきて二日酔いが悪化してきたぞ。乗り物酔いも合わさって…うおーっ気持ち悪い!! 目が回る!!)

 

 

 

そしてそんな最悪の体調の中、アカンコウの目は焦点が合わなくなり、目の前の景色が何重にもダブって見え始めていた。

 

 

アカンコウ(ありゃ、なんだこれ? ふたりはプリキュアがプリキュア5になった。うわー!? こりゃ一体、どれが本体だ? え?)

 

 

 

ゴロリン「距離3,000…1,800…1,400…」

 

しかし、そんなこととはつゆ知らずゴロリンのカウントは刻一刻と進んで行った。

 

 

アカンコウ(上か? 下か? 右か? 左か? えぇいままよ、ど真ん中だ!!)

 

腹を決めたアカンコウは、自分の直感を信じホーク2号を突っ込ませた。

 

 

ゴロリン「1,000…500…100…ゼロ!!」

 

 

アカンコウ「あら〜下の二人が本物だったのね!!」

 

 

しかし時すでに遅く、盛大に的を外したホーク2号は凄まじい轟音と砂煙を上げて頭から地面に突っ込んだ。

 

 

 

そしてコックピットの中では激突の衝撃で椅子から放り出されたクジャクが、タンコブを作りながら愚痴っていた。

 

クジャク「なんだいなんだいこのメカは? え?」

 

 

ゴロリン「メカのせいじゃなさそうでまんねん…」

 

クジャク「は?」

 

同じく座席から放り出され引っくり返っていたゴロリンがアカンコウを指差して返事をした。

 

指差したほうを見てみると、アカンコウが下を向いて苦しそうに吐いていた。

 

 

アカンコウ「おぇ〜。自棄酒は体によくないようで…」

 

 

クジャク「バカー!!!!」

 

 

 

 

 

インフェルノ「え? 何々? あっ、メカのこと忘れてた」

 

 

突然地面に突っ込んできたタカ型メカの起こした轟音と砂煙りを見て、私はあいつらのことを思い出した。

 

 

右腕に絡まっていたロープを、燃え上がらせた左手のチョップで焼き切ると、両手を大きく振りかぶり炎の塊を投げつけた。

 

インフェルノ「プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

 

 

 

コキュートス「うっとおしい!! 邪魔よ!! プリキュア・コキュートス・ガトリング!!」

 

コキュートスもまた、目の前のメカに苛立ちをぶつけるかのように大型ガトリングガンに変化した右腕から、猛烈な勢いで氷の弾丸を連射した。

 

 

 

私とコキュートスの必殺技を同時に食らったタカ型メカは地面に激突した時のダメージと相まって、大爆発を起こして木っ端微塵に吹っ飛んだ。

 

 

 

それを見届けると、コキュートスはこちらに向き直ってきた。

 

コキュートス「これで邪魔者はいなくなったわ。今度こそあなたを殺す!! この右腕の仇を取ってやる!!」

 

しかし、凄まじい殺気をむき出しにするコキュートスとは裏腹に私は冷めたものだった。

 

 

インフェルノ「ふん、勝手にしなさいな。私にはあいつを倒した以上もうここにいる理由はないわ」

 

コキュートス「ふざけるな!!」

 

 

私のその態度にコキュートスは凄まじい勢いで襲いかかってきたが、私はその直線的な突進を軽くいなすと火の玉になって飛び去った。

 

 

 

コキュートス「逃げるな!! 戻ってこい!! インフェルノー!! ちくしょう!! ちくしょう!!」

 

 

私に対する憎悪をむき出しにするコキュートスを見て、私は複雑な思いに駆られた。

 

 

インフェルノ(復讐しか頭にないって、あんなにみっともないものなんだな…。でも…それでも私は…)

 

 

 

 

 

翌日 ネローベ学園

 

 

 

美里「雪菜どう? インターネットで調べたんだけど、リハビリにはこういうマッサージもいいんだって」

 

 

私は雪菜の右腕を軽く揉みながらそう尋ねた。

 

 

 

雪菜「ありがとう美里。あなたが友達で本当によかったわ」

 

雪菜は、美里が友達であることに心から感謝していた。

 

もし彼女がいなかったら、空元気すら出なかったとは自分でも思っている。

 

雪菜(美里…あなたには本当のことを言いたい…。でも私が復讐をするなんて言ったら、きっとあなたは私の力になろうとする…。あなたをそんなことには付き合わせられない…)

 

 

 

美里「な〜に。私だって雪菜が友達でよかったよ。辛かった時支えになる人がいるって本当にありがたいからね」

 

美里(でも私は雪菜の夢を、自分の支えを自分で壊した…。せめて雪菜とは生きてる間はずっと友達でいたい…)

 

 

 

久美「やっぱり仲いいわよね。あの二人」

 

理香「本当。気のおけない親友の典型って感じ。ちょっと妬いちゃうなぁ」

 

 

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー)第12話に続く。

 

 

 

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