プリキュアR   作:k-suke

12 / 22
第12話「R達の絆」

 

 

オーエエドー市近郊 タテハマ港埠頭

 

 

ここは、海外からの貨物も多く入ってくる国内最大級の港であり、船客ターミナルとしても最大級の日本有数の港である。

 

 

ここに大きな荷物を持った三獣士が決意を固めた表情でいた。

 

 

クジャク「こうして海を眺めているだけだというのに、昨日とはまるで景色が違って見えるねぇ」

 

アカンコウ「ええ。今日からは全てが違いますからね、今日からは」

 

 

その呟きとともにアカンコウは胸ポケットから一枚のチケットを取り出した。

 

 

アカンコウ「本土をはるか148キロ海上にあるというイカスダンダル島。そこの名物あらゆる疲れを癒すというコス・モクリン温泉宿泊及び旅行チケット。ティッシュペーパーでももらえればいいやと思って引いた商店街の福引で、特賞のこのチケットを当てた幸運に、俺たちはこれからの人生を賭けた!!」

 

魂の叫びととともにアカンコウはそのチケットを大切そうに握りしめた。

 

 

アカンコウ「プリキュアと初めて戦って以来、連戦連敗を重ね続け、やっとギリギリまで追い詰めたと思ったら、あろうことか二人になったプリキュアに二人掛かりでボコボコにされて連敗記録を更新するんだもんな、おい」

 

クジャク達もまた今にも泣き出しそうな顔をして、うつむいていた。

 

 

アカンコウ「もう限界だ。ゆっくりと温泉につかり、赤茶けてボロボロになった心を癒し、再び元の青く清い心を取り戻し、これからいかに生きていくべきかを見つめ直し再出発だ」

 

 

そんな時、港にアナウンスが響いた。

 

 

『イカスダンダル島行きフェリー、ヤマモト号は間もなく出航いたします。ご乗船のお客様はお急ぎください』

 

 

クジャク「さぁ、急ぎましょう」

 

ゴロリン「おう」

 

 

三人は急いで乗船場に行き、フェリーに飛び乗った。

 

 

汽笛の音とともにフェリーヤマモト号は出航し、甲板でアカンコウは遠ざかる陸地を見てしみじみと感じていた。

 

 

アカンコウ「さらばオーエエドー市。さらばプリキュア。さらば戦いの日々よ」

 

 

アカンコウ「さらば…さらば青春!!」

 

 

三獣士を乗せたフェリーはそのまま水平線の彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市 ゲームセンター

 

 

『You Lose』

 

 

私の目の前の画面には、敗北を示す表示がデカデカと出ていた。

 

 

美里「はぁ…」

 

何かの気分転換にと思って久しぶりにやった「バーチャルストリートIX」だが、全然身が入らなかった。

 

 

 

 

美里「私…一体どうしたらいいのかな…」

 

 

雪菜に対する償い、一番いい方法は自分のことを正直に話して謝罪することである。

 

でもそれをしてしまえば、私は雪菜との友情は失うし復讐を続けることだってできなくなる。

 

 

なんやかんやで結局自分のことしか頭にない自分が情けなく、恥ずかしかった。

 

 

美里(死んでお詫びをって言うのも、ただの自己満足なら…私にできることは…)

 

 

この前の戦いでコキュートスに言われたことは、さらに私を悩ませていた。

 

 

あの時はかなりカッとなったが、落ち着いてよくよく考えてみれば彼女が怒るのは無理もない。

 

私が死んだって、何も元どおりにならない以上は結局ただの自己満足でしかないのである。

 

 

美里(このままのうのうと生き続けることも死ぬこともできないなら…)

 

 

一体どこに向かえばいいのか、私はどうなっていってしまうのか。答えの出ない問いかけを自分の中で続けていた。

 

 

店員「あの…終わったならどいてください」

 

 

私は話しかけられた声にはっとしてあたりを見回すと、私の後ろには列ができていた。

 

美里「えっ? あっ、すいません!!」

 

 

私は慌てて席を立つと、ゲームセンター内で楽しそうに遊んでいる人たちが目に入った。

 

 

美里(みんな楽しそう…あれを私は奪っていた…)

 

 

私は雪菜の夢や未来を奪ったが、それまでにも多くの人たちの大切な物を壊していた。

 

 

そのうちの一人がおそらくあの子、キュア・コキュートスなのだろう。

 

 

因果応報とはこういうことかと私は痛感していた。

 

 

美里(でも、きっと大神獣は私の家族を殺したことに心なんて痛めていない。絶対に倒す!! あいつだけは!!)

 

 

それでも、大神獣に対する復讐の炎は燻ることもなく燃え続けていた。

 

メル(メルはどうしたらいいメル…美里…)

 

 

こんなことに巻き込んでしまったことはメルも自覚しており、一体どうしたらいいかをずっと悩み続けていた。

 

 

 

 

叶家

 

 

雪菜「…29…30っと。ふうっだいぶ動かせるようになったわ」

 

 

ハンドグリップを使ったリハビリを雪菜は部屋で行っていた。

 

 

今使っている物は子供用の非常に軽いやつであり、利き腕でない左手でも簡単に動かせる物であるが、まだまだ右手では難儀するレベルである。

 

 

ミプ「そうやってリハビリを繰り返していれば、いつかは元どおりに動くミプ?」

 

懸命にリハビリに励む雪菜を見て、ミプがそう尋ねた。

 

 

雪菜「…普通に生活するぐらいには回復するって言われてるけどね。前みたいにピアノを引くのは無理。指を細かく動かせないから…」

 

雪菜は暗い声で悲しそうに告げた。

 

 

今でも右手で物をつかむ際は、かなり神経を集中させねばならず、物を持っている感触もかなり鈍い。

 

そこそこ回復してきているとはいえ、やはり限界はあるらしい。

 

 

雪菜「でもリハビリのいい目標はあるから大丈夫。右手が少しでも動くようになれば、あいつとも戦いやすいし。体の方ももう少し鍛えないとね」

 

 

雪菜(インフェルノを倒しても、私の腕は戻らない…そんなことはわかってる…でも、だからと言ってあいつが許せるわけじゃない…)

 

 

暗い瞳で、明るく語られたその言葉にミプは涙が出そうだった。

 

 

プリキュア同士で争い合うなど、本来は起きてはならないことである。

 

一体どうしてこんなことになったのかと、ミプも悩んでいた。

 

 

ミプ(この子をプリキュアに選んだのが間違いだったミプ? インフェルノやメルと話ができる機会があれば…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

 

(殺せー!! あいつは化け物だ!!)

 

 

(何をしてくるかわからんぞ!!)

 

 

(これだけの数でかかれば、いくらあいつでも)

 

 

 

 

 

待って、私が何をしたの? 私はみんなの為に、みんなの為を思って

 

 

 

 

(お前は危険すぎる。みんな怖いんだよ、お前が)

 

 

 

 

やめて!! 私は何もしない。誰も傷つけないから!!

 

 

 

 

(信用できるか!!)

 

 

(そうでなくてもお前の機嫌を取りながら暮らすなんてごめんだ!!)

 

 

 

そんな!? 私は、私はそんなことを望まない!!

 

 

(黙れ!! 死ね!!)

 

 

ああーっ!!!!!!

 

 

 

 

「ふっ夢か… 忌々しい頃を思い出させる」

 

 

 

 

 

 

 

 

ネローベ学園

 

 

 

美里・雪菜「「はぁ〜」」

 

昼休みに中庭で食事をしている最中、私と雪菜は大きなため息をついていた。

 

 

理香「どうしたの美里? 大きなため息なんかついちゃって」

 

久美「そうよ。雪菜はともかく美里が悩むなんて珍しいわね」

 

 

美里「あんたらね…」

 

 

雪菜「まあまあ。それよりどうしたの? 悩みがあるなら話してよ」

 

 

雪菜が心配そうにそう尋ねてきたが

 

 

美里「いいわ。話せるようなことじゃないし、話しても仕方ないから…。雪菜は何を悩んでるの?」

 

話せるはずもなく、逆に雪菜に質問した。

 

 

雪菜「…私もよ。話せるようなことじゃないし、話しても仕方ないわ…」

 

 

どこか遠い目をしながら雪菜もそう返事をした。

 

 

 

美里(ごめん雪菜。どんなに元気があるように見えても、何もかも無くしちゃったんだもん。辛いに決まってるよね…。全部私のせいなのに…ごめん…)

 

 

 

雪菜(私には家族がいる…無くしたのは自分の夢だけ…確かにショックは大きいけど、美里はもっと辛かったんだろうな…。私のことでこれ以上心配はさせられない…。やっぱり言えないよね…)

 

 

美里・雪菜「「はぁ〜…」」

 

 

私たちは揃って大きなため息をもう一度ついた。

 

 

 

 

 

 

同時刻  イカスダンダル島 コス・モクリン温泉

 

 

 

 

アカンコウ「すったもんだ、あんなもんだ、どんなもんだ〜♪と。俺たちゃ天才だ〜♪」

 

アカンコウが上機嫌でアカペラで歌を歌っていた。

 

 

クジャク「よっいいよ〜アカンコウ」

 

ゴロリン「ささっクジャク様。もう一杯」

 

そんなアカンコウにクジャクは拍手を送り、ゴロリンはお酌をしていた。

 

 

温泉につかり、地元の名物に舌鼓をうち、酒も入った三人は極楽気分であった。

 

 

クジャク「いや〜昔社員旅行でこんなことしてた時はくだらない時間だなんて思ってたけど、楽しいもんだね〜」

 

ゴロリン「そうでおま。周りの目を気にして羽目を外せなかったけど、気兼ねなく楽しめるのはいいもんでんなぁ。ガハガハ」

 

 

アカンコウ「ほんとほんと。こうやって仲間内で楽しく食事したり酒飲んだりってこんなに楽しかったのね。もう少し前からやってりゃよかった」

 

 

三人は、一度どん底まで落ちた時のことを思い出していた。

 

 

あの頃は、名声や社会的な地位こそそれなりにあったが、どこか孤独だった。

 

 

今にして思えば、一人でもこうして笑いあえる仲間がいればあんなことにならなかったのではと思い始めていた。

 

 

クジャク「まぁいいさ。過去は過去、これからはこれからだ。人生を明るく楽しくいっちゃおう〜」

 

 

アカンコウ・ゴロリン「「さんせ〜い!!」」

 

 

過去は過去。今こうして笑いあえる仲間がいる。そのことが三人の支えになっていた。

 

 

 

そんな時、まだ昼間だというのに部屋が真っ暗になった。

 

 

クジャク「ん? なんだいこれは?」

 

アカンコウ「まさか…」

 

 

冷や汗を流し始めた三人の前にモヤのようなものが現れ、不気味な声が響いたのはその直後だった。

 

大神獣「三獣士よ。こんなところで何をしている?」

 

 

明らかに怒りを込められた声を聞いた三人は慌てて跪いた。

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「は、ははーっ!!」」」

 

 

大神獣「三獣士よ。まさかとは思うが、我を見限る気ではないな?」

 

 

図星をさされた三獣士は、生きる心地がしなかった。

 

 

クジャク「い、いえ…決してそのようなことは…」

 

クジャクは見苦しいと思いつつも、なんとか言い訳を探していた。

 

 

 

 

次の瞬間、モヤの中で何かが光ったかと思うと、机の上に並べられた皿が次々と爆発するかのように割れた。

 

 

アカンコウ「ひいっ!!」

 

 

 

大神獣「覚えておけ。我に逆らえばどうなるか。そうなりたくなければブラックエナジーを収集せよ」

 

 

その言葉とともにモヤは晴れ、部屋も明るくなった。

 

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「はぁ〜っ!!」」」

 

それを確認すると、三人は顔を見合わせ盛大にため息をついた。

 

 

クジャク「な〜んでこんなことになっちゃったんだろうね〜」

 

アカンコウ「ホントですね〜」

 

ゴロリン「もう今更戦う気もなくなってきたでまんねん」

 

 

はっきり言って、こうして三人で過ごしてきた結果、復讐の思いはかなり薄れてきてしまっていた。

 

 

どん底まで落ちたことで世界に対する恨み言はあったが、同じ境遇の仲間を得て、それなりのラインまで浮上できたこともあり、もう今更という気持ちの方が強くなってきていた。

 

 

 

アカンコウ「はぁ〜。でも、逆らったら後が怖いですよ」

 

 

先ほど大神獣が見せた力の一端に、アカンコウはかなり怯えていた。

 

ベースアニマルを作成している上、科学者でもある彼は、そのエネルギーである闇の力が既存のどんなエネルギーよりも強大で危険な代物であるかを誰よりも理解していた。

 

ゴロリン「しゃあけど、この調子だと復活させた後もこき使われそうでまんねん。いやそれどころか、そのまま切り捨てられそうでおます…」

 

 

ゴロリンの言っていることは憶測だが、そうとも言い切れない予感が三人にはしていた。

 

 

どん底に落ちた境遇だったからこそ、世界を変えられるなどという甘い言葉についすがってしまったが、冷静に考えればそんな上手い話がないことぐらいはわかる。

 

 

完全に行き詰ってしまった感があり、三獣士はかなり落ち込んでいた。

 

 

 

クジャク「じゃあさ。こういうのはどうだい。お前たち耳をお貸し」

 

しばらく考えた後、クジャクが何か思いついたようにそう言うと、ひそひそと話し始めた。

 

アカンコウ・ゴロリン「「ふんふん。ふん」」

 

 

クジャクの話に耳を傾けていた二人も、話を聞くうちに目に希望の灯が灯り始めた。

 

 

クジャク「で、どうだい?」

 

 

アカンコウ「クジャク様、ナイスアイディア!!」

 

ゴロリン「それで行こうでまんねん!!」

 

 

 

クジャク「よ〜し、直ちに引き返して出撃準備」

 

アカンコウ・ゴロリン「「イエッサー!!」」

 

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市 市民病院

 

 

 

今日は雪菜の定期検診の日であり、私も付き合っていた。

 

いろいろリハビリで手伝えることがないかお医者さんに聞こうと思ってきたのだ。

 

 

医者「うん。握力も少しずつだけど戻ってきてるね。だけどあまり無理しちゃダメだよ」

 

 

雪菜「はい、ありがとうございます」

 

 

医者「お友達のおかげもあるかな。マッサージをするっていうのはなかなかいいことなんだよ」

 

 

美里「いえそんな…。こんなことしかできないなんて私は全然…」

 

 

雪菜「謙遜しないでよ。ありがとう美里」

 

笑顔でそう言う雪菜の顔が私には眩しすぎた。

 

 

全部私のせいだ、私はあなたの友達なんて名乗れない。そう大声で叫びたかった。

 

それをしないことがどれだけ卑怯かわかっていながら…

 

 

 

 

 

雪菜(美里にまでこんなに迷惑をかけて…キュア・インフェルノ、絶対に許さない!!)

 

俯いている美里を見ながら、雪菜は一人さらに決意を新たにしていた。

 

 

インフェルノが多くの人を傷つけていたことは知っていたが、こうして自分が当事者になるとそれがどういうことかよくわかった。

 

 

プリキュアになって以来すでに二度戦っているが、彼女自身はできるだけ周りを傷つけないように気を使っていた。

 

 

幸いにして、コキュートスの武装は小回りがきく分威力が低いため周辺への影響が出にくいのは雪菜にとってもありがたかった。

 

 

雪菜(でも、私自身がもう少し強くならないとインフェルノには勝てない…。あいつがどこの誰かさえわかれば…)

 

 

 

 

 

そんなこんなで混雑していた病院の検診が終わった頃には、すでに日が沈みかけていた。

 

 

美里「じゃあね雪菜。また明日ね」

 

雪菜「今日はありがとう美里。じゃあね」

 

 

私は雪菜の家の前まで鞄を持っていった。雪菜は遠慮したが、無理はしないようにとのお医者さんの言葉を盾に半ば強引にそうしたのだ。

 

 

雪菜と別れた後の帰り道、私はぽつりと呟いた。

 

美里「また明日…か…。いつまでこんなことが言えるんだろう…」

 

 

メル「…あの…美里。思い切って本当のことをいってみたらどうメル?」

 

 

鞄の中からメルがおずおずと見るに見かねたようにそう提案してきた。

 

 

美里「うるさいなぁ…わかってるわよ。わかってるけど…」

 

 

本当はわかっている。

 

本当のことを言い、謝罪する。実に簡単で当たり前のことである。

 

でもそれをしてしまえば、私は完全に何もかも無くしてしまう。

 

いや、ただ一つ残るものがある。

 

 

復讐者、キュア・インフェルノとしての顔。あの赤い仮面が私の素顔になってしまうだけのことだ。

 

 

初めのころはそれでもいいと思っていた。何もかもなくしたと思っていたからだ。

 

でも私には友達がいた。

 

私を支えて力になってくれる友人が。

 

 

それに気づかず仮面を被り続けた結果、私はその大切なものの一つを壊してしまった。

 

あの仮面を被り続けることでどこに近づき、次にどんなものを失うのかと思うと今は怖くて仕方がなくなってきた。

 

ただ、その仮面を自分の意思で外せなくなってきているとも感じていた。

 

家族を目の前で殺されたことは今でも時々夢に見るぐらいであり、当然復讐心も消えることがない。

 

結局どっちに転んでも今の状態から抜け出せなくなっているのだ。

 

 

そうやって足りない頭で悩みながら歩いていると鞄の中のメルが震えだした。

 

必死に震えを抑えようとしていたようだったが、私には無理をしているのがバレバレだった。

 

 

美里「メル、無理しなくていいよ。さっ行こう」

 

メル「美里…これ以上美里に無理はさせられないメル…」

 

 

こいつはこいつで私のことを気遣ってくれているのはわかる。でも…

 

 

美里「無理はしてないわ。でも、戦ってる間だけは頭の中がスッキリするから」

 

 

そんな私を見て、無言のままメルはスマホに姿を変えた。

 

美里「…プリキュアマスクチェンジ!!」

 

次の瞬間、私は赤い光とともに深紅のドレスに身を包み、仮面を装着していた。

 

 

 

 

 

一方

 

 

 

 

ミプ「闇の力を感じたミプ…でも…」

 

 

スマホから変身解除したミプが雪菜に言いにくそうにそう告げた。

 

雪菜「どうしたの? 行くわよ」

 

帰宅して制服のまま夕食を終えた後、入浴をしようか宿題をしようかと考えていたところに、最優先事項が飛び込んできた雪菜はミプを急かした。

 

 

ミプ「約束してほしいミプ。インフェルノとは戦わないって。でないとミプは雪菜を変身させないミプ」

 

 

雪菜「それでいいのかしら? 私が戦わなかったらプリキュアはインフェルノだけになる。あいつの力はかなり研究されてるみたいだし、一人だけだとやられるのも時間の問題じゃないかしら? そうなったらあなただって困るんじゃないの?」

 

ミプ「う…」

 

ミプはインフェルノの戦いを陰ながら見ており、最近苦戦が多くなっているのを感じていた。

 

だからこそ、プリキュアになれる少女を探していたのだから、雪菜の言い分に反論できなかった。

 

今雪菜に戦いを完全にやめられたら、またプリキュアになってくれる少女を探さなければならない。

 

はっきり言って、先の少女に断られた後すぐに雪菜に出会えたことは奇跡に近かった。

 

そのため、何も言い返すことができないままもう一度スマホに変身した。

 

 

それを見届けると、雪菜は満足そうな笑みを浮かべ、たどたどしく鍵の形のアプリをタッチした。

 

その笑顔は、中学生の少女が浮かべるにふさわしくない、かなり醜悪なものであったが。

 

 

雪菜「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

 

青い仮面を装着して変身完了すると、そのまま青白い玉に変化しコキュートスは窓から飛び立った。

 

 

 

その光景を悲しそうな目で見上げる人物が一人いた。同居している雪菜の祖母である。

 

 

雪菜祖母「雪菜…あまり馬鹿なことをするんじゃないよ…」

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市内某所

 

 

 

巨大なカモメ型メカが市街地を悠々と飛翔し、爆撃を行っていた。

 

もっとも、できる限り人が少ないところを狙っているため人的被害は最小限に抑えられていたが。

 

 

クジャク「よ〜し、張り切っていくよ。大量にブラックエナジーを収集して大神獣を復活させるんだよ」

 

アカンコウ「お任せください。このカモメ型ベースアニマル、マーマーくんで一気にブラックエナジーを集めてみせましょう」

 

ゴロリン「そうでおま、今回で最後の出撃にする覚悟でまんねん」

 

三獣士の士気は、先だっての気分は何処へやら相当なものだった。

 

 

 

クジャク「そうさ。あんなモヤみたいに実体のないやつだからどうすることもできないけど、復活さえさせちゃえば正面切って戦うことだってできる」

 

アカンコウ「それにあいつ、私たちに頼らなきゃ復活のエネルギーもまともに集められないような奴です。復活したって神様みたいになんでもできるような奴じゃないですよ」

 

ゴロリン「それに、かなりプリキュアを恐れてるでまんねん。きっとあいつらとまともに戦うと勝てない可能性が高いでおます」

 

 

三人の考えはこうだった。

 

大神獣の力がどの程度かはわからないが、少なくとも現状では大神獣がどこにいるかもわからないから手出しすることができない。だからとりあえずブラックエナジーを収集して大神獣を復活させる。

 

ただし、そのまま傘下に加わるつもりはない。そのまま裏切るつもりなのだ。

 

大神獣と敵対しているプリキュアに自分たちが味方すれば大神獣には味方がいなくなる。

 

そのままプリキュアと一緒になって、大神獣を倒してしまえば万々歳というわけである。

 

 

クジャク「幸い、私たちのことは世間に知られてないしプリキュアも私達のことを知らない。予算さえ残しておけば後でどさくさ紛れに普通の生活に戻れるはずだ」

 

アカンコウ「その通り、人生は平凡が一番!!」

 

ゴロリン「そうでおま、わてが言うんやから間違いおまへん」

 

 

そうして、爆撃を続けていると空に光るものが見えた。

 

 

クジャク「来たぞプリキュアだ。いいかい、いつものように大神獣の機嫌を損なわないよう本気で戦いつつ、あいつをやっつけてしまわないように手加減して、こっちが怪我しないように適当にやられて無事に逃げるんだよ」

 

 

アカンコウ「考えてみれば無茶苦茶ですね、もう」

 

 

愚痴りつつも、そうせざるを得ないとアカンコウは感じていた。

 

ここで自分たちが死ぬことはもちろん、プリキュアにやられてもらっても困る。

 

いつもの通りのこととはいえ、狙ってやるとなると案外難しそうであった。

 

 

 

 

インフェルノ「あんなことして、また多くの人を傷つけてる…絶対許さない!!」

 

自分のことを棚に上げてよく言うとは自分でも思うが、連中が許せないのは本当である。

 

私はいつものように近くのビルに着地すると、いつものように憎悪を込めた目で連中をにらみつけた。

 

 

インフェルノ「地獄からの使者 キュア・インフェル…」

 

そしていつものように名乗りを上げようとした瞬間、異変が起きた。

 

 

上空で飛翔しながら爆撃をしていたカモメ型メカの動きが突然止まり、落下し始めたのだ。

 

 

インフェルノ「え? 何々?」

 

予想外のことに少し戸惑ったが、爆撃が止んだことで聞こえなかった音が聞こえて疑問は氷解した。

 

 

〜♪〜♫〜♪〜♪〜♫〜♪〜♫〜♫〜♪〜♪〜♪〜

 

 

インフェルノ「この笛の音は…そういうことか…」

 

 

背筋が凍るかと思うほどゾッとするような笛の音が聞こえてきた方に目をやると、案の定横笛を吹いている少女がいたのだった。

 

 

その青い仮面の少女はカモメ型メカが地面に墜落したのを見届けると、笛を吹くのをやめ、氷のように冷たい声で静かに名乗った。

 

 

コキュートス「絶望の果てより来りしもの キュア・コキュートス」

 

 

 

そしてコキュートスは、墜落したメカにはもう興味がないとでも言わんばかりに一瞥もせず、右腕をガトリングガンに変え、氷の弾丸を私に向けて乱射してきた。

 

 

インフェルノ「くっ!!」

 

私はとっさにビルの屋上から飛び降りて弾丸を回避し、そのままコキュートスに飛びかかった。

 

 

インフェルノ「どういうつもりよ、いきなり!!」

 

私はガトリングガンに変化したコキュートスの右腕を押さえながら詰め寄った。

 

 

コキュートス「物覚えが悪いみたいね。言ったはずよ、あなたを殺してやると!!」

 

そう叫ぶとコキュートスは私が押さえていた右腕を力任せに振り回して、私を振り払った。

 

 

 

コキュートス「アイス・エッジ!!」

 

そして、右腕を刃に変えて私に斬りかかってきた。

 

 

インフェルノ「当たるか!!」

 

コキュートスの刃は、彼女の地力不足もあるのかただ単調に振り回してきているだけであるため、かわすのは比較的容易だった。

 

しかし気は抜けない。

 

事実今彼女の振り回した右手の刃は、電柱を軽く切り倒したからだ。

 

まともに食らっていればどうなるかは推して知るべしである。

 

 

インフェルノ「ちょっとアンタ! あのメカはどうでもいいわけ!? こないだもそうだったけど放ったらかしじゃない!!」

 

私はコキュートスの攻撃をかわしながら、私に対してのみ執拗に攻撃を仕掛けてくる彼女に詰問した。

 

 

コキュートス「何度言わせるつもりよ!! 私の目的はあなたを殺すことよ。あんな奴は二の次三の次よ!!」

 

そう叫ぶと今度は右手を、棘の付いた巨大な氷の球がある瓢箪型に変えて、ロープのつながったそれを力任せに振り回してきた。

 

コキュートス「砕け散れ!! クリスタル・スター!!」

 

 

 

 

インフェルノ「ぐぅっ!!」

 

コキュートス「なんですって!!」

 

私は自分に向けて飛んできた氷球を大ダメージ覚悟で真正面から受け止めた。

 

予想よりダメージは大きかったが、自慢の氷球を受け止められたコキュートスの動揺も相当なものだったようだ。

 

 

インフェルノ「よ〜くわかったわよ。アンタはいい奴かと思ったけど、私と一緒よ。自分のことしか考えてない最低な奴よ!!」

 

私は吐き捨てるように彼女をそう評し、受け止めていた氷球を高熱で溶かし粉々に砕いた。すると

 

 

コキュートス「どの口が言う!!」

 

コキュートスは凄まじい怒声とともに飛びかかり、左手で私を殴りつけてきた。

 

 

コキュートス「あんたみたいな奴に最低なんて言われる筋合いはないわ!! このクソ女!!」

 

コキュートスに殴り倒された私はマウントポジションを取られた。

 

そのままコキュートスは怒りのままに私に拳を振り下ろしてきた。

 

 

インフェルノ「ぐはっ…!!」

 

馬乗りになられて何発も殴られた私は口の中を切ったらしく、血反吐を生まれて初めて吐いた。

 

 

それを見たコキュートスは、とどめとばかりに大きく拳を振りかぶった。

 

コキュートス「死ね!! クソ女!!」

 

 

私はその拳をなんとかかわすと、逆にコキュートスを押し倒した。

 

インフェルノ「クソで結構!! あんただって似たようなもんでしょうが!! もう迷わない、あんたは敵よ!! ぶっ殺してやる!!」

 

私は怒りのままにコキュートスを胸ぐらを掴み上げ、そう吐き捨てた。

 

 

 

コキュートス「ふざけるな!! こっちのセリフよ!!」

 

インフェルノ「それ以上しゃべるな!! 耳障りよ!!」

 

 

私たちは取っ組み合いながら地面に転がり、互いの胸ぐらを掴みあい罵り合い、殴り合っていた。

 

 

 

 

 

クジャク「おいおいおいおい。あいつら仲が悪いにもほどがあるだろう」

 

自分たちそっちのけで醜く争い合う二人のプリキュアを見て、クジャクは呆れたような声を出しつつも、内心かなり焦っていた。

 

クジャク「おい! 早く割り込むんだよ。あいつらが一人でも欠けちゃったら大神獣とやりあう時の戦力が減っちゃう!!」

 

 

アカンコウ「わかってますよ。よ〜く狙いを外して、ポチッとな」

 

 

そうしてアカンコウがスイッチを入れると、カモメ型メカのマーマーくんは口から巨大な爆弾を発射した。

 

プリキュアに当てないように狙いを外したつもりだったが、目の前で争いあっている二人は逆に当たりにくる形になってしまった。

 

 

クジャク「バカ!! なんで当てちゃうんだよ!!」

 

アカンコウ「あいつらが動き回るからですよ。こっちはちゃんと狙い外したってのにもう」

 

プリキュアに直撃した爆弾はもうもうと煙を巻き上げ、完全に視界を奪っていた。

 

ゴロリン「あきまへん。煙で前が完全に見えまへん。プリキュアを見失いました」

 

 

クジャク「え〜い。こんな程度でやられるような奴らじゃないだろうけど、怪我でもされてたら厄介だよ」

 

アカンコウ「しかし、予想外に煙が多いな。大神獣が復活しかかってるから闇のエネルギーも増大してるのかなぁ」

 

 

クジャク「いいから。早くこの煙をなんとかしな」

 

アカンコウ「わかってますって」

 

そうして、アカンコウはメカを操作して翼を大きく拡げさせ、羽ばたかせることで煙を払おうとした。

 

 

 

 

 

インフェルノ・コキュートス「「キャアアアア!!」」

 

 

キャットファイトを繰り広げていた私たちは、墜落したカモメ型メカの事など完全に頭から飛んでいた。

 

だから予想外の方向からのミサイル攻撃に全く対応できず、まともに直撃を受けて吹き飛ばされた。

 

 

 

美里「ぐうっ!!」

 

私は吹き飛ばされた先で地面に思い切り叩きつけられた。

 

美里「イタタ…って変身が解けてる!!」

 

私は慌てて周りを見渡したが、一面が爆煙で包まれており、メルの姿どころか一寸先もまともに見えなかった。

 

 

美里「ケホケホ。メル、どこにいるのよ?」

 

煙に咳き込みながらも、メルを呼ぶと

 

 

メル「ケホケホ、ここメル〜」

 

同じく咳き込むようにメルの声が聞こえた。

 

 

 

美里「そこね。動くんじゃないわよ」

 

 

私は声のした方に手探りで向かい、足元をまさぐるとぬいぐるみみたいな感触がした。

 

美里「見つけた。さっ、もう一度変身よ」

 

そう言って手を引き上げた。

 

ミプ「ミプ? あなたがキュア・インフェルノミプ?」

 

 

しかし、そこにいたのはメルとは違う妖精だった。

 

 

美里「何よアンタは? まさかコキュートスの?」

 

驚いていると、目の前の煙が少し晴れた。

 

 

そして、目の前でメルを抱えていた存在に私は絶句した。

 

 

 

 

美里「雪菜…」

 

雪菜「えっ? 美里…」

 

 

 

 

今ここにいる理由。そしてお互いの手の中にあるもの。

 

 

それらから、すべてを理解した私たちは固まってしまった。

 

 

美里「あ…あぁ…」

 

雪菜「う…あ…あ…」

 

 

 

次の瞬間、猛烈な風が巻き起こり、辺りを包んでいた煙ごと私たちは大きく吹き飛ばされた。

 

 

 

美里・雪菜「「キャアアアア!!」」

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー)第13話に続く

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。