インフェルノ「ハァアアア!!」
私は雄叫びと共に大ジャンプし、大神獣の背中に飛び乗った。
インフェルノ「コンチクショウ!! コンチクショウ!!」
私は金の鱗に覆われた大神獣の背中を、炎を纏ったパンチで殴りつけた。
何度も殴るうちに、拳には血が滲み出していたが怒りのままにひたすら殴り続けた。
にもかかわらず、大神獣にはあまりダメージになっていないようだった。
大神獣「ふん、無駄だ」
そう見下したような言葉と共に大神獣は、大きく身を翻し背中の私を振り落としにかかった。
インフェルノ「くっ、この程度で!!」
私は振り落とされまいと、手の痛みにも負けず必死に背中にしがみついていた。
コキュートス「アイス・エッジ。ヤァアアア!!」
そんな大神獣に対して、コキュートスは右手を巨大な刃に変えて切りかかった。
しかし、大神獣の体に斬りつけたその刃は鈍い音と共に跳ね返された。
コキュートス「な!?」
驚愕したのもつかの間、大神獣の振り回した角に、コキュートスも跳ね飛ばされた。
コキュートス「くそっ、これでどうよ!? プリキュア・コキュートス・ガトリング!!」
跳ね飛ばされながらもなんとか空中で体勢を整えたコキュートスは、右手を大型ガトリングガンに変化させ、猛烈な勢いで氷の弾丸を連射した。
猛烈な勢いで無数に乱射された弾丸だったが、大神獣の金色の鱗はその一切を受け付けず全弾をはじき返した。
コキュートス「なんて硬い鱗よ。まるで攻撃が効かないなんて!!」
インフェルノ「くっ限界…キャアァァァア!!」
大神獣の背中に必死にしがみついていた私だったが、振り落とそうとする大神獣の動きと血の滲んでいる手の痛みに加え、なりふり構わず連射されたコキュートスの攻撃の流れ弾を受けた結果、ついに振り落とされた。
そして、振り落とされた先にはコキュートスがおり、私達は思いっきりぶつかった。
コキュートス「えっ? キャッ!!」
インフェルノ「イタタ…」
コキュートス「やってくれるわね…」
ぶつけたところを押さえながら立ち上がり、余裕綽々といったように私達を見下ろす大神獣を睨み返すも、憎しみだけで本当に殺せるわけもなかった。
メル「一人一人でかかっても勝ち目はないメル!!」
ミプ「二人で一緒に戦うミプ!!」
腰のスマホケース共がなにやら騒いでいたが、私達は無視して別々に大神獣に挑んだ。
コキュートス「これでどうよ!! クリスタル・スター!!」
コキュートスは右腕を棘の付いた氷の球を備えた、大きな瓢箪のような形に変化させ、その氷球につながったロープを力一杯振り回し大神獣に叩きつけた。
その氷球の叩きつけられた大神獣の体は大きく陥没し凍りつき始めた。
コキュートス「どう? このまま凍りつきなさい!!」
効いている。そう判断したコキュートスはさらにダメージを与えんと、もう一度右腕の氷球を振り回そうとした。
大神獣「愚かな…身の程を知るがいい」
麒麟のような姿をした大神獣は、大地が震えるかのような遠吠えをした。
その声の迫力に一瞬怯んだコキュートスは、次の瞬間目をむいた。
先ほど陥没したはずの大神獣の鱗に覆われた皮膚は何事もなかったかのように
元の金色の輝きを取り戻していた。
コキュートス「…なんてやつよ…」
コキュートスの攻撃は決してそこまで火力があるわけではない。それでも攻撃がまるでダメージにならないことにコキュートスは悔しさまじりにそう呟いた。
大神獣「わかったか? 我は唯一にして絶対の存在。同じように妖精の力を借りていようとも、貴様らとは格が違うのだ」
インフェルノ「調子に乗ってんじゃないわよ!! そんなこと言って、一度は封印されたんでしょうが!! ならあんただって完璧ってんじゃないでしょ!!」
私は大神獣の発言の穴を突いたつもりだった。
それほどまでにとてつもない存在ならばかつて封印されるようなこともなかったはずだと。
しかし、大神獣はあざ笑うかのように告げた。
大神獣「ハッ、どこまでも愚かなものたちだ。確かに我は一度敗北した。だが我が現代まで生き延びられたのも、其奴らのおかげだ。我を封印したものたちの末路も知らずしてよくぞ吠える」
コキュートス「何よそれ? 一体何があったっていうの?」
ミプ「ミプたちと一緒に戦ってくれた人たちはとっても仲のいい友達になれたし、優しい立派な人たちだったミプ!!」
メル「そうだメル!! あの二人ならきっと幸せに暮らせたはずミプ!!」
大神獣「…何も知らずによくぞそんな口が叩ける。貴様らが力を与えた者たち、友のためだと守りたいもののためだと戦った者たちは、初めは自らのなし得たことを誇りとしていた。しかし、その者どもはやがて増長し始めた」
インフェルノ「えっ?」
大神獣「この世界があるのは自分のおかげだと。自分達は選ばれた特別な者だと。プリキュアの力を失った後もその思いだけが肥大化した」
ミプ「ミプたちがいなくなった後…そんなことに…」
大神獣「そうしていつしか、その者たちは周囲から疎んじられ孤立し、ついにはお互いすら信じられなくなり失意と孤独の中にこの世界への恨みと力を持ったことへの後悔を抱き死んでいった」
メル「…そんな、あの二人が…」
大神獣「其奴らの恨みと憎しみの念は、我のよき滋養となり現在に至るまで力を保持できる礎となったのだ。全ては人の弱き愚かな心、憎しみの心の生み出した結果だ」
大神獣のそう語る声は満足そうではありながら、どこか虚無のような悲しみを含んでいた。
大神獣「現代のプリキュアよ、お前たちはどうだ。そんな力を持ち本当に満足か? 人を超えた力の先にどんな未来を求める?」
大神獣の問いかけに私達はしばらく呆然としていた。
しかし、少なくとも私の答えは決まっていた。
インフェルノ「何度も言わせないでよ。私の求めるものはただ一つ!! あんたを殺すことよ!!」
私はそう叫ぶと右手を高く掲げ、勢い良く手刀を振り下した。
インフェルノ「ハアアア!! プリキュア・ヒート・カッター!!」
私の右手から飛んでいった半月状の炎の刃だったが、大神獣の鋭い爪に軽々と薙ぎ払われた。
大神獣「そのような矮小な力に振り回されるとはな。貴様らの苦しみ悩みそれらを永久に解き放ってやろう」
そう告げると大神獣の体は黄金色に輝き始めた。
しかしそれの眩しい光からは神々しさや美しさを微塵も感じさせず、ただ禍々しさだけが溢れていた。
そうして、大神獣は金色の光弾をその鋭い角から発射した。
コキュートス「くっ!!」
私達はそれをかろうじてかわしたが、光弾は後ろにあったマンションに着弾した。
すると、凄まじい轟音とともに砂煙を巻き上げマンションは跡形もなく倒壊した。
インフェルノ「あ…あ…」
その光景に呆気にとられていると、大神獣は全身から金色の光弾をあたり一面に雨あられと乱射してきた。
インフェルノ・コキュートス「「!!!!!!!」」
あたり一面が爆発に覆われ、視界が真っ白になる中、私達は声にならない叫びとともにボロ雑巾のように吹き飛ばされ、一瞬意識が飛んだ。
次に気がついた時、私達は地面に倒れ伏し全身の痛みで身動き一つ取れなかった。
必死に周りの状況を把握しようとしたが、もうもうと立ち込める砂煙にほとんど何も見えなかった。
少しして砂煙が落ち着き目を凝らして周りを見ると、そこにあったものは教科書で見た月面の写真のようだった。
あたり一面には巨大なクレーターが所狭しと存在しており、市街地だったはずのこの場所には瓦礫の山と化していた。
メル「…なんて…やつメル…」
ミプ「信じられないミプ…」
大神獣のあまりとも言える圧倒的な力に、腰のスマホケース共は弱音を吐き始めていた。
しかし私は違った。
インフェルノ「何よ、この程度で。町をぶっ壊した程度で調子に乗るな!! そんなことぐらい飽きるほどやってきたわよ!!」
私は膝がガクガクながらもなんとか立ち上がってそう言い放った。
インフェルノ「大神獣!! 私は絶対に負けない!! 何があってもあんたを倒すと誓った。倒す、絶対に! 絶対に!!」
私は呪詛のようにそう呟きながらふらつく足取りで大神獣へと向かっていった。
私の顔はこの深紅の仮面がなければ完全に狂気に彩られていただろう。
自分でもおかしくなっていることはなんとなく自覚できていた。
しかし大神獣への憎しみや恨み。それが今の私の全てだった。
コキュートス「…美里。っ!!」
そんな私を見てかどうか、コキュートスもなんとか立ち上がった。
コキュートス「インフェルノをあんたなんかに殺されてたまるもんか。こいつは私の夢を奪った。こいつを倒すことが今の私の生きる目的よ」
コキュートスもまた、必死に自分に言い聞かせるようにそう呟き大神獣へとゆっくりと向かっていった。
そんな私達を見て大神獣は呟いた。
大神獣「なるほど…貴様らも我と同じか。怒り…怨念…それが貴様達の全てか…。面白いそれが貴様達の覚悟ならば」
そう告げた次の瞬間、大神獣は鋭い牙の並んだ口をカッと開いた。
そうして開いた口の奥には、凄まじい熱量を感じさせる炎が輝いているのがボロボロの私達の目にも映った。
今の私達には防ぐ力も避ける力もほとんど残っていない。
それでも私達は復讐の怨念に突き動かされるように大神獣へと向かっていった。
「殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…」
「殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺す…殺す…殺す…殺す…殺す…殺す!…殺す!…殺す!…殺す!…殺す!!…殺す!!…殺す!!!!」
そして今まさに大神獣が口の中に蓄えた炎を吐き出さんとした時だった。
大神獣の体から光が漏れた。
次の瞬間、大神獣の体は凄まじい大爆発とともに爆煙に覆われた。
予想だにしなかった状況に、私達はようやく少し正気にかえった。
インフェルノ「えっ? 何?」
コキュートス「いったい何が?」
戸惑っていると爆煙の中からかなりの大ダメージを負った大神獣が地面に倒れ伏していた。
口の中に蓄えていた炎が誘爆でもしたのか下顎は粉々に砕け散っており、全身の至る所からどす黒い血が吹き出していた。
大神獣「なんだと…いうのだ…? これは?」
大神獣自身も突然起きた爆発が理解できていないようだった。
実はこの場の誰もが忘れかけていた理由がこれにはあった。
???
クジャク「おい!! あたり一面真っ暗なところじゃどうしようもないよ! なんとかならないのかい?」
アカンコウ「どうやら、トラッキーは大神獣の復活の為の媒体にでもされたようです。「ベース」アニマルとはよく言いました」
クジャク「感心してる場合か。ほらこれ見なよ!!」
クジャクはそばにあったサブのモニターを指差した。
そこには大神獣に苦戦し、一方的になぶられているプリキュアの姿が映っていた。
ゴロリン「まずいでまんねん。プリキュアが倒されたら、わてらはどないなりまんねん。この様子じゃわてらは用済みとして殺されてしまうでまんねん!!」
アカンコウ「わかってるって。こんなこともあろうかとこのトラッキーには最終兵器が搭載してあるのだ!!」
大慌てで心配するゴロリンをよそに、アカンコウは冷静かつ自身たっぷりに言い放った。
クジャク「おお!! さすがだね、流れ石だね、リュウセキだね〜。で、どうするんだい?」
アカンコウ「フッフッフッ、解説せねばなるまい。このトラッキーの最終兵器、それは原子核破壊爆弾だ!!」
不敵に笑ったアカンコウのセリフにクジャクとゴロリンは感心した。
ゴロリン「なんかようわからんがすごそうな兵器でおます!!」
クジャク「まったくだよ。でどんな武器だい?」
アカンコウ「はい。このトラッキーのエネルギー炉を最大出力まで上げ一種の暴走状態にします。その上でそのオーバーロード状態のエネルギーを利用して、トラッキーのボディを原子レベルで分解し、そのサイクルに周辺を巻き込んでトラッキーもろともに吹き飛ばすという必殺技です」
アカンコウの解説をふんふんと頷きながら聞いていた二人だったが、話が進むにつれてだんだんと疑問が膨らんできた。
クジャク「…ちょっとお待ち。それはさ、ややっこしそうに聞こえるけどさ、極めてシンプルに言い換えられるんじゃないのかい?」
ゴロリン「そうでおま。ものすご〜くわかりやすく説明できるんやおまへんか?」
アカンコウ「ハッハッハッ、ご察しの通りですよ」
二人の言葉にアカンコウは開き直ったように高笑いをした。
クジャク「お前ね…」
ゴロリン「まぁ今回はかまやしまへんが…」
そんなアカンコウにクジャクたちは顔をひくつかせていた。
アカンコウ「では決意も固まったところで、三人でいきましょうか。せーの」
クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「ポチッとな!!」」」
そのかけ声と共に押されたボタンにより、大神獣の核とされていたトラッキーはエネルギー炉を最大出力まで上げ一種の暴走状態となり、そのエネルギーを利用して、ボディを原子レベルで分解し始め、そのサイクルに周辺を巻き込んでもろともに吹き飛ばす……平たく言えば自爆した。
ただ、大神獣に取り込まれていた状態で自爆したことにより、彼らの予想を大きく上回る効果を得た。
もともと内部で爆発する方が威力は上がるものだが、今回はそれだけではなかった。
プリキュアの攻撃にもビクともしなかった大神獣の鱗は、体内で起きた爆発を外に放出することなく全てを内側に向けてしまい、結果相乗的に威力が増した。
強靭な鱗に覆われていた大神獣も内部からの爆発によるダメージは防ぐことができなかったのだ。
そのためこの自爆は大神獣にさえも致命傷とでもいうべきダメージを与えてしまったのだ。
インフェルノ「なんだかわからないけど、チャンスだ!!」
ボロボロになった大神獣を見て私は最後の力を振り絞って突撃した。
傷口を目掛けて、溜りたまった憎しみを全てぶつけるかのように拳を打ち下ろした。
大神獣「がぁぁぁあああ!!」
さすがにこの攻撃はかなり効いたらしく、大神獣は苦しそうな呻き声をあげていた。
その声を聞いて、私はざまあみろと言わんばかりに口元を歪めた。
私は傷口を目掛けて何発も何発も拳を振り下ろし、その度に大神獣はうめき声をあげた。
インフェルノ「ハハッ、いい声ね大神獣。ざまあみなさい、私の苦しみはまだまだこんなもんじゃなかったわよ。もっとよ、もっと苦しめ!!」
私は久しぶりに心からの喜びを感じていた。
今私の手で大神獣が苦しみの声を上げている、その事実が私に麻薬にも近い快感を味わわせていた。
インフェルノ「アッハッハ!! ざまあみろ!! アッハッハ!! アーッハッハッハ!!!」
コキュートス「……美里……」
コキュートスはそんなインフェルノを呆然と見つめていた。
目の前に映る光景はあまりにも悲しく、そして醜いものでありながら、目をそらすことができなかった。
コキュートス「…あれは私の姿でもあった…このままじゃ…」
そう呟くとコキュートスは意を決したように鉤爪のついた大きなひょうたんのような形に変化させた。
コキュートス「…クリスタル・ビュート!!」
そうして発射されたロープつきの鉤爪はボロボロの大神獣の体を絡め取り、全身を凍りつかせ始めた。
それを確認したコキュートスは力任せにロープを引っ張り、大きくバランスを崩させた。
それにより背中で狂気の笑みとともに大神獣を殴り続けていたインフェルノも大きく投げ出された。
そうしてコキュートスは右手をガトリングガンに変化させた。
コキュートス「大神獣!! これ以上あなたのためにインフェルノを、美里を狂わせない!! プリキュア・コキュートス・ガトリング!!」」
コキュートスのその叫びとともに、猛烈な勢いで氷の弾丸が発射され大神獣に全弾直撃した。
その勢いもまたいつにも増して凄まじく、すでに瀕死状態だったとはいえ大神獣を蜂の巣にしてしまった。
インフェルノ「っ!! させないわよ!! 大神獣は私が倒すんだから!!」
コキュートスによって地面に投げ出された私の目には、今まさに大神獣にトドメを刺そうとしているコキュートスが映った。
今の私の生きる意味、大神獣が他人の手で倒される。
そう思うと一瞬で頭に血が上った。
インフェルノ「邪魔するな!! そこをどきなさい!!」
私はコキュートスを突き飛ばすと、両腕を大きく振りかぶった。
インフェルノ「これで…終わりよ!! プリキュア・インフェルノ・バースト!!」
私はすべての怒りをぶつけるかのように全ての力を両腕に込めて、最大級の火炎の塊を投げつけた。
その直撃を受けた大神獣は一瞬で火だるまになった。
その業火の中、大神獣の高笑いが響いた。
大神獣「ハッハッハッ!! 我が滅びぬ!! 人間どもに憎しみの心がある限り!! その種は今ここにある!! ハッハッハッ!! 我は不滅の存在大神獣だ!!」
その高笑いとともに大神獣はどす黒い煙を撒き散らし、炎の中に消えていった。
インフェルノ「…勝っ…た?」
私は肩で息をしながら、目の前の光景を確認するかのように呟いた。
そして、ほっぺたを軽くつねりこれが夢ではなかったことに確信が持てると、心の底からの歓喜の雄叫びをあげた。
かったのだが、
喜びの声を上げようとした瞬間、ついさっき突き飛ばしたコキュートスの、雪菜の姿が目に入った。
雪菜は私に突き飛ばされた拍子に腕を何かで切ったらしく、右腕から血を流していた。
その瞬間私の中の喜びが急速に薄れていった。
あれほどまでに待ち望んでいた瞬間、ようやく達成できた目標だというのに。
私は復讐を遂げることができた。しかし、雪菜は…。
それに私は今また自分勝手に雪菜を傷つけてしまった。
そう思うと後悔の念と虚しさだけが心に広がってきた。
それでも私は雪菜から目を背けることだけはしなかった。雪菜もまた私をじっと見つめていたからである。
青い仮面の奥の目には何の感情も感じられなかったことがかえって不気味だったが、決してその目から逃げる事はしたくなかったのだ。
しばらく無言のまま見つめ合っていた私達は、そのまま歩き出した。
しかし、口を開く事もなければお互いに触れる事もないまますれ違い、別々の方向へと飛び立った。
その頃
オーエエドー市郊外 雑木林の洋館
クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「バンザーイ!!」」」
この洋館で三獣士が歓喜の雄叫びをあげていた。
ゴロリン「やったでまんねん!! プリキュアが大神獣を倒してくれたでおます」
アカンコウ「思えば辛い忍耐の日々であった。しかし、我々は恐怖と屈辱の日々から解放されたんだ!!」
クジャク「いやぁ、にしてもベースアニマルを遠隔操作にしておくなんて頭脳プレーだったねぇ!!」
そう、あのトラ猫型メカのトラッキーはこれまでのメカと違って遠隔操縦であり、この洋館の地下室からリモートコントロールされていたのだ。
アカンコウ「ハッハッハッ! なにもわざわざ危険なところに出向く必要はないんですって!! やっぱり私は頭がいいなぁ」
ゴロリン「全くでまんねん。さっすが天才!!」
クジャク「うんうん。よくやったよくやった。よ〜し、今夜は飲むぞー!!」
アカンコウ・ゴロリン「「イエッサー!!」」
ついに悲願を達成した三獣士。
その歓喜に満ち溢れた大騒ぎは洋館の周辺にまで響き、夜の吹けるのも忘れいつまでも続きそうな勢いであった。
渚家
灯りもつけないまま、夜の吹けていくのも忘れ、一人膝に顔を埋めて私は座り込んでいた。
美里「……大神獣は倒した。でもなにも戻ってこない…わかってたのにな…」
私は今更ながら無くしてしまったものの多さを感じていた。
美里「……私にはもう何にもない。父さんも、母さんも、亮太も、友達も、勝ったことの喜びさえも…」
私は妙にほっぺたが冷たくなっていくのを感じていた。
美里「…もう無くしたものは戻らない…私には存在する価値もない…だったら…」
私はそう呟くと意を決したように顔をあげた。
叶家
灯りもつけないまま、夜の吹けていくのも忘れ、雪菜は勉強机に顔を埋めていた。
雪菜「美里は家族の仇を討てた…。でも私の右腕は…夢は…」
そうしていると、大神獣との決戦において、インフェルノに突き飛ばされた時の傷がズキリと痛んだ。
雪菜「…美里はこれから何をするにしても、前へ進んで行くはず。あの子は弱い子じゃない」
雪菜はそう呟くと意を決したように顔をあげた。
雪菜「私も前に進みたい…でも、そのためには…」
プリキュア