プリキュアR   作:k-suke

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第20話「Hな時間」

 

 

弁当屋 おおもりご飯

 

 

 

ゆうこ「それじゃあ、渚さんって日本中を旅して回ってるんですか?」

 

美里「そっ。ちょっと思うところがあって、ボランティア活動しながらね。中学校を卒業する前からだからもう一年ぐらいかなぁ」

 

 

大森家で夕飯を一緒に食べながら、美里は自分の素性を簡単に説明していた。

 

美里「北は北海道、南は九州までいろんなところ行ったなぁ。旅の最中は寝袋で寝て、時々アルバイトしてお金を稼いだりしてね」

 

 

あい「で、そんな生活してたらお金がなくなって、うちの前で行き倒れてたってわけね」

 

美里「ははは… お恥ずかしい。なんせ三日は水だけだったもので…」

 

 

顔を真っ赤にした美里を見て、ゆうことあいの父親 大森たけおは優しく笑いかけた。

 

たけお「はっはっはっ。旅をするのも大変だな。しかしうちの前で人が倒れてると聞いた時にはびっくりしたよ」

 

 

それを受けて母親 大森ようこがたしなめるように続けた。

 

 

ようこ「そうよ。あなたにもしものことがあったらご家族だって悲しむでしょうに」

 

 

その言葉に、美里は表情を曇らせた。

 

 

美里「…いえ、大丈夫です。その心配だけはもうありません、から…」

 

 

その言い方に大森家の人々は何かを察したようで、それ以上のことは聞かなかった。

 

 

美里「あっ、すみません。唐突に暗くなっちゃって」

 

ゆうこ「そうですね。ご飯の時は明るく楽しくなくっちゃ」

 

 

 

ゆうこの言葉に、多少ギクシャクしたところは残ったものの、明るい食卓が再び繰り広げられたのだった。

 

 

 

 

 

その夜、美里はゆうこの部屋で一緒に寝ることになり、ゆうこと枕を並べて布団に入っていた。

 

 

美里「う… うう… うああ…」

 

しかし夜も更けた頃、布団に入っていた美里は突然うなされ始めた。

 

その声に、ゆうこも目が覚めてしまった。

 

 

ゆうこ「渚さん…?」

 

起き上がって横を見てみると、美里はうなされながら涙を流し始めていた。

 

 

 

美里「父さん… 母さん… 亮太… う、うわぁあああああ!!!!」

 

 

そして突如叫び声とともに、美里は飛び起きた。

 

美里「ハアハア… あっ、夢か…」

 

ゆうこ「びっ、びっくりした…」

 

美里「あっごめん。起こしちゃった?」

 

 

 

 

美里「フゥ〜… 久しぶりに見たなあの時の夢…」

 

台所でゆうこに水を一杯もらって、美里は一息ついていた。

 

 

 

ゆうこ「あの… 渚さんの家族って…?」

 

聞いてはいけないことだろうとは思っていた。

 

しかしゆうこはどうしても気になってしまったのだ。

 

 

美里「気になる?」

 

ゆうこ「あっ、いえ、言いたくなければ、その…」

 

美里「いいわ、起こしちゃったしね」

 

すると美里はポツリポツリと話し始めた。

 

 

美里「…私の家族はね、みんな殺されたんだ」

 

ゆうこ「えっ?」

 

 

美里「ある日突然押し入ってきた奴がいてね、そいつに殺されたんだ。私の眼の前でね…」

 

 

美里「私は震えてるだけでなんにもできなかった… ほんのちょっと早く手を伸ばしてれば…」

 

 

無念さのにじみ出た表情でうつむきながら語る美里に、ゆうこはうめき声を出すことすらできなかった。

 

 

美里「ねぇ、あなたは自分の家族のこと好き?」

 

ゆうこ「はっはい。好きです」

 

唐突に投げかけられた質問に、ゆうこはどもりながら答えた。

 

 

美里「じゃあ、大切にしてあげてね。あんないい人達なんだもの」

 

ゆうこ「はい!!」

 

 

美里の言葉に、ゆうこは決意も新たに力強く頷いた。

 

 

 

 

 

翌日 ぴかりヶ丘商店街

 

 

 

 

美里は、ゆうことともに町の案内を兼ねてお弁当の配達を行っていた。

 

 

美里「この町の人達、あの店のお弁当がお気に入りみたいね。みんな本当に美味しかったって言ってくれてる」

 

ゆうこ「うん。みんながご飯を食べて仲良くなっていければ、みんな幸せになれる。私の夢なんです」

 

全く迷いなく語られたゆうこの夢に、美里もまた笑顔で答えた。

 

 

美里「そっか、いい夢だね…」

 

ゆうこ「? 美里さんには夢ってないんですか? 何か理由があって旅してたんじゃないんですか?」

 

美里「ああ…まあね」

 

 

どこか影のある表情をした美里のことが気になったゆうこだったが、なんとなく何があったのかが聞きづらかった。

 

 

すると、たまたまゲームセンターの前を通りがかった時、妙にもめているような喧騒が聞こえてきた。

 

 

ゆうこ「ん? 何かあったのかな?」

 

なんとなく中をのぞいてみて、ゆうこは目を見開いた。

 

 

ゆうこ「めぐみちゃん?」

 

中ではめぐみが高校生ぐらいの男子と言い争いをしていたのだ。

 

美里「友達?」

 

ゆうこ「あ、はい。でもどうしたんだろう、めぐみちゃん喧嘩なんて…」

 

やむなくゆうこはゲームセンターに飛び込んでいき、美里も多少の逡巡があったが後を追っていった。

 

 

 

めぐみ「だから、みんなずっと順番で並んでたんですよ。きちんとルールを守って…」

 

「ウルセェな。ルールなんか知るかよ。俺は強いんだからいいんだよ」

 

めぐみ「そんなめちゃくちゃな理屈が通るわけが…」

 

ふてぶてしい態度で格闘ゲームの対戦台に座っていた男子に、めぐみが必死に訴えていたが、その男性はどこ吹く風といったようだった。

 

 

 

 

 

ゆうこ「めぐみちゃん、どうしたの?」

 

めぐみ「あっ、ゆうゆう。あのね、ノート買いに近くにきてたんだけど、この子が泣きながら出てきたからどうしたのかって聞いたら…」

 

そばにいた半泣き状態の小学生の男の子を指差して、めぐみは事情を説明しだした。

 

 

ゆうこ「…つまり、この子が順番を待ってたら突然この人が割り込んできたってこと」

 

めぐみ「そう、ちゃんと順番を守ってって言ったのに…」

 

周りのことなど知ったことかというようにゲームに興じながらその男子は、吐き捨てるように告げた。

 

「けっ、ガキが生意気に対戦台なんかに入ってくるんじゃねぇよ。ここはな、俺みたいに強い奴だけが入れる聖域なんだよ。悔しかったら俺を負かしてからあれこれ言いな」

 

 

その明らかにこちらを見下してくるような態度に、めぐみやゆうこはもちろん、ほかの客も渋い顔をしていたが、誰も彼もが苦虫を噛み潰したような顔をするだけだった。

 

「あいつ、このバーチャルストリートXのランカーだろ」

 

「悔しいけど勝てねぇよなぁ」

 

 

周りがヒソヒソとそんな話をするのを聞いて、その男子はさらに機嫌よく鼻歌交じりにゲームを続けた。

 

めぐみ「く〜っ、こうなったら」

 

そんな男子の姿を見て、めぐみは腹に据えかねたように対戦台に座ろうとしたところ、美里に止められた。

 

美里「あ〜、気持ちはわかるけどちょい待ち。あなたこのゲームの経験あるの?」

 

めぐみ「ありませんけど、やってみなくちゃわからな…」

 

 

美里「わかるの。未経験で勝てるようなゲームじゃないのよ」

 

その言葉に男子は機嫌よく答えた。

 

「へぇ〜 よくわかってんじゃん」

 

 

めぐみ「でもだからって…」

 

美里「わかってる。ねぇあなた、負けたら素直に帰る?」

 

「ああいいぜ、負けたらな」

 

 

美里「はぁ〜… しょうがない…」

 

大きくため息をつきながら、美里は対戦台に座った。

 

 

「おいおい、あんたがやんのか?」

 

美里「悪い?」

 

「いや、好きにしな。 ただしもしあんたが負けたらちょっと付き合えよ」

 

美里「いいわよ」

 

 

目の前であっさりとかわされた会話に、驚いためぐみが不安そうに話しかけた。

 

めぐみ「えっ、だ、大丈夫なんですか?」

 

 

美里「まぁ、さっきから見てたし、なんとかは… それよりめぐみちゃんだっけ。お願いがあるんだけど」

 

めぐみ「は、はい。なんですか?」

 

反射的に返事をしためぐみの前に美里の手が伸びてきた。

 

 

美里「百円貸して。最後の五円玉どっかで落としたみたいでね。正真正銘無一文なんだわ私」

 

その言葉にめぐみを始め周りの不安は一層増した。

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

「う、嘘だろ… あれを捌いて… あんなコンボ繋ぎきって…」

 

当の男子の前のモニターには、PERFECTの文字とともにYOU LOSEの表示が浮かんでおり、それを見つめながら茫然自失の状態に陥っていた。

 

「す、スッゲェ…」

 

「一ラウンドは防戦一方だったけど、第二ラウンドは立場逆転。最後はパーフェクト勝ち…」

 

 

周りも美里の実力に唖然としており、絞り出すようにそうつぶやいていた。

 

美里「ふぅ〜… 一年ぶりだったから勘がだいぶ鈍ってたな。でもまぁなんとかなったか…」

 

肩をぐるぐると回しながら、大きく息を吐き出すと、真っ白になっている男子に美里は元気よく告げた。

 

 

美里「じゃ、自分だけじゃなくて、みんなで楽しく遊んでね。そうやって楽しめるうちが対戦なんて花だよ」

 

その美里の言葉に、ゲームセンター内に大歓声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大注目を浴びてしまったゲームセンターからなんとか逃げ出し、めぐみともにお弁当の配達の続きを終えると、めぐみが改めて美里に話しかけた。

 

 

めぐみ「でもすごかったですね、さっきの。 ほとんどゲームのこと知らない私でもわかりましたよ」

 

美里「まぁ、昔取った杵柄ってやつかな。中学の頃は楽しくゲームができた頃もあったし…」

 

 

暗い影のある顔つきをした美里を見て、その素性を聞いていたゆうこが話題を強引に切り替えた。

 

ゆうこ「あっそうだ美里さん。さっきの話ですけど、美里さんの夢ってなんです?」

 

 

美里「私の夢か… 大したもんじゃないけど、人が誰とも憎みあわないで暮らせる世界ってね…」

 

それを聞いてめぐみは興奮気味に美里の手を握った。

 

 

めぐみ「すごい夢じゃないですか。私も世界を大きな愛で包みたいってずっと子供の頃から思ってるんです。 一緒に頑張りましょう、幸せハピネスですよ!!」

 

 

めぐみのキラキラした目とともに語られた夢に、美里は多少眩しそうに目をそらした。

 

 

美里「…いや、私の場合は… そんな綺麗な動機じゃないんだけどね…」

 

 

ゆうこ「?」

 

 

 

 

そんなこんなで三人で堤防を歩いていると、柔道着を着てランニングをしている少年が声をかけてきた。

 

 

誠司「めぐみ!! 大森も… ん? その人は?」

 

ゆうこ「あっ、相楽君。紹介するね、この人昨日からうちにアルバイトで入った…」

 

美里「渚 美里です。よろしくね」

 

誠司「ああ、俺相楽 誠司って言います。この二人とは昔からの知り合いで…」

 

めぐみ「私のお隣さんなんです」

 

 

めぐみと誠司を見比べた美里は、何気なく尋ねた。

 

美里「ふ〜ん。彼氏?」

 

めぐみ・誠司「「違います!!!」」

 

 

真っ赤になって否定した二人を見て、美里は微笑ましく笑い、ゆうこは美里に耳打ちした。

 

 

ゆうこ(まだまだ仲のいい幼なじみってところですが、この二人はじっくりと見守ってあげたいんです)

 

 

それを聞いて、美里は多少顔が曇り遠い目をして空を見上げた。

 

美里「幼なじみ…か…」

 

 

 

めぐみ「あの…どうかしましたか?」

 

うっすらと光る目頭をこすりながら、美里は無理やりにっこりと笑った。

 

美里「いえ、ね。ちょっと昔のこと思い出しちゃって…」

 

 

 

 

すると、市街地の方で爆発するような音がした。

 

美里「何? 爆発!?」

 

 

 

そして同時にめぐみ達の持っていたキュアラインに連絡が入った。

 

 

いおな『めぐみ! ゆうこ! またサイアークが出たの!! 私とひめは先に行ってるからすぐに来て!!』

 

 

めぐみ「わかった!! …って」

 

美里「ん? どうかしたの?」

 

 

ゆうこ「すいません。私達急用が…」

 

美里「私も行くよ。何か事故なら手伝うからさ」

 

 

めぐみ「そ、それはその… えっと…」

 

どう説明したらいいか目を泳がせながら考えていためぐみだったが、突如起きた地響きでその考えは中断された。

 

 

美里「何? 今度は地震?」

 

誠司「いや、これは!!」

 

 

「サイアーク!!!」

 

 

サイアークの大群が四人の前に降り立ったのはその直後だった。

 

 

 

 

美里「な、なんなのよこいつら!?」

 

誠司「何って… サイアークですよ!!」

 

 

美里「さ、さいあく?」

 

誠司「とにかく逃げて!! めぐみ、大森!!」

 

 

誠司の呼びかけに、めぐみとゆうこも止むを得ないと頷き合った。

 

ゆうこ「めぐみちゃん!!」

 

めぐみ「うん、緊急事態だよ!!」

 

 

そして、変身アイテムプリチェンミラーを取り出し、プリカードをセットした。

 

めぐみ・ゆうこ「「プリキュア!! くるりんミラーチェンジ!!」」

 

 

その掛け声とともにまばゆい光が溢れ出し二人を包み込むと、変身完了していた。

 

 

 

美里「なっ、プリキュア!? どうして!?」

 

 

目の前の光景に絶句している美里をよそに、ラブリーとハニーはサイアークの大群に突っ込んでいった。

 

 

ラブリー・ハニー「「ハァアアア!!!」」

 

 

誠司「危険です。早くこっちに!!」

 

美里「えっ!? うん!!」

 

誠司の言葉に、美里はわかりきっているというように避難した。

 

 

 

堤防の影に隠れて、誠司は美里に事情を説明していた。

 

 

誠司「驚いたかもしれませんけど、あいつらプリキュアなんです。このぴかりが丘を守ってて…」

 

美里「えっ!? この町を守ってるの!? プリキュアが!?」

 

 

誠司「いや、驚くところそこですか? そりゃプリキュアは正義の味方なんだから、そんなことは当たり前じゃ…」

 

美里「正義の味方!?」

 

誠司「は、はい。この町だけじゃなくて、世界中で幻影帝国っていう悪い奴らと戦ってて…」

 

 

美里「な、なにそれ… そんな話聞いたことが…」

 

 

 

 

そんな会話をしている間にも、サイアークは次々とラブリーとハニーに倒されていっていたが、さすがにきついようで二人とも肩で息をしていた。

 

ラブリー「くっ!! プリンセス達のことも気になるのに…」

 

ハニー「焦っちゃダメ。まずは目の前のことに集中しないと…」

 

 

さっき連絡があったプリンセスやフォーチュンの方も気がかりだったが、この状況では助けにも行けない。

 

とりあえず目の前の敵を倒すことに集中しようとした二人だったが、そこに最悪の展開が訪れた。

 

 

 

「キュア・ラブリー、そしてキュア・ハニーか。おとなしくしてもらおうか」

 

 

その言葉に振り向くと、軍人風の服装をした大柄の男が空中に浮かんでいた。

 

ラブリー「オレスキー!!」

 

オレスキー「いかにも。 それよりもこの二人がどうなってもいいのかな」

 

その言葉とともに降り立ったサイアークの両手には、傷だらけになったフォーチュンとプリンセスが握られていた。

 

 

フォーチュン「くっ、離しなさい…」

 

プリンセス「ラブリー、ハニー、ごめん…」

 

 

ラブリー「プリンセス!! フォーチュン!! 二人に何をしたの!?」

 

オレスキー「ハッハッハッ!! 決まっている。イカした俺様のナイスな作戦でこいつらを叩きのめしたのだ。さぁお前たちもおとなしくしてもらおうか」

 

フォーチュン「よくも偉そうに…」

 

プリンセス「あんな卑怯な手を使ってよく言うよ…」

 

 

憎々しげに歯噛みをしながらオレスキーを睨みつけたフォーチュンとプリンセスだったが、当のオレスキーはどこ吹く風といったところだった。

 

 

オレスキー「何を言うか!! ナンバーワンである俺様は、どんな手を使っても勝たねばならない。なぜならばオレ様がナンバーワンでなければならないからだ!!」

 

ハニー「言ってることめちゃくちゃじゃない!!」

 

 

オレスキー「うるさい!! いけサイアーク!!」

 

支離滅裂なことを口走るオレスキーに憤慨したラブリーとハニーだが、プリンセスとフォーチュンが人質になっている状況ではどうすることもできず、一方的に攻撃を受ける羽目になった。

 

 

 

ラブリー・ハニー「「きゃあああ!!!」」

 

 

 

仲間たちをかばって一方的に攻撃を受けるラブリーとハニーを見て、美里は目を丸くしていた。

 

美里「あの子たち… あのプリキュアをかばってるの!?」

 

誠司「当たり前ですって!! プリキュア同士は仲間で、助け合いじゃないですか!!」

 

 

美里「うっそ〜!?」

 

 

その言葉は美里にはあまりにも受け入れがたいものであった。

 

昔の自分自身の蒔いた種とはいえ、プリキュアが正義の味方として認識され、お互いに助け合うということがあまりにも異常な光景に写っていた。

 

 

 

 

 

ぐらさん「や、ヤベェぜ。あのままじゃ…」

 

リボン「どうすればいいんですの?」

 

そんな中飛んできたリボンとぐらさんが、どうしたらいいかわからないといったように、声を上げた。

 

 

誠司「リボン、ぐらさんも!!」

 

美里「えっ? あなたにもこの妖精が見えるの?」

 

美里(妖精が見えるのは子供の頃に妖精の光を浴びたことのある人間だけで、今じゃ数えるほどしかいないはず…)

 

 

 

 

誠司「見えますってば!! それより一体何があったんだ!! フォーチュンとプリンセスがやられるなんて」

 

 

リボン「そ、それが、オレスキーのやつがこのメルって妖精を人質に取っていて…」

 

ぐらさん「そいつはフォーチュンが助けたんだけど、代わりにあの二人が…」

 

そう言って、リボンとぐらさんは背中に背負っている怪我をしたぬいぐるみのような妖精を見せた。

 

美里「!!! メル!!」

 

 

誠司「そいつ気絶してるのか。くそっ、汚い真似を…」

 

舌打ちをしそうな顔とともに、メルの手当をしようと手を伸ばした誠司だったが、それより一瞬早く美里がひったくった。

 

 

美里「ええい!! 起きろこのバカ!!!」

 

なんと美里は罵声とともに往復ビンタを浴びせ、無理やりメルを叩き起こした。

 

メル「い、いたた… み、美里…!?」

 

美里「起きた!? じゃあ早くしなさい、このグズが!!」

 

 

 

誠司「お、おいいくらなんでも乱暴すぎ…」

 

戸惑う誠司をよそに、美里はガクガクとメルを揺すっていた。

 

 

メル「で、でも… 今更美里には頼れな…」

 

美里「この状況で知らんぷりできるわきゃないでしょ!! 早くしろっての!!」

 

ぐらさん「知らんぷりって…」

 

リボン「まさか…」

 

 

 

 

確かに美里の言う通り、ハピネスチャージプリキュアは今サイアークに一方的にやられており、もはや時間の問題といった感じであった。

 

 

その事を理解したメルは観念したようにスマホのような形に姿を変えた。

 

美里はそれを掴むと、大きく深呼吸をひとつして、鍵の形のアプリをタッチした。

 

 

 

美里「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

 

 

 

 

オレスキー「さぁフィニッシュだ!! ハピネスチャージプリキュアはこの俺様が打ち取るのだ!!」

 

 

ラブリー「くっ…」

 

ハニー「回復が間に合わない…」

 

ボロボロになり、倒れ伏してしまったラブリーとハニーにとどめをささんとサイアークが突撃していった。

 

 

近づいてくる地響きにさしもの二人も覚悟を決めた。

 

 

しかし次の瞬間、猛スピードで飛来した赤い火の玉が体当たりしたことで、サイアーク達はひっくり返ってしまい、同時にサイアークに捕まっていたフォーチュンとプリンセスの姿も火の玉に取り込まれるように消えていた。

 

 

 

ラブリー「えっ?」

 

 

疑問に思う間もなく、その火の玉は少し離れたところにフォーチュンとプリンセスを下ろすと、再びオレスキーに向かって突撃していった。

 

 

そして激突寸前、火の玉は赤いドレスをまとった少女に姿を変えた。

 

 

オレスキー「何!?」

 

「チャアアアアア!!!」

 

驚き固まってしまったオレスキーに対してその少女は、炎を纏った強烈なパンチを打ち下ろして、オレスキーを地面に叩き落とした。

 

 

オレスキー「お…のれ!! 何者だ貴様!!」

 

 

地面に叩きつけられて、かなりのダメージを負ったオレスキーだったが、気合いとともに立ち上がると、目の前の降り立った少女に怒鳴るように尋ねた。

 

 

その赤を基調にしたゴシックロリータ風の衣装を身にまとい、赤いロングヘアをなびかせた少女は、深紅のドミノマスクの奥に目を光らせながら名乗りを上げた。

 

 

 

「地獄からの使者 キュア・インフェルノ!!」

 

 

 

 

プリンセス「な、何よあの人!?」

 

フォーチュン「キュア・インフェルノ…?  まさか昨日の、コキュートスって人の仲間?」

 

ハニー「あの人…」

 

ラブリー「まさか…」

 

 

突然現れたプリキュアに、ハピネスチャージプリキュアの面々が戸惑う中、インフェルノは大きく深呼吸すると、右手を大きく振り上げた。

 

 

インフェルノ「ハアアア!! プリキュア・ヒート・カッター!!」

 

 

そのまま手刀を振り下ろすと半月状の炎の刃が飛んでいき、近くにいたサイアークを数体まとめて真っ二つに焼き切った。

 

 

オレスキー「おのれ!! いけサイアーク!!」

 

 

オレスキーの命令に、大量のサイアークがインフェルノに一斉に飛びかかり押しつぶしてしまった。

 

 

フォーチュン「ああっ!!」

 

ハニー「早く助けないと!!」

 

 

ハニーの力でなんとか回復した四人は、サイアークに押しつぶされたインフェルノを助けようと慌てて駆け寄ったが、

 

 

インフェルノ「プリキュア・ヘル・バックファイア!!!」

 

 

その叫びとともにサイアークの大群の中から、超高熱放射が行われてサイアークの大群は燃え上がるようにはねのけられた。

 

 

 

プリンセス「あぢゃぢゃあぢゃ!! 水水水!!!」

 

ラブリー「プリンセス!!」

 

もっとも、その高熱を至近距離で浴びてしまったプリンセスにも、コスチュームに炎が燃え移り、慌てふためいて川へ飛び込んでいった。

 

 

 

オレスキー「えぇいなんて奴だ!! ん?」

 

 

予想以上の火力に驚いたオレスキーだが、何度も深呼吸をしているインフェルノを見て、勝機を感じ取った。

 

 

オレスキー「もう息切れか? よし、このナンバーワンの俺様が直々に相手をしてくれるわ!!」

 

 

 

 

 

 

一方、インフェルノは胸の部分を抑えて何度も深呼吸を繰り返していた。

 

インフェルノ「お、落ち着け〜 落ち着くんだ私。興奮するなよ〜。吸って〜吐いて、吸って〜吐いて」

 

メル「み、美里。大丈夫メル?」

 

スマホに変身して腰の部分のケースに入っていたメルがそんなインフェルノを気遣うように声をかけた。

 

 

インフェルノ「大丈夫。もうあんなことがないようにしないと… っ!! 来た!!」

 

 

プリキュアに変身したことで昔のことを思い出してしまった美里は、必死に心を落ち着かせようとしていた。

 

かつて感情に流されるままに戦っていたインフェルノは、同じ過ちを繰り返すまいと必死に冷静さを保とうとしていたのだ。

 

 

 

しかし、その隙を狙ってオレスキーが攻撃を仕掛けてきた。

 

その攻撃をなんとかさばいたインフェルノは、両手足に炎を纏わせ、オレスキーと壮絶な格闘戦を繰り広げた。

 

 

ハニー「すごい…オレスキーと互角に戦ってる… って、ああっ!!」

 

インフェルノの戦闘力に感嘆していたハニーだが、起き上がってきたサイアークを見て状況を再度把握した。

 

 

ラブリー「こっちもなんとかしないと。 プリンセス、フォーチュン、いける?」

 

フォーチュン「大丈夫よ!!」

 

プリンセス「まっかせなさい!!」

 

 

ハピネスチャージプリキュアの面々は声を掛け合い、サイアークに戦いを挑んでいった。

 

 

体力も回復し人質もいなくなった今、サイアークが数を揃えようとも敵ではなく、次々と倒されていった。

 

 

 

ある程度数が減ったところで、ラブリーはプリンセスに呼びかけた。

 

ラブリー「プリンセス!! いくよ!!」

 

プリンセス「オッケーラブリー!!」

 

二人は腕のラブプリブレスを発動させて、振り上げた両手にエネルギー弾を発生させた。

 

ラブリー・プリンセス「「あなたにハッピーお届けデリバリー!! プリキュア・ツインミラクルパワーシュート!!」」

 

 

その掛け声とともに、金色のオーラをまとった中心にハートが入った円環形のエネルギー弾を二人で同時に蹴り飛ばし、残ったサイアークを一斉に浄化した。

 

 

一方、インフェルノとオレスキーの戦いも終わりを迎えようとしていた。

 

オレスキー「くそぅ… さしもの俺様でも、この攻撃は受け止められん」

 

両手両足に炎の纏ったインフェルノの攻撃は、オレスキーでも避けるしかなく、どうしても動きに無駄ができる。

 

そのため少しずつだが押されていっていたのだ。

 

 

 

インフェルノ「ダアッ!!」

 

オレスキー「ごはぁっ…!!」

 

一瞬できた隙を狙ってインフェルノの強烈なボディーブローが叩き込まれ、オレスキーはうめき声とともにうずくまってしまった。

 

 

インフェルノ「引きなさい。勝負あったわ!!」

 

そんなオレスキーに対して、引くように促したインフェルノだったが、その言葉は逆効果だった。

 

 

オレスキー「黙れ!! 俺様をなめるなぁ!!」

 

馬鹿にされたように感じたオレスキーは怒りのままにインフェルノに突撃してきた。

 

 

インフェルノ「くっ!!」

 

 

自分の言ったことが理解してもらえなかった悔しさに歯噛みしつつも、インフェルノはオレスキーの突進を押し返すようにキックを放ち、その反動を利用して後方へと飛んだ。

 

オレスキー「何!?」

 

出鼻をくじかれ体勢の崩れたオレスキーに対して、インフェルノは両手を大きく振りかぶり、赤い炎で包み込んだ。

 

インフェルノ「プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

そう叫ぶと両手の炎の塊を、叩きつけるように投げつけた。

 

 

その炎の塊はオレスキーに直撃し、凄まじい火柱を上げて大爆発し一面を火の海にした。

 

 

そしてその爆発に巻き込まれたオレスキーは、吹き飛んだ先で真っ黒焦げになっていた。

 

 

オレスキー「くそっ!! だがもう遅い、貴様らの負けだ」

 

 

本人は渋く決めたつもりだったかもしれないが、往年のコントのオチのような姿では、ギャグにしかならなかった。

 

プリンセス「そんな恰好で何言ってんだか」

 

オレスキー「ふん。すでに必要近くの負のエネルギーは集まっている。間も無くだ、この世界を恨み破滅を望むものが再びよみがえるぞ!!」

 

 

インフェルノ「!! 待ちなさい!! まさかそいつは!!」

 

だが、インフェルノが叫んだときにはすでにオレスキーは撤収していた。

 

 

 

 

 

メル「まっ、まさか… あいつらは… 大神獣を…」

 

インフェルノ「冗談じゃないわ!! そんなこと絶対に許さな… っとと、落ち着け落ち着け、深呼吸深呼吸」

 

大きく何度も深呼吸したインフェルノに対して、おずおずとラブリーが話しかけた。

 

 

ラブリー「あの〜 ちょっと取り込み中申し訳ないんですが、お話をよろしいでしょうか…」

 

インフェルノ「えっ? ああどうぞ」

 

 

ハニー「つかぬ事を尋ねますが、渚 美里さん… ですよね?」

 

インフェルノ「うん。そうだけど…」

 

 

プリンセス「? 誰それ?」

 

フォーチュン「知り合いなの?」

 

きょとんとしているプリンセスとフォーチュンに事情を説明するべくハニーとラブリーは変身を解除し、それを見たインフェルノも変身を解いた。

 

 

 

メル「イタタ… 傷が開いたメル…」

 

美里「それぐらい我慢する。えっと、ゆうこちゃんにめぐみちゃん、この二人は…」

 

痛みに呻いていたメルに冷たくそう言い放つと、美里は尋ねた。

 

 

フォーチュン「えっ? ああ」

 

話を振られたフォーチュンとプリンセスも変身を解除し、とりあえず自己紹介に入った。

 

 

いおな「氷川 いおなって言います」

 

ひめ「白雪 ひめです。初めまして」

 

 

美里「初めまして。渚 美里です。おおもりご飯で昨日からアルバイトしてます」

 

 

めぐみ「でも凄かったですね。キュア・インフェルノ」

 

いおな「かなり戦い慣れされているようですね」

 

ひめ「うん。すっごく強かった!!」

 

 

めぐみ達としては褒めたつもりだったのだが、美里は暗い表情で俯いてしまった。

 

美里「そんなにいいものじゃないけどね…」

 

 

ゆうこ「? それはどういう…」

 

 

疑問を投げかけようとしたゆうこだったが、そこにリボンとぐらさんが慌てて飛び込んできた。

 

 

リボン「大変ですわ!! この近くのオーエエドー市ってところで大量のサイアークが出現したとニュースで言ってますわ!!」

 

ぐらさん「あそこにはプリキュアがいないってブルーも言ってたぜ!! 早くしないと!! オレスキーの最後の言葉も気になるし…」

 

 

美里「オーエエドー市!!」

 

メル「ま、間違いないメル!! あいつらの目的は!!」

 

それを聞いて美里とメルは目を見開いた。

 

 

いおな「何か心当たりが!?」

 

美里「大アリなんだけど…  〜っ!!! メル!!」

 

ギリギリと歯ぎしりをし、苦悶の表情を浮かべていた美里だが覚悟を決めたようにメルを促した。

 

 

メル「ほ、本当に行くメル!?」

 

 

美里「しょうがないでしょ!! あいつがよみがえるかもしれないなら、帰るしかないでしょが!!」

 

 

いかにも苦渋の決断というような感じの美里に、メルもまた仕方がないというようにスマホのようなものに姿を変えた。

 

 

美里「あなたたちはここにいて。ゆうこちゃんもお店の手伝いがあるんでしょ」

 

それを手にした美里は、ゆうこ達に残るように言ったのだが

 

 

 

ゆうこ「い、いえそういうわけにも…」

 

めぐみ「うん!! 放っておけないよ」

 

いおな「私たちも行きます!!」

 

ひめ「大丈夫。まだまだ戦えるよ!!」

 

 

全員やる気満々であった。

 

 

 

美里「あ〜う〜いや、でもね…」

 

 

めぐみ「私たちはあなたより弱いかもしれませんけど、頑張って戦います」

 

いおな「幻影帝国に世界を好きにさせません」

 

ひめ「心配してくれなくても平気だよ」

 

ゆうこ「配達も大切だけど、何か大変なものがよみがえるようなことがあったら、みんなで美味しいご飯が食べられないじゃないですか」

 

 

 

まっすぐな目でそう語る四人に対して、美里は仕方ないというように折れた。

 

 

美里「わ、わかったわ。ただし一つだけ約束して」

 

いおな「はい。何ですか?」

 

 

美里「周りを一切気にしない。心を無にして戦いだけに集中すること。いい?」

 

 

めぐみ「? はぁ… わかりました」

 

美里の言ってることが全員イマイチ理解できないようだったが、とりあえず今はそれどころでないと変身アイテムを取り出した。

 

 

めぐみ・ひめ・ゆうこ「「「プリキュア!! くるりんミラーチェンジ!!」」」

 

いおな「プリキュア!! きらりんスターシンフォニー!!」

 

 

美里「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

 

眩しいばかりの光とともに、全員変身完了すると、ハピネスチャージプリキュアは背中から光の翼を出して、インフェルノは真っ赤な火の玉になって飛んで行った。

 

 

それを見送った誠司は、一人首をかしげていた。

 

 

誠司「さっきのどういうことなんだ? それにあの渚って人、プリキュアに関して変な感想言ってたな…?」

 

 

 

 

第21話に続く

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