プリキュアR   作:k-suke

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第21話「戸惑うH」

日本 某県 オーエエドー市

 

 

 

この町は県内でも有数の大都市であり、交通網や商業施設等はかなり発達しており、市民もそれ相応に多い。

 

そんな町に住む道行く人々は笑みを浮かべつつ、昨日と変わらない、退屈でそれでいて平穏な日々を送っていた。

 

しかし、そんな平穏も唐突に破られることになった。

 

 

巨大なサイアークの大群が出現し、我が物顔で街を蹂躙し始めたのである。

 

車を踏みつぶし、電柱をへし折っては振り回してビルを破壊し、おまけにあたり一面が奇妙な色のカビだらけになっていた。

 

 

ホッシーワ「よ〜し、いいわよいいわよ。このままやっちゃいなさいサイアーク達!!」

 

 

上機嫌でサイアークに命令していたのは自称 高貴な貴婦人ホッシーワであった。

 

 

「うわー!! 助けてくれー!!」

 

「警察、いや自衛隊来てくれー!!」

 

 

 

逃げ惑う人々の悲鳴を聞き、ホッシーワは一人悦に浸っていた。

 

ホッシーワ「人の不幸は蜜の味。堪えられないわね〜」

 

 

そんな時、空に何か光るものが現れた。

 

ホッシーワ「あら? 鳥かしら? それとも飛行機かしら?」

 

 

どこか可愛げにそう呟いたホッシーワだが、すぐに気を取り直した。

 

ホッシーワ「なーんて冗談言ってる場合じゃないか。来たわね!!」

 

 

 

 

 

ようやくオーエエドー市に到着したものの、サイアーク達が暴れている光景を上空から確認したプリンセスは悔しそうに歯嚙みをしていた。

 

 

プリンセス「くっそ〜 やりたい放題やって!!」

 

フォーチュン「間に合わなかった、でも!!」

 

ハニー「助けられる人は助けないと!!」

 

ラブリー「みんな行くよ!!」

 

 

インフェルノ「ちょっ、ちょっと待った。あなた達はせめて顔を隠して…」

 

 

やる気十分になっていたハピネスチャージプリキュアは、インフェルノの呼び止めにもかかわらず、急降下していった。

 

 

 

サイアークの大群の前に降り立った四人は、凛として名乗りを上げた。

 

 

 

ラブリー「世界に広がるビッグな愛!! キュア・ラブリー!!」

 

プリンセス「天空に舞う青き風!! キュア・プリンセス!!」

 

ハニー「大地に実る命の光!! キュア・ハニー!!」

 

フォーチュン「夜空に煌く希望の星!! キュア・フォーチュン!!」

 

 

ラブリー・プリンセス「「ハピネス注入!!」

 

ハニー・フォーチュン「「幸せチャージ!!」」

 

ラブリー・プリンセス・ハニー・フォーチュン「「「「ハピネスチャージプリキュア!!」」」」

 

逃げ惑っていた市民はハピネスチャージプリキュアを見ると顔色を変えて口々に叫んだ。

 

「あ、あれは… プリキュア!!」

 

「嘘だろ!!」

 

 

 

 

プリンセス「おっ、みんなこっち見てるよ。 やっぱりこの街でもプリキュアは有名なんだね」

 

フォーチュン「調子に乗らない。何しにきたのよ」

 

ラブリー「みなさん安心してください。もう大丈…」

 

市民が自分たちに注目しているのを見て、安心させるべく呼びかけを行おうとしたラブリーだったが、

 

 

 

 

 

「早く逃げろー!!」

 

「殺されるぞー!!」

 

「何しにきやがった厄病神め!!」

 

「帰れ人殺しめ!!」

 

 

市民は安心するどころか、一層パニック状態になって逃げ惑い、挙句凄まじい罵声の嵐とともに石飛礫が雨霰と飛んできた。

 

 

プリンセス「イタタタ!! なになになに???」

 

ラブリー「お、落ち着いてください。わ、私達はプリキュアで…」

 

フォーチュン「みなさんを助けようと…」

 

 

リボン「なんなんですのこれは?」

 

ぐらさん「なんでプリキュアがこんなことを…」

 

 

 

予想外の反応に皆は混乱していたが、それは敵のはずのホッシーワも同じだった。

 

ホッシーワ「??? 何これ? プリキュアの方が私たちより嫌われてんじゃないの?」

 

 

 

 

そんな中、遅れて降り立ったインフェルノはドミノマスク越しにもわかる苦悶の表情をしていた。

 

インフェルノ「…やっぱしなぁ… こうなるだろうと思ったんだ…」

 

 

ハニー「あ、あの、これは一体どういう…」

 

想定外の状況に、ハニーは当然ともいえる質問をしたが、インフェルノはバッサリと切って捨てた。

 

インフェルノ「約束でしょ。周りを一切気にしない。心を無にして戦いだけに集中する。先に行くわよ!!」

 

 

 

そうして、インフェルノはサイアークと戦い始めたが、それとともに市民の罵声の声はさらに増した。

 

 

「テメェ!! どのツラ下げて帰ってきやがった!!」

 

「こんなところに来るんじゃねぇよ!! どっかに行っちまえ!!」

 

 

インフェルノ「…くっ!!」

 

そんな風に尽きることのない罵声を浴びながらも、インフェルノは迷いを吹っ切るかのように一人サイアークと無心に戦い続けていた。

 

 

とはいえ、やはり多勢に無勢であり、少しずつだがインフェルノはサイアークの大群に押され始めていた。

 

 

 

ラブリー「い、いけない。みんな行くよ!!」

 

その光景を見て、このままではまずいとラブリーはサイアークに立ち向かっていき、仲間たちも顔を見合わせ頷くと戦い始めた。

 

しかし…

 

 

「近寄るんじゃねぇよ!!」

 

「とっとと帰れクソアマども!!」

 

 

 

フォーチュン「くっ!! サイアークもきついけど…」

 

プリンセス「なんでこんなこと言われなきゃなんないの!?」

 

 

サイアーク以上に、周囲の罵声から受ける精神的なダメージの方が大きくハピネスチャージプリキュアはいつもの調子が出ずかなり苦戦を強いられていた。

 

それでもサイアークの攻撃を防ぎつつ投げ飛ばしたり、殴り倒したりと必死に戦っていた。

 

 

そんな中、逃げ遅れたのであろう小さな子供に対してサイアークが襲いかかろうとしている光景が、ラブリーの目に入った。

 

 

ラブリー「!! 危ない!!」

 

とっさに飛び込みサイアークからその子をかばったラブリーだったが、自分自身がサイアークの一撃を喰らってしまいかなりのダメージを負ってしまった。

 

 

ラブリー「うわぁああ!!!」

 

プリンセス・ハニー・フォーチュン「「「ラブリー!!!」」」

 

 

大きく吹き飛ばされたラブリーにサイアークは追撃を仕掛けようとしたが、それをかばうようにプリンセス達が駆けつけてなんとか攻撃を受け切った。

 

 

プリンセス「こ、この…」

 

ハニー「負けるもんか…」

 

フォーチュン「あなた達の好きにはさせない!!」

 

 

必死に耐えていた三人は、気合一発なんとかサイアークの大群を押し返し、なんとか立ち上がったラブリーが巨大な光のパンチでサイアークを殴り飛ばした。

 

 

ラブリー「ラブリー・パンチングパンチ!!」

 

「サイアーク!!」

 

サイアークが大きく吹き飛ばされ、体勢が崩れたところでラブリーは皆に声をかけた。

 

 

ラブリー「みんな今だよ!!」

 

 

 

 

 

リボン「集まれ、ハピネスな気持ち!」

 

ぐらさん「高まれ、イノセントな想い!」

 

ラブリー「輝け!!」

 

ラブリー・プリンセス・ハニー・フォーチュン「「「「シャイニングメイクドレッサー!」」」」

 

皆の叫びに応えて光とともに、パワーアップアイテム、シャイニングメイクドレッサーが召喚された。

 

そして召喚した化粧筆を使って順番に台座のパレットをタッチしていった。

 

 

ラブリー「愛と!!」

 

プリンセス「勇気と!!」

 

ハニー「優しさ!!」

 

フォーチュン「幸運をこめて!!」

 

 

ラブリー・プリンセス・ハニー・フォーチュン「「「「みんなに届け!! 幸せの大爆発!!」」」

 

 

その掛け声とともに化粧筆を頭上に挙げ、シャイニングメイクドレッサーからハート形の虹色の光を大爆発させた。

 

 

ラブリー・プリンセス・ハニー・フォーチュン「「「「プリキュア・ハピネスビッグバーン!!」」」

 

 

 

 

ハピネスビッグバーンが炸裂したのとほぼ同時に、インフェルノも両手を大きく振りかぶり、必殺技の体勢に入っていた。

 

インフェルノ「とどめだ!! プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

その叫びともに両手の炎の塊を、叩きつけるように投げつけると、巨大な火柱とともに大爆発を起こした。

 

 

二つの必殺技から巻き起こされた大爆発は、サイアークの大群を根こそぎ吹っ飛ばすことに成功し、跡形もなく消滅していた。

 

 

 

 

ホッシーワ「えぇい、まぁ闇のエネルギーは集まったし。とりあえず良しとしましょうか」

 

とはいえ、言ってることとは裏腹に、悔しさに歯噛みをしながらホッシーワは撤収していった。

 

 

 

 

 

 

 

ラブリー「ふぅ〜… あっ、さっきの子は…」

 

戦いを終えて一息ついたラブリーが辺りを見回すと、さきほどの子は母親らしき女性に抱きしめられていた。

 

その光景に嬉しくなってラブリーは駆け寄って行き声をかけた。

 

 

ラブリー「大丈夫だった? 怪我はない?」

 

にっこりと微笑んだラブリーだったが、その子供は怯えたように泣き叫び始めた。

 

ラブリー「どうしたの? どこか痛むの?」

 

慌てたラブリーは咄嗟に手を差し出したが、母親にはねのけられた。

 

 

「触らないでください!! 化け物のくせに!!」

 

ラブリー「えっ? ええっ!?」

 

 

普段ならありえない言葉にラブリーは戸惑い、それを聞いたプリンセスが我慢の限界というように叫んだ。

 

 

プリンセス「ちょっと!! いいかげんにしてよ!! 助けてもらってなんでそんなこと言うのよ!!」

 

 

しかし、そんなプリンセスに対して周囲から怒声が浴びせられた。

 

 

「ふざけんなー!!」

 

「何が助けただ、偉そうに!!」

 

「周りをよく見てみろ!!」

 

 

 

その言葉に慌てて周りを見回すと、そこにあったものは投げ飛ばしたサイアークに押しつぶされた自動車や、倒壊した家やビル。

 

そして何より、ハピネスビッグバーンの大爆発に巻き込まれて瓦礫の山と化した街の一区画があった。

 

 

「なにしてくれてんだテメエら!!」

 

「俺たちの町が無茶苦茶だ!!」

 

「どうしてくれるんだ俺の車!!」

 

「私たちの家は爆発で燃えてしまいました。この肌寒い時期に子供と野たれ死ねというつもりですか!!」

 

「え〜ん!! 私のおうちが〜!!」

 

 

プリンセス「うあ…あ…」

 

自分が意図せずしてしまった破壊。

 

そのことがアクシアの箱を開けたことに対する罪悪感や、昨日コキュートスに言われたことと重なり、プリンセスの奥歯はガチガチとなっていた。

 

 

フォーチュン「な、なんで…? いつもなら…」

 

普段ならプリキュアの浄化の力で、破壊されたりした建物は元に戻る。

 

にもかかわらず一向にそんな気配のないことにフォーチュンは真っ青になり始めていた。

 

 

ぐらさん「こ、この街、傍目にはわからなかったけど闇の力が異様に立ち込めてるぜ… だ、だから街を元に戻す分まで浄化の力が足りなかったんだ…」

 

 

ラブリー「そ、そんな…」

 

皆があまりのことにガタガタと震える中、インフェルノが一歩前に出た。

 

 

ハニー「イ、インフェルノ!?」

 

 

するとインフェルノは覚悟を決めたように地面に手をついて土下座した。

 

 

 

インフェルノ「ごめんなさい家を壊して…。ごめんなさいいっぱい傷つけて…。ごめんなさい、ごめんなさい…」

 

 

 

しかし、そんなインフェルノの態度に市民たちはますますヒートアップしていった。

 

 

「いい加減にしろー!!」

 

「謝って済むか!!」

 

「やっちまえ!!」

 

 

そして殺気立った市民はパイプや棒を手に、土下座を続けるインフェルノに殴りかかっていった。

 

 

散々に袋叩きにされたインフェルノだったが、一切の抵抗をせずなされるがままに殴られ続けていた。

 

 

ラブリー「ああ!!   〜っ!!!」

 

そんな光景を見るに見かねたようにラブリーが群衆の中に割って入り、インフェルノを地面から引き剥がすようにして飛び上がった。

 

 

フォーチュン「し、仕方ない!! 私達も!!」

 

ハニー「プリンセス。しっかり!!」

 

 

やむを得ないというようにフォーチュンも光の翼を出して飛び立ち、ハニーもプリンセスを支えて飛び立っていった。

 

 

 

「卑怯者!!」

 

「逃げるのか!!」

 

そういった数々の罵声に見送られながら。

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外

 

 

 

ここ、オーエエドー市はかなり開けているが、自然もかなり豊かな町である。

 

郊外には鬱蒼と茂る雑木林がある。

 

 

一部が焼き払われたりしたような跡があるこの林の中で、廃墟と化した洋館がひっそりと佇んでいた。

 

 

そしてそんな洋館に一同は緊急的に避難していた。

 

 

 

ゆうこ「はい、ひめちゃん、ハニーキャンディ。少しは落ち着いた?」

 

ひめ「うん、ありがとうゆうこ」

 

ハニーキャンディを口の中で転がしたことで、ひめは少しずつだが落ち着き始めていた。

 

 

 

いおな「うまい具合にいいところがあったわね。市街地からも離れてるし…」

 

ぐらさん「でも、なんだろうな。こんな廃墟なのに、少し前まで人が住んでたような形跡があるぜ。 ほら、新しい薬とか包帯がこんなにあった」

 

リボン「まぁなんにせよ、とにかく助かりましたわ」

 

 

ぐらさんが見つけてきた薬や包帯で、めぐみから怪我の手当てを受けていた美里がすまなさそうに言った。

 

 

美里「ごめんね。嫌な思いさせちゃって」

 

めぐみ「い、いえ。私たちのせいでもありますし…」

 

 

美里「ううん、私が悪いの。何もかもね…」

 

 

暗い顔で俯きながら、美里は遠い目をしていた。

 

 

いおな「あの… 一体さっきのはどういうことなんでしょうか? 何かあんなことを言われるような心当たりは…」

 

 

今現在、自分たちの住んでいる世界とは違う次元の世界と混在していることはいおなも承知しているが、いくら何でもあそこまで罵倒されるとは理解の範疇を超えていた。

 

そのためどうしても疑問が拭えなかったのである。

 

 

 

美里「心当たりもへったくれも、私が戦ってた頃よりは多少マシかなぁ。一年近く経ってるしね」

 

 

 

ひめ「い!?」

 

 

リボン「一体何があったんですの!?」

 

 

 

その言葉に美里は大きく息を吐き出すと、ゆっくりと話し始めた。

 

 

美里「…昔々あるところに、平凡な家族がいました。寒いギャグが好きなお父さんと優しいお母さん、ゲームが好きな女の子とクソ生意気な弟。一家四人で楽しく暮らしていました」

 

リボン「はぁ…」

 

突然始まった昔話風の話に、リボンは気の抜けたような返事をした。

 

 

美里「そんなある日、突然押し入ってきた怪物にその家族は女の子の目の前で皆殺しにされました」

 

 

いおな「!!!!」

 

姉を一度とはいえ目の前で失ったいおなには、彼女の受けた衝撃が容易に想像できた。

 

 

美里「女の子の頭は怪物に対する怒りと憎しみでいっぱいになり、たまたま手に入れたプリキュアの力で復讐のために戦いました」

 

 

ぐらさん「お前…」

 

復讐に燃えて戦ったいおなのことを知っているぐらさんには、美里のことが他人事に思えなかった。

 

 

 

 

美里「周りで誰が傷つこうとも何を壊そうとも、そのことでどんなに責められようともお構いなしに戦った女の子は、やがてたった一つ残った大切なものも全部自分で壊してしまいました」

 

ゆうこ「美里さん…」

 

家族を殺されたことは聞いていたゆうこだが、想像を超える美里の過去に何も言えなくなってしまった。

 

 

美里「それでもなんとか仇を討てましたが、結局その女の子にはな〜んにも残りませんでしたとさ、まる」

 

 

 

めぐみ「そんな… じゃあ…」

 

 

美里「でもね、だから新しいもの見つけたんだ。 自分勝手に多くの人を傷つけて、もう誰に謝ったらいいのかもわかんなくなっちゃたんけど、だったら世界中の人のために生きてみようって」

 

 

ゆっくりと立ち上がった美里は、崩れた壁の隙間から空を見上げてつぶやいた。

 

 

美里「たとえ許されることがなくっても、一生かけて精一杯そんな生き方すれば、少しは償いになるだろうし、地獄で言い訳ぐらいできるかなってね」

 

ひめ「償い…」

 

 

 

ひめには美里があまりにも眩しかった。

 

めぐみやゆうこに嫌われるかもしれないからといって、自分がアクシアの箱を開けたことを黙っていたこと。

 

 

いおなが許してくれただけで、プリキュアとして戦っているだけで、もう償いが済んだと思っていた自分がひどく小さく醜いものに思えた。

 

特に先ほど町の人々から罵倒されたことに不満を持ってしまったことは、自分が反省していない証だと思えてしまい、顔を上げることができなかった。

 

 

ひめ「雪菜さんが怒ったことわかるなぁ…」

 

 

 

 

美里「ああ、雪菜にも会ったんだ」

 

ひめがポツリとつぶやいた言葉に、美里は反応した。

 

 

めぐみ「お知り合い…なんですか?」

 

 

美里「…私の幼馴染でね。私が夢を奪った人…」

 

めぐみ「!!!!」

 

 

美里「雪菜はピアニストになりたがっててね。才能も人一倍あったんだけど、私が馬鹿な戦いしたせいで、右手が動かなくなっちゃったんだ…」

 

いおな「!! あの怪我…」

 

 

 

 

雪菜(私がプリキュアになった理由はただ一つ。プリキュアを殺すためよ)

 

大使館での去り際での雪菜のセリフが蘇り、めぐみは凍りついてしまった。

 

 

めぐみ「じゃあ、まさか友達同士で…」

 

その絞り出すような言葉に、美里は力なく微笑んだ。

 

 

 

 

ゆうこ「あ、あの… 一ついいですか? 美里さんプリキュアじゃなくなってたんですよね。どうしてですか? プリキュアの力があれば、償いをするにしたってもっと…」

 

沈黙が続く中、ゆうこはおずおずと質問した。

 

 

美里「プリキュアの力、か。そんなものろくなもんじゃないよ。 できればもう使いたくなかった」

 

ぐらさん「ど、どういう意味だよ?」

 

美里の言葉にぐらさんが噛みついた。

 

 

 

美里「あなたたち、時々怖くならない? プリキュアとして戦ってることがさ」

 

いおな「えっ?」

 

 

美里「あんな怪物と簡単に戦える力。すっごく怖いものだと思わない? 戦い続けるうちに自分がどんどん人じゃなくなっていくような気になったことない?」

 

 

めぐみ「それは… でも人のために使えば…、きっとみんな受け入れて…」

 

 

そのめぐみの反論に、美里はゆっくりと首を横に振った。

 

美里「同じこと考えた奴がいるの。昔々に大切な家族や仲間を守るために、人であることさえも捨てて妖精の力を借りた奴が」

 

 

メル「美里…」

 

 

美里「でもね。そいつはいつの間にか周りから危険な奴だって思われるようになった。そいつが大神獣、私の家族を殺した奴…」

 

いおな「なっ!?」

 

ぐらさん「あいつらが復活させようとしてる奴かよ!!」

 

 

コクリと頷いた美里は続けた。

 

美里「あいつは、何百年も世界を、人を恨んでる。まぁだからって許せるかっていうと別問題だけど」

 

 

一つため息をついて美里は続けた。

 

 

美里「で、昔話はここまでにして。次はあなた達の今のこと話してくれる? 事態がいまいち飲み込めてないんだよね」

 

めぐみ「あっ、は、はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方

 

 

典型的な日本家屋とでもいうべき自宅に、定期検診を終えた雪菜は帰り着いていた。

 

一年近く経ったこともあり、普通に生活を送るぐらいは特に支障はないが、それでも雨が降ったりすると右腕が痛むことはあり、一生この怪我と付き合っていかないといけないと言われていた。

 

 

雪菜「ふう〜。やっぱり落ち込むわね。ああいうこと言われちゃうと…」

 

ミプ「雪菜… その…」

 

 

少し表情を曇らせた雪菜に、おずおずと話しかけたミプだったが、満面の笑みが返ってきた。

 

 

雪菜「大丈夫よ。怪我をしてる人は世の中には大勢いるんだし。もっと辛い思いをした子だっている。こんなことで落ち込んでたらあの子に失礼だもの」

 

 

多少苦労しつつも部屋着に着替えて居間に降りていき、なんとなくテレビをつけるとそこではプリキュアが現れて戦ったというニュースが流れていた。

 

ニュースキャスター『本日、午後三時頃市内で巨大な怪物とプリキュアと名乗る少女の戦闘がありました。その結果市街地の一区画が廃墟と化しました。その他重軽傷者を合わせて50名近くに及び、市民からは激しい怒りと悲しみの声が…』

 

 

 

雪菜「これ、あの子たちよね。気の毒だとは思うし、イマイチ気乗りはしないけど、大神獣と関係があるのならひとまず協力した方がいいかしら…」

 

ハピネスチャージプリキュアと名乗ったチームと共に戦うのは、かなり気が進まない雪菜だが、状況が状況ならばやむをえないかもしれないと思い始めていた。

 

 

 

しかし、プリキュアが戦っていた映像が流れた時顔色が変わった。

 

そこに映っていた「五人目」のプリキュア

 

赤を基調にしたゴシックロリータ風の衣装を身にまとい、赤いロングヘアをなびかせ、深紅のドミノマスクを着用した少女

 

 

雪菜「キュア… インフェルノ… まさか… 美里!?」

 

 

目を見開いてニュース映像を見ていると、ミプがブルブルと震え始めていた。

 

 

ミプ「す、すごく嫌な感じがするミプ… もしかしてあいつが…」

 

雪菜「!!! なんですって!!!」

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

美里にこの世界の事情をある程度話した後、一息ついていた一同だが、メルをはじめとする妖精達は何か強大な気配を感じて飛び上がった。

 

 

メル「!! 美里!!」

 

 

美里「メル? どうしたの?」

 

いつも以上に慌てている様子のメルを見た美里は、慌てて尋ねた。

 

 

メル「いつもよりはるかに巨大な闇の力を感じたメル。もしかして大神獣が復活しかかってるのかも…」

 

ぐらさん「それだけじゃねぇぜ。この気配は…」

 

リボン「クイーンミラージュかもしれませんわ!!」

 

 

いおな「何ですって!?」

 

美里「くっ!! 世界が憎いからって、わざわざよその世界まで来て大神獣を復活させようなんてする!?」

 

 

以前戦っていた時のような怒りの形相になった美里だが、すぐにそれに気がつき何度も深呼吸を繰り返した。

 

 

美里「いけないいけない。落ち着け〜 落ち着くんだ私。吸って〜吐いて、吸って〜吐いて」

 

 

どうにか落ち着いた美里は、メルに呼びかけてスマホのような姿に変身させるとそれを手に取り、めぐみ達の方に向かってやさしく言い放った。

 

 

美里「あなた達は帰りなさい。ここから先は私の世界の問題だし」

 

いおな「!! そんなわけにはいきません!! これは私達の問題でもあるんです!!」

 

ゆうこ「そうですよ!! 一緒に戦いましょう!!」

 

 

 

しかし、美里はゆっくりと首を横に振った。

 

 

美里「さっきも言ったでしょう。プリキュアとして戦い続ければ、いつか戻れないところに行ってしまう。クイーンミラージュってのもそうなんでしょう?」

 

 

ひめ「だからって放っとけるわけないじゃん!!」

 

めぐみ「それに一人でなんて無茶です。 何かあったら…」

 

必死に食らいついたひめとめぐみだが、美里は承知しなかった。

 

 

美里「だから私が戦うの。私にはもう失くすものもない。それに、私はこんなところでどうこうならないよ」

 

 

リボン「えっ?」

 

 

美里「私は絶対に死なない。この世界に償わなきゃいけない人がたった一人でもいる限り、死ぬことは許されない。 だから大丈夫」

 

にっこりと笑った美里だったが、その笑顔を見ても気分は全く良くならなかった。

 

 

 

笑顔を見れば自分も元気になれる。

 

そう思ってきためぐみだったが、その悟りきったような笑顔を前には、悲しみしか湧き上がってこなかった。

 

 

めぐみ「そんな考え方… 悲しすぎますよ!!」

 

 

美里「仕方ないよ。これが私の選んだ運命。力を求めて、絆をないがしろにした人間のね」

 

ゆうこ「美里さん…」

 

 

美里「めぐみちゃん。あの男の子、誠司くんだっけ? 大切なことだと思うよ。プリキュアっていう力とは無関係に繋がれる絆があるのは…」

 

めぐみ「絆…」

 

 

一つため息をついて美里は続けた。

 

美里「私もあいつも、もう戻れないし止まれないけど。あなたたちは平凡な日常に帰ることができる。それを忘れないで」

 

 

優しい笑みを浮かべた美里だったが、みんなは愛想笑いすらまともにできなかった。

 

 

 

美里「じゃあね」

 

 

美里は挨拶とともに洋館から飛び出し、鍵の形のアプリをタッチした。

 

 

 

美里「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

 

 

次の瞬間、美里は赤い光とともに深紅のドレスに身を包み、赤い仮面を装着して真っ赤な火の玉になって飛び立っていった。

 

 

 

インフェルノ「見てなさい大神獣!! あなたとのケリは私がつける!!」

 

 

最終話に続く

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