プリキュアR   作:k-suke

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第3話「女のR」

クジャクはハムスター型メカのコックピットで、歯ぎしりしながらキュア・インフェルノを睨みつけていた。

 

 

クジャク「くう〜。毎度毎度盛り上がり始めると出てくんだから、あの娘っ子!!」

 

アカンコウ「そうですね。一体あたしらになんの恨みがあるんでしょうね〜」

 

ゴロリン「で、まんねん」

 

 

クジャク「え〜い、今日という今日は叩きのめしておやり!!」

 

アカンコウ「お任せくださいクジャク様。今回は一味違いますよ」

 

その返事と共に、ハムスター型メカはキュア・インフェルノに向かっていった。

 

 

 

クジャク(まったく、世の中のことな〜んにも知らないガキンチョが地獄だなんだとぬかすんじゃないよ)

 

コックピットの中、クジャクはキュア・インフェルノに対し心の中で悪態をついていた。

 

クジャク(地獄っていうのはね、今のこの世界のことをいうのさ。だからぶっ壊してやるんだよ)

 

 

 

 

 

 

 

クジャク。これは彼女の本名ではない。

 

彼女は極めて普通の女性だった。いや、決して普通とは言い難いか。

 

 

彼女は物心ついた時から施設で暮らしていた。

 

自分の本当の両親の顔も名前も知らない。

 

自分が、所謂「かわいそうな人間」なのだと気づくのにそう時間はかからなかった。

 

彼女自身は特になんの問題を起こしたことはないのに、周りの人々がことあるごとに「施設育ち」「親無し」などと言っては彼女を敬遠したからだ。

 

 

小学校に入った頃には、特にそれが顕著となり露骨な嫌がらせも多くなってきた。

 

幸か不幸か彼女は人並みはずれた美貌の持ち主だったためか、男子からは割と好意的に見られていたのだが、女子からは尚更やっかみを含んだいじめを受けた。

 

そして彼女は同性に対して希望を持つことを止めた。

 

だからと言って男に依存したり、媚を売ったりした訳ではない。

 

 

彼らが、自分の顔や体にしか興味のないであろうことはなんとなく感じ取っており、そんな生き物に依存するなど吐き気がするほど嫌だった。

 

 

そうして、彼女は学園の中で孤立していった。

 

陰口や非難中傷は当たり前のように行われる日々。

 

男と遊んでいるや、裏ではとんでもない悪事をしているなど根拠のない噂話を流されたこともあった。

 

はっきり言って人生ハードモードと言っていいぐらいだった。

 

 

だが、彼女自身人に顔向けできないことをしたことはなく、精一杯くじけずに前向きに生きてきた。

 

周りに何も言わせまいと人一倍努力して一流大学に入り、アルバイトに追われながらも必死に学び主席で卒業し一流企業にも入社した。

 

そこでも鋼鉄の女と罵られながらも懸命に働き、30歳にもならないうちに一つの営業所を任されるまでになった。

 

 

しかし、そこまで登りつめてみたものの、そこに残ったのは虚無だった。

 

趣味はおろか遊びも知らない。

 

仕事上の付き合いや部下は大勢できたが、気軽に話せる友人もいない。

 

 

この先もこうして生きて、どこか空っぽのまま消えていくのか。

 

そう思いうすら寒く感じたこともあった。

 

 

 

そんなある日だった。

 

駅のホームでどこかぼんやりと歩いていると、足を踏み外して線路に転落した。

 

おまけにそこを狙って特急列車が通過しようとしてきた。

 

その時はこれで人生が終わるのかとどこか他人事のように感じたものだった。

 

 

しかし、彼女はすんでのところで男性がホームに引き上げてくれた。

 

「大丈夫ですか? お怪我は?」

 

 

その瞬間、虚無だった彼女の人生に初めての色が灯った。

 

 

 

その後、その男性との交際は順調に進み、性格も明るくなったとの評判で仕事もより一層順風満帆。

 

彼女は初めて人生を楽しいと感じていた。

 

 

 

 

が、その幸福もわずかな時間で終わりを告げた。

 

 

その男性は相当なたらしであり、女に貢がせては捨てていたのだ。

 

恋は盲目とはよく言ったもので、彼女もまたコツコツと貯めていたなけなしの財産をすべて奪われてしまった。

 

おまけに彼を信頼して幾つかの会社の機密も話してしまい、その男はそれをライバル社にリーク。

 

気づいた時にはすでに遅く、彼女は機密漏洩ということで犯罪者となり会社もクビ。

 

当然その時には例の男とは音信不通になっていた。

 

彼女はわずか数ヶ月で、死に物狂いで築き上げたものをなにもかも無くしてしまった。

 

 

今や、彼女は虚無どころか絶望で覆い尽くされていた。

 

 

「私の人生なんなんだろうね。なんでこんな目にあわなきゃならないんだろう。誰のせいなんだろうね」

 

身投げでもしてやろうかと思い、一人寂しく街中をさすらっていた彼女の前に黒いモヤのような物が現れ、話しかけてきた。

 

 

「なぜ、自分が消えようなどと考える。悪いのはお前を否定したこの世界だ」

 

 

どこか虚ろな目をしていた彼女は、どこからか聞こえてきた声にもなんとなく受け答えをした。

 

 

「そうかもね。でもどうしようもないさ。どんなに狂っててもこれがルール。私にどうこうできるもんじゃないよ」

 

 

「諦めることはない。ルールを正しいものにするための力をくれてやる。そして我を蘇らせるのだ」

 

 

ここに至って、彼女はようやく周りに誰もいないことに気がついた。

 

 

「誰だい? どこから話しかけてるんだい?」

 

 

その疑問に答えるように、彼女の周りの黒いモヤはなんとなく動物を思わせる形になった。

 

 

「我は大神獣。この世界のルールを恨み憎むもの」

 

 

 

 

クジャク(あれが大神獣様との出会いだったねぇ。そしてこうして私はこの世界に復讐できるようになった…)

 

 

クジャクはしみじみと過去を思い返していた。

 

 

 

 

 

クジャク「などと回想シーンに入っている間にやられかけてるじゃないかい!!」

 

 

横倒しになったコックピットの中で、ひっくり返りながら彼女は怒鳴りつけた。

 

ゴロリン「は〜い。すでにボコボコにされちゃってますでまんねん」

 

クジャク「一味違うとか言わなかったっけ、アカンコウ?」

 

クジャクは嫌味ったらしく尋ねた。

 

アカンコウ「はい、こんなにゆるキャラっぽくしてれば攻撃の手も緩むかな〜って思ったんですけどね」

 

 

クジャク「つまり、強力な武器や作戦があったってわけじゃないんだね?」

 

アカンコウ「いえいえ、この可愛らしさはまさに女の子には必殺級ですよ。きっと通用すると思ったんですけどね」

 

クジャク「なんの根拠があるんだい!!」

 

 

 

そんな漫才を三獣士がやらかしている間、キュア・インフェルノは凄まじい憎悪の目でボロボロになってひっくり返っているハムスター型メカを睨みつけていた。

 

 

インフェルノ「あんな姿をして可愛いつもりなの!? ふざけんじゃないわよ!!」

 

ゆるキャラみたいなふわふわしたデザインのロボットは、何も知らずに見れば私もかわいいと声を上げただろうが、今の私には神経を逆撫でするだけだった。

 

インフェルノ「ぶっ殺す!! 絶対に!!」

 

 

「熱いよー!! おかーさーん!!」

 

「誰かー!! 助けてー!!」

 

 

その時突然悲鳴が私の耳に聞こえてきた。

 

変身している間は身体能力が爆発的に上がるが、同時に目や耳まで良くなりすぎるのは考えものだ。

 

聞きたくないものまで聞こえて、見たくないものまで見えてしまう。

 

 

反射的に振り返った先には、炎に包まれた家の中から悲鳴を上げている女の子と家の前で叫んでいる母親らしき女性の姿が見えた。

 

 

すると、その母親らしき女性は私の姿を見ると藁にもすがるようにしがみついてきた。

 

 

母親「助けてください!! 娘が火の中にいるんです!! お願いします、助けてください!!」

 

 

母親は凄い力で私にしがみついてきて、私は動きが止められた。

 

すると、その隙にハムスター型メカは起き上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

アカンコウはキュア・インフェルノからの攻撃の手が緩んだのを見てチャンスと判断したのだ。

 

アカンコウ「しめた!! 今のうちに態勢を立て直して最後の切り札を使いましょう!! 幸い無事に起動しそうです」

 

クジャク「おお! 最後の切り札!! さすがだねぇ。で、どんなのだい?」

 

自信たっぷりなアカンコウの言葉にクジャクは期待を込めて尋ねた。が、

 

 

アカンコウ「はい、脱出装置です。さっさと逃げましょう」

 

その言葉にクジャクは盛大にこけた。

 

 

 

インフェルノ「!! 邪魔よ、離して!! アイツが逃げちゃうじゃない!!」

 

ハムスター型メカが逃げ出そうとしているような空気を敏感に感じた私は、その母親を引き剥がそうとしたが、母親はなおもすがりつくように懇願してきた。

 

 

母親「お願いします!! 娘は今年小学校に上がったばかりなんです。いろんなことをこれからやりたがってて、やらせてあげたいんです!! お願いします、娘を助けてください!!」

 

 

その言葉に、私の脳裏には亮太の事が蘇った。

 

今年小学生になったばかり、楽しみにしていた小学校にもほとんど通えず、楽しみにしていた運動会や遠足も参加できず終いになってしまった私の弟。

 

そして、それを奪った奴らへの憎しみが私の中で再燃した。

 

 

インフェルノ「うるさい!! どけ!!」

 

私は力任せに母親を振り解くと、両手を大きく振りかぶった。

 

すると私の手が赤い炎で包まれた。

 

インフェルノ「とどめだ!! プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

そう叫ぶと、私は両手の炎の塊を、憎しみを叩きつけるかのように投げつけた。

 

 

そして、炎の塊の直撃したハムスター型メカは大爆発とともに木っ端微塵になった。

 

 

 

アカンコウ「いやあ、ギリギリのところで脱出できましたね。どうですか、この私の判断力は?」

 

クジャク「エバれることか、このスカ!!」

 

 

うまく脱出できた三人は、小さな脱出ポッドの中でなおも漫才を続けていた。

 

 

 

戦いを終えた私は視線を感じて振り返ると、そこにはさっきの女性が憎悪に満ちた目で私を睨んでいた。

 

見ると、先ほど燃えていた家は全焼していた。

 

当然その中にいた女の子がどうなったかは推して知るべしである。

 

 

母親「人殺し!! どうして助けてくれなかったんですか!? あなたが殺したようなものよ!!」

 

その女性は凄まじい形相でそう怒鳴った。

 

 

インフェルノ「知らないわ。いちいち目の前のことに拘っていられないもの。運がなかったと思いなさい」

 

 

母親「うるさい!! あなたがどんな目的があって戦ってるのか知らないけど、そのために他人を犠牲にしていいことにならないわ!! あなたには、無関係に巻き込まれて犠牲になった人の悲しみなんかわからないんでしょうね!!」

 

 

その言葉は私の胸に突き刺さったが、私は無視して赤い火の玉になって飛び立った。

 

ただ、飛んでいる最中、妙に景色がゆがんだことははっきりと記憶に残っている。

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

クジャク「ま〜ったく、何が自信作だい。お前みたいなのをね、ノータリンって言うんだよ。もうちょっと頭を使え、頭を!! 普段自慢してんだからマシなことを考えろ!!」

 

 

クジャクがアカンコウをボロカスに叱責していた。

 

 

アカンコウ「くう〜言いたい放題言ってくれちゃって!! あれだけのメカ作れる男が他にいるかってんですよ!!」

 

 

クジャク「口ごたえはいい!! とやかく言うなら結果を出してからお言い!!」

 

こうして言葉だけだと口げんかのように思えるが、クジャクはどこか楽しそうだった。

 

 

クジャクは、営業所長時代にも同じように遥かに年配の部下に同じような叱責をしていたことがある。

 

 

ただし、その時は今より遥かに高圧的であったし、部下の反論も「女のくせに」や「何も知らない若造が」みたいな感じのことだった。

 

 

そのため、口調こそ厳しいが彼女は本気で討論をしあえる相手ができたことが嬉しいのかもしれない。

 

 

クジャク(こんなやつらでも、結構一緒にいて悪くはないんだよね。これも大神獣様のおかげってやつかね)

 

 

 

 

 

 

数日後 ネローべ中学校 講堂

 

 

校長先生「皆様にお知らせがあります。3年の藤田先生が本日をもって退職されることになりました。先日、娘さんを亡くされたことで遠い街へ引っ越されるということです。では最後のご挨拶をどうぞ」

 

校長先生の言葉に従って藤田先生が講壇に上がった。

 

藤田「藤田です。みなさんとお別れするのは寂しいですが、皆様のことは忘れません。皆さん、くれぐれも人の悲しみがわからないような人にならないでください。どんなことがあろうとも人を傷つけるようなことがあればその痛みのわかるような人になってください」

 

 

雪菜「ねえ、聞いた美里? なんでも藤田先生、こないだのキュア・インフェルノとロボットの戦いに巻き込まれて、家と娘さんをなくしたんだって」

 

藤田先生のお話の最中、雪菜がひそひそと私に話しかけてきた。

 

すると、同じくクラスメイトの保田 久美と高見 理香が便乗するように話しかけてきた。

 

久美「聞いた聞いた、なんでもその子に助けてくれって頼んだのに見殺しにされたんだって」

 

理香「ひっどいよね、人でなしもいいところだよ。一体どこの誰なんだろう」

 

 

雪菜「きっと、悪魔みたいな子よ。美里もそう思わない?」

 

美里「えっ、うっうん。そうだね、きっと鬼みたいな子だよ」

 

 

私は2年生だから、3年の先生とはほとんど面識がない。

 

だからあの時の人が、うちの学校の先生だとはわからなかった。

 

 

とはいえ、それは言い訳にはならないだろう。事実見捨てたことは確かだから。

 

私は当たり障りのない会話をしながらも、自分が本当に鬼や悪魔になるんじゃないかと思い不安になった。

 

あの時何もなければ、私だって助けに行きたかった。

 

無関係に巻き込まれ、犠牲になった人の悲しみや無念さは嫌という程知っている。

 

 

しかし、それでも私は自分の感情を抑えることはできなかった。

 

 

目の前で家族を殺されたこと。あの理不尽さと怒りは今でも私の中で渦巻いている。

 

この恨みの炎は、あいつらを倒すまで消えないであろうことはなんとなくだが想像が付いている。

 

 

それまでは、どれほど罪を重ねようとも復讐を止めない。絶対に。

 

私は必死に自分にそう言い聞かせた。

 

自分の重ねた罪の重さを実感しながら…

 

 

 

 

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー) 第4話に続く。

 

 

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