プリキュアR   作:k-suke

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第7話「R達の夜」

久美「最近美里どうしたんだろ、学校が終わるとすぐ帰っちゃうし」

 

理香「また、ゲームにハマってんじゃないの? 美里のことだし。そのうちまたお腹減らして泣きついてくるかもね」

 

雪菜「まさか。美里だって、幾ら何でもそうそう何度も同じことはしないわよ、多分…」

 

 

帰り道に三人がそんなことを話していた。

 

 

ここしばらく美里は三人と距離を置いていて、放課後になるとすぐに帰宅していた。

 

雪菜「まあ、美里は一人暮らしだし色々やることが多いのよ。きっと…」

 

久美「そうだよね。今度おすそ分けでも持って行ったげようか」

 

理香「掃除や洗濯なんかも手伝ってあげましょうか。美里結構ずぼらだしたまってるんじゃないかな」

 

彼女たちもなんやかや言いながら、美里の友達である。

 

きちんと心配しているし、力になってやりたいと思っている。

 

だが…

 

 

 

 

 

 

 

インフェルノ「3丁目までは、これで確認終了。未だに手がかりはなし。どこよ、どこにいるのよ!! 大神獣、出てきなさいよ!!」

 

私は、ここしばらくあちこちを飛び回って大神獣を探していた。

 

なんでこんな非効率なことをしているかというと、この役立たずの所為である。

 

 

そもそも、あいつをぶっ殺すに当たってこっちから殴りこみを仕掛けた方が早いという結論に達したのだ。

 

それでメルにあいつのいきそうな場所を聞いてみたのだが

 

 

メル「ごめんなさいメル。大神獣のことは細かいことを何も知らないメル。だから今どこにいるのかも…」

 

おずおずとそう言ったメルを少し(注:美里の主観で)キツ目に怒りをぶつけたあと、痛みでうずくまっていたメルをよそに、強引に変身するとしらみつぶしに市内を探すことにしたのだ。

 

学校に行っている時間も惜しいのだが、欠席が続くと何かの形で保護者に連絡が行くだろうから、それを避けるため学校だけは行っている。

 

 

食事時間や睡眠時間を極限まで削り探索を続けているが全く進展がなく、寝不足や空腹も手伝ってイライラも頂点に達し始めていた。

 

 

美里「くそ!! 一体どこにいるのよ!!」

 

草木も眠る丑三つ時、ようやく帰宅した美里は、悔しそうにテーブルに拳を叩きつけた。

 

 

異常にギラついた目でそう怒鳴る美里にメルは複雑な思いでいた。

 

メル(美里…このままじゃ駄目メル。誰か美里を支えてくれる人がいないと…)

 

 

メルも美里のことを心配しており何度も忠告しているが、この状況になってしまった原因の一つであるメルのいうことに美里はほとんど耳を傾けない。

 

それどころか、却って美里を苛立たせ頑なにしてしまっている。

 

何もできない現状にメルもまた追い詰められていた。

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

アカンコウ「フッフッフッ…、怖い、私は自分の才能が怖い。 プリキュアを確実に抹殺できるメカを、消費税込み僅か十四万飛んで三十九円という低予算で完成させることができるとは…。しかし現実に私はやった、やったんだよー!!」

 

 

 

洋館の地下でベースアニマルを開発していたアカンコウは、歓喜の声をあげていた。

 

すると突然後ろから思い切り枕をぶつけられた。

 

 

クジャク「今何時だと思ってんだお前は!! わあわあ危ない口調で騒ぐんじゃないよ、もう」

 

ゴロリン「そうでまんねん。ただでさえここ数日やかましくて寝られないんでおま」

 

その声に振り返ると、そこには眠そうな目をしたクジャクとゴロリンがいた。

 

 

アカンコウ「あらごめんなさい。もうこんな時間なのね。でもそんなにやかましくないでしょ、ねえ」

 

クジャク「あのね。この洋館は大神獣様の特殊な結界で守られてて、私たち以外は感知できないし、場所が場所だから静かな分お前の声やらなんやらがメチャクチャ響くんだよ。お前だって知ってるだろ」

 

いかにも機嫌が悪そうにクジャクがそう告げた。

 

 

アカンコウ「あ、そうでした。でも喜んでください。次こそ確実にプリキュアを抹殺できますよ」

 

クジャク「わかったわかった。ったく、毎晩毎晩遅くまで。流れ星にでも祈ったのかい。もういい、明日聞いてやるから、もう寝な」

 

ゴロリン「で、まんねん。おやすみ」

 

眠そうな声でそう言うと、二人は寝室へと戻っていった。

 

 

アカンコウ「あらら、もう。まあいいや。しかし笑いがとまらん、見ていろプリキュア。次こそお前の最期だ!! アーッハッハッハッ!!」

 

静かな洋館に、アカンコウのかなり危ない声が一晩中響き渡った。

 

 

翌朝、寝不足のクジャクとゴロリンにアカンコウがボコボコにされたのは言うまでもない。

 

 

 

 

ネローべ学園

 

 

 

教師「えーっ、では85ページから渚、読みなさい」

 

授業中に教師が教科書を読むように促したが、まるで返事がなかった。

 

 

教師「渚、85ページから読みなさい!」

 

少し口調がきつくなったが、未だに返事がなかった。

 

 

久美「ちょっと、起きなって。美里!!」

 

後ろの席から久美が小さな、それでいて焦ったような感じの声とともに美里の体を揺すっていたが、美里は一向に目覚める気配がなかった。

 

 

そうこうしている間に教科書を丸めた教師が美里の席の前に来た。

 

そして、実に景気のいい音が教室内に響いた。

 

 

美里「な、なになに? えっ!!まさかあいつが!?」

 

突然のことに私は戸惑ったが、すぐに状況が把握できた。

 

 

今自分が教室の中にいること。

 

クラス中から笑い声が響いていたこと。

 

目の前に怖い顔をした先生がいること。

 

 

以上のことから次に何が起きるかは嫌でもわかった。

 

 

教師「立ってなさい!!」

 

美里「はい…」

 

私は力なくそう返事をした。

 

 

 

 

昼休み

 

 

理香「まったく、あの先生の授業でよくグースカ寝るよね。怖くてできないよあたしゃ」

 

久美「うつらうつらしてたのが後ろからでもわかったから、やばいと思ったけど全然起きないんだもん。夜更かしでもしたの、美里」

 

私たちは中庭で食事をしながらそんなことを話していた。

 

美里「う、うんちょっとね。最近夜が遅くて寝不足なんだ」

 

私はわざとらしく笑いながらそう答えた。

 

雪菜「何? 何か新しいゲームでも出たの? ダメよ、あんまり夜更かししちゃ」

 

雪菜が諌めるようにそう言った。

 

美里「ま、まあね。気をつけるよ」

 

 

久美「何、美里またゲーム買ったの? そんなの買うお金あったら、こないだ貸したお金返してよ」

 

美里「えっ? あれは宿題で帳消しじゃ…」

 

理香「何言ってるの。それはそれ、借りたものはちゃんと返してね」

 

 

美里「理不尽だ!! 横暴だ!! そんなことが許されるものか!! ねえ雪菜」

 

 

雪菜「あの宿題間違いだらけだったのよね。それでもやったうちに入るのかしら?」

 

美里「うっ」

 

ジロリという効果音が聞こえてきそうに雪菜のにらみに私は何も言い返せなかった。

 

 

久美・理香「「じゃそういうことでよろしく〜♪」」

 

美里「なによ!! みんなひどい、親友だと思っていたのに」

 

 

こんな会話をしながらも、本当にみんなを友達と思っていないのはどちらなのかと考えていた。

 

 

なんとなく、私はみんなとは違うんだという思いが私にはあった。

 

みんなは、プリキュアのことは知っていてもどこか他人事のように思っているのだろう。

 

だから、こうして呑気に笑っている。

 

 

でも私は違う。こんな平穏こそが今の私には非日常だ。

 

この三人は私のことを何も知らない。

 

そう思うと、こうやってみんなと会話していることに違和感を覚えた。

 

 

美里(私…どうなっちゃうのかなぁ…)

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

クジャク「で、私たちの安眠と引き換えに開発したプリキュア抹殺用のベースアニマルがこれかい?」

 

地下室でクジャクが目の前のベースアニマルを指差して、呆れ返ったようにそう尋ねた。

 

 

アカンコウ「はい、そうですよクジャク様。これがプリキュアキラーとも言うべきベースアニマル、その名も…」

 

ゴロリン「まさか、コイキングとか言うんじゃおまへんやろな。あの最弱という噂の」

 

 

その言い様にアカンコウは感情的になって反論した。

 

アカンコウ「バカを言うな!! これこそプリキュアキラー、カープエンペラーだ。これが完成した今、もはや我々の勝利は確実だ!!」

 

 

もっとも、今目の前にあるのはどう見ても手足の生えた鯉のぼりでしかなく、お世辞にも強そうには見えなかったから二人の言い分も無理ないのだが。

 

 

 

クジャク「ネーミングセンスは変わんないっての。ああもういいもういい。とりあえず出撃。ちょっとぐらいはダークエナジーも集められるだろ」

 

すでに諦めが入っているのか、いかにも投げやりといった感じにクジャクが出撃を促した。

 

 

アカンコウ「クジャク様。今回の出撃にあたり出撃場所を指定させていただきます」

 

しかし、そんなクジャクの態度にもめげず、アカンコウは進言した。

 

クジャク「何? どこか攻撃目標があるのかい?」

 

アカンコウ「はい、オーエエドー海水浴場。そこがプリキュアの墓場となるのです」

 

 

ゴロリン「そんなとこ行っても、まだ海水浴のシーズンやないから人もほとんどおりまへんで」

 

アカンコウ「フッフッフッ、構わんさ。今回はダークエナジーの収集は二の次。真の目的はプリキュア抹殺なのだ!! アーハッハッハッ!!」

 

妙に気合の入っているアカンコウだが

 

 

クジャク「完っ全に自分に酔ってるね」

 

ゴロリン「ほんまに大丈夫なんでっしゃろか」

 

二人は懐疑的だった。

 

 

 

 

ネローべ学園 放課後

 

 

 

私は授業が終わるやいなや、早々に荷物をまとめて駆け出そうとした。

 

 

すると、雪菜が私の前に立ちふさがった。

 

 

雪菜「美里、今日は掃除当番でしょ。サボるつもりなの?」

 

そう言いながら、箒を手渡してきた。

 

 

美里「うっ、ご、ごめん。今日は用事が。次またやるから、ね」

 

私はそう言ってやり過ごそうとしたが

 

 

雪菜「ダーメ。こないだもそう言ってサボったでしょ。今日はちゃんとやりなさい」

 

有無を言わせぬその口調に私は押し黙るしかなかった。

 

 

 

そうして掃除をしながらも、私はかなり焦っていた。

 

美里(早くあいつらを見つけて、家族の仇を討つ。あーもうこんなことしてられないのに)

 

そのため、かなり掃除をする手も乱雑になっていた。

 

 

そんな私に雪菜が見かねたように声をかけてきた。

 

雪菜「美里。いったい何をそんなに焦ってるの? 毎日毎日すぐに帰っちゃうし、電話も出ないしLINEの既読スルーは当たり前。本当のこと教えてくれないかしら、最近どこで何してるの?」

 

 

その口調から、雪菜は私が変な友達ができたのではと疑っているようだった。

 

ピントはずれているが、私のことを心配してくれているのは痛いほどわかった。

 

でも、だからこそ私は本当のことが言えなかった。

 

 

美里「なんでもないよ。ほら、タイムセールがあるから早く行きたいだけ。大変なのよ色々と」

 

私は誤魔化すようにそう言った。が

 

 

雪菜「嘘言いなさい。そんなことに気を配るようなタイプじゃないでしょ、あなたは。何? 私にも言えないようなことなの?」

 

雪菜には通じなかった。さすがは幼馴染というところか。

 

 

美里「本当になんでもないってば。さっ掃除掃除」

 

私はそう言って振り返り、無理やり話を切り上げようとしたが

 

 

雪菜「何言ってるの? お願い教えて。悩んでるなら一人で抱え込まないでよ。私たち友達じゃない」

 

なおも雪菜は私の肩を掴んで食らい付いてきた。

 

美里「うるさい!! なんでもないって言ってるでしょ!! 友達だからって何でもかんでも話すもんでもないじゃない!! 私のことなんだから放っといてよ!!」

 

どこかイラつき始めていた私は、ついにそう怒鳴ってしまった。

 

そして、ショックを受けたような雪菜の顔を見て激しく後悔した。

 

 

美里「あっ、ゴメン…」

 

雪菜「ううん、いいの。私こそゴメン、言いたくないこともあるわよね…」

 

 

こうして実に気まずい空気の流れる中、私たちは一言も会話を交わさず掃除を続けた。

 

 

 

 

そうして掃除を終えて帰ろうとした私に、雪菜は勇気を振り絞ったかのように話しかけてきた。

 

雪菜「美里! 来月私ピアノの発表会があるの。よかったら聞きに来てね!!」

 

 

そんな雪菜に私もまた笑顔で答えた。

 

美里「うん!! 絶対行く!! 私は雪菜のピアノの大ファンなんだから!! 応援してる、頑張って!!」

 

 

 

 

そんな会話をしたこともあって少しは後悔の念も薄れたのだが、校門を出た時に、そんなものは頭から吹っ飛んだ。

 

 

カバンの中のメルが震えだしたのだ。

 

私はそんなメルを引き摺り出して、怒鳴りつけた。

 

 

美里「ブルブル震えてんじゃないわよ!! ほら早く!!」

 

俯いたメルは何も言わずスマホに変身した。

 

そのまま、ひったくるようにそれを掴むと鍵の形のアプリをタッチした。

 

美里「プリキュアマスクチェンジ!!」

 

次の瞬間、私は赤い光とともに深紅のドレスに身を包んでいた。

 

そして、赤い仮面を装着して変身を完了して、赤い火の玉になって飛び立った。

 

 

 

 

オーエエドー海水浴場

 

 

 

ここは都心に近い海水浴場で、シーズンとなれば多くの海水浴客で込み合い、足の踏み場も無くなる。

 

ただし、それはシーズンになればの話であり、まだ肌寒さの残るこの時期では海水浴客どころか人もほとんどいない。だから

 

 

アカンコウ「プリキュアー!! 鯉だけに早くこーい!!」

 

 

件の鯉のぼり型ロボット、カープエンペラーが海岸付近の家を破壊したりしてはいるが、普段に比べると被害は大幅に小規模だった。

 

クジャク「あのさぁ。そんなこと言って、プリキュアが本当に来る前に逃げる準備しといたほうがいいんじゃない? こんなウドの大木、まともに戦う事なんかできっこないんだからさ」

 

ゴロリン「そうでおま、怪我するだけ損でまんねん」

 

すでに諦めモードに入ってる二人に、アカンコウはかなり苛立っていた。

 

とはいえ、歩いたほうが早いんじゃないかと思えるような速度でしか移動できないメカに乗っていればそんな感想も至極当然だろうが…。

 

 

アカンコウ「えーい、どこまでも人をコケにして。その時になればこのメカの真価がわかる!!」

 

そうやってアカンコウが怒鳴ると、空の彼方で何かが光った。

 

アカンコウ「むっ、鳥だ!!」

 

ゴロリン「飛行機だ!!」

 

 

 

 

クジャク「Yesフレッシュハートスイートスマイルドキドキハピネスプリンセス魔法つかいプリキュアMAX Starアラモードだー!!」

 

 

 

クジャク「はぁ、長いね」

 

アカンコウ「もう10年以上やってますからね」

 

 

 

 

 

私は海水浴場で暴れている鯉のぼり型メカを見つけて、急降下していった。

 

インフェルノ「わざわざこんなところでどういうつもりか知らないけど、焼き魚にしてやるわ!!」

 

そんな私に、スマホに変身して腰の部分のケースに入っていたメルがうるさいことを言ってきた。

 

メル「美里、きっとあいつはなにか企んでるメル。気をつけたほうが…」

 

しかし、私はそんなメルを一喝した。

 

インフェルノ「うるさい!! あんたは私を変身させてりゃそれでいいのよ!! 余計なことを喋るな!! 耳障りよ!!」

 

 

そうして、メカの前に着地すると今の分の怒りを込めて名乗った。

 

 

インフェルノ「地獄からの使者 キュア・インフェルノ!!」

 

 

 

アカンコウ「フッフッフッ、やっと来たなプリキュア。今日こそ決着をつけてやるぜ!!」

 

アカンコウは不敵に笑うと、カープエンペラーをプリキュアに突撃させた。

 

しかしあまりにも鈍重なその動きは、あっさりとかわされ背後をとられ、キックとともに吹き飛ばされ、その時にいくつかパーツも飛び散った。

 

 

 

インフェルノ「ふん、こんなノロマに何ができるのよ!!」

 

私は目の前のメカのあまりのノロさを、バカにするようにそう評した。

 

 

 

その評価はクジャクも同じだった。

 

クジャク「アカンコウ! こんな奴に何ができるんだよ。早く逃げるんだってば!!」

 

アカンコウ「まだまだ、本番はこれからですよ」

 

そう言ってアカンコウは操縦桿を握り、カープエンペラーを起き上がらせた。

 

 

 

インフェルノ「ふん、くだらないやつ。一気にとどめよ」

 

私はそう吐き捨てると、一気にメカの懐に飛び込んでパンチを繰り出した。

 

 

 

 

 

しかし、それを見たアカンコウの目が光った。

 

アカンコウ「それを待っていたんだ。強力粘着液をくらえ!! ポチッとな」

 

 

次の瞬間、カープエンペラーの体から流れ出した粘液でインフェルノのパンチはボディに張り付いて取れなくなった。

 

 

 

インフェルノ「な、なによこれ!?」

 

繰り出したパンチが突然メカのボディにへばりついて取れなくなったことに私は戸惑っていた。

 

なんとか引きはがそうとするも、メカから染み出してくる粘液でだんだんと私の体に絡みついて自由は奪われていき、やがてメカに全身が張り付いてしまった。

 

そうして身動きの取れなくなった私に鯉のぼりメカは抱きついてきた。

 

 

その結果、私は完全に動けなくなった。

 

 

インフェルノ「くっこうなったら」

 

私は全身から炎を発して逃げようとしたが、その前に鯉のぼりメカは海に飛び込んでしまった。

 

そうして、私を抱えたままどんどん沖へ、そして海中深く潜り始めた。

 

 

インフェルノ(くっまずい。水中じゃ炎が出せない。動けないし、このままだと窒息しちゃう!!)

 

 

 

身動きの取れないまま水中に引きずり込まれ、目に見えて焦り出したインフェルノをモニター越しに見て、アカンコウは満足そうな笑みを浮かべていた。

 

 

アカンコウ「フッフッフッ。私はこれまでの戦闘データから、プリキュアの攻撃パターンを分析した。その結果、奴の攻撃は徒手空拳と炎を利用したものに限られるということに私は気がついたのだ。つまり、動きを封じた上で水中戦に持ち込めば奴の戦法を完全に封じることができる。しかもいかにプリキュアといえども呼吸が必要な以上、水中では長時間居られない。このまま溺れ死んでしまえ!!」

 

 

クジャク「すごいね〜。やっぱりお前は天才だよ!!」

 

アカンコウ「いやあ、ちょろいもんですよ。自動操縦でひたすら潜るようにしてありますから、あとは何もすることはない。ただプリキュアが溺れるのを待つだけです」

 

 

 

インフェルノ(ダメ…苦しい…息が…それに水圧で…鼓膜が破れそう…)

 

私は必死に息を止めていたが、だんだんと限界が近づいていた。おまけに深く潜るに連れて水圧で体がつぶれそうになっていき、必死にもがくも完全に体が敵メカに張り付いてしまい、ピクリとも動けなかった。

 

 

 

 

アカンコウ「深度三千メートルか…。プリキュアめ流石にしぶといがもう時間の問題だな」

 

 

クジャク「おい、アカンコウ。なんかこっちも息苦しくないかい。空気が薄くなってきてるような…」

 

ゴロリン「わては何も感じまへんで」

 

アカンコウ「そうですよ。こいつはもともと水中専用メカ。人工エラのおかげでいつまででも潜れます。心配無用ですよ」

 

 

 

 

深く潜るに連れて、あたりは真っ暗になっていき、だんだんと私も限界が近くなってきた。

 

インフェルノ(も…もうダメ…げ、限界…空気…空気を…)

 

 

 

モニターの前で苦しそうにゴボゴボと悶え始めたインフェルノを見て、アカンコウは興奮していた。

 

アカンコウ「よし、もう少し。プリキュアめ苦しいか? 日頃の恨みだ、苦しみ抜いて死んでいけ!!」

 

 

 

クジャク「おい、アカンコウ。これ、やっぱりおかしいよ」

 

しかし、そんなアカンコウにクジャクが息苦しそうに尋ねた。

 

 

ゴロリン「うん、確かになんか空気が淀んでるような…」

 

 

アカンコウ「んもう、大丈夫ですってば」

 

ゴロリンまでもが同調し始めたため、アカンコウは機械を操作して安全を証明しようとした。

 

 

アカンコウ「ほらこうして人工のエラがあるから空気の心配は…げっ!!」

 

そこまで言いかけて、アカンコウは目を見開いた。

 

 

クジャク「どどどどうしたんだい? え?」

 

アカンコウ「いえ、あの、地上でプリキュアと戦った時にですね、少しパーツを壊されましてね。で、そのパーツってのが空気の循環に必要なもので、だからその…」

 

 

事情を察したクジャクたちは真っ青になった。

 

クジャク「浮上だ!! 浮上するんだよ!! こっちまで窒息しちゃう!!」

 

アカンコウ「もう無理ですよ。こいつはプリキュア抹殺用メカと言ったでしょ。一度潜るとプリキュアが死ぬまで浮上しないようプログラムしてあります。そのための人工のエラだったんです」

 

 

クジャク「それじゃどうすんだよ!? このままじゃ共倒れじゃないかい!!」

 

ゴロリン「なんとかプログラムを書き換えることはできまへんのか!?」

 

その言葉に大慌てでクジャクたちが叫んだ。

 

 

アカンコウ「えーいやかましい!! 騒ぐなうろたえるな!! 見ろ、こちらの苦しみ以上に敵も苦しい。このままだと間もなくプリキュアは死ぬ。それまで耐えるんだ。空気がなんだ、窒息がなんだ、そんなものは根性でカバーしろ!!」

 

開き直ったかのようにアカンコウもそう怒鳴った。

 

 

クジャク「この男、本当に科学者なのかねぇ?」

 

 

 

 

インフェルノ(も…だ…め…。これで…死ぬ…の…?)

 

 

もはや完全に息がつまり、肺の中の空気を大きく吐き出してしまった私は意識が遠のくのを感じていた。

 

 

そしてそんな私の脳裏に、いろんなことが浮かんできた。

 

子供の頃の思い出。雪菜と初めて出会ったときのこと。雪菜のピアノを聴いた時の衝撃。様々なゲームで遊んだこと。そして、最後に浮かんだのはあの日のことだった。

 

目の前で串刺しにされたお父さん

 

爪で引き裂かれ血まみれになって死んでいったお母さんと亮太

 

 

その光景がまぶたの裏に蘇った。

 

 

その瞬間、私の頭の中は激しい怒りでいっぱいになった。

 

目の前で家族を理不尽に殺された。

 

その怒りで急に意識がはっきりとした。

 

インフェルノ(父…さん…母…さん…亮太…。こ…んな…ところで…死んで…たまるかー!!)

 

私は怒りのままに最後の力を振り絞り、全身から超高熱放射を行った。

 

 

 

アカンコウ「ん、なんだなんだ?」

 

ゴロリン「すごい熱でまんねん」

 

 

 

 

その高熱で鯉のぼりメカにダメージを与えることには成功し、粘着液も一部溶け私はなんとか動けるようになった。

 

インフェルノ(しめた!! 早く浮上して空気を!!)

 

 

私は全力で海面へ向けて泳いでいった。

 

 

 

 

クジャク「ちょっと、逃げられちゃったよ!!」

 

アカンコウ「まずい、今の高熱でこっちので電気系統も一部イカれた!!」

 

 

あと一歩というところでプリキュアを取り逃がしてしまい、おまけにその高熱の影響でカープエンペラーも機能がおかしくなっていた。

 

ゴロリン「うわー!! 浸水してきたでまんねん!!」

 

アカンコウ「何!? 装甲に亀裂でも入ったか? いかん、このままじゃ水圧で潰される!!」

 

クジャク「ちょっとどうすんだよ!! なんとか浮上できないのかい!!」

 

パニック状態になり始めたクジャクたちを前に、アカンコウは冷静に状況を判断し一つの結論を出した。

 

 

アカンコウ「やむを得ません。自爆してその爆発力を利用して一気に浮上しましょう」

 

その言葉にクジャクは驚愕した。

 

クジャク「何!? 自爆!? っかー、お前ってば人間離れした顔してると思ってたけど、それだけに発想力も思いっきり人間離れしてるね〜」

 

その言い様にアカンコウはずっこけた。

 

アカンコウ「なんて、ずっこけてる場合じゃないんだよ。いいか二人とも、俺にしっかり掴まってろよ」

 

 

立ち直ったアカンコウは渋くそう決めた。

 

クジャク「アカンコウ」

 

ゴロリン「アカやん」

 

クジャク「なーんてさ、お前にしがみつくぐらいなら、椅子にしがみつくよ私は」

 

ゴロリン「わては自分の方がよっぽど安心できるでまんねん」

 

 

その言葉にアカンコウはもう一回ずっこけた。

 

 

アカンコウ「あーもう。此の期に及んで人をコケにしやがって。じゃあド派手に行こうか!! ポチッとな」

 

その言葉とともに押された自爆スイッチにより、カープエンペラーは大爆発を起こし、排出されたコックピットはその爆発に吹き飛ばされるように一気に浮上していった。

 

 

一方

 

 

インフェルノ(何!? うわーっ!!)

 

残された力を振り絞って必死に浮上していた私は、突然起きた大爆発に巻き込まれて大きく流されていき、そのまま気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

メル(美里、しっかりするメル!! 美里!!)

 

 

誰かが私を呼ぶ声に目を開けてみると、そこにはメルがいた。

 

美里「ゲホゲホ。ここは…」

 

咳き込みながら辺りを見回すと、日は完全に沈み真っ暗になってはいたものの間違いなくオーエエドー海水浴場であり、私は海岸に打ち上げられていた。

 

美里「そっか、助かったんだ私。ハッ、ハックショーン!!」

 

 

どうにか助かったことを確認したものの、ずぶ濡れになっていた私は盛大にくしゃみをした。

 

 

美里「うー寒い。ほら、帰るのにもう一回変身するから、早くしなさい!!」

 

私がそう促したが、

 

メル「そんなに疲れてたら変身してもろくに動けないメル」

 

美里「ちっ、使えないわね」

 

私は舌打ちをして、吐き捨てるようにそう言った。

 

 

このままここで夜を明かそうにも、まだ野宿には早すぎる。

 

なんとかして家まで帰らないといけなかった。

 

美里「携帯も水没して使えないからタクシーも呼べない。近くの駅まで歩くしかないか」

 

私は水を吸って重くなった服を適当に絞ると、よろよろと歩き始めた。

 

正直もうクタクタだったし、多少熱っぽかった。

 

はっきり言ってもうボロボロであり、帰り着けるかどうか不安でもあった。

 

 

メル「美里…やっぱりこのままじゃ…」

 

メルが心配そうに私に声をかけてきたが

 

 

美里「うるさい役立たず!! 耳障りだから黙っててよね!!」

 

私はそう怒鳴ると駅の方へと体をひきずるように歩き出した。

 

 

メル(このままじゃ美里がもたないメル。せめてあと一人プリキュアがいないと…。ミプが誰か見つけててくれればいいけどメル…)

 

 

 

 

 

クジャク「ごらん、カシオペア座だよ。綺麗だね。都会じゃなかなか見れないよ」

 

クジャクが夜空を指差してそう言った。

 

 

ゴロリン「初めて見たでまんねん。するとあれが北斗七星でおますな。満天の星空、いいもんでおますな」

 

アカンコウ「えーっとするとあれが北極星だから、北はあっち。すると陸はこっちの方だな」

 

アカンコウがそう言うと、現実に帰った三人は力なくオールを動かし始めた。

 

 

 

自爆したことでなんとか海面まで浮上できたものの、海流に大きく流されてしまい、浮上したところには見渡す限りの水平線しかなかったのだ。

 

 

クジャク「まったく、生きて帰りつけるんだろうね」

 

アカンコウ「一応緊急用の発煙筒は用意してありますから、明日に希望を持ちましょう」

 

クジャク「はあ〜情けない」

 

 

そんな時流星が夜空を切り裂いた。

 

ゴロリン「あっ流星でまんねん」

 

アカンコウ「よし、お祈りしましょう。生きて帰れるように」

 

クジャク「黙れ、このスカ!!」

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー)第8話に続く

 

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