プリキュアR   作:k-suke

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第8話「Rである意義」

子供の頃に憧れていた、フリフリのかわいい服を身につけた魔法少女。

 

いや今でも憧れている。

 

そんな人が本当にいたら、と。

 

わたしもそんな風になれたら、と。

 

 

 

だから、あの人のことを聞いた時には初めはすごく興奮した。

 

夢の一部が叶ったと。

 

 

でもその人は私の憧れとは正反対の人だった。

 

それが許せなかった。

 

もし私なら…。

 

 

 

 

 

 

 

美里「う〜、八度七分か。なかなか下がらないな」

 

 

私は赤い顔をしながら、体温計の数字を見てそう呟いた。

 

 

あの夜、結局近くの駅までようやくたどり着いた時にはすでに終電は出た後であった。

 

やむなくタクシーに乗ろうとしたものの、スブ濡れでボロボロの私の姿を見て乗車拒否された。

 

 

仕方なく夜通し歩き続けて、どうにか日が昇るころに生きて帰り着いたがそのままダウン。

 

それから十日間、ずっと寝込んでいるのである。

 

 

美里「う〜昨日から何も食べてないな。せめてインスタントのおかゆだけでも食べよう」

 

 

こうして病気になると、家族のありがたさというものが改めてよくわかる。

 

昔風邪を引いた時には、お母さんが看病をしてくれていた。

 

りんごを剥いてくれたり、氷嚢を用意してくれたりした。

 

お父さんはもちろん、亮太だって悪態をつきながらも気遣ってくれた。

 

 

でも今は全て一人でそれをやらなければならない。

 

(一応同居している存在はいるが、何の役にも立たない穀潰しである。口をきける変身アイテムだと思っておくぐらいでいい)

 

美里「くそ! こんなことになったのも全部あいつのせいだ!!」

 

こんなことになった元凶に対する怒りはなおさらつのり、嫌が応に復讐の怨念は増していった。

 

(こうやってカッカカッカしてるから熱が下がらないのかもしれない)

 

 

 

電子レンジでおかゆを温めて、テレビをBGMにぼんやりと食べているとチャイムが鳴った。

 

 

美里「誰かな、一体?」

 

ぼんやりした頭でインターホンを確認すると雪菜たちがいた。

 

 

 

 

雪菜「美里、大丈夫?」

 

理香「今日で十日でしょ、死んでんじゃないかと思ってさ」

 

久美「はいこれ、溜まってるプリント。でも思ってたよりは元気そうね」

 

 

 

美里「うん、みんなありがと」

 

こうして心配して来てくれる友達がいてくれるのは実にありがたい事である。

 

こんな私を心配してくれている、それだけで涙が出そうになった。

 

 

雪菜「でも一体何してこんな風邪ひいたのよ。美里らしくないわよ」

 

久美「そうそう、体の丈夫さが取り柄じゃない」

 

 

美里「う、うん。ちょっとした湯冷めかな。お風呂上がりにバスタオル一枚でいたから」

 

私は苦笑しながらそう言った。

 

理香「まったく、ダメよ。ちゃんとしないと。らしいっちゃらしいけど」

 

そうしてみんなで笑いあったのが、私には嬉しかった。

 

 

久美「ほら、氷嚢作ってきてあげるから。横になってなさいな」

 

そう言って久美は台所に向かった。

 

 

美里「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて…、おっとっと」

 

私は部屋に向かおうとしたが、足元がおぼつかず躓いて倒れそうになった。が

 

 

雪菜「おっと。大丈夫? ほら肩貸したげる」

 

そう言って雪菜がとっさに支えてくれた。

 

 

メル(みんな優しい人たちなんだメル。こんな人たちが美里を支えてくれれば…)

 

そんな光景を見て、メルはポツリとつぶやいていた。

 

 

 

こうして友達といると、少しは頭も冷えてきたらしく、夕方になりみんなが帰る頃にはだいぶ具合もよくなった。

 

 

雪菜「じゃあね美里。早くよくなって学校に来てね」

 

美里「うん。雪菜の発表会もあるし、絶対に治すよ。じゃあ学校でね」

 

理香「バイバイ、美里。学校で会おうね」

 

 

 

雪菜と理香が挨拶をする中、久美がポツリと聞いてきた。

 

久美「ねえ、美里って一人暮らしだよね」

 

美里「? そうだよ。それがどうしたの?」

 

久美「ううん。なんでもない。じゃあお大事に」

 

 

 

 

 

美里の家からの帰り道、雪菜が尋ねた。

 

雪菜「ねえ久美。さっきのどういうこと? 美里が一人なのは…その…」

 

 

久美「…うんわかってるけどさ。なんか美里ん家の中で変な声が聞こえたのよね」

 

理香「空耳じゃない? 私は聞こえなかったよ」

 

雪菜「私はずっと美里と話してたから」

 

 

 

久美「そうかなぁ。それにさ、ペット飼ってるなんて聞いてないよね」

 

理香「? うん、それがどうかした?」

 

 

久美「いやね、台所に猫缶があったのよ。それも食べた後の空き缶が」

 

 

雪菜「缶詰と間違えて買っちゃったんじゃない? 美里ってそそっかしいから」

 

久美「でもさ、幾ら何でも美里が食べると思う?」

 

 

理香「前に飢えてた時に止むを得ず…ってさすがにないか」

 

久美「そうよね。最近変だし美里、何か隠しごとがあるんじゃ…」

 

 

雪菜「やめようよ!! 変なこと言うの!!」

 

そこまで話が進んだところで雪菜が叫んだ。

 

 

雪菜「美里に限ってそんなこと絶対ないわ!!」

 

久美「そ、そうだよね。私が悪かった、ゴメン」

 

 

雪菜(そうよ。そんなわけないわよね、美里)

 

そう言いながらも、雪菜もそうであって欲しいと祈っていた。

 

 

 

そんな会話をしながら帰る三人を物陰から見ている存在があった。

 

???「見つけたミプ。きっとあの人なら…」

 

 

 

 

 

 

久美「あーあ、疲れた。美里があんなんだからなんかこっちも調子出ないのよね。早く元気になってくれるといいけど…」

 

家に帰った久美は部屋の中で着替えながらそう呟いた。

 

 

久美「あっいけない。魔法少女マミ⭐まぎ始まっちゃう」

 

美里たちも知らないことだが、実はこの久美という少女、魔法少女というものに子供の頃から憧れていた。

 

 

テレビで箒に乗って飛ぶ姿を見て、あんな風になれたらなぁと空想し、それが今に至っているのである。

 

そうしてテレビをつけた久美だったが、肝心の番組は特別番組で休止になっていた。

 

 

久美「えーっ!! なんでなんで!?」

 

思わずブーたれた久美だったがその番組に目が止まった。

 

その番組は、キュア・インフェルノに対しての特別報道であり、様々なコメンテーターが彼女について語っていた。

 

 

 

コメンテーターA「彼女はただのテロリストです!! ただ暴れているだけとしか思えません!!」

 

コメンテーターB「それは言い過ぎではないでしょうか。むろん看過することはできませんが、結果的に被害が食い止められているという見方もできます」

 

コメンテーターC「実際に被害にあった人に対して同じことが言えますか? いっそのこと指名手配すべきです」

 

コメンテーターD「素顔も本名も知らないあんな怪物をですか? 猛獣の類と見て捕獲もしくは射殺をすべきです」

 

 

みんな色々言い合っていたが、否定的な意見の方が大勢を占めていた。

 

 

久美「うんうん。そうだよね、私もこうして間接的に被害は受けてるわけだし。それに私の憧れってもんが崩れちゃうわよ」

 

久美もそこまで過激ではないがどちらかといえば否定的な意見の持ち主であった。

 

初めてキュア・インフェルノのことを聞いた時、夢が現実になったと彼女は密かに喜んだものだ。

 

しかし、それはすぐに裏切られた。

 

キュア・インフェルノはどう見ても心優しく皆が憧れるヒロインとはかけ離れた存在だった。

 

 

彼女の目的は今もって不明だが、少なくとも世のため人のためと言った理由で戦っているのではないことだけは容易に想像がつく。

 

久美「あ〜あ。もしも私があんな風になれたらなぁ。みんなが幸せになれるように悪いやつと戦ってさ…」

 

???「じゃあ、やってみるミプ?」

 

 

そんな独り言を言っていると、突然変な口調で話しかけられた。

 

 

久美「えっ? だ、誰?」

 

 

慌てて部屋を見渡すと、そこにいたのはぬいぐるみのような生き物だった。

 

 

???「初めましてミプ。妖精のミプというミプ」

 

久美「ぬ、ぬいぐるみがしゃべったー!!??」

 

 

 

 

 

 

 

ミプ「少し落ち着いたミプ?」

 

久美「大きく息を吸って吐いて。吸って吐いて。う、うんなんとかね」

 

大声で驚きの声をあげた久美の部屋には、当然家族が心配して飛び込んできた。

 

それをなんとかごまかした久美は、深呼吸をして目の前の現実を理解しようとした。

 

 

ミプ「じゃあ、順を追って説明するミプ。ミプは…」

 

 

そうして、ミプは事情を説明した。

 

 

自分が妖精であること。

 

かつて、妖精と人間は仲良く暮らしていたこと。

 

そんな妖精の一人である大神獣が、自分の力に溺れて全てを支配しようとしたこと。

 

妖精と人が力を合わせて戦い、大神獣を封印することに成功したこと。

 

それ以来、妖精たちは責任を感じて人の前から姿を消して封印を守り続けていたこと。

 

 

そのため、だんだんと妖精のことは人々の中から忘れられてしまったこと。

 

やがて人間の文明が進みすぎて空気や水を汚したため、妖精たちは生きていけなくなってしまったこと。

 

その結果、元々少なかった仲間もほとんどいなくなって、密かに守り続けていた封印をもう守れなくなり、大神獣が復活してしまったこと。

 

 

一部始終を話した後、久美は一つ尋ねた。

 

久美「ねえ、さっきママもパパもあなたの声が聞こえなかったみたいだけど、それはなんで?」

 

 

ミプ「多分、妖精の光を見たことがあるんだと思うミプ。だから、妖精であるミプのことがわかって、こうして話ができるんだミプ」

 

久美「妖精の光…? ひょっとすると…」

 

久美は子どもの頃に家族でハイキングに出かけた時、森の奥で不思議な光を見たことがあった。

 

あまりにも綺麗だったので両親にも見せようとしたものの、両親の手を引っ張ってその場所に来た時にはもう光はなかった。

 

 

ミプ「心当たりがあるミプ? もしそうならプリキュアになって、大神獣と戦って欲しいミプ」

 

その言葉に、久美は心が震えるのを感じていた。

 

久美「つまり、私は運命に選ばれたということか。ついに…、ついに私の時代がきたんだー!!」

 

久美は歓喜の叫びをあげた。

 

子供の頃からの夢だった魔法少女になれると思うと、嬉しくて仕方がなかった。

 

久美「フッフッフッ。私に任せなさい。選ばれたものとしてその責任は果たすわ。みんなの夢と希望のために私は戦う。それにあのキュア・インフェルノって子にも正しい魔法少女のあり方を教えて、そんでもってそんでもって…」

 

もはや周りの声など聞こえないというように、彼女は自分の未来を夢想していた。

 

 

ミプ「別に選ばれたってわけじゃないんだけどミプ。妖精の光を見たことのある人なら誰でも変身できるんだからミプ。ただ戦ってくれるかどうかの問題だけミプ…」

 

そんな久美を見て、ミプはぽつりと呟いた。

 

 

そんな中、映しっぱなしになっていたテレビから臨時ニュースが流れてきた。

 

ニュースキャスター「臨時ニュースを申し上げます。オーエエドー市内にある銀行が、巨大なワシのようなロボットに次々と襲撃され、多額の現金を強奪されています。被害額はすでに数億円に上っている模様で…」

 

 

その報道に久美は現実に帰った。

 

久美「まただ。最近こういうのが多いけど、まさかこれが…」

 

ミプ「そ、そうだミプ。大神獣の手先ミプ。あなたは戦ってくれるミプ?」

 

久美「もっちろん。私のデビュー戦だよ!!」

 

久美は力強く、そして嬉しそうに胸を叩いてそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

数時間前 オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

クジャク「よーし、出撃準備はいいかい。今回の第一目的は市内各所にある銀行だ。 くれぐれも忘れるんじゃないよ」

 

アカンコウ・ゴロリン「「イエッサー!!」」

 

 

 

プリキュアに水中戦を仕掛けた後、僅差で敗北し、漂流する羽目になった彼らだったが、漂流二日目にして偶然通りかかった漁船に救助されたのである。

 

 

奇跡に感謝しつつ生きて帰り着いた後に、現状の反省を行った結果、資金不足に伴う戦力不足が敗北の要因の一つにあると判断したのである。

 

 

 

クジャク「一応、大神獣様から予算はもらってるけどさ。限界があるんだよね」

 

アカンコウ「そうですよね。エネルギーでもある大神獣様の闇の力はストックに余裕はありますけど、入れ物でもあるベースアニマルを作るのには、材料代やら武器弾薬やらで金がかかりますからね」

 

アカンコウはため息まじりに続けた。

 

 

アカンコウ「おまけにこんな生活してるわけだから健康保険もくそもないわけで、プリキュアにやられた怪我の治療代は全額自己負担。さらには日々の食費から日用雑費、電気代に水道代。その他エトセトラ、et cetera、etc……これぜーんぶその予算から出してんですもんね。そりゃ資金不足にもなりますよ」

 

 

ゴロリン「なんかわてらの方でも資金を調達する必要がありますな」

 

 

クジャク「それもかなり効率よく大量に調達しないといけないねぇ。何かいい手は…」

 

 

かくして相談の結果、ベースアニマルで暴れるついでに銀行を襲って資金を調達してやろう、という結論に達したのである。

 

 

 

アカンコウ「ワシ型ベースアニマル、スーパークラッチ。スタンバイオーケーです!!」

 

クジャク「よし、発進!!」

 

と、勇ましくクジャクが出撃を指示したが

 

 

ゴロリン「な〜んやカッコ良さげですけど、実際のところ、生活に困った悪人が強盗に行くだけでおますな」

 

ぽつりとゴロリンがそうこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

現在  オーエエドー市 某所

 

 

 

ワシ型ベースアニマルが銀行を上空から爆撃し、大パニックを引き起こしていた。

 

そして、その隙に急降下して大量の現金を持ち去るといった行為を繰り返していた。

 

 

クジャク「う〜ん、いいねいいね。資金は大量に集まる、ブラックエナジーは収集できる。まさに一石二鳥だね〜」

 

 

アカンコウ「はい、これだけ資金があればもっと強力なベースアニマルも作れますよ」

 

クジャクとアカンコウは作戦がうまくいっていることに上機嫌だった。

 

 

ゴロリン「でも、このパターンだと、もうすぐあいつが出てくるんやおまへんやろか」

 

 

そんな二人をよそに、ゴロリンはかなり不安そうな顔をしていた。

 

クジャク「いいんだよ。出てきたなら出てきたで。最初に言っただろ、今回の目的は資金調達だって」

 

 

アカンコウ「そうそう。戦う必要なんてないのよ。あいつがきたら現ナマもって逃げればいいの。じゃあ次は5丁目にいきましょうか」

 

 

コックピット内で三獣士がそんなこと言いながら、ワシ型メカは次の獲物を求めるかのように上空を飛行していた。

 

 

 

 

 

久美「はあはあ。見つけた。よーし、やつらが攻撃しようとしたら颯爽と現れて変身よ」

 

久美は、ミプの変身して現場に行ったほうがいいという忠告にも関わらず、現場で変身することにこだわり走ってきたのだ。

 

ミプ「なんでこんな非効率なことをするミプ?」

 

久美「わかってないなぁ。こういう変身シーンが一番の見せ場なんじゃない」

 

 

そうしているとワシ型メカが上空で爆撃体制に入った。

 

それを見届けた久美は今がチャンスとばかりに、息を大きく吸い込んだ。

 

 

久美「もうやめなさい!! これ以上は絶対にさせない…」

 

そう叫んだのだが、ワシ型メカは久美のことなど気にもとめず爆撃を行った。

 

 

その結果、いきなり近くで起きた大爆発とそれが起こした爆音と爆風に、久美は吹き飛ばされ尻餅をついてしまった。

 

 

 

そうして、目の前に降りてきた巨大なワシ型メカを見て、久美は腰が抜けたまま立ち上がることもできなかった。

 

 

久美「あ…、ああ…」

 

ミプ「どうしたミプ? 戦うんじゃないのかメプ?」

 

 

久美「む、無理よ…。あんなのと戦うなんて…」

 

 

ミプはそう尋ねたが、さっきまでの勢いは何処へやら、久美は尻餅をついたまま、奥歯をガチガチと鳴らし震えていた。

 

 

 

久美は自分の目の前で起きた爆発に、初めて気がついたのだ。

 

 

これはアニメではない、現実だということに。

 

自分がやろうとしていたのは、命をかけた本物の殺し合いだということに。

 

 

それを理解してしまった今、彼女は死に怯えるただの中学生でしかなかった。

 

 

 

ミプ「そ、そんな…。ん? あ、あれは…」

 

その時、上空から火の玉が飛来してきた。

 

 

その火の玉はワシ型メカに体当たりして地面に叩き落すと、そのまま自分も着地し、赤い仮面を身につけた女の子に姿を変えて名乗りを上げた。

 

 

インフェルノ「地獄からの使者 キュア・インフェルノ!!」

 

 

 

久美「あ、あの子は!? 冗談じゃない、早く逃げないと」

 

インフェルノの姿を見て、久美はこのままでは戦いに巻き込まれてただではすまないことになると理解した。

 

その恐怖からか、なんとか立ち上がり、文字通り死に物狂いで逃げ出した。

 

 

ミプ「ま、待ってくれミプ」

 

置いてけぼりにされたミプも慌てて久美を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

ゴロリン「きましたで、きましたで。プリキュアでおます」

 

 

自分の予想していた通りのことが起こり、ゴロリンは慌てていた。

 

しかし、クジャクは想定通りと言わんばかりに落ち着いていた。

 

 

クジャク「慌てるな。あいつが来るなんていつものこと。今回は戦う必要はなし。三十六計逃げるにしかず。さ、撤退だ」

 

アカンコウ「はいな」

 

 

アカンコウは返事をするや否や、ワシ型メカを上昇させようと翼を大きく広げた。

 

 

 

 

インフェルノ「!! 逃がすもんか!!」

 

なんとなくつけていたニュースであいつらが暴れていることを知った私は、無理をするなとやかましかったメルを力任せに黙らせて変身した。

 

 

そうして現場に飛んできた私だが、いきなり逃げようとする相手を見て、そうはさせじと飛びついた。

 

 

つもりだったが

 

 

インフェルノ「あ…う…」

 

まだ熱が完全に下がりきっていなかったため、足元がふらつき、まともにジャンプもできず、そのまま地面に倒れこんでしまった。

 

 

インフェルノ「く、くそ…。こんなことくらいで…」

 

 

私は目の前の敵を文字通り親の仇のように睨んだが、万全でない体調は如何ともし難く、立ち上がるだけでもやっとだった。

 

 

 

 

そんなインフェルノの様子は三獣士たちにも疑問を抱かせた。

 

 

クジャク「ん? なんだい、プリキュアのやつ随分ふらついてるね」

 

ゴロリン「そうでおま、いつもならもっとがむしゃらに飛びかかってくるでまんねん」

 

 

アカンコウ「そうですね。ちょっと試してみましょうか」

 

そう言うとアカンコウはボタンを操作して、ミサイルを発射した。

 

 

 

 

 

インフェルノ「うあーっ」

 

私は発射されたミサイルをいつものように躱そうとしたが、思うように体が動かず、直撃を喰らい大きく吹き飛ばされた。

 

 

インフェルノ「く、体が…」

 

私は思うように動かない体にもどかしさと悔しさを感じていた。

 

 

 

クジャク「こりゃ、相当調子が悪いみたいだね。チャンスだよ」

 

アカンコウ「はい、このままあいつも倒してしまいましょう」

 

インフェルノの調子が明らかに悪いと気づいたクジャクは、作戦を変更して襲いかからせた。

 

 

飛び立とうとしていたワシ型メカは、翼を納めるとクチバシでインフェルノを突き刺した。

 

 

インフェルノ「ギャアァァァア!!」

 

 

鋭いクチバシでお腹を突き刺された私は絶叫した。

 

 

そのままお腹を抑えてうずくまっていると、鋭い爪のついた足で何度も踏みつけられ、あげくに大きく蹴り飛ばされた。

 

 

 

インフェルノ「はあはあ、熱さえなければ…」

 

動き回ったせいか、熱はさらに上昇しており、私は頭がぼーっとして、目も霞んできていた。

 

 

受けたダメージもあって、すでに立ち上がることも困難になっていた。

 

 

 

 

 

アカンコウ「クックックッ。調子も良くないのに出しゃばるからだ。死ね!!」

 

 

倒れ伏してしまい立ち上がることもままならなくなったインフェルノに対して、アカンコウはメカを操作して、インフェルノを爪で鷲掴みにして、そのまま翼を広げて飛び立った。

 

 

アカンコウ「このまま、引きずり回して八つ裂きにしてやる」

 

 

 

インフェルノ「ぐうう」

 

私は全身に食い込む爪の痛みに悶えていた。

 

さらにその状態で上空を振り回され、熱に浮かされた頭も相まってどっちが上か下かもわからなくなってしまった。

 

インフェルノ(これじゃ…負ける!? そんなことになったら…)

 

私の生きる目的、戦う理由。復讐。

 

それができないまま死んでしまう。

 

 

そんなことはごめんだった。

 

 

インフェルノ「負けて…たまるかー!!」

 

私は怒りのままに全身に力を込めた。

 

その結果、爪をへし折ることに成功し、メカから逃ることができた。

 

 

しかし、当然私は上空で突然放り出された格好になってしまい、それを狙ってワシ型メカが旋回してクチバシで突き刺そうとしてきた。

 

 

 

 

クジャク「ちょっと、また逃げられたよ」

 

アカンコウ「ご心配なく。このまま串刺しにしてやります」

 

 

 

インフェルノ「向こうから来てくれるなら、かえってありがたいわ。プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

そう叫ぶと両手を大きく振りかぶり、炎の塊を力を振り絞るように投げつけた。

 

 

そのまま炎の塊を真正面から受けたワシ型メカは、火の鳥のようになって飛んでいき、遠くの方に墜落して爆発した。

 

 

 

もっとも、私の方も力を使い果たしてしまい、そのまま地面に墜落し全身を強打したが。

 

 

 

 

 

 

一連の流れを久美はこっそり物陰で見ていた。

 

そんな久美にミプは話しかけた。

 

ミプ「あの…あなたは戦ってくれるミプ?」

 

 

その問いに久美は自分を恥じるかのように答えた。

 

久美「ごめんなさい。私には無理。これは現実。あんな戦いなんて私にはできないわ。あの子、キュア・インフェルノだっけ。あんなになっても戦えるなんて、はっきり言って相当イカれてるよ」

 

 

その言葉に、ミプはこれ以上無理強いできないと悟った。

 

 

ミプ「わかったミプ。あなたと一緒に戦うのは諦めるミプ」

 

 

久美「ありがとう。でもさ、正直言うと他の子を探すのもやめて欲しいんだ。あんな事しなきゃならない子が増えるなんて、やっぱり、ねぇ」

 

そういうと、久美は一人家路へとついた。

 

 

そんな久美を見送りながらミプはつぶやいた。

 

ミプ「わかってるミプ…でも…」

 

 

 

 

余談だが、この後久美は魔法少女への憧れなどというものは完全になくなった。

 

あんなものは憧れるものじゃないということが身に染みてしまったからである。

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

 

クジャク「ちゅう・ちゅう・たこ・かい・な。ちゅう・ちゅう・たこ・かい・な。ハァー情けない。あれだけ派手なことしといてたったこれだけとは。怪我の治療代等を加味すると完っ全に赤字だね」

 

 

手に入れた戦利品とでもいうべき一万円札をボロボロになったクジャクが数えていたが、何度数えてもせいぜい二十数万円といったところでしかなかった。

 

 

 

アカンコウ「はい。な〜んせ墜落したところが、よりにもよって警察署のど真ん前でしたからね。もう取るものもとりあえず逃げ出してきた次第で」

 

ゴロリン「で、まんねん」

 

同じくボロボロになった二人もため息とともにそう漏らした。

 

クジャク「しっかしこれじゃ結局今回の作戦は失敗か。二兎追うものは一兎も得ずとはよくぞ言った」

 

 

アカンコウ「しかし、そうすると今後の資金はどうします」

 

アカンコウは、答えはわかっているとでもいうように尋ねた。

 

 

クジャク「どうもこうもないだろう。節約に加えて、せめて生活費分ぐらいはバイトしよっか」

 

 

その言葉に、一同は大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

二日後 渚家

 

 

 

 

雪菜「美里。まだ良くならないの?」

 

理香「そんなに酷いの? あんまり酷いんじゃお医者さん呼んだ方がいいよ」

 

 

美里「うん。そんなに酷くはないけど、なかなか熱が下がらなくてね。イタタ」

 

ベットで寝ていた私は、お見舞いに来てくれたみんなのために上体を起こそうとしたが、体の痛みに顔をしかめた。

 

 

久美「? どうしたの? どこか痛むの?」

 

 

美里「あ、うん。頭がぼーっとしたままトイレに行ったりして何度も転んだからあちこちぶつけちゃってね」

 

 

全身をぶつけたのは本当だが、私はそう言うしかなかった。

 

 

久美「へーそうなんだ」

 

 

久美はこの間来た時の猫缶や、自分だけに聞こえたおかしな声のことを思い出していた。

 

 

久美(まさか…ね。美里がなんて、そんなことないよね)

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー)第9話に続く

 

 

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