プリキュアR   作:k-suke

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第二部 絶対零度の絶望
第9話「Rの連鎖」


 

オーエエドー市内 市民ホール

 

 

 

雪菜「はぁー緊張する。まさか、パパとママまで来るなんて思わなかったもの」

 

 

雪菜は控え室の椅子に座って深呼吸をしていた。

 

 

美里「落ち着いてやれば大丈夫だよ。雪菜のピアノは最高なんだから。自信持っていいよ」

 

 

今日は雪菜のピアノの発表会なのである。私も今日初めて知ったが、その審査員には雪菜の両親が選ばれていたのだ。

 

 

音楽の世界では天才といわれる雪菜のお父さんと世界的なヴァイオリニストの雪菜のお母さんは世界中を飛び回っており、雪菜は普段はおばあちゃんと暮らしている。

 

それだけに、久しぶりの再会には雪菜も嬉しかったようだが、まさかこの大舞台になるとは思わなかったらしい。

 

 

 

雪菜「すーはーすーはー。ありがとう美里。美里がいてくれるから私も頑張れるんだよ」

 

何度も深呼吸をして少しは落ち着いたか、雪菜はにっこりと笑ってそう言った。

 

この大一番で私のことを持ち上げてくれるのはうれしいが、少し照れ臭かった。

 

 

美里「そんなことないって。雪菜なら私なんかいなくても大丈夫だよ。じゃ、頑張って応援してるから」

 

雪菜「ありがとう。発表会が終わったら、また対戦してね。今度こそ絶対勝つんだから」

 

美里「OKOK! いつでも受けてあげるよ」

 

 

 

そう言って私は控え室をでて、客席の方へ向かった。

 

 

 

そんな美里を見送った雪菜は、ポツリと言った。

 

雪菜「ホントだよ、美里。私がスランプで落ち込んでたから、ゲームに誘ってくれたんだよね。それに昔、雑木林で迷子になった時だって美里がいてくれたから、安心できたんだよ」

 

 

雪菜は子どもの頃、雑木林で美里と遊んでいた時のことを思い出していた。

 

そして、その頃から何があっても美里が自分を励まし続けてくれていたことを思い出した。

 

 

 

あの頃には、もう既に両親は世界中を飛び回っており日々寂しい思いをしていた。

 

そんな中、本当に久しぶりに帰国した両親と一緒に町の外れにある雑木林にピクニックに行ったのである。

 

もっと遠出をするには両親のスケジュール上無理があり、近場でのことになってしまったが、それでも雪菜には嬉しい時間だった。

 

そんな時、たまたま同じように遊びに来ていた少女と木の実を拾ったりして遊んでいるうちに雑木林の奥の方へ行ってしまい道に迷ってしまったのだ。

 

それから30分近くも林の中を出口を求めて歩いたが、一向に帰り道はわからなかった。

 

雪菜は薄暗い林の中不安で仕方なかった。

 

しかし、一緒にいた少女が雪菜を勇気付けていた。

 

 

「大丈夫。きっと帰れるよ。諦めちゃダメ」

 

今にして思えば、いかにも子供らしい実に根拠のない励ましだが、それでも雪菜にはそばに人がいてくれるというだけで、勇気付けられたものだった。

 

 

その後、雪菜たちは林の中で眠っていたところを救助された。

 

 

かくして、その時の少女、渚 美里との親交は今なお続いているのである。

 

 

 

それだけに、最近美里が何かに悩んでいるにも関わらず、何の力にもなってやれないことには苛立ちと無力さを感じていた。

 

 

雪菜「私にも、もっと力があれば…。美里を支えてあげられる力が…」

 

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

 

クジャク「さてと、お前たちの方はどんな塩梅だい?」

 

 

クジャクがアカンコウとゴロリンに現状を報告させていた。

 

アカンコウ「はい。時給三千円で中高生の家庭教師をやってます。これでも元々有名大学の研究室にいましたからね。結構ブランド志向の親からの需要があるんですよね」

 

ゴロリン「わては引越しのバイトでまんねん。腕力のある奴は重宝されるみたいで日当二万円近くになりま。クジャク様は?」

 

 

 

クジャク「うん。スーパーのレジ打ちやってるけどさ。これはこれで結構面白いもんだね。惣菜の売れ残りとかもらえたりしてさ」

 

どこか楽しそうに報告した二人にクジャクもまたどこか充実したような顔でそう答えた。

 

 

 

 

アカンコウ「な〜んかさぁ。こうやってバイトして生活費稼いでさ、ここで暮らしていくのも悪くないかもね」

 

ゴロリン「そうでんな。ここにいれば住むところにも困りまへんし」

 

 

クジャク「お前ら、なにをやる気のないことを言ってんだい!! 目的を見失うな!! と、いつもなら言うのだけれど…」

 

どこか晴れ晴れした口調でそういったアカンコウとゴロリンに対して、クジャクが諌めるように怒鳴ったが

 

 

クジャク「私もさ、ちょうどそんなこと考え始めてたとこ。このままこうやって生活してこっか」

 

クジャクも笑いながらそう答えた。

 

 

もともとベースアニマルの開発に使う資金稼ぎのアルバイトを始めた三獣士だったが、どこかそっちにやりがいを感じ始めていたのだ。

 

 

そんな時だった。

 

 

 

急にあたりが暗くなったかと思うと不気味な声が響いた。

 

大神獣「三獣士よ」

 

それを聞いた三人は慌てて跪いた。

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「ははーっ!!」」」

 

すると、三人の前に不気味なモヤのようなものが現れた。

 

 

大神獣「我こそは大神獣。この世界を恨み憎むものなり」

 

 

するとどこか怒気をはらんだような声で大神獣は続けた。

 

 

大神獣「三獣士よ。このところブラックエナジーの収集が滞っているがどういうことだ」

 

 

 

クジャク「ははーっ、大神獣様。申し訳ありません。現在資金を集め、強力なベースアニマルを開発中です。次の出撃では必ずや」

 

その言葉に冷や汗をかいたクジャクは、かしこまって必死にそう告げた。

 

 

大神獣「うむ、期待しているぞ」

 

その言葉に一応満足したか、モヤのようだった大神獣は姿を消した。

 

 

 

三獣士は恐る恐る顔を上げ、大神獣が姿を消したのを確認すると大きく息を吐き出すと愚痴り始めた。

 

 

アカンコウ「ちょっと、なんであんな口から出任せ言ったんですか、クジャク様。確かに開発途中でほったらかしてあるベースアニマルはありますけど」

 

クジャク「仕方ないだろ、あの場合ああでも言わないとさ」

 

そして、ため息混じりにクジャクは続けた。

 

 

クジャク「でも大神獣様を復活させるってのも、今更っていうかねぇ」

 

アカンコウ「そうですねぇ。私たちにあれこれ指示されるのも、もう却っていい迷惑ですし。何様だって感じですよね」

 

アカンコウも迷惑そうにそう続けた。

 

 

ゴロリン「でもまぁ。拾ってもらった恩もありま。せめて復活ぐらいは手伝ってもええんじゃおまへんか」

 

 

 

クジャク「はぁ〜まあ仕方ない。とりあえず出撃準備」

 

ゴロリンの言葉に、いかにもしぶしぶといった感じにクジャクがそう指示した。

 

 

アカンコウ「いいですけどどこに行きます?」

 

クジャク「あ〜もうどこでもいいよ。どっか適当なとこで。暴れさえすりゃそれでいいんだから」

 

やる気のなさそうなアカンコウの質問にクジャクもまた投げやりに答えた。

 

 

ゴロリン「じゃあここなんてどうでおま? こないだの運送のバイト中にもらったチラシでおます」

 

ふと思いついたように、ゴロリンがボロボロのチラシを出した。

 

クジャク「ん、なになに? 中学生のピアノ発表会? 有名な音楽家が審査員か。あ〜もうここでいいや。 はい準備して」

 

 

アカンコウ・ゴロリン「「イエッサー」」

 

 

 

 

 

オーエエドー市民ホール

 

 

 

 

私はホールの客席で雪菜の出番を待っていた。

 

 

すでに何人かの演奏も終わっていたが、やはり私の中ではイマイチだった。

 

 

美里「他の人はどう思ってるか知らないけど、やっぱり雪菜よりうまい人はいないな。早く聞きたいなぁ、雪菜のピアノ」

 

 

私は雪菜の演奏を心待ちにしていた。

 

血の匂いの染み付いてしまっているこの心だが、雪菜の演奏を聴いている間だけはそれを忘れられる。

 

そんな気がしていた。

 

 

そんなことを考えていると、場内アナウンスが流れた。

 

アナウンス「次はエントリーナンバー9番。叶 雪菜さんです」

 

 

拍手とともにドレスに身を包んだ雪菜が緊張の面持ちで舞台の袖から出てきた。

 

 

 

美里(雪菜。頑張ってね)

 

 

私は心の底からそう思った。

 

 

その次の瞬間だった。

 

 

持ってきたバッグが震えだしたのだ。

 

 

それに私はこれ以上ない不快感を覚えた。

 

 

美里(アンタ何考えんのよ、こんな時に!!)

 

 

私が小声で怒鳴りつけると、バッグは怯えたような声を出した。

 

メル(ご、ごめんなさいメル。でもいつもはすぐに知らせろって…)

 

 

美里(時と場合にもよるわよ!! ホンットに役立たずなんだから!! で、どこに来たのよ!?)

 

 

メル(そ、それが…)

 

美里(それが何よ!! 早く言いなさい!!)

 

 

私ははっきりしないバッグにイライラしながら尋ねた。

 

メル(こっちに向かってきてるメル…)

 

 

美里「はぁ!?」

 

私はふざけたことを言うバッグに対して素っ頓狂な声を上げた。

 

 

次の瞬間、ホールの壁をぶち破って、大きな二本のツノを生やした巨大なバッファローのようなロボットが出現した。

 

 

 

 

 

 

アカンコウ「これが新型ベースアニマル、周りをブルブル震わせるという意味を込めたバッファロー型メカのブルブルバッファローです」

 

 

クジャク「あ〜解説はいいから。適当に暴れて、ブラックエナジーを適当に収集したら、適当にやられてさっさと帰ろう」

 

いかにもやる気のなさそうに手をひらひらさせながらクジャクがそう告げた。

 

 

ゴロリン「そうでおま。怪我したらまた無駄な金が出て行くでまんねん。バイト代がパァになりま」

 

 

アカンコウ「心配しなくても私だって嫌ですって。直にプリキュアがくるでしょうから奴が来たら今回こそさっさと逃げましょう」

 

 

ゴロリンとアカンコウも異論はなく、すでに逃げる気は満々であった。

 

 

 

しかし、そんなこととは露知らず突然巨大なメカが乱入してきたホール内は大パニックになっていた。

 

 

 

「いつものやつだぞー!!」

 

「うわーっ助けてくれー!!」

 

「早く逃げろー!! またあいつが来て巻き込まれるぞー!!」

 

 

アナウンス「ご来場の皆様。落ち着いて避難してください。落ち着いて係員の指示に従って避難してください」

 

 

避難誘導アナウンスの流れる中、私は人の波をかき分けてなんとか廊下に出た。

 

そしてそのままトイレに駆け込むと、バッグを逆さに振って役立たずを床に叩き出した。

 

美里「なにやってんのよグズが!! 準備ぐらいしときなさいよ!!」

 

こうしている間にも、もしかしたら雪菜が傷ついているかもしれない。

 

そう思うと気が気でなかった。

 

 

メル「痛いメル。もう少し丁寧に…」

 

次の瞬間、私は床にどこかぶつけたのか痛がっていたぶつくさと空気の読めないことを言う役立たずを蹴り飛ばしていた。

 

 

美里「あんたの都合なんか知らないわよ!! 早くしろ!!」

 

 

すると観念したように役立たずはスマホに変身した。

 

 

美里「ったくグズが!! プリキュアマスクチェンジ!!」

 

次の瞬間、私は赤い光とともに深紅のドレスに身を包んでいた。

 

 

 

このドレスの色を見ると最近思うようになったことがある。

 

 

初めの頃は、復讐という決意と怒りの赤のように見えた。

 

しかし今では血の赤に見えて仕方ない。

 

自分が巻き込んでしまった多くの人の血の色、怨みの色。

 

復讐のためと言いながら、自分と同じような人を増やしている。

 

 

この仮面もまた、それから逃げるためのものではないか。

 

そんな風に感じてきていた。

 

 

 

 

 

雪菜「あ…あ…」

 

突然出現した巨大なバッファロー型メカに、雪菜は舞台の上で腰を抜かしていた。

 

 

「何してるんだ!! 早くこっちに来るんだ!!」

 

 

安全のためにすでに緞帳は下ろしてあり、メカの姿はもう見えなくなっていたが、間近で巨大なメカを見てしまった恐怖は残り、舞台の袖でのスタッフの必死に呼びかけにもかかわらず、足がどうしても動かなかったのだ。

 

 

 

 

クジャク「おい、まーだあいつは来ないのかい? なんなら場所変えようか」

 

クジャクがバッファロー型メカのコックピットで退屈そうにそう尋ねた。

 

 

アカンコウ「まだみたいです。まったく来なくていい時には来て、来て欲しい時に来ないんだから」

 

アカンコウもなかなか来ないプリキュアに愚痴っていた。

 

そして事実バッファロー型メカは最初に乱入した時を除いて、表立った破壊や殺戮をしていないのであり、それが三獣士のやる気のなさを物語っていた。

 

 

そんな時に火の玉がバッファロー型メカに体当たりして、大きく体勢を崩させた。

 

 

 

私は火の玉になって、バッファローメカに体当たりして吹き飛ばすと、雪菜の発表会の邪魔をしたやつに憎しみを込めて言い放った。

 

 

インフェルノ「地獄からの使者 キュア・インフェルノ!!」

 

 

インフェルノ(今の私の数少ない癒しを邪魔して、絶対に許さない!!)

 

私は、自分の唯一の支えを奪おうとしたやつに凄まじい怒りを燃やしていた。

 

 

 

 

 

一方、大きく揺れたコックピットの中で、三獣士はひっくり返りながらも待ちに待った奴がきたと安堵していた。

 

 

クジャク「イタタ。しかしやっときたみたいだね。それじゃまぁ、煙幕でも張って脱出だ」

 

アカンコウ「ハイな。ポチッとな」

 

そう言ってアカンコウはボタンを押したが、何も起こらなかった。

 

 

アカンコウ「あれ、おかしいな。どうしたのかな」

 

何度もボタンを連打したもののうんともすんとも言わなかった。

 

 

クジャク「何してる? 早く逃げるんだよ!!」

 

目の前では、キュア・インフェルノが完全な臨戦態勢に入っている。

 

焦りながらクジャクはアカンコウを急かした。

 

 

 

アカンコウ「あの、大変言いづらいのですが、どうやらさっきの体当たりで脱出装置が故障したみたいです」

 

 

ゴロリン「と、すると、残された道は…」

 

クジャク「戦うしかないってこと?」

 

アカンコウ「はい…一応武器はありますけど…」

 

 

三人の顔は血の気が引いていた。

 

 

 

インフェルノ「ハァアアア!!」

 

私は目の前のバッファロー型メカに怒りを込めて殴りかかった。

 

 

すると炎をまとった拳は、敵メカを大きく殴り飛ばし、ボディを大きく凹ませた。

 

 

インフェルノ「このまま一気に仕留めてやる!!」

 

ダメージを受けたバッファロー型メカに対して、私はいけると思った。

 

今回は私も体調がいいし、周りに水もない。

 

このまま押し切ってやると気合を込めた。

 

 

すると、敵メカはなんとか起き上がり、二本の角を振りかざして突進してきた。

 

 

インフェルノ「そんなものに!!」

 

私はその突進をジャンプしてかわすと、空中で一回転しながらキックを食らわせた。

 

 

すると突進を躱された敵メカは、勢いそのままに客席に突っ込んだ。

 

 

 

 

アカンコウ「くう。やっぱりこいつ強いですね」

 

クジャク「感心してる場合かい。なんとか無事に帰る方法を考えるんだよ!!」

 

 

アカンコウは客席に突っ込んだブルブルバッファローを必死に起き上がらせようとしたが、なかなか起き上がらなかった。

 

 

アカンコウ「ええい。角が何かに引っかかったな。なかなか動けん。くそ、この」

 

しばらく操縦桿をガチャガチャとがむしゃらに動かすと、角に客席の椅子がいくつか突き刺さったままではあるがなんとかブルブルバッファローは起き上がった。

 

 

 

 

 

私は起き上がってきたバッファロー型メカを見て、体が強張るのを感じた。

 

角に赤い椅子が突き刺さったのを見て、あの日のことを思い出してしまったのだ。

 

ただそこにいたという理不尽な理由で突き殺されたお父さん。

 

目の前で起きた何よりも理不尽な現実が私の脳裏にフラッシュバックした。

 

 

インフェルノ「お父…さん…。う、うわー!!」

 

 

私はどこか混乱した頭で、獣のような雄叫びと共にバッファロー型メカに飛びかかった。

 

 

 

 

アカンコウ「なんだなんだ? めちゃくちゃに攻撃してきだしたぞ!?」

 

ゴロリン「なんか危ない感じがするでまんねん」

 

クジャク「あいつ急にどうしちゃったんだろ?」

 

コックピットの揺れに必死に耐えながら三獣士は、急に激しくなったインフェルノの攻撃に疑念を持っていた。

 

 

そうこうしている間にも、がむしゃらに繰り出したインフェルノの炎のパンチはバッファロー型メカの首を叩き折り、続いて繰り出されたラッシュにメカの全体はボコボコになり、立ち上がることは愚かまともに動くこともできなくなっていた。

 

 

クジャク「まずいまずい!! このままじゃやられちゃう。なんとか脱出できないのかい!?」

 

 

クジャクが文字通り必死にそう叫んでいた。

 

 

アカンコウ「あのコードさえ繋ぐことができればなんとか…、くそ手が届かん!!」

 

コックピットの下に潜って必死に脱出装置の修理をしていたアカンコウだが、あと一歩というところで手がコードに届かず、悪戦苦闘していた。

 

 

 

 

 

インフェルノ「アアァァァア!!」

 

私は、もはや自分でも今何をしているかわからないほどになり、動けなくなったバッファロー型メカの足を抱きかかえるようにすると、力任せに振り回して舞台の方へと投げ飛ばした。

 

メル「少し落ち着くメル!! 今悲鳴みたいな物が聞こえたメル!!」

 

腰のスマホケースがなにか言ったような気がしたが、私は気にもとめず両手を大きく振りかぶった。

 

インフェルノ「プリキュア・インフェルノ・バースト!!」

 

その叫びともに、私は両手の炎の塊を目の前の悪夢を振り払うかように投げつけた。

 

 

 

 

 

 

一方バッファロー型メカのコックピットでは

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「うわーっ!!」」」

 

 

乗っているメカを力任せに振り回された三獣士が悲鳴をあげていたが、

 

 

アカンコウ「ん? しめた!! 今の弾みで手が届いた。脱出できますよ!!」

 

大きく投げられた弾みでアカンコウの手が奥のコードに届いたのだ。

 

 

クジャク「よし!! 急ぐんだよ!!」

 

そう言ってクジャクが脱出装置のスイッチを入れたのと、インフェルノの必殺技が炸裂したのはほぼ同時だった。

 

 

炎の塊の直撃をまともにくらい、舞台の上でバッファロー型メカは大爆発を起こした。

 

 

 

そしてその爆発に紛れるようにフラフラと脱出ポッドが飛んで行った。

 

 

アカンコウ「ひぃひぃ。なんとか間に合いましたね」

 

クジャク「そうだよ。こんなことで死ぬなんてまっぴらごめんだよ」

 

ゴロリン「で、まんねん。命あっての物種でおま」

 

 

 

 

目の前の爆発にようやく私は少し正気にかえった。

 

インフェルノ「はぁはぁ。あれ、いつの間に倒したんだろ? まぁいいわ、面倒になる前にとりあえず引き上げよう。雪菜も無事ならいいけど…」

 

私は火の海と瓦礫の山と化した舞台を一瞥すると火の玉になって飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰か…助けて… う…腕…が… 私の… 腕が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市郊外 雑木林の洋館

 

 

 

 

クジャク「ふう、なんとか帰ってこれたけどさ。次から武器より何より脱出装置のほうをもう少し丈夫にしといてくれよ。命がけで逃げるなんて嫌だよもう」

 

 

ゴロリン「そうでおま。特に今回は危なかったでおます」

 

 

アカンコウ「そうですね。メカの設計を根本的に見直しましょう」

 

 

兎にも角にも生還できたことに一息をついていた三獣士は、これからの方向性について話し合っていた。

 

 

 

そんな時、急にあたりが暗くなったかと思うと不気味な声が響いた。

 

大神獣「三獣士よ」

 

それを聞いた三人は慌てて跪いた。

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「ははーっ!!」」」

 

 

すると、三人の前に不気味なモヤのようなものが現れた。

 

 

大神獣「我こそは大神獣。この世界を恨み憎むものなり」

 

 

 

大神獣「三獣士よ。敗北した原因はわかっておるのか?」

 

 

クジャク「は、はい。それはもう。資金を投入したメカでしたが、いささか欠陥があったようで」

 

アカンコウ「は、はいそうなんです。いやぁ私としたことがつまらない計算ミスをしちゃいまして」

 

 

ゴロリン「猿も木から落ちるといいまんねん。こんなこともたまにはありま」

 

 

明らかに怒りを含んでいるとわかる低い声で問いかけてきた大神獣に、三獣士は冷や汗を流しながら必死に言い訳をした。

 

 

大神獣「ふん。まあ原因がわかっているならばよい。次こそは間違いなくプリキュアをしとめよ」

 

その言葉を最後にモヤのようなものは晴れていった。

 

 

 

クジャク・アカンコウ・ゴロリン「「「ぷはーっ!!」」」

 

 

大神獣が姿を消したのを確認すると、三獣士は緊張の糸が切れたかのように大きく息を吐き、床にへたりこんだ。

 

 

クジャク「ひいー寿命が縮んだよ。やっぱり適当にやってると後が怖いね」

 

アカンコウ「そうですね。サボるんじゃなくてプリキュアをさっさと倒すことにしましょう。それで義理を果たしたらここをおさらばしましょうか」

 

ゴロリン「賛成でまんねん」

 

クジャク「よーし。今度は真剣にバイト代をベースアニマルにつぎ込むよ」

 

 

 

 

 

 

 

オーエエドー市 市民病院

 

 

 

 

私は戦いを終えて一息をついて、雪菜に会いに行こうとしたら、雪菜のパパとママから雪菜が緊急搬送されたとの連絡を受け、転がるように病院に向かっていった。

 

 

美里「雪菜!!」

 

私は大慌てで雪菜の病室に駆け込むと、そこには家族に囲まれベッドの上にいる雪菜がいた。

 

 

雪菜父「ああ、美里くん。来てくれたのか」

 

美里「当たり前ですよ。それで雪菜は?」

 

 

 

私の疑問に雪菜は、ベッドで横になったまま笑顔で答えた。

 

雪菜「大丈夫よ。命に別状はないって。二週間もすれば退院できるって」

 

 

 

その言葉に私は心の底から安堵した。

 

 

美里「そっかよかった。早く元気になってね。それでまたピアノ聞かせてよ」

 

 

私は雪菜を励ますつもりで軽くそう言った。

 

 

しかし、私の言葉に病室は一気に暗くなった。

 

 

 

すると雪菜は突然私から顔を背けた。

 

 

雪菜「ありがとう美里。でも…私…私は…もう…」

 

 

涙声で必死に絞り出すように雪菜が呟くと、雪菜のパパとママは雪菜を残し、私を連れて病室を出た。

 

 

 

 

 

 

雪菜父「舞台に取り残された後、連中の戦いに雪菜は巻き込まれてね。奇跡的に全身の怪我はほとんどかすり傷なんだけど…」

 

雪菜母「右手に何かの破片が深く突き刺さったみたいで、筋が何本か切れてしまったの。リハビリをすれば日常生活は問題なくこなせるそうだけど…もうピアノを弾いたりすることは…」

 

 

雪菜のパパとママも必死に涙をこらえながら私に教えてくれた。

 

 

 

美里「そ…んな…」

 

 

それを聞いた途端、私は膝から崩れ落ちた。

 

 

美里「あの時…雪菜があそこに…私が…私の所為で…」

 

私は焦点の合わない目でそう呟いて、手のひらを見た。

 

 

血塗られた手。

 

復讐のためになりふり構わず戦った結果。

 

私は一番大切な物を自分の手で壊してしまった。

 

 

美里「あ…あ…」

 

 

 

美里「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

 

 

雪菜は一人になった病室で枕を濡らしていた。

 

 

雪菜「なんで…こんなことに…私が何をしたの…」

 

 

自分が子供の頃から見ていた夢。

 

幼馴染の親友が応援してくれた夢。

 

 

それが、あまりにも理不尽に奪われた。

 

 

それが悲しくそして悔しくて仕方がなかった。

 

 

 

雪菜「許せない…許せないよ…こんなこと…!!」

 

雪菜の中で何かが燃え上がり始めていた。

 

 

 

 

そんな雪菜の耳におかしな声が聞こえたのは、その直後であった…

 

 

 

プリキュアR(リベンジャー)第10話に続く。

 

 

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