GATE モリアーティ教授(犬) 彼の地にて 頑張って戦えり 作:BroBro
お待たせしました、リアルで色々忙しかったりストーリー的に難所だったりして全然書けてませんでしたが、なんとか越えられました。
山場を無理やり越えた形になるので短いですが、これからはトントンで行ければいいなぁと思っています…
イタリカでの戦闘を終え、ボロボロになったプテラノドンを車庫に納めたモリアーティは、自分の部屋で一息ついた。
先の戦いによってプテラノドンは半壊状態になってしまっている。帰還出来ただけでも奇跡と呼べる状態だ。補修出来ないこともないが、プテラノドンを覆う厚紙はこの世界に出回っている紙で補うには厚すぎる。このままこの世界の紙で装甲を覆い続ければ、空気の抵抗を受けるだけで破壊される恐れもある。今のままでこれ以上プテラノドンを飛行させることは危険過ぎる。
さて、ここからどう動こうかと思考を巡らせる。すると、玄関の扉からノック音が響いた。メイドのノックにしては力が強い。近くの住人も街の修復に駆り出されていて誰もいない筈だ。
念のためにと腰のリボルバーに手をかけ、ゆっくりとドアノブを回し、扉を開ける。
開いた扉の先にいたのは、長身の男と短身の男。色違いの形の同じ帽子を被った彼らは、教授の顔を確かめ、教授も彼らの顔を見て、驚き目を開かせた。
「教授〜!」
「な、お前達!?」
扉の先にいた者たちは、かつてモリアーティと共に「モリアーティ一味」として活動していたモリアーティの唯一の部下であり仲間、トッドとスマイリーの二人であった。
◇
朝日がイタリカの街を照らす。既に日は上りきり、街の住人は改めて晒された街の状況を確認し、復興作業に入っていた。イタリカの外では自衛隊の人員輸送用大型ヘリである「チヌーク」が今回の襲撃に参加した者達を、基地へと護送する為に待機していた。
今回の攻撃隊を指揮し、イタリカ救援の作戦を立案した健軍は、既に伊丹ら第二偵察隊と共に会談の為にピニャの元へと向かっている。妙にソワソワする伊丹とその他数名を健軍は気にしたが、帝国皇女との会談は大した問題もなく順調に進み、予定よりも早く終わることとなった。
必要な書類を全てピニャへと渡し、会談を終える。張り詰めていた緊張の糸がほぐれ、伊丹やピニャ側の側近らがため息を一つ吐いた。それと同時に、一人のメイドがピニャの秘書的な立場であるハルミトンへと何かを告げる。
そしてハルミトンが健軍へと向き直り、一つ注意して貰いたいと告げた。
「先程お話した『桃色の翼竜』ですが、今からイタリカ外へと向かうとの事ですので、迎撃等の攻撃は加えないようお願いします」
交渉の中でも話題となった「桃色の翼竜」。健軍は特地の技術的な例外としてそのレシプロ機への情報提供を求めたが、当のイタリカ側もその実態は掴めておらず、謎のままだと言う。現在はイタリカの戦力として運用されているため、自衛隊があの機体について深く関わることはできない。友軍であると言うのなら警戒する必要は無いだろうが、特地の近代的な兵器は異例中の異例であり、特地での防衛水準を変えかねない存在である。
出来ることならその存在の詳細を確認したかったところだが、交渉を終えて直ぐにこちらから手を出すことは難しい。ここは黙って見送るのしかない。
「承知しました。部下には手を出すなと伝えて起きます」
情報は得られない事に健軍は少々気落ちした。しかしそんな健軍よりも更に気落ちした者が彼の後方に控えていた。
「えぇぇ!?」
広い応接間に、伊丹と倉田の素っ頓狂な声が響いた。
◇
会談を終える数分前、マミーナは教授のいるであろう車庫の扉を叩いていた。
数回のノック。いつもならそれで出てくるのだが、今回は返事の一つも帰ってこない。聞き耳を立てても、中で物音は聞こえなかった。
扉に手をかけ、開く。扉は施錠されておらず、すんなりと開いた。普段ならば翼竜がいたであろうスペースには何も無く、鋏や木片等が散乱していた。傍らにある一室は休憩スペースとなっており、室内はベッドと机、椅子がそれぞれ一つづつと飾り気の無い部屋だった。
何気なく、マミーナは机へと向かう。机には広げられた地図と一冊の赤い背表紙の本が乱雑に置かれていた。
イタリカ周辺の地形が描かれた地図には「Fire doragon territory」と大きく赤マルで囲われた地域。そしてその上に乗っている本には「plan」と大きく書かれていた。どれもマミーナは始めて見る文字である。
少し気になったマミーナは、その本を開いてみた。中には丁寧に描かれたプテラノドンの全体図や修理費の計算式、乱雑に書きなぐられた単語の数々等、どれもマミーナが見ても意味のわからないようなものばかりだ。しかし、幾つかの空白のページを跨いだ最後のページに、マミーナが唯一理解出来た特地語が、一文だけ載せられていた。
あまりのページにも書かず、最終ページに書かれた一言。
「プロローグは終わった」
それは、特地で本格的に活動を始める「モリアーティ一味」の犯行声明だった。