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1話『星宮隊』
「ふわぁぁ〜」
大きな欠伸をしてカフェオレとコンビニ袋に詰まっているお菓子を持ちながら、ボーダーという基地内を徘徊していた。
(全く、どうしてこう作戦室までの距離は長いのかね)
俺は1番近い自販機から作戦室までの距離の長さにケチを付けて(実際は言うほどの距離はないが)前かがみになりながらのんびり作戦室の方向に向かって歩く事30秒程で自分が所属している部隊の作戦室に辿り着いた。
作戦室の中に入り、いつものソファに座ろうとしたが、俺の視界には女の子が立っていて進路を防がれていた。開口1番にショートヘアでそのままで居れば可愛いと言われそうな女の子が俺にケチを付けた。
「遅いよ!
月夜」
そう、俺の名前は
「悪い悪い、カフェオレとお菓子を買ってたら遅れちゃったよ」
「これから防衛任務なのよ。月夜の好きなチョコなんて食べてる暇はないよ!」
「おお、よくチョコが買ってあるって分かったな」
まあ、大体俺はコンビニで好きなものしか買ってこない。俺はチョコレートが好きである。多分、無人島に何か一つを持っていくと言うならばチョコレートを真っ先に持っていくと考えるだろう。おっと話がズレてしまったな。
---閑話休題---
「当然よ。チョコが好きであらゆる所にチョコを忍び込ませているのあんただけよ!
でも遅れるのはよくないぞ!」
光が得意げに語り、光の言っていることはもっともだ。遅れたのは正直、防衛任務を忘れてずっと俺は家に居たからである。そして俺は防衛任務を思い出し慌ててお菓子を買いに行って口実を作ったからだ。
「まあ、月夜のことやし、どうせ何処かで思い出して慌ててお菓子を買ってきたオチやろ?」
俺と光の言い合いに第三者からの声が聞こえた。俺と光はそっちの方向を向いて、俺は呆れるように彼女の問いに答えた。
「おいおい、全部当たりだよ。楓」
不満そうな顔を浮かべている俺と反面、彼女の方はドヤっとした表情を浮かべていた。彼女の名前は
「それで私達の分は〜?」
もう一方の方から呑気で眠たげな声が聞こえた。その子は控えめに手を差し出しながら、子供ぽい可愛らしい笑みで俺にお菓子を求めた。
「ああ、買って来たよ」
「わーいやった〜!」
俺は真っ先にその子にお菓子を渡した。彼女の名前は
「ほら、言葉にはじゃがりこをやろう。楓にはたけのこの山。光には新作のポテトチップスを買ってきたよ」
俺はみんなにお菓子を渡した。
「わーいありがとう〜」
「ほな、分かってるなぁ」
「ちょっと、何で私はポテトチップスなの!」
三者三様の反応を見せて、光だけは露骨に拒否するような反応を見せた。
「えー、でも光この間コンビニ行った時にこのポテトチップス食べたいって言ってたじゃん」
「そうだけどさ!
一応ね、私女の子だよ…」
光はやけにモジモジしながら言ったが、最後の方は声が小さくなって俺の方まで聞こえてこなかった。
「うん、何だって?」
俺は彼女の声が聞こえずに聞き返したが、彼女は後ろめたい気持ちになったのか顔をぷくっと膨らませて文句を言った。
「ええい!!!
もういいよ。とにかくありがとう」
この台詞を言い終えた後には彼女の子供ぽい元気印の笑顔を浮かべ、俺を安心をさせた。
(全く、喜怒哀楽激しいんだから)
俺は彼女のコロコロ変わる表情を見ながらそう感じさせていた。光は勢いよくポテトチップスを開けて食べようとしていたが楓が制止させた。
「あっ、待ってや光。そろそろ防衛任務の時間やで」
楓は時計に指を指しながらモグモグとたけのこの山を食べながら光がお菓子を食べるのを止めたのだが楓自身口に食べ物を含んでいるので説得力が無かった。
「おいおい、食べながらだと説得力ないよ」
俺は見たままのことを小さいため息を吐いて呆れながら言った。
「えー!!
私は食べてないよ」
光は分かりやすく落胆していたが、言葉がじゃがりこをボリボリ食べながら慰めた。
「ほら〜
隊長頑張ろう〜」
手に拳を作って片手を手を上げて頑張ろうのポーズを取り、もう片方の手でじゃがりこを食べる手を止めていなかった。
「だから、お前ら説得力が無いって」
最早、二人のその姿に苦笑しながら言う俺に光は不貞腐れながら
「分かったよ…」
と言い、ポテトチップスを食べないで準備を開始した。
*** *** ***
俺たちは防衛任務の地点に5分程遅れて到着をして前の時間のシフトまで防衛任務をこなしていた二人組がそこで俺たちに引き継ぐために待っていた。恐らくB級のソロ隊員達だろう。
「おい、遅いぞ」
ソロ隊員の二人組の一人の方が、が俺たちに苛立ちを立ったのか冷ややかな目線で俺たちに言いがかってきた。まあ、確かに遅れた俺たちに非があると自覚をしている。
「ごめんね、遅れちゃって」
光は素直に謝ったが、ソロ隊員達はツバを吐き捨てながら付け上がってきた。
「てめえらと違って俺たちはまともにボーダーに貢献してるんだよ」
彼らは意気揚々と俺たちの態度に文句を言っていた。少なくとも、注意をすればいい話だと俺は思うが光や言葉は少なくともこのソロ隊員達に不快感を抱いていたという事を俺は感じ取っていた。
それはそうと、俺たち星宮隊は一言で言えばボーダーの異端児である。俺たちは一時期A級部隊になったが、ある事件をきっかけに処罰が下され、今ではA級とB級の間辺りの曖昧な位置に属していて現在は処罰一つでランク戦すら参加をしていない。そして話は戻す。
「てゆうか、お前らはルールを守らないから折角、A級に上がっても降格しても意味ないじゃん。そんな事も分からない馬鹿なんですか?」
ソロ隊員達は俺たちに煽り気味に貶していた。けれども少なくとも、星宮隊のみんなはそこそこ気にしていないし、むしろ、交友関係は広い方だ。それでも馬鹿にするとなると恐らく俺たちを嫌っている誰かがそう入れ知恵をしたのだろう。まあ、嫌われてる人は嫌われているから仕方ないと思うんだけどね…
どんどん、罵詈雑言を吐き散らしていく彼らの行動が段々と目に移り、俺は止めようと動いた。
「おい、「ねえ、あんた達」」
俺より先に隊長である光がいつもの明るくて透き通った口調と違って彼らに獲物が牙を剥くような口調で問い詰めた。
「私に悪口言うのは仕方ないよ。それ程過去にはやらかしたからね。でも、私の仲間には悪口を言わないで」
光は彼らを睨みつけるように言ったが、ソロ隊員達は鼻で笑った。
「はっ、流石クズは言うこと違うねぇ。美しい美学をお持ちのお馬鹿な隊長さんと来たか。これは笑い話だ!」
「「ギャハハハハ!!!」」
彼らは大爆笑で大笑いをして、俺たちを見下していた。
「……」
光は無言で
ズパッ!!
次の瞬間、瞬時に彼らの元に近づいて彼らの両手を斬り裂いた。彼らは手を斬られた当初は何が起こったか分からない表情を醸し出していたが、次第に状況を把握していったのか、顔が青ざめていった。
どうやらうちの隊長の堪忍袋の緒が切れたらしい。
「あーあ、やっちゃいましたね〜」
言葉は呑気に状況を読み、ソロ隊員達は先ほどまで意気揚々に罵詈雑言を吐き散らしていたが、手を斬られた直後、何も言えず怯える小動物のように恐怖心に駆られていた。
「不愉快」
光はいつもの笑顔と違い相手を見下ろすようにソロ隊員達に冷たい口調で彼らに言った。そして、冷徹な笑みを浮かべ
「次に私達の悪口言ったらどうなるか分かってるよねぇ?」
光はスコーピオンをクルクルと回しながら、標的を狩るような目で脅していた。
「「うわぁぁぁぁ!!」」
彼らは彼女の意図を理解したのが、必死に喚き怯えていった。
「君たち、良かったな。影浦くんの所だったら今頃ベイルアウトをしているよ」
俺があと一押しを押すように更に彼らの恐怖心を煽り、
「「ごめんなさい!!」」
俺の言葉に過剰反応して悲鳴を挙げて、泣き喚くように逃げ去っていった。
彼らが居なくなり、少し合間だが確かな沈黙が生まれていた。
「はぁ」
俺は現状とこれから起きうることを想像しただけで少しお腹が痛くなる…
光は俺達の方を振り向いて弱々しい笑顔を見せて謝った。
「ごめんね、駄目な隊長で…」
光の言葉に俺たちは暗くなる。あの事件は光だけの責任ではない。むしろ、俺の方に責任があるのだ。今さっき手を斬った件も深く追求出来ない。
これは俺の考えだけども彼女にはなるべく責任を背負って欲しくない。光には常に笑っていて欲しい。
「そうだなぁ。いつも、無茶な要求ばかりして、暴走を繰り返してるもんな」
光にはほんの少しにも罪悪感を感じるようにも聞こえるけれど、ありのままの思いを伝えた。
「うぅぅ…」
図星を突かれた光は弱々しく何も言い返せず、楓が茶化すように助け船を出した。
『仕方ないで、月夜は光のことを愛してやまないからなぁ』
「おいおい、適当な嘘を吐くなよ!」
俺は声を荒げながら否定しようとしたのだが、楓が通信先でニヤニヤしているのが良く分かる。
楓め…
後で覚えてろよ…
そして、言葉も悪ノリしたのか俺に向かって
「仕方ないよ。月夜は光のことが大好きだもん〜」
言葉…
後で覚えてろよ…
俺は心に留めながら光に改めて言った。しかし光は少し顔を赤く染めて俯いたままだ。
俺は頭をカリカリしながら、歯切りが悪いのを感じつつ光に伝えた。
「まあ、俺たちは光に振り回されるのが好きでやってるだけだよ」
俺の想いに光は俺の方を見て両手で頬を叩いた。
「ごめん、弱気になってた!
防衛任務頑張ろう!!」
光の言葉に鼓舞されたように俺と言葉は見合わせみんなで
「「『おお!!」」』
と防衛任務を開始した。
*** *** ***
(ちょっと早く来ちゃったかな)
--ガシャン!!
何かが崩れる音か何か大きいものから落ちた音が響き渡り、千佳は肩をビクッと反応し、その音の方向に目を向ける。
そこには千佳と同年代、もしくは年下に見える白髪の少年が自転車から転んで落ちているということに気がついた。
千佳は心配そうに見つめているが、白髪の少年は呑気に
「うーむ…
手強い…」
と地面に寝転びながら呟いた。
「大丈夫?」
千佳は心配してその少年の方に駆け寄ったが少年の方は何食わぬ顔で
「平気平気
全然、平気」
立ち上がりながら埃を払い、
「怪我なんかしてないよ」
と千佳の心配を取り除いたようにも言った。
「自転車の練習しているの?」
千佳の疑問に、
「友達を待ってんだ。その間に暇だから練習してるだけ」
と答えた。
「そうなんだ。私もここで待ち合わせしてるの」
「ほう、奇遇ですな」
千佳もこの白髪の少年もどうやらここで待ち合わせをしているらしい。
白髪の少年が唐突に
「お前自転車に乗れるのか?」
と千佳に聞いた。
「え?
うん。一応」
千佳はキョトンとしながら答えて、白髪の少年が尊敬するような表情で
「やるね」
と言い、褒められたのか純粋に嬉しいのか千佳も照れながら
「そうかな?」
千佳は嬉しそうにしながら返した。
「お前、名前は?」
白髪の少年に不意に名前を尋ねられ、
「わたしは千佳。雨取 千佳」
「そうか、チカか。おれは遊真。空閑 遊真」
白髪の少年の名は
「チカ、俺の自転車の練習を手伝ってくれ」
遊真のお願いに千佳は首を縦に頷き
「うん。いいよ」
と答えた。
そして、遊真の自転車の練習が開始された。
この時は二人は唐突に出会ったが、彼らは既に物語の渦中にいたことは二人はまだ知らない。