半端者   作:雪の箱の世界

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4話『遊真との戦い』

「はああっ!」

光は遊真の元に近づいて攻撃に踏み込んだ。軽量型のスコーピオンを短剣状に変形させながら連撃を仕掛けた。だが、遊真は光の攻撃を最低限の動きで躱して対処していった。

 

(速いけど、太刀筋自体は軽い攻撃だな)

遊真は目の前の女の子を見てそう感じ取り、鉛弾による重りが枷になりながらも対処していった。光は左手のサブトリガーを起動してグラスホッパーを使用して、右の方に飛んでいった。

 

 遊真の視界は開けてそこには俺が既に弾丸を放とうとしているのが見られた。

 

通常弾(アステロイド)

俺はそう言い、弾丸を真っ直ぐに遊真の元に散らすように飛ばしていった。遊真はその攻撃を、印を要して守りの体制に入った。

 

『盾』印(シールド)

遊真の目の前に大きな盾が出現して、俺の弾丸を全て封殺されてしまった。だけど、まだ想定内だ。

 

変化弾(バイパー)!」

 右方向に空中に飛んだ光は遊真の死角を取り、弾丸を生成しており遊真に変化弾を撃ち込んだ。

 

 カクカクと曲がる弾丸に遊真は一瞬戸惑い、隙を見せたが、盾を出現させて防ごうとして何発かは防いだ。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「??」

遊真は光の変化弾について疑問そうに思ったが、俺と光の連携もここで一回途切れた。遊真は足に大きくはないけれどダメージを負い、右足を使えなそうである。

 

 

 光は攻撃手(アタッカー)トリガーのスコーピオンと弾丸を使って直接攻撃する射手(シューター)の二つのポジションをこなす万能手(オールラウンダー)である。

 

 

『月夜、手応えはどう?』

光は俺にだけ聞こえる内部通信でこれまでの遊真との戦闘の様子を聞いてきた。

 

『まあ、実際に三輪の鉛弾(レットパレット)と狙撃とさっきの変化弾(バイパー)のおかげで大分トリオンは削れたと思うけどまだ隠し玉がありそうだね』

現状、俺の思っていることを隊長である光に報告した。光は相変わらずの天真爛漫な様子で次の方針を定めた。

 

『もう1回、今みたいな感じで行こっか!』

 

『そうだね。三輪隊の時もそうだけど、あいつは俺たちを無力化しようと動くから、光がスピードで翻弄させて、俺があいつの意識を奪おうか。はしゃぎすぎて、捕まるなよ」

 

『そんなヘマしないよ!』

光は俺に文句を言って勝手内部通信を切った。右手にスコーピオンを展開させて、再び、遊真の元に突っ込んだ。

 

 だけど、先ほどの重りが付いている重そうな動きをしていた遊真とは正反対に何故か軽やかな動きになって光の攻撃に躱し始めた。

 

「あら?

どうして、鉛弾(レットパレット)を付いているのに動けるの?」

光の疑問に遊真は答えを返さなかったがその代わり光を挑発させるような好戦的な言葉が返ってきた。

 

「さあね、考えてみなよ」

 

「むぅぅ。ムカつくね!」

光は分かるやすく反応をしたが、まだ冷静さは失っていない様子に俺は安堵した。そんな光とは対照的に俺は遊真の動きが軽くなっているのにはある程度の仮説とそれにちなんだ理由は検討が付いていた。

 

(多分、あれは重りを緩和したのかなぁ?

それも出来るトリガーってことなのかな)

俺がそう思考しているうちに再び、光から内部通信が飛んで来た。

 

『月夜!

次は月夜も積極的に攻めて』

 

『まあ、いいけどよ。フィニッシュはお前が決めるんだぞ?』

俺の指示にも光は明るく透き通った声で

 

『オッケー!』

と答えた。

 

 そして、再び俺と光は大小の差がありながらそれぞれトリオンキューブを出現させて構えた。

 

追尾弾(ハウンド)

俺は標的を追い回す追尾弾を遊真に向けて64分割の追尾弾を上下左右の四方向に展開して飛ばした。

 

「!」

遊真も複数の方向の弾丸を盾に防いでいった。その間に光は近距離の間合いまで近づいていた。トリオンキューブを身体の周りに浮かせて、刺突剣のような形状のスコーピオンを取り出し遊真の目に斬りつけようと動いた。

 

「あはは!」

光は嬉々しながら遊真と斬り結んでいた。遊真は俺の追尾弾の処理をしていたが、光にも意識を向かざる得なくなった。スコーピオンを片手に振り回しながら、高速の刺突を繰り返していた。光は攻撃速度が速く、遊真は回避をしてかろうじて躱しているが、それでも光の高速刺突には手を焼いていた。

 

(これはさっきまでと動きが違う)

遊真はそう感じ取り、印を出現させた。

 

『弾』印(バウンド)

遊真はそれを自身の足に出現させて空中で回避した。光はそれを読めていたのか、身体に浮かせていた弾丸と俺も弾丸を生成して

 

炸裂弾(メテオラ)

変化弾(バイパー)!」

俺は分割無しの炸裂弾を使用し、

光は3×3×3の27分割のバイパーが踊るように飛ばしていった。遊真は、

 

『盾』印(シールド)

を使って足元に飛んで来る複数の弾丸を回避しようとしたが、俺の炸裂弾が先に遊真の盾にヒットした。

 

 

 炸裂弾(メテオラ)は着弾したら大きな爆発する弾丸で広範囲に攻撃を出来るのが特徴なトリガーだ。

 

 

 そして、炸裂弾により、遊真の視界は爆煙に包まれた。ここまでは俺たちが描いていた打ち合わせていない作戦の一つであった。遊真をおびき寄せて、視界を塞ぐ。

 

 視界を塞がれた遊真に次に襲いかかったのは光の変化弾だ。全方向から飛んで来る変化弾に遊真は辛うじて全方向に

 

『盾』印(シールド)

を遊真を囲むようにドーム状張ることを選択した。そしてその選択が見事を功を奏した。

 

 爆煙から晴れて、遊真はドーム状の盾で攻撃を防いでいるのを確認されて俺と光の連携から帰還した。俺は顔をしかめて、光は少し驚いた表情を浮かべた。

 

「マジか。今のも防いだか」

俺は声を漏らして、光は

 

「凄いね!」

と素直な感想を抱いた。

 

 遊真は純粋な疑問を俺たちにぶつけた。

 

「あんたたちは何で俺に攻撃するんだ?

俺がネイバーだからか?」

遊真の疑問に光は少し笑い声を立てて、

 

「違うよ。私は君に興味があるんだよ」

と言った。

 

「この子に目を付けられるとメンドくさいぞ」

俺は茶化すように言って

 

「それって私のことが面倒くさくて、嫌だなぁ〜って意味で受け取っていいの?月夜」

 

「まあ、本当のことだろ?」

 

「オッケー。後で月夜のカフェオレ飲んどくから」

 

「それはやめて…」

と2人は雑談を交わして、

 

「とりあえず、私達を止めたいなら拘束でも倒すでもすればいいよ」

光はそう言い、遊真の言葉を受け取る前にスコーピオンを展開し鬼気迫るように接近した。

 

「ふっ」

光は右手から大振りに振り回し、スコーピオンでザクザクで遊真に仕掛けていく。

それを躱していく遊真。

 

通常弾(アステロイド)

俺も光をアシストしていくが、遊真は盾を展開して難なく対処していく。

 

 

 そして、遊真が初めて仕掛けて来た。

 

 

『錨』(アンカー)『射』(ボルト)四重(クアドラ)

先ほど、三輪と米屋を無力化にさせた鉛弾のコピーを光に向けて放出した。光は反射神経と何かの感が働いたのかいち早く察知して、遊真と距離を開けて、遊真の攻撃を躱した。

 

「月夜!

私を飛ばして」

光は俺にそう指示をした。

 

「なら10秒、時間をくれ」

俺はそう言い、携帯端末を取り出した。

 

 遊真はチラッと俺の方を見て、疑問そうに思ったのか俺はやんわりとした笑みを浮かべて、光は遊真との戦闘に集中をした。

 

乱反射(ピンボール)!」

遊真を撹乱する為、遊真の周りに複数のグラスホッパーを展開させて、縦横無尽に高速移動を繰り出した。

 

 

 乱反射はグラスホッパーによる相手を囲うようにグラスホッパーを複数展開させて翻弄する技だ。

 

 

 遊真は最初こそ、そのスピード感に付いてこれず、それでも達観した様子で対処しようとしたが、光の元やその周りに複数のトリオン反応が見られた。

 

「出来たよ」

俺はそう言い、光は

 

「よろしく!」

と答えた。

 

 光は遊真の元に離れるようにバックステップを踏んで、トリオン反応を示しているところを足を踏み入れようとした。

 

「??」

遊真は警戒度を1段階引き上げた。

 

 光は獲物を狙うような獰猛な笑みを浮かべて、その後ろにいる月夜も黒い笑みを遊真に見せた。

 

「スイッチボックス!」

俺はいつもより強い口調で言い、光はトリオン反応を見せたところを踏み抜いた。

 

 

 その瞬間

 

 

 光はその場から消えた。

 

 

 そしてその刹那、光が前に居たところに現れて遊真の腹部を刺し抜いた。

 

「??」

「よっしゃ!」

遊真の咄嗟の判断で急所こそ外したが、光は大ダメージを与えて尚且つ、トリオンを削ったと確信した。

 

 

 俺は光のような万能手(オールラウンダー)とはまた違う別の種類で二種類のポジションをこなせるトリガー使いだ。弾丸を扱う射手(シューター)と携帯端末から罠やワープなど味方を援護することが出来るトリッキーなポジションの工作兵(トラッパー)の二つのポジションが出来る、ボーダーでも異端で半端者の存在だ。

 

 

 遊真は腹部から漏れるトリオンを抑えて、表情こそ見せなかったが、動揺していると俺は見た。

 

「ふっふっふ、まだまだ!

遊真にトドメを刺すよ」

光はスコーピオンをクルクル回しながら自信満々に語り、スコーピオンを逆手に持って動いた。再び、スイッチボックスのトリオン反応を示しているところに足を入れて、

 

「スイッチボックス」

俺は起動して光はワープした。

 

 だけど、遊真は俺たちに気付かないようにもう一つの無力化を図っていた。

 

『鎖』印(チェイン)

遊真は光がワープで遊真に攻撃を仕掛けるところに複数の鎖を仕掛けて拘束した。

 

「やばっ…」

光は嵌められたことに気づいて、もうどうしようもないことに気付いた。

 

 光が鎖によってグルグル巻きに拘束したのを見て遊真は「次はあんただ」というように俺の方を見た。

 

 俺は観念したように両手を上げた。

 

「降参だ」

俺はそう言って降参の意を見せる為にトリガーをオフにした。

 

 

 *** *** ***

 

「おー、遊真。結構やられているじゃんか」

拘束されている光と降参した俺に鉛弾による重りを付与されている三輪と米屋は声を上げた第三人物の方を揃って見た。

 

「迅っ…!」

三輪は歯切りを悪くしながら、その人物の方を見た。

 

 迅さんは相変わらず飄々としながら、三輪隊の狙撃手の奈良坂と古寺を後ろに連れていた。

 

 奈良坂は三輪に、

 

「ごめん、狙撃しようとしたところ迅さんに止められた。

と謝っていた。

 

「迅さん、どっちも中々手強かった」

遊真は三輪隊と星宮隊との戦闘面の感想に簡潔に話して、

 

「そうか」

と言い迅は遊真の頭を撫でた。

 

「迅さんも一枚噛んでいたのですか」

俺は疑いと警戒の目を向けながら迅さんに聞いた。

 

「ああ、相変わらずお前らの動きは予測が難しくて分かんないけどな」

苦笑しながら迅さんは言う。

 

「それは8割くらい光の所為だと思いますよ」

俺も迅さんと同じく苦笑し

 

「なんか2人とも酷くない?」

光は俺と迅さんの発言に少なからずショックを受けていた。

 

「強かったろ?光ちゃん」

迅は改めて光に遊真との戦闘を聞いて、

 

「うん。まだまだ実力の半分くらいしか出てないって感じがしたよ」

光は素直に感想を語り、

 

「迅、俺たちを馬鹿にしに来たのか?」

三輪の言葉に迅さんは否定し

 

「お前らが勝てないのも無理はない。こいつはブラックトリガーだからな」

 

「……っ?」

「「マジで!!」」

「やはりそうか…」

三輪は言葉を出ない程驚き、米屋と光は声を上げた。唯一驚かなかった俺は冷静に声を上げた。

 

「おっ、なんだ?

月夜。分かっていたのか?」

迅さんは俺の方を見て、そう聞いた。

 

「まあ、強さ的にそうだと感じ取っていましたよ。ノーマルトリガーでここまで削られながらの連戦して、俺たちはともかく三輪隊は排除目的だったし、その子は無力化目的で動いていたからもしかしたらって思いました」

俺はそう言い、光は俺に文句言った。

 

「分かっていたら教えてよ」

 

「確証がないから仕方ないだろ」

と、2人はこの場の空気を全く読んでいないように話しており、迅が再び口を開いた。

 

「ま、そういう訳だからお前らこの件から手を引け」

迅は説得するように語り

 

「そいつがボーダーと対立する保証はないんですか?」

奈良坂は遊真を指を指し聞いた。

 

「ない。なんなら俺の全財産やクビを賭けてもいい」

迅は真剣に真っ直ぐ答えた。そして迅は俺たちに確認するように

 

「星宮隊は今防衛任務の最中だよな?」

 

「うん。そうだよ」

光は素直に答え、

 

「大丈夫なのか?」

 

「諏訪隊にサポートを任せました」

と、俺は答えた。

 

「それに私たちがここを引く理由は全くないよ?」

光は鎖に拘束されたままだが屈託ない笑みを浮かべ、俺は小さくため息を吐いた。

 

「お前らはここを素直に引いておいた方が君たちの為にもなるぞ。俺のサイドエフェクトがそう言っている」

迅はそう語り

 

 俺と光は無言で考え、

 

「ここは引くよ」

「そうだなぁ」

俺と光はそう判断した。

 

 三輪はこの収束に納得行かずに、汚れたように強い信念を持って

 

「ふざけるな!!

 ネイバーは全て敵だ!!」

と主張するように言葉をぶつけて、

 続けて、

 

緊急脱出(ベイルアウト)!」

ボーダー隊員の脱出機能を使って三輪はボーダー本部に帰還した。

 

 

 

 

 三輪が居なくなり、米屋たち三輪隊も去っていった。

 

 俺と光もしばらくして

 

「帰る?」

と言い、

 

「結構、あっさり帰っていくね」

と遊真は言った。光は笑って、

 

「まあ、まだ一回負けただけだから!

今度、また勝負してよ。遊真」

好戦的な目を向けて真っ直ぐに語り

 

「そういや、名前を聞いていなかった」

遊真は思い出すように俺たちの名を聞いた。そういえば、俺たちは遊真の名前を聞いていきなり戦ったなぁ…

 

「私は星宮 光。隣の男は天野 月夜。そしてもう1人の戦闘員とオペレーターが居て、私たちは星宮隊だよ。以後よろしく!」

光は張り切ったように言い、その透き通った声が空に響いた。俺は補足するように

 

「まあ、俺らは遊真とも仲良くしたいと思っているからよろしくね」

と言い、俺と光は背を向けて去っていった。

 

 

 

 

 

 




週2くらいの投稿を頑張っていきたいです。

あと書き忘れというか、星宮隊の隊服をここで書きます。

・濃緑のモッズコート
光のみフード付き、月夜と言葉はフード無し。
・男性:黒のスラックス
あるエンジニアが作った柔軟性のあるスラックス。
・女性:水色のショートパンツに黒のニーハイ
光と言葉が着用している。
・黒の厚底ブーツ
男女どちらも着用。

以上、隊服でした〜

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