半端者   作:雪の箱の世界

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二章『黒トリガー争奪戦』
5話『翌日』


 遊真との戦闘が終わって、翌日。

 

 俺は言葉と防衛任務の時に約束したクレープを奢る為、商店街に訪れていた。今日は防衛任務などの予定が無く、完全なるオフである。俺はクレープを買う途中に昨日の遊真との戦闘のその後のことを思い出していた。

 

 

 *** *** ***

 

 先日、光と俺は防衛任務放棄の件と黒トリガーとの交戦の件で呼び出され、現在は上層部の作戦室に居た。

 

(あー、城戸さん相変わらず怖いなぁ)

(うへぇ、鬼怒田さんまた太ったなぁ)

 

 上から俺、光の順でそれぞれ別のことを思考し、ボーダー本部の最高司令長の城戸が第一声を挙げた。

 

「星宮隊員、天野隊員。一応聞くが何故、防衛任務を放棄し、人型ネイバーと交戦した理由について聞きたい」

城戸はとてつもない重圧を掛けるように俺と光に問い詰めた。俺は城戸さんに圧されて萎縮した感じになったが、光は空気を読めていないのかいつも通りなようにも見えたが少し手が震えているのを俺は感じ取れた。

 

「私たちは人型ネイバーを見かけたから交戦しただけです」

光ははっきりと言ったが、正直言って説明不足だ。戦ったのは分かる。もっと分かりやすく説明しようぜ…。と俺は心に呟きつつ、

 

「そんなことは分かってる。もっと具体的に言わんか」

ボーダーの開発室長の鬼怒田はそう言う。ごもっともです。

 

「すいません。補足すると俺たちは警戒区域内に入っている中学生たちを見かけたところに不可解な点が幾つかあってそれで俺たちはその子たちの尾行を開始しました」

俺は色々な事実を掻い摘んで説明した。城戸司令は

 

「了解した。さて、本題に入ろう。お前たちを呼んだのは、他でもない。三輪隊員らにも聞いたが人型ネイバーと戦った印象などを聞きたい。今回の防衛任務の放棄の件は目を瞑ろう」

城戸司令の言葉に俺と光は肩の荷が降りて安堵した。

 

(よかった〜!

罰下されなくて)

(ふぅ。何とか減給やソロポイントの減点は免れたか)

 

 俺と光大きな山を越えたように安心した。俺も安堵の大きなため息を吐いた。そして、遊真との戦闘については光の口から語られた。

 

「ゆうっ…。人型ネイバーとの戦闘は結論から言うと、私たちに勝てる点が一つもありませんでした。尚かつ、彼はブラックトリガーですので、最終的には私達も無力化されてしまいました」

光の大雑把な説明に城戸司令は暗い顔色を浮かべ少し黙り込んだ。その黙り込んだ城戸司令とは別にメディア対策室長である根付が不安の声を上げた。

 

「それでは、A級の三輪隊やA級クラスである君たちの実力を持ってでもそのブラックトリガーには勝てなかったってことかな?」

 

「はい。正直に言って彼はまだ余裕でしたね。それとブラックトリガーと善戦した私たちと三輪隊を褒めるべきですよ」

光は根付の方を向いてサラッと答え、

 

「正直、今いるA級で勝てる見込みはありませんよ」

と俺は付け足した。

 

「分かった。報告ご苦労」

怖い顔で黙り込んでいた城戸司令が俺たちを上層部の作戦室からの退室を進めた。

 

 

 *** *** ***

 

 俺が昨日の事を思い出している時言葉の呑気な声が俺の耳に響いた。

 

「ちょっと、月夜〜」

言葉は俺の服の袖を掴んで不満そうな表情が見えた。

 

「ああ、悪い悪い」

 

「何考えてたの?」

言葉は不満な表情からニヤついた表情にコロッと変わった。

 

「昨日のブラックトリガーのことさ」

 

「負けたんでしょう〜?」

 

「うん。手も足も出なかった」

 

「いいなぁ〜

私も戦いたかったなぁ〜」

言葉は頭に手を組みながら残念そうに言った。

 

「言葉ってそんなに戦い好きじゃないでしょう?」

 

「そうだね〜

でもみんなの為にやらないと行けない時は頑張るよ〜!」

言葉の迷いのない顔を見て俺は

 

「そっか」

と返した。

 

 やがて、お目当てのクレープ屋さんに着いた。俺たちは店内に入って、店員に注文をしようとした。

 

「好きなの買っていいの〜?」

 

「まあ、そうゆう約束だしね」

 

「やった〜!」

いつも通りの呑気で眠たげな声と違って、何処か喜んでいるようにも見えた。

 

 そして、俺と言葉はメニューを見て注文を取った。

 

「それじゃあ〜

この、プリンアラモードクレープお願いします〜」

言葉ははしゃぐ子供のように店員にそう言って、

 

「キャラメルバナナクレープを下さい」

俺も指を立てて注文をした。

 

 

 

 そして、しばらくしてそれぞれのクレープが運ばれて2人は机に座って食べ始めた。

 

 言葉はクレープを食べている途中に思い出すように

 

「あとあれ。諏訪さんから連絡〜

『今度麻雀付き合え』だって〜」

 

 言葉はクレープをひと齧りしながら、諏訪さんのモノマネなのか?余り似ていないと口では言えないが俺に教えてくれた。

 

 諏訪隊は昨日の俺と光の任務放棄の時に言葉と一緒に引き受けてくれたことは本当に感謝している。

 

「諏訪さんがそんなことを…

まあ、付き合うけど麻雀得意じゃないんだよな」

 

「そうなの〜?」

 

「うん。俺は運の良し悪しが激しいから勝つ時は勝てるし負ける時は負けるんだよ。その高低差が激しいんだ」

と言ってため息を吐いた。そして、俺の方はクレープを食べ終えた。

 

「意外だね〜」

言葉は呑気な口調で俺を細い目で見つめた。

 

「そうか?」

 

「うん。月夜はボーダー内の二つ名が『謀略家』じゃん〜?

だから麻雀も全て計算尽くでやっているのかなぁ〜って思った訳よ〜」

言葉はのんびりとした心安らぐとしたような笑みを浮かべて話していた。

 

 

 そう。俺はボーダー内では謀略家と呼ばれている。何でも工作兵(トラッパー)のスイッチボックスによる何重にも張る罠に気付いたら何故かそのあだ名が付いていた。ちなみに俺自身は余り納得していない。

 

 

「俺自身、その二つ名は好きじゃないよ…」

俺は苦笑しながら言い、言葉はクレープを食べ終えていた。

 

「月夜〜

この後どうします〜?」

言葉は俺の顔色を訪ねるように聞いてきた。

 

「うーん。そのまま家に帰るか、ボーダーに寄るかしかないんじゃない?」

 

「なら、お菓子持って買って行こうよ〜」

 

「俺が昨日買ったじゃん。お菓子」

 

「そうか〜

もうちょっとぶらぶらしたいなぁ〜」

少しむすっとした言葉に俺は

 

「とりあえず、もう少し商店街でも周ってみるか」

と俺は提案して、言葉は縦に頷いた。

 

 

 *** *** ***

 

 一方、光はソロランク戦である男と対戦を行われていた。

 

 現在、20本勝負で12-7で光が負け越していた。そして、今、その男とスコーピオンでザクザク斬り合っていた。

 

 髪の毛がもじゃもじゃしていて目付きが鋭く、マスクをしている青年は光と嬉々して伸縮自在のスコーピオンで迫り斬り、光はそれを上手いこと躱して、反撃を繰り返していた。

 

「はっはっ!

そんなもんじゃないだろ?光」

その男は変幻自在なスコーピオンで鋭い攻撃を繰り返し、光の方も好戦的な笑みを浮かべて

 

「カゲこそ、動きが鈍っているんじゃない?」

カゲと呼ばれる隊員、影浦 雅人。B級2位の実力者で隊長を務めている。影浦隊は星宮隊と同じく、一時期A級に上がったが、ボーダーのルールを守らなかった為、B級に降格している。

 

 彼は舌打ちを打ちながらもスコーピオンの連撃を繰り返そうとしたが、光はグラスホッパーでアタッカーである影浦の特殊の射程距離から外れてトリオンキューブを展開させて身体に纏わせていた。

 

 そして、肉迫するようにその男に接近した。

 

「ふっ!」

短剣状のスコーピオンを右手で逆手に持って、右の大振りを振り回すが、影浦に躱されてしまう。それでも光は鋭い第二撃を繰り出した。重心が後ろにある影浦は光の第二撃を回避ではなくスコーピオンでのガードを選んだ。

 

 

 ガキッ!!

 

 

 スコーピオンは耐久値が低い。スコーピオンは打ち合いよりも奇襲や攻撃を主体にするトリガーなため耐久性があまりないのだ。そして、光のスコーピオンはヒビが入り、影浦のスコーピオンは割れてしまった。

 

 影浦がスコーピオンを再展開する合間を逃さず光は影浦よりも早くスコーピオンを展開し身体に纏わせていたトリオンキューブを至近距離で発射した。

 

(シールド)

影浦至近距離で受けた弾丸は影浦咄嗟に前方にシールドを展開したが、前方に弾丸は数発しか来なかった。光はその隙を縫うようにスコーピオンで影浦の足を斬りつけた。

 

 影浦は表情が少し歪み、光は嬉々して

 

「もらった!」

と言い、不自然にも何処か行っていた弾丸が帰ってきた。

 

 だけども、影浦は予測していたのか、その弾丸を躱して、スコーピオンを光の方に向けて

 

「マンティス」

 

 影浦はスコーピオンを通常の射程よりも伸ばして光の胸を貫いた。

 

「悪いなぁ。光。この攻撃は俺にとって()()()だったぜ?」

影浦はそう言い、光は身体からトリオンが流れて、ベイルアウトの機械音が耳から響いた。影浦はスコーピオンを引き抜いた後に光が撃ったと思われる弾丸が踊るように影浦の数メートル先に落ちて来た。

 

(たくっ、流石、舞姫だぜ)

 

 影浦は純粋に感心を示して、そう心に呟いた。

 

 そして、光はベイルアウトをして、20本勝負は13-7で影浦の勝ちである。

 

 

 

 影浦とのランク戦を終えてから光はソロブースのベットから立ち上がって、ブースから出た。

 

「おい、光。最後の技は何をしようとしたんだ?」

影浦は光に会うや最後に放った変化弾(バイパー)の仕組みについて聞いた。

 

「むぅ。私が負けたから言わないもん!」

光は口を尖らせ、先ほどの技について何も語らず、影浦は言った。

 

「まあ、最後の技にだけは俺には見えたぜ」

 

「それってカゲのサイドエフェクトのこと?」

 

「ああ、そうだ。それより出てお好み焼きでも食わねぇか?」

影浦はある提案をした。

 

「うん。いいよ!

どうせなら自分の隊のメンバーを誘わない?」

 

「そうだな」

影浦はそう言ってスマホを操作し始めた。光も月夜に電話を掛けた。

 

 しばらく電話音がこの場になり響いて、3コール辺りで月夜は電話から出た。

 

『もしもし』

電話越しだけども月夜の声が聞こえた。

 

「月夜、今日さ。カゲの所のお好み焼きを食べに行かない?

 

『うん。いいけど』

 

「今何処にいるの?」

 

『今は言葉と一緒にいるよ』

 

「じゃあ現地集合でいいか」

光は影浦の方に視線を向けながらそう言って、

 

『了解』

と月夜は答えた。

 

 そう言って、光は電話を切った。影浦はニヤニヤとした表情で光を訪ねた。

 

「お前、やはり月夜のこと好きだろ?」

影浦の言葉に光は少し慌てた様子で

 

「ち、違うよ!」

と声を張り上げたが、

 

「あん時の電話で俺に一瞬目を向けた時に嫉妬の色が刺さったんだぜ?あれは俺に意識を向けた証拠だろ?」

 

 

 影浦は感情受信体質というサイドエフェクトがある。自分に向けられた意識や感情を文字通り肌で感じることが出来るサイドエフェクトだ。

 

 

 光は図星を突かれたのか、頬に赤みが帯びてモジモジしながら黙り込んでしまった。

 

「いいじゃないか。月夜とは長い付き合いなんだろ?

だけど、光は月夜のことが好きならちゃんと想いを伝えればいいんじゃないか?」

影浦は頭を掻きながらそう言って、歩き始めた。

 

(うん。私と月夜は小学生の頃からの幼馴染だもん。私は月夜のことが好きなのかもしれない。私がピンチや暴走する時には月夜が居てくれたもん。私は月夜の為に、月夜が過去から忘れられるように私が月夜の毎日を彩ってやるんだ。それまでは好きってことは私は言わない)

 

 光は自分の決意を再確認をして、影浦のいる所に歩きはじめた

 

 

 




日常回があと1〜2話やります。
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