「──此方からの報告は以上だ」
すっかり夜の帳が降りた頃、ランプの灯りが弱々しく照らす執務室では、麻守が小柄な来訪者となにやら話をしていた。
「特に進展はないのね?だったらやっぱり、あの艦隊頼みになるわね」
紺色の所謂スクール水着姿の少女が苛立ちを含んだ声で呟いた。
「遅いのよ、こうしてる間にも……」
今にも泣き出してしまいそうなか細い声を、麻守は聞こえていない振りをした。
もとより、彼女に掛けてあげられるような言葉を、麻守は持っていない。
「でも、それでもあの連中よりマシだけど」
「知ってのとおり、この鎮守府の戦力は出撃させられん。今、正面海域を突破出来るのは……」
判ってると言うように、スク水の少女は首を振った。
「焦ったってどうにもならないんでしょ。だったらスナイパーらしく待つだけよ。絶好の機会ってヤツを」
「済まないな、現状は君の補給だけしかしてやれん」
「それでもありがたいわよ。連中ったら命令するだけで補給の手配もしてくれないもの」
ふふっ、とスク水少女は笑う。
「彼女があなたの鎮守府に保護されたと聞いた連中の慌てようは傑作だったわ」
「随分と無茶をさせたな。それに、これで君は私との繋がりを悟られた訳だが……」
「大丈夫よ。輸送船ごと沈めるなんていう、連中の計画を利用してやるなんて良いストレス解消だったし」
ふっと、スク水少女の笑みが消えた。
「それに彼女には何としても、あの海域までの道を開いてもらわないといけないしね」
じゃあ、と手をヒラヒラと振りながらスク水少女は執務室のドアへ向かう。
「連中が沈めにくるだろうから、しばらくどこかの海域に隠れてるわ」
「気を付けてな。君の目的を達したら、例の約束を守ってもらわねばならないのだから」
スク水少女は振り返り、麻守をその緋色の瞳でじっと見詰めた。
「あら、裏切り者との約束なんてアテにしていいの?」
「私としては正当な取引のつもりなのだがね」
「ふふっ、正当な取引ねぇ……。反故にされないように、罰則事項くらい付けておいた方がよかったんじゃない?」
ニヤリと麻守が笑う。
「必要ないからな。君は、君達は此方が裏切らない限り、そんな事にならないと確信している」
「そう。だったらせいぜい期待に応えて見せてよ、裏切られないようにね」
ガチャリとドアを開けて、スク水少女は闇のなかへと姿を消した。
独り、執務室に残った麻守が窓を見やる。
カーテン越しに遠く探照灯の灯りが見えた。
「もう夜間演習ですかな……。いやはや全く……」
そう呟いた麻守の顔にはどこか哀しげな笑みが浮かんでいたのだった。
短っ!何やらこそこそやってる連中の回でした。
次回は本編に戻りますよ。
スク水、潜水艦娘……うっ頭が……!