まともなのが俺しかいないと言う状況から幾ばくか、皆さんが正気に戻る頃には既に夕暮れ時に。上半身裸でムーンウォークをしてた堤さんを無言で眺めていた二宮さんだったが、突然はっとしたように我に返ると誤魔化すように咳払いを一つ。
「仕切り直しだ。明日また来い」
との鶴の一声で今日のところは解散に。太刀川さんと堤を連れ何処かへ消えて行った。俺まじでなんの為に呼ばれたんだ?去っていく3人を見送り、このまま帰っては本気で何しに来たか分からないと思いもう少し影浦さんと村上さんの戦闘を見ていくことにする。
「俺もう少しこれを見ていくんでお二人は先に帰って貰って大丈夫ですよ。お疲れさまでした」
俺の我が儘に付き合わせるのも悪いと思い黒江さんと木虎さんにお辞儀する。てか木虎さんそこに寄り掛かっていられると少し邪魔なんですが?テレビとラブラブしてる木虎さんには悪いがそのテレビとはちょっとお別れして貰おうと考えてると黒江さんに肩をちょんちょんと叩かれる。どうしました?
「私も残っていいですか?」
「え?」
「なんですか?」
「え、いや、これは俺が勝手に残るんで黒江さんまで付き合うことは、その、なんか申し訳ないと言いますか」
「邪魔ですか?」
「それは絶対にない」
即答。これは絶対。
「……そうですか」
「はい」
正座したまま黒江さんを見上げ答えると、黒江さんが椅子をえっちらおっちら持ってきて二つ並べる。
「どうぞ」
並べた椅子の一つを手で示す黒江さん。それに従い持ってきて貰った椅子に着席。
「わざわざすみません。ありがとうございます」
「我が儘言ったのは私ですからこれくらいなんでもありません」
「それでもありがとうございます。嬉しいです」
「……うん」
少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに返事をする黒江さんに萌えつつ、未だ部屋の隅で悶えてる木虎さんに目を向ける。まだテレビに寄り掛かりぶつぶつ言っている。そのせいで画面が見えない。ちょっと邪魔。てかこんな木虎さん初めて見たけど本当になにがあったんだ?
「一つ質問があるのですが、聞いてもいいでしょうか?」
「なんですか?」
「木虎さんに何したんですか?」
「お仕置き」
即答。目が笑ってない。数瞬前までのはにかむ顔から一転冷たく微笑む黒江さんにちょっとビビる俺。
「そ、そうですか」
「はい」
ひんやり微笑む黒江さんにこれ以上聞いてはいけないと理解した俺はそれ以上聞かない事にした。そして画面を塞ぐ木虎さんをどかす為立ち上がり木虎さんに近付く。
「木虎さん。あんまりテレビに寄り掛かると体に悪いですよ。体調が悪いならソファーで横になりましょ」
心なしかテレビがメキメキ言ってる気がするので寄り掛かる木虎さんに提案する。もしかして木虎さんって結構重いのかな?そんな失礼な事を思いながら木虎さんの肩をぽんと叩く。
「あんっ」
色っぽい声と共に悶える木虎さんからの殺気を放つ黒江さんって違うんです!俺は肩を叩いただけなんです!やましい事はなにもしてないんです!
「亮平君、激しい……」
あんたまじでいい加減にしろよ!肩叩かれる以上の戦闘繰り返してA級になったんだろ!ほぼC級の俺が肩を叩いてなんでそんな言葉が出てくんだよ!
「田中」
「待って下さい!黒江さんも今の見てましたよね!?今のは変な事をしたのではなく木虎さんの肩を優しく」
「亮平君……テクニシャン……」
「テクニシャンに叩いただけです!」
意味が分からん。なに言ってんだ俺?そしてなに言ってんの木虎さん?普通に肩を叩いただけでテクニシャンなら、世のマッサージ師の方は全員変態さんになってしまいますよ?黒江さん、俺はテクニシャンでもなんでもない普通の田中なので許してくれませんか?ダメ?だと思いました。はい、ごめんなさい。ほら、木虎さんもごめんなさいして。出来れば俺にもね。
何が悪かったのか分からないがとりあえず黒江さんにごめんなさいしてなんとか許して貰った。復活した木虎さんもごめんなさいをし持ってきた椅子に座り縮こまっている。
「木虎さん」
「はい……」
「俺はテクニシャンじゃありません」
「はい……」
「まじで勘弁して下さい」
「はい……ごめんなさい…」
正気に戻り、本当に反省した様子でごめんなさいする木虎さん。羞恥と申し訳なさで顔を真っ赤にし謝る木虎さんを見てこれ以上言うのは悪いかなと思いそろそろ許してあげる事にする。
「分かってくれればそれでいいです。そして弟子の分際で師匠に謝らせてしまってごめんなさい」
「あ、謝らないで!あ、あれは私が悪かったんだから!」
「木虎さんだけ謝らせる訳にはいきません。だからごめんなさいです」
「私の方こそごめんなさいよ!なにをトチ狂えば肩を叩かれてあんな言葉が出てくるのか自分で自分が不思議な位なんだから!」
「それには激しく同意しますがそれとこれは別です。ごめんなさい」
「私の方がごめんなさいって言ってるでしょ!もう謝らないでよごめんなさい!」
「木虎さんが謝るのを止めたら止めますごめんなさい」
「弟子の癖に師匠に逆らう気!そんな生意気な弟子に育てた覚えはないわよごめんなさい!」
「そんな謝る師匠に育てられた覚えはありませんごめんなさい」
「師匠の言葉に従えないって言うの!ごめんなさい!」
「弟子の顔を立てるのも師匠の役目ですよごめんなさい」
こんな感じにごめんなさい頂上決戦を繰り広げていると横に座ってる黒江さんから一言。
「二人共」
聞きなれた言葉にビクゥゥゥゥ!と体を揺らす俺達。
「「ごめんなさい」」
自然と出てくる謝罪の言葉。既に調教済みの俺達はこの言葉を聞いた瞬間アイコンタクトすら必要としないレベルでシンクロする。同時に謝る俺達を見てため息をつく黒江さん。そんなため息黒江さんは謝る俺達を見て少しもじもじした後椅子から腰を浮かせ俺達の前に立ち、綺麗に腰を折り頭を下げた。
「ごめんなさい」
「「え?」」
まさかの黒江さんからのごめんなさいに俺と木虎さんはサンバカーニバル。一体何が。
「さっきは、その……キトラセンパイニシットシテゴメンナサイ…」
てんやわんやする俺達に何か言ってる黒江さんだが声が小さくてて良く聞こえない。
「「ごめんなさい。後半小さすぎて聞こえません」」
「だ、だから!……………………シットシテアンナコトシテゴメンナサイ……」
「「本当にごめんなさい。本気で聞こえないんでもう少し大きな声でお願いします」」
「だ、だから、その……………………イチャツイテルヨウニミエタカラアンナコトシチャッテゴメンナサイ………」
「「Pardon?」」
ぶちって音が聞こえた。
下げた頭をユラリと起こし座った目付きで俺達を睨んだ黒江さんに肩をガッされる俺達。そして
「木虎先輩と田中さんのやり取りに嫉妬してごめんなさいって言ってるんですよ!!これで満足ですか!?どうせ私はこんな小さなことで嫉妬するバカな女ですよ!八つ当たりして悪かったですね!ごめんなさい!」
そう叫んだ後、もうやだ!と言いながら部屋の隅で膝を抱え踞る黒江さん。そんな黒江さんを見た後木虎さんを見る。木虎さんが頷く。俺も頷く。もう一度黒江さんを見る。部屋の隅で膝を抱えぷるぷるしてる。
「「なにこれ可愛い」」
「うるさいバカ!」
横道にそれてばっかで話しが進まない………年内に後1話投稿目指したらこんな事に……うん。ごめんなさい。
読んで頂きありがとうございました。皆さま良いお年をお過ごし下さい。来年またお会いしましょう!では!