妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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10話 再会

〔アリスリーダー、エンゲージ!〕

「3!」

 クリスティーネのJ-37 ビゲンとタチアナのMiG-23 フロッガーが増槽を捨てる。

 F-22Aとヘッドオン、タチアナはMiG-23の胴体下のサイドワインダーミサイルを発射する。当然ながらF-22Aはフレアを撒いて回避した。タチアナはレバーを操作して主翼を広げる。そしてアフターバーナーを焚きながら左旋回する。クリスティーネが囮として、わざとF-22Aの前に出る。その隙にタチアナは距離を詰めて23mm機関砲で撃墜した。

 

 

 

〔行くぞ!〕

 B4 ズーク、B5 アプサラス、B7 ランヴァボンがアフターバーナーを焚いてF-35Cの編隊を追撃する。サイドワインダーミサイルや20mmバルカン砲でF-35Cを次々屠っていくが、その3機の後ろからF/A-37 タロンが追い掛ける。

〔ズーク、後ろだ。今俺達とレイフが向かう〕

 FAC(前線管制機)の役割を担っていたB2 カーミラと、その護衛のB3 チュンヤンとB13 レイフがF/A-37の後ろに回り込む。

 右側の敵機が加速で出遅れている。それはレイフに任せ、2機はアフターバーナーを焚く。サイドワインダーミサイルでF/A-37をロックオン、すばやく発射した。

 

 

 

 零が扉を手前へ開ける。そして間髪入れずに桂城少尉が突入した。が、桂城少尉はP90を下ろした。

「あ……」

「どうした少尉」

 零が部屋に入ると、そこには金髪の女性がいた。89式小銃を腰だめで構え、固まっている。

 ありあとキャサリンは、一体誰なのか分からなかった。白衣を着、短い金髪で、へそを出したファッションの美人だ。ありあは隣のキャサリンと見比べる。

「ありあ! 金髪だからって親戚じゃないから!」

 キャサリンがそう言った。零はキャサリンを一瞥し、そして目の前にいる女性に向かって口を開いた。

「フォス大尉、銃を下ろせ。そしてどうしてここに?」

 それは、特殊戦の女性軍医、エディス=フォス大尉だった。

 

 

 

「しつこい!」

 セシルが叫ぶ。エリゴスの後ろには、まだSu-47がいる。FAFが開発した各種AAMなら全方位攻撃が可能だが(事実、雪風が実行した)、搭載しているのはベトナム戦争時代のミサイルだ。ソフトウェアで出来ても、ハードウェアが旧式なら意味はない。

 エリゴスの真後ろにSu-47がついた。エリゴスが攻撃照準波を感知、自動でジャミングを行うが、赤外線パッシブホーミング式のミサイルだったら無駄だ。セシルは腹を決め、スロットルレバーのVmaxスイッチをオン、左手をスロットルレバーから膝の辺りへ動かす。すぐそこにはオートマニューバスイッチがある。Vmaxスイッチを押した事で、今のエリゴスはありとあらゆる安全装置が動作していない。

 すると、いきなりSu-47が爆ぜた。振り返れば、Su-47の破片の向こうにスーパーシルフが見える。

〔待たせたな〕

「別に待ってない」

 それは、B10 ガッターレだった。ガッターレはエリゴスの隣に並ぶ。ガッターレのパイロット・プッツァー少尉がラフに敬礼してくる。セシルはちらっとガッターレを見、Vmaxスイッチを切る。

 

 

 

「深井大尉に桂城少尉……あと、誰?」

 エディスは89式小銃の銃口を下ろしながら尋ねた。

 ありあは9mm拳銃片手に口を開く。

「国連軍 第307飛行隊所属、春夏秋冬 ありあ」

「えっと、同じく第307飛行隊のキャサリン=ウェラーです!」

 エディスはじっくりとありあとキャサリンを見、零に訊く。

「誰?」

「一言で言えば、ジャムではない」

「それは分かるわ。ジャミーズでもないのもね。というより、国連軍?」

 エディスは首を傾げた。零は、エディスが手にする錆び付いた89式小銃を見て、耐Gスーツの内ポケットからグロックを取り出し、スライドを引いてエディスに差し出した。

「エディス、そのライフルは捨てた方がいい。銃身が錆びている」

 そう言われ、エディスは89式小銃をそっと壁に立て掛け、グロックを受け取った。

「使い方は?」

「FAF入隊の時の基礎訓練以来よ。それ以外で銃は手にしてない。でも、武器がいるの?」

「ここにロンバート大佐がいるかもしれないんだ。無いよりはましだろう」

 零はP90を持ち直し、部屋を出て行こうとする。すると、エディスが引き止めた。

「待って。私は何も説明を受けてないのよ。ここは何処で、どうしてロンバート大佐がここにいるかもしれなくて、そして彼女達は何者なの?」

「説明すれば長くなる。聞く用意は出来ているか?」

「どういう事?」

「ここは地球だが、ジャムが存在しない。忘れられたのではなく、最初からいないんだ」

 

 

 

 第2波、第3波と攻撃を続け、網走ピラーの根元をだいぶ削った。しかし、まだ網走ピラーは倒れそうもない。

〔第4波攻撃隊、攻撃開始!〕

 B-52 ストラトフォートレス、Tu-22 バックファイアがALCM(空中発射巡航ミサイル)や対艦ミサイルを全て発射する。そして2機のB-52がビルダーの迎撃を喰らった。

 クリスティーネは、タチアナと共にA-6 イントルーダーやF-4J ファントムⅡの第5波攻撃隊を護衛するためにYF-23 ブラックウィンドウⅡと交戦していた。

「アリスリーダー、FOX2!」

 J-37 ビゲンの右主翼からサイドワインダーミサイルが発射する。当たらないし邪魔なスパローミサイルは、空中戦を始める前に捨てていた。残るミサイルはあと1発。

 

 

 

「ジャムが、最初から存在しない……!?」

 エディスが驚く。無理もないと零は思った。

「……つまり、パラレルワールドという事ね」

「パラレルワールド?」

 エディスの言葉に、零は疑問を投げかける。

「よくタイムマシンに関わる議論に出てくるんだけど、例えばタイムマシンで過去に行き、まだ幼い自分の祖父を殺したとする」

「その場合、殺人罪は適用されるのですかね?」

「少尉、黙っていろ」

「イエッサー」

「……ここで、祖父を殺せば、勿論自分は生まれない、けど祖父を殺す人間もいなくなってしまう、『祖父のパラドックス』と呼ばれる矛盾に陥ってしまうの」

「フムン。ジャムならその問題を解決してくれそうだ」

「正気なの?」

「冗談だ」

「よくこの場で、笑えない冗談を言えるわね……話は戻って、その祖父が死に、自分は生きていない世界にワープした、という仮説を出せば、『祖父のパラドックス』を解決出来る。そうした、よく似ているけど細部が違う世界がいくつもあって、ふとしたきっかけで、その違う世界に行ってしまうという理論を『パラレルワールド』と呼ぶの。もしかしたら、違う世界の深井大尉はごく普通に働き、幸せな家庭を築いているかもね」

「それは無いだろう」

「パラレルワールドの話よ。ここにいるあなたは、そういうのとは正反対の場所にいるのは明確よ」

「……しかし、とんだ茶番だ。だいたい、タイムマシンは存在しないし、パラレルワールドだって検証は不可能だろう」

「確かにね。一応、身体の冷凍保存という未来に行く方向は出来そうと言われているけど」

 すると、ありあが口を開いた。

「とにかく、今はロンバート大佐とやらを探すのが先じゃないか?」

 零ははっとした。

 

 

 

「大変です准将!」

 M16 A3を抱えたヒカラチアが司令室に駆け込んでくる。

「どうした?」

 クーリィ准将は冷徹に言う。ヒカラチアは息を切らしながらも続けた。

「ブッカー少佐が撃たれ、フォス大尉が行方不明です!」

「何」

 その言葉は、特殊戦にさらなる混乱をもたらした。

 

 

 

〔第4波着弾、第5波攻撃隊は攻撃開始〕

 第5波攻撃隊のA-6 イントルーダーやF-4J ファントムⅡが対艦ミサイルを放つ。F-5 タイガーやSu-15 フラゴンがそれを援護した。

 対艦ミサイル着弾、やがて網走ピラーが音を立てて南へ傾き始めた。

〔やった、やったぞ!〕

〔遂にピラーをへし折った!〕

〔喜ぶのはまだ早い! こっちへ倒れてくるぞ!〕

 攻撃機や戦闘機はアフターバーナーを焚いて離脱、早期警戒機も損害を出しながら撤退する。

〔皆、帰るぞ。ブーメラン4、RTB〕

 編隊を組んだスーパーシルフ達もアフターバーナーを煌めかせ、三沢基地へ向かった。

 

 

 

「な、何……!?」

 キャサリンがたじろぐ。突如聞こえた轟音に、零も驚く。

「ピラーが……!」

 ありあが、驚いた顔で窓の外を指差した。見れば、巨大な網走ピラーが傾き始めていた。

「深井大尉、あれは何!?」

 グロックを手にしたエディスが叫ぶ。零は答えた。

「あれは、彼女達にとってのジャムの戦線基地だ」

「というより、こっちに向かって倒れてきてません!?」

 桂城少尉の顔が青ざめる。零は、ありあとキャサリンの方を向き、口を開いた。

「春夏秋冬、ウェラー、ロンバート大佐の捜索は一旦中止して脱出する」

「分かった。キャシー、F-4の後席、空いてるよね?」

「空いてるけど……」

 エディスは驚いた。

「F-4って、まさかファントムじゃないでしょうね?」

「はい、マクドネルダグラス F-4E ファントムⅡ、アメリカ空軍仕様機です」

 エディスの目が皿になる。

「冗談じゃないわ! 今飛行用装備をつけてないのよ! それこそ命に関わる――」

「大丈夫だ、メイヴ程の殺人機動ではないから死にはすまい」

「あのねぇ、深井大尉! あなたなら大丈夫でしょうけど、私は軍医よ!? ただでさえ準備万端でもメイヴが駄目だったんだから、何もせずにファントムに乗ったら――」

「そうだったな」

「『そうだったな』じゃないでしょう!? 全く――」

 2人の口喧嘩の間に、桂城少尉が割って入る。

「とにかく、今は逃げ出す事を考えましょう。あまり時間の猶予もなさそうだし」

 しかし、桂城少尉が言ってもエディスはがみがみ言う。最終的にキャサリンがなだめ、エプロンへ向かう。

 

 FFR-41MR メイヴがアイドリングで待機していた。ぎゃーぎゃー言うエディスを、機上のキャサリンが引き上げ、零とありあが押し上げる。

 そして零と桂城少尉はエアインテークに吸い込まれないように気を付けながらメイヴのコクピットカプセルに滑り込んだ。P90を座席下のサバイバルキットに仕舞い、ヘルメットを被って酸素マスクを着ける。ありあとキャサリンに先に行くよう伝え、エプロンにいるTS-1を睨んだ。

 

 

 

 エディスは恐怖に震えていた。J-79ターボジェットエンジンの鼓動に負けないくらいに心臓が拍を刻む。耐Gスーツもヘルメットも酸素マスクも無しに戦闘機に乗るなんて前代未聞だった。いや、前席の少女がその状態だった。ゴトゴトと滑走路までタキシング、前席の金髪の少女は慣れた手つきで垂直尾翼や水平尾翼、エルロン、フラップを確認、そして左隣の緑色の戦闘機に乗るピンク髪の少女とハンドサインで意志疎通、アフターバーナーを点火させた。

 ドンという衝撃、エディスは腹に力を込めた。そしてブレーキが解放されたF-4Eは力強く加速、700mほど滑走して飛び上がった。

 その後からメイヴが離陸した。




エディス登場です。

さらっと、第三飛行少女隊を見返すと、「1980年以降の戦闘機が使えない」ってあるんですよ。F-14もF-15もF-16も1970年代に初飛行してますが・・・
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