妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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16話 トラブル

 調布基地の滑走路に、F-16D ファイティングファルコンが向かう。パイロットはB6 ミンクスのアナスタチア=コヴァレフスカ中尉、後席にはイヴァン=イヴァノヴィッチ=コズロフ大尉が座っている。

 滑走路には、既にメイヴが待機していた。F-16Dが滑走路に入ると、2機はアフターバーナーを焚いた。

 

 

 

 エディスは、二日酔いの頭で思い出そうとしていた。

「……店で酔いつぶれたのは何となく覚えているけど……そこからどうなったんだっけ……」

 いくら思い出そうとしても、頭の鈍痛が酷くなるだけだった。

 心配そうにキャサリンが言った。

「大丈夫ですか? お水、持ってきましょうか?」

「いえ……その必要は無いわ、ありがとう」

 そして、エディスは再び思い出そうとする。

 店で酔いつぶれ、その後誰かに介抱された記憶はある。しかし、その時に自分が何か重要な事を言った気がするのだ。だが、それが何なのかが出てこない。

「う~ん……」

 いくら考えても、頭が痛くなるだけだった。

 

 

 

〔こちらB6、高度2万を巡航中。機体に異常は認められない〕

 メイヴと共に、F-16Dが飛んでいる。ブーメラン隊の圧倒的飛行時間の少なさから、F-16Dが4機だけ配備されたのだった。

〔深井大尉〕

 アナスタチアが話し掛けた。

「何だ、コヴァレフスカ中尉?」

〔F-16の反応性を見たい、模擬空戦をお願いできるか?〕

「分かった。燃料はあるか?」

〔充分〕

「よし、ブレイク・ターン、ナウ」

 そう言って、メイヴは左へ、F-16Dは右へ旋回した。

「桂城少尉、マスターアームは切ってあるな?」

「ええ、セイフです。でも、メイヴとF-16じゃあ、勝負は一瞬では?」

「私語は慎め、少尉。あくまでもF-16のテストだ、勝ち負けはどうでもいい」

「イエッサー」

 そしてメイヴは右旋回を始める。全周囲パルスドップラーレーダーで、F-16Dの位置はリアルタイムで分かる。

〔B6、エンゲージ〕

「B1、エンゲージ」

 そして2機は模擬空戦を始めた。

 

 

 

 アラート待機機が交代する。第407飛行隊のMiG-25がエプロンから格納庫へと牽引される。そして、アリス隊の機体がエプロンに並んだ(調布基地にはアラート待機機用のシェルターが無い)。

 J-37 ビゲン、ミラージュ2000-5、MiG-23 フロッガー、F-15C イーグル、FFR-31 シルフィードがずらりと並ぶ。

 ありあは、シルフィードのコクピットでプリフライトチェックを行う。ADC(エアデータ・コンピュータ)、中枢コンピュータ、戦術コンピュータ、CICS(キャビン内環境調節システム)、マスターアーム、FC(射撃統制)レーダー、FCS(射撃統制装置)、各種索敵装置、ジャイロコンパス、航法慣性装置、AICS(エアインテーク制御システム)……etc。

 プリフライトチェックを済ませ、ありあは空を見る。解放されたキャノピーを通じて青空が広がっている。

「ありあ、休まなくていいの?」

 ふと見れば、コクピットに掛けられた梯子にキャサリンが登っていた。

「大丈夫、それに、いざとなったらこのまま飛べる」

「確かにそうだけど……」

 

 

 

 F-16Dとメイヴが模擬空戦を始めた。

「中尉、後ろを取られた! ブレイク・レフト!」

「分かってる!」

 F-16Dが、前縁ストレーキからベーパーを出しながら左急旋回をする。しかし、相手はメイヴであるため、振り切れない。

 アナスタチアは、サイドスティックに右向きの力を加え、機体を水平にする。そして、アフターバーナーを焚きながら急上昇させた。

「上がれ、ファルコン!」

 F-16DのP&W F100ターボファンエンジンが唸る。しかし、メイヴの方が推力重量比では上であるため、みるみる距離が近付く。

「駄目だ、ぴったり後ろを取られた」

 コズロフ大尉が、後ろを振り返りながら言った。そこには、触れ合わんばかりに近くを飛ぶメイヴの機首があった。

「まだよ、まだ終わってない」

 アナスタチアはそう口にし、スロットルレバーを手前に引いた。エンジンがアイドルになり、F-16Dは一瞬空中で制止する。

「え、ちょっ」

「舌を噛まないように、しっかり閉じてなさい!」

 そして、F-16Dは背面急降下を始めた。

 

 

 

 スクランブル発令。直ちにバスの中で談話していたアリス隊の面々が飛び出し、機体に飛び乗る。

 ありあはすぐにフェニックスを始動させ、作業員に車輪止めを外すようにハンドサインを出した。

 主翼下の4発の短距離ミサイルの安全ピンが抜かれ、作業員がありあにそれを見せる。ありあはそれを確認、J-37が滑走路へ向かうのを見届ける。

〔アリス1より調布タワーへ。Request clearance for takeoff.〕

〔タワーよりアリス隊、clearance for takeoff.〕

 J-37 ビゲンとミラージュ2000-5がアフターバーナーを焚いて加速する。続いて、MiG-23 フロッガーとシルフィード、F-15Cが滑走路に並ぶ。そしてアフターバーナーを焚いた。

 

 

 

 F-16Dが海面に向けて一直線に落ちる。その速度によってタービンが回り、エンジンが自動で再起動される。

 小型液晶ディスプレイに「caution」という文字が点滅する。アナスタチアはスロットルレバーを押し、エンジンをミリタリーへ。同時にF-16Dは雲へと突っ込む。

「機長、中尉! 機首上げ!」

 コズロフ大尉が叫ぶ。そして、アナスタチアはサイドスティックを手前に引き、アフターバーナーを焚く。F-16Dは高度200mで水平飛行を始めた。

 コズロフ大尉が一息つく。しかし、F-16Dの後方警戒レーダーがいきなり鳴り始めた。

「そういえば、雪風は何処に!?」

 振り返れば、そこにメイヴがいた。

〔中尉、模擬空戦は終わりだ。今、調布基地からの連絡で、ビルダーが接近しているらしい〕

 零がそう伝える。アナスタチアはアフターバーナーを切りながら、零に伝える。

「了解した、深井大尉。これより帰投する」

 

 

 

 やがて、アリス隊がビルダーの戦闘機群をレーダーで捕捉した。

〔アリスリーダー、FOX1!〕

 アリス隊が次々とスパローミサイル(ありあとキャサリンはアムラームミサイル)を発射する。

 しかし、戦果はたった2機だけだった。残りの6機が近付いてくる。

〔皆、行くわよ! アリスリーダー、エンゲージ!〕

 アリス隊の機がアフターバーナーを焚いて加速する。しかし、シルフィードだけが加速しない。

〔ありあ!?〕

「こちらアリス4、エンジン出力が上がらない!」

 ありあは計器類を確認する。エンジン回転数は正常、しかしパワーが出ていない。燃料流量も正常、つまり不完全燃焼が起きている。しかし原因が分からない。

「こちらアリス4、エンジンにトラブル発生、先に行ってください」

〔アーチャー!?〕

〔アーチャー先輩!〕

「大丈夫です、まだ飛べる」

〔……分かったわ、無茶しないでね〕

 シルフィードを残し、残りはアフターバーナーを点火させて加速する。

 

 

 

 F-16Dとメイヴは、ビルダーのX-32とF-35に追われていた。

〔中尉、ブレイク・ライト!〕

 F-16Dが右急旋回、しかしX-32も続く。メイヴは4機のF-35Aを相手に苦戦している。

〔アーニャさん、大丈夫ですか!?〕

 そこへ、アリス隊が到着した。J-37とMiG-23がヘッドオンでサイドワインダーミサイルを全て放ち、ミラージュ2000-5とF-15CがX-32と旋回戦を始める。

「クルデガルド大尉、春夏秋冬少尉はどうした?」

 F-35Aを20mmバルカン砲で仕留めた零が、クリスティーネに訊ねた。

〔アーチャーですか? エンジントラブルで加速出来ず、後からやってくると〕

 それを聞き、零には思いあたる節があった。

「今すぐ春夏秋冬少尉に引き返すように伝えろ」

〔え? どうして?〕

「恐らく春夏秋冬少尉の機体のエアインテーク周りに破壊工作が行われている。加速しないのはそのためだ」

〔わ、分かったわ! アーチャー、聞こえる? 今すぐ基地に戻って!〕

 

 

 

 しかし、ありあにはそれが出来なかった。シルフィードは、既にF/A-27Aとドッグファイトを始めていた。

(未確認の新型機、それに強い!)

 2機のF/A-27Aを相手に、ありあは苦戦を強いられる。ましてや、エンジンの調子が悪いのだ。

 右急旋回をし、F/A-27Aのガン攻撃をかわす。しかしロックオンされた。機体の受動警戒装置が警鐘を鳴らす。ありあは左バレルロールを打ちながらチャフとフレアを撒く。

 

 

 

 零は決断する。一気にスロットルレバーをA/B(アフターバーナー)から奥の、MR(ラムエアモード)に叩き込む。メイヴに搭載された2基のFNX-5011-D(スーパーフェニックス マークXI)がラムエアモードになり、急加速する。

「うわっ、深井大尉!?」

「B1、これより春夏秋冬少尉の援護に向かう!」

 音速を突破したメイヴのコクピットカプセルは沈み込み、巨大な前進翼が上へと畳まれた。

 

 

 

 ありあはシルフィードを左急旋回させる。しかし、F/A-27Aもしぶとくついて来る。

「くっ!」

 アフターバーナー、そしてさらに奥のラムエアモードにして振り切りたいが、エンジンが言う事を聞かないのである。右のフェニックスから異常な黒煙が出ていて、左もおかしな振動を発している。

 振り返れば、F/A-27Aのエアインテーク左側面の機関砲の砲口が見える。

 ありあは死を覚悟する。

 

 しかし、弾けたのはシルフィードではなかった。F/A-27Aは、雪風の高速ガン攻撃を喰らって真っ二つになっていた。

〔アリス4、無事か?〕

「深井、大尉……?」

 ありあは驚く。まさか、ブーメラン戦隊が支援するとは思いもしなかった。

〔アリス4、損害を教えろ〕

 零の冷たい声に、ありあはいつものブーメラン戦士だと気付かされた。

「右エンジンが使用不可能、左はかろうじて……でも振動が激しい」

〔やはりな。アリス4、テストプログラムを起動させろ〕

「今、戦闘中だ!」

〔敵はこちらが引き付ける。いいからテストプログラムだ〕

「……了解」

 ありあは渋々従う。プリフライトチェックと同じようにテストプログラムを走らせる。すると、早速異常が見つかった。AICS(エアインテーク制御システム)、飛行速度に応じて可変ランプを調節するシステムだ。だが、離陸する前のチェックでは正常だった。

「深井大尉、AICSに異常が」

〔AICSを中枢コンピュータから切り離し、フライトモードを高速巡航へ〕

「了解」

 言われた通りに操作する。すると、左エンジンの振動が止まった。

「左エンジン、振動停止……一体どうやって?」

〔細かいことは後だ、とにかくアフターバーナーを焚いて離脱しろ〕

「アリス4、了解」

 そして、シルフィードはアフターバーナーを煌めかして戦場を去っていった。




さて、次は何を出そうかな。F-20? 知らない子ですね

あくまで予定ですが、短い連載にしようかなと思っています。
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