妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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18話 バイパー

 ありあは、司令室に来ていた。

「春夏秋冬少尉、あなたの新しい機体です」

 ヴィロワ司令の机の上に、分厚いマニュアルが置いてある。表紙には「MITSUBISHI JASDF F-2A/B 三菱重工 航空自衛隊 F-2支援戦闘機」と書かれている。

「F-2、ですか?」

「ええ。F-16と同様の修理をし、復旧するのに成功しました。まだF/A-18E/FやJAS-39、ラファール、タイフーンは飛べませんが。第4.5世代戦闘機はまだ使えないようです」

 ありあは黙っている。眼下のエプロンには、緑地迷彩にされたF-2A バイパーゼロが駐機している。

 

 

 

 そして零は、見覚えのある人間に遭遇していた。

「久し振りだな、深井中尉」

 刈り上げ頭の男が言う。会うのはこれで2度目、いや3度目だった。

(メイヴ雪風で飛び込んだ不可知戦域、あそこにいた偽スーパーシルフに乗っていたのもこいつだ)

 零は咄嗟にグロックを取り出す。しかし、その男はグロックを払い落とした。

「ゆっくり話そうじゃないか。深井中尉」

 その男はニヤリと笑う。零は口を開いた。

「どうしてここにいるんだ、ジャミーズ!」

「酷いなぁ。私にも名前があるのだが。ヤザワだよ、矢沢 弘司」

 

 

 

 エディスが何かを探すようにうろうろしている。

「どうしたんですか、エディスさん?」

 クリスティーネが尋ねると、エディスが答えた。

「深井大尉を探しているのよ」

「零さんですか?」

「ええ。前に呑んだ時に、思い出せない何かがあったんだけど、それを訊きたくて」

「酔って記憶が無くなったんですか?」

「残念ながらね。思い出そうとしても、靄が掛かっているように思い出せないのよ」

「あ~、私もよくあります」

 そんな会話を続け、エディスはクリスティーネと別れる。

「零さんを見かけたら、エディスさんが探してたと言っておきますね」

「ありがとう。私はもう一回格納庫を見てくるわ」

 

 

 

 ヤザワは不敵な笑みを浮かべている。

「一体、何の用だ?」

「ふ、分かりきった事を。君なら、もう我々ジャムとビルダーからの共同声明に気付いているんじゃないかな?」

 そう言って、ヤザワの口角が上がっていく。零は、ジャージで隠した腰の膨らみ――エマージェンシーナイフ――を意識する。これは、本来緊急脱出した際、パラコード(パラシュートに使う紐)やシートベルトが絡まった時に使う予備の小型ナイフである。普段は耐Gスーツの一番取り出しやすい所に入れておくが、万が一のために零は持ち歩いていたのだ(勿論FAFではそんなことはしなかった)。

「春夏秋冬少尉の機体のAICSを破壊した事か?」

「そうだ。春夏秋冬、『シュンカシュウトウ』と書いて『ヒトトセ』と読むのは、情緒溢れるが、おかしく感じないか、深井中尉?」

「そんなのはどうでもいい。あんたの感性であって、おれには関係ない」

「フムン、同じ日本人なら話が通じるかと思ったが」

「あんたはジャミーズでおれは生きている。勝手に殺すな。そもそもAIC――」

「フゥム、やはり無理か。ロンバート大佐は『同じ異質者同士、話を理解してくれる』と言っていたが」

「話を脱線させるな。AICSの件だけじゃない、おれ達ブーメラン戦隊、そしてフォス大尉をこの世界に集め、アシュケナージ大尉にTYPE7型のストラップを渡し、挙げ句にジョナサン=ランコムだと? お前らは一体――」

「悪いが、君に質問権は無い。私はジャムとビルダーの合同スポークスマンに過ぎない。ま、何を話すかは私次第だが」

「何だと?」

 零は語調を強める。が、ヤザワはニヤリと笑ったままだ。

「フォス大尉か。彼女をこの世界に連れてきたのは間違いだったな。最も、向こうにいられても困るのだが」

「どういう意味だ」

「そのまんまだよ。彼女は、我々にとって脅威だ」

 そう言って、ヤザワは腰からグロックを取り出し、自分の首に銃口を当てて引き金を引いた。彼の手からグロックが落ち、物言わぬ死体が倒れる。

「っ――!?」

 気付いた時には遅かった。銃声を聞きつけ、人が集まる。

 その時、別の銃声が鳴った。P90の独特な「タララッ!」という銃声だった。零は、咄嗟に自分のとヤザワのグロックを持ち上げ、銃声のした方、格納庫へと向かった。

 

 

 

 格納庫前で、桂城少尉とコズロフ大尉がP90を構えている。桂城少尉の足下には3個の5.7×28mm高速小口径弾の細長い薬莢が転がっていた。

「フォス大尉を離せ!」

 桂城少尉が叫ぶ。その先、約15m離れた先に、背後からエディスを拘束し、彼女の首筋にメスを当てる看護婦がいた。

「あなた達こそ、そんなチャチなPDWを降ろしなさい。こんなに離れていれば、ピンヘッド(画鋲の頭を正確に撃ち抜くこと)なんて出来やしないでしょう? 帰って上層部にセブロ並みに精度の高いSMG(短機関銃)を申請するか、自分の射撃センスの無さを呪いなさい」

 その看護婦はそう言った。桂城少尉は引き金に掛ける力を増やす。

「たった15mだ! お前の頭を撃ち抜くのは楽勝だ!」

 桂城少尉はそう叫んだ。ドットサイト内の赤い点は、長い黒髪の看護婦の頭と合わさっている。

「だったらやってみなさい。言っとくけど、それに使う小口径弾は横風に流されやすいし、弾丸が頭蓋骨を貫通しない可能性も考慮しなさい」

「っ……!」

 桂城少尉の額から冷や汗が流れる。

 しかし別の人物が、看護婦の後頭部に銃口を突き付けた。

「よけてみろ」

 銃声が轟く。9×19mmパラベレム弾のフルメタルジャケット弾丸が、看護婦の頭蓋骨を貫き、看護婦が倒れた。

「深井大尉……?」

 看護婦の返り血を浴びたエディスが振り向いた。そしてP90を手にした桂城少尉とコズロフ大尉が駆け寄る。

 そこには、2丁のグロック 17を手にした零がいた。

 

 

 

 調布基地は、すっかりパニック状態になった。倒れていたヤザワと看護婦――マーニィ――の傷口から、コーンポタージュのような液体が流れ出て、直ちに対NBC処理班が死体のある場所の周りを徹底的に除染し、死体を焼却処分した。そして、P90を手にしたブーメラン戦隊の戦士達やM16 A4や64式小銃を手にした憲兵達が残っていたジャミーズを駆除する。

「ジョナサン=ランコム少尉はいるか?」

 M16 A4を携えた憲兵達が、整備班のバックヤードへ突入した。

「はい、僕がランコムですが」

 整備員達とポーカーをやっていたジョナサン=ランコムが立ち上がった。直後、彼はM16 A4から3発制御点射で放たれた3発の5.56×45mm SS109弾のフルメタルジャケット弾丸を頭部に喰らって絶命した。

 硝煙の匂いと共に、3個の薬莢と死体が転がる。そして、やはり彼の頭からもコーンポタージュのような液体が溢れ出た。

「う、うわぁぁ!」

 整備員達が悲鳴を上げて逃げていく。憲兵はM16 A4をもう一度物言わぬ死体にむけて発砲した。

 

 

 

「フォス大尉、大丈夫か?」

 診察室から出てきたエディスを、零が出迎えた。エディスは、首に包帯を巻いている。

「ええ。メスがちょっとばかり首に食い込んだだけよ」

 そう言って、エディスは包帯を外した。少し出血しているが、彼女は包帯を丸めて傷口に当てる。

「それにしても、深井大尉が出迎えとはね」

「さっき、クルデガルド大尉が、君がおれを探していたと言っていたからな」

 そう言われ、エディスは零への用事を思い出した。

「そうだった。深井大尉、一緒に呑んだあの晩、私が変な事を言ってなかった?」

「あの晩? おれも最後の方の記憶が無いんだが」

「そう。ならいいの」

 すると、零はエディスに何かを差し出した。

「深井大尉?」

「今回のような事になった時に使え」

 それはグロック 17だった。スライドに「FAF 9×19 357139」と書かれている。最後の6桁の数字はFAFでの登録番号だ。

「いいの?」

「ああ。1つ余った」

 そう言って、零は立ち去る。

(拳銃って余る物ではないでしょう)

 そう思いながら、エディスはグロックをまじまじと見る。スライドを少し引くと、エジェクションポート(排莢口)から真鍮製の薬莢が覗いた。

 スライドから手を離し、エディスはグロックをベルトに差し込んだ。

 

 

 

 数日後――

〔Alice4, Boomerang1, clearance for takeoff.〕

 調布基地の滑走路から、緑地迷彩柄のF-2A バイパーゼロとFFR-41MR メイヴが離陸する。ありあの機体習熟を兼ねた哨戒飛行だった。僚機は、くじ引きで選ばれた雪風だった。

 2機は滑走路を蹴り、アフターバーナーを焚いたまま上昇した。




やったね! 殆どのジャミーズさんを出したよ! あとはメイル中尉とチキンブロス・バーガディッシュ少尉だ!

ちなみに、マーニィの口調が某少佐なのは、単純に中の人が一緒だから。つくづく色んなネタをぶち込み過ぎと、自分でも思います。さて、次は「Area88」にしようかな、それとも「ファントム無頼」にしようかな?(反省の色がない)

宣伝ですが、アドミラル56及びその他が艦これ世界に転生する小説、「艦隊これくしょん ~南雲機動艦隊、参ります!~」の連載を始めました。
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