妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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22話 新生アリス隊

 夜中、アリス隊の護衛と共に雪風とアリス4が調布基地に帰投した。

 メイヴのランディングギアが降り、降着灯が光る。F-2A バイパーゼロも、降着灯を光らせ接地した。

 しばらくウィリー滑走、前脚が接地して減速してエプロンに向かう。その後からアリス隊も着陸し、エプロンに集結した。

 F-2A バイパーゼロのキャノピーが開く。整備班が梯子を掛け、ありあが降りる。するとそこへ、キャサリンが駆け寄って抱き付いた。

「キャシー!?」

「良かった……ありあが無事で……」

 キャサリンの瞳から涙が流れ落ちる。

 

 そんな光景を尻目に、零と桂城少尉もメイヴから降りた。

「深井大尉」

 エディスが話し掛ける。

「何だ、フォス大尉?」

「一体何があったの?」

「後で説明する。それよりも、腹が減った」

 

 

 

 食堂で、簡単に腹ごしらえを済ませた零とありあ、桂城少尉を始めとするブーメラン戦隊、アリス隊の全員がブリーフィングルームに集まった。

「何があったんだ、深井大尉?」

 ブリューイ中尉が言う。零は頷き、口を開く。

「簡単に言えば、〈不可知戦域〉に飲み込まれた。そして、ビルダーが非戦協定を結ばないか、と言ってきた。当然断ったが」

 零がそう言った。それに、ブーメラン戦隊はともかく、アリス隊が衝撃を受けた。

「何でですか!?」

 タチアナが驚いた。他のアリス隊も、軒並み信じられないという顔をしている。満腹で欠伸を噛み殺す桂城少尉を横目に、零が口を開いた。

「今まで殺し合いをしてきて、さらに正体不明の相手と手を取り合えるか?」

「それもそうね……」

 クリスティーネが納得する。

 

 

 

 夜遅いため、今後をどうするかは2日後に引き伸ばされた。

 

 翌朝、エプロンにまた新しい機体が並んでいた。

 片方は単発・単垂直尾翼、水平尾翼の代わりに可変カナードを有する、小型軽量のスウェーデン製局地戦闘機・SAAB JAS-39C グリペンだ。

 もう片方は双発・双垂直尾翼、巨大なエアインテークと前縁ストレーキを有するソ連製局地戦闘機・ミコヤン=グレビッチ MiG-29M ファルクラムだった。

 この2機は、アリス隊の新たな翼だ。JAS-39C グリペンは、勿論原型のJ-37 ビゲンに乗っていたクリスティーネが、MiG-29M ファルクラムはタチアナが乗る。

 2機は、ミラージュ2000-5とF-15C イーグルと共にテスト飛行へと向かう。滑走路に2機が並び、エンジンを吹かす。MiG-29M ファルクラムのメインエアインテークカバーが閉まり、代わりに補助エアインテークが全開になる。

〔Hell Alice, this Chofu tower, clearance for takeoff.〕

〔Roger, Alice1, takeoff!〕

 2機はアフターバーナーを焚く。1本の増槽と4発の短距離空対空ミサイルを装備する、JAS-39C グリペンとMiG-29M ファルクラムは地面を蹴り、空へと上がった。

 

 

 

 その頃、零と桂城少尉、ありあは司令室に呼ばれていた。

 ヴィロワ司令の机に、1枚の写真がある。それは、〈不可知戦域〉でメイヴ雪風が撮った、ガンカメラの写真だった。ヘッドアップディスプレイのすっきりした表示の向こうに、例の正三角形にコクピットを付けた、へんてこな飛行機が写っている。

「戦闘に直接関係の無い事ですが、判明した事があります」

 ヴィロワ司令は指を組む。

「このへんてこな航空機、写真解析によれば、A-12 アヴェンジャーとの事です」

 ヴィロワ司令はそう言った。しかし、3人は首を傾げた。

「まあ、分からなくて当然です。これは、アメリカが開発を中断した、幻の艦載攻撃機ですから」

「開発を中断?」

 ありあが聞き返す。

「ええ。A-6の後継として開発が計画されましたが、冷戦終結による予算縮小、海軍と空軍の要求を満たす性能が要求されたために開発が難航、試作機の飛行実験さえされなかった機体です」

「どうして、飛んだ事が無い機体が……」

 桂城少尉の呟きに、ヴィロワ司令が反応する。

「その通りです。ビルダーは、どうやら計画だけの機体もコピーを作って戦力に出来るようです」

 

 

 

 JAS-39C グリペン、MiG-29M ファルクラム、ミラージュ2000-5、F-15C イーグルの編隊が飛ぶ。

〔しかしファルクラムとは、随分旧型の機体だな〕

〔ノアさん! ミーク(MiG)を馬鹿にしないでください! だいたい、ミラージュの方が古いはずです!〕

〔ふっ、オリジナルのミラージュより、イスラエルの改良型、クフィルの方が私は好きだがな〕

〔改良型というより、コピ――〕

〔タチアナ、30mmとサイドワインダー、どっちがいい?〕

〔フレンドリーファイア(友軍誤射)するつもりですよこの人〕

〔ロシアやフランスもいいけれど、やっぱりスウェーデン製よね〜。高速道路を滑走路代わりに出来るから、残存性が高いのが魅力よ。飛べなければただの鉄屑じゃない〕

〔〔クリスティーネ先さん輩! グリペンという変態を引き合いにしないでくだ頂きさいたい!〕〕

〔何だかんだで仲がいいのね♪〕

〔〔違いうます!〕〕

〔ほら♪〕

〔……そういえば、キャシーさんはF-15の何処が好きなんですか?〕

「えっ」

 いきなり話を振られて驚く。

「私は、そんなにこだわりとかありませんけど……でも、アフターバーナーを焚いた時の力強さは頼もしく思います」

 キャサリンはそう言った。その意見に、ノアが賛同する。

〔確かに、F-15のアフターバーナーを体感すると、他の機が物足りなく感じるな〕

〔『エンジン性能など、腕前と気力でどうにでもなる』のに?〕

〔タチアナ!〕

 タチアナの茶々に、ノアが怒鳴る。キャサリンには、ふと眩しく思う。

 と、そこへ緊急連絡が来た。

〔PAN、PAN、PAN! ビルダーの攻撃機群を捕捉! ポイントFN-591、方位200、速度マッハ1.2、高度800!〕

 それは、防空レーダーからだった。ビルダーの攻撃機群は、ここから近い。

 クリスティーネはサイドスティックを握り締める。

〔アリス1、迎撃に向かいます! 皆、行くわよ!〕

『ラジャー!』

 4機は右へ方向転換、アフターバーナーを点火させて加速する。

 

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