レーダーで目標を捉える。
〔アリス2、FOX1!〕
〔5!〕
ミラージュ2000-5とF-15C イーグルが中距離空対空ミサイルを一斉射する。同時にレーダー警報、ロックオンされた。4機は一斉に増槽を捨て、チャフを撒く。
8機の目標を相手に、計8発のミサイルを放った。到達まであと2秒――
〔駄目だ、4機しかやれなかった!〕
〔上等よ! 1対1まで減らせたんだから!〕
悔しがりながら、チャフを撒いて回避するノアを、クリスティーネが励ます。クリスティーネはDyモードスイッチを押してサイドスティックを手前に引く。JAS-39C グリペンは機体を水平に保ったまま上昇、接近してきた敵ミサイルは目標を見失うが、JAS-39C グリペンが撒いたチャフに反応、チャフの雲に突っ込んで自爆する。
〔ボギー、インサイト・ヘッドオン! 皆、準備はいい!?〕
『ラジャー!』
〔アリスリーダー、エンゲージ!〕
〔2!〕
「3!」
〔5!〕
4機は一斉にアフターバーナーを焚く。
アリス隊が交戦しているのは既に調布基地に知らされていた。
〔Alice4, Boomerang1, clearance for takeoff.〕
支援のため、雪風とバイパーゼロが離陸する。
それを見送り、エディスは司令室へと向かった。
ヘッドアップディスプレイ越しに捕捉、短距離空対空ミサイルをリリースする。
〔ターニャ、行くわよ!〕
〔はい!〕
フレアを撒きながら回避するビルダーのYF-23 ブラックウィンドウⅡを、JAS-39C グリペンとMiG-29M ファルクラムが追跡する。
ベーパーを出しながら左旋回するYF-23 ブラックウィンドウⅡをJAS-39C グリペンが追い掛け、MiG-29M ファルクラムは上昇してバックアップ。
〔貰った! アリスリーダー、FOX3!〕
JAS-39C グリペンが27mmリボルバーキャノン砲をぶっ放す。見事、YF-23 ブラックウィンドウⅡに命中する。
〔クリスティーネさん! エンゲージ、シックスオクロック!〕
MiG-29M ファルクラムが急降下、タチアナがクリスティーネに警告する。
〔くっ!〕
JAS-39C グリペンはフレアを撒いて回避運動、しかし後ろに食い付いた殲-20は離れない。
〔アリス3、FOX2!〕
タチアナが短距離空対空ミサイルを発射、殲-20はそれを感じ取ったのか、フレアを撒いて急降下する。
〔逃がさないわ!〕
JAS-39C グリペンが左急旋回、背面飛行に移る。MiG-29M ファルクラムも続き、殲-20を追尾する。
ミラージュ2000-5がパワーダイブ、それにビルダーのT-50 PAK FAが続くが、キャサリンのF-15C イーグルが後ろから襲い掛かる。
「アリス5、FOX2!」
F-15C イーグルの右主翼から、AIM-9L サイドワインダー短距離空対空ミサイルが発射される。が、T-50 PAK FAはフレアを撒いて右急旋回、AIM-9L サイドワインダー短距離空対空ミサイルは外れてしまう。
「あ〜、ごめんなさいノアさん」
〔気にするな、キャシー。まだだ!〕
ミラージュ2000-5が右急旋回、T-50 PAK FAをロックオンする。そしてサイドワインダー短距離空対空ミサイルを発射する。
T-50 PAK FAはフレアを撒く余裕すら無く、サイドワインダー短距離空対空ミサイルを喰らった。が、後ろからF-22A ラプターが20mmバルカン砲で攻撃してきた。
「わっ!」
〔チッ!〕
2機はバレルロール、回避運動を行う。しかし、キャサリンのF-15C イーグルが左主翼と左エンジンに被弾してしまった。
左エルロンが言う事を聞かない。液晶ディスプレイには「LEFT ENGINE MASTER CATION」という文字が点滅している。
左エルロンがやられたため、左旋回がしづらい。キャサリンは必死に操縦桿を操作するも、機体は思い通りに動かない。
「お願い、イーグル!」
キャサリンは叫ぶ。が、イーグルは元の機動を見せられない。
その時、後方警戒レーダーが警鐘を鳴らした。振り返れば、F-22A ラプターの20mmバルカン砲のカバーが開いていた。
「ヴィロワ司令、あなたは何を知っているのですか?」
「何を、とは?」
「例えば、キャサリン=ウェラー少尉の経歴について」
エディスはヴィロワ司令に問い掛けた。ヴィロワ司令は顔色一つ変えず、口を開いた。
「彼女は記憶を無くしてミッドウェー基地にいた。それを救出部隊が見つけた。それだけです」
「そうとは言えませんよ」
エディスは書類を机に置く。
「何故、この基地に彼女の出生について書かれた書類があるのかしら」
「……見つけてしまいましたか」
ヴィロワ司令は溜め息をつく。そして、決心したような顔をし、口を開いた。
「それに書いてある通りです。彼女は、アメリカが実験していた『兵器』です」
キャサリンは死を覚悟する。
そして衝撃波が彼女の体を揺さぶる。しかし、キャサリンはまだ生きている。
「……!?」
見れば、F-22A ラプターは木っ端微塵になっていた。そして、メイヴとF-2A バイパーゼロが右旋回をする。
「ありあ!?」
〔キャシー、怪我は?〕
「無いけど……」
〔そう。アリス4とブーメラン1、支援に来た〕
メイヴ雪風はベーパーを起こす急旋回、T-50 PAK FAを追跡する。それをF-2A バイパーゼロとミラージュ2000-5がアシストする。
〔ブーメラン1、FOX2〕
メイヴの左主翼からサイドワインダー短距離空対空ミサイルが発射される。フレアを使い切ったT-50 PAK FAがミサイルを喰らい、爆散する。
〔当たれっ!〕
クリスティーネのJAS-39C グリペンが27mmリボルバーキャノン砲をぶっ放す。しかし殲-20はバレルロールを打って回避する。
〔ああもう!〕
クリスティーネは悔しがる。そこへ、アフターバーナーを焚いたMiG-29M ファルクラムが近付いてくる。
〔アリス3、FOX3!〕
MiG-29M ファルクラムが30mm機関砲をぶっ放す。見事、殲-20は餌食になった。
〔見事ね、ターニャ〕
〔当然なのです!〕
JAS-39C グリペンとMiG-29M ファルクラムは編隊を組む。
「『兵器』……」
エディスはヴィロワ司令の言葉を反芻する。
「ええ。脳死したドナーの脳に直接記憶を焼き付ける、高性能兵士量産計画……彼女、キャサリン=ウェラー少尉は空軍向け第1号ですが――」
「なるほど、元の人格を取り戻してしまった訳ね」
「ええ。そして彼女はF-35Bを奪って逃亡……その時ちょうど、ビルダーの侵略が始まった」
「救出した際、一切の記憶を失っていたから、観察を兼ねてこの基地にいるのね」
「名前だけは覚えていたようですが」
「……まさか、キャサリン=ウェラーが本名なの?」
「ええ。キャサリン=ウェラー、コードネーム『フレイヤ』……それが彼女の名です」
エディスは言葉を失う。倫理観ではなく、単に技術の進歩への沈黙だった。このような技術に、エディスは驚かないからだ。既に似たような技術はFAFで実証されており、ただのプログラマーだった零が今のようなエースパイロットになったのは、その技術のおかげと言っても過言ではない。
「フォス大尉」
ヴィロワ司令が口を開く。
「この事は口外しないでもらえますか?」
「ええ、勿論。ブーメランならまだしも、アリス隊には相当なショックでしょうから」
無事にビルダーの攻撃隊を全滅させた。アリス隊と雪風は編隊を組み、調布基地へ帰投する。
〔キャシー、被害は?〕
「左エンジンと左主翼がやられた。少なくとも1週間は掛かるなぁ……」
〔でも、まだF-4Eが格納庫にあるじゃないか〕
「機体のポテンシャルが違い過ぎますよ」
〔そうなっても、タチアナが全力サポートするのです!〕
〔ターニャと同感ね。私達アリス隊はチームで戦うもの〕
〔同意。何だったら、クフィルを貸してやろうか?〕
〔あ! ずるいのです! タチアナのMiG-23を貸しますよ、キャシーさん!〕
〔おいおい、時代遅れの手動可変翼を貸してどうするんだ?〕
〔時代遅れなんて! F-14やトーネード ADVより確実なのです!〕
いつものテンションのアリス隊に、キャサリンはほっとする。
〔アリス4被弾。アリス4は上空にて旋回待機、アリス1・2、着陸を許可します〕
〔ラジャー〕
〔ラージャ〕
JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5がランディングギアを降ろし、フラップを下げる。