妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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24話 空襲

 F-15C イーグルが着陸する。左エンジンから黒煙が吹き出ている。エプロンへタキシングすると、すぐに特殊消防車が消火剤の泡を吹きかける。

 そして医療班と整備班が駆け寄り、キャノピーを開けてはしごを掛ける。

 キャサリンがF-15C イーグルから降りる。機首を撫で、整備班に尋ねる。

「あの、直すのにどれくらい掛かりますか?」

「……主翼は被弾箇所の穴を埋めて油圧系統を点検してだから、2日だな。だが、左エンジンはなぁ……すっきり抜ければそれに越した事ぁ無いが、抜いても電子回路のチェックに燃料系統の確認、新しいエンジンを差し込んで動力検査……1週間で済めばいい方だ。点検のためにも、三菱重工やIHI(石川島播磨重工)、ボーイングとP&W(プラットニー&ホイットニー)の人を呼ばなきゃならん」

 整備班長が神妙な顔で言う。

「そうですか……」

 キャサリンが落ち込む。すると、整備班長が肩を叩いた。

「落ち込むな、イーグルは飛べなくてもファントムがある。いつでも飛べるよう整備してある」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 F-4Eの簡単な動力試験を行い、夜になった。

 第307飛行隊の格納庫には、J-37 ビゲン、JAS-39C グリペン、クフィル C2、ミラージュ2000-5、F-2A バイパーゼロ、F-4E ファントムⅡが並んでいる。F-4E ファントムⅡは元々艦載機だったのを空軍機に改造したため、主翼折り畳み機構や強化型アレスティングフック(アレスター、着艦拘束装置とも言う)は健在だ。

 翼を畳んだF-4E ファントムⅡは、大柄な機体に関わらず小さく見える。胴体側面の「U.S. AIR FORCE」という文字と、主翼の米軍の国籍マークは残ったままだが、垂直尾翼には所属基地と部隊を示すコードの代わりに、鎌を持った「血まみれアリス」のイラストが描かれている。国連軍の中で恐れられる「ヘル・アリス」の由来だ。どうしてこれが第307飛行隊の部隊章になったのか不明だが。

 増槽は付いていない。だがいざという時のために主翼内と胴体内の燃料タンクは満タンで、安全ピンの付いたミサイルがフル装備されている。胴体下に4発のAIM-7 スパロー中距離空対空ミサイル、主翼下に4発のAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルが装着されている。

 キャサリンはコクピットに座り、機器を操作する。航空自衛隊のF-4EJ改 ファントムⅡと同様の改造がされ、F-16C ファイティングファルコンのレーダーを装備している。なのでコクピットにはレーダーディスプレイが新たに付けられている。本来、F-4E ファントムⅡはパルスドップラーレーダーを装備していないため、索敵のためにパイロットの他にRIO(レーダー邀撃士官)が必要だ。しかしレーダーを入れ替えたため、その必要は無くなった。

 機上プリチェックを済ませ、キャサリンはF-4E ファントムⅡから降りた。

 

 

 

 翌朝、零とエディスは雪風のコクピットにいた。

 FFR-41MR メイヴの胴体下から太いケーブルが伸び、雪風に電力を供給する。零はパイロット席に、エディスはFO席に座る。

「それで、雪風に何を訊くんだ?」

「雪風がビルダーをどう思っているか、それを聞きたい……このままで聞ける?」

「ウェアハウスにアクセスしてMAcProⅡを起動させろ。そっちの方が会話し易い」

「え、MAcProⅡは消去されたんじゃ――」

「言語エンジンだけ残っている。予測診断能力は既に無いから安心しろ」

 エディスはマルチディスプレイにタッチし、ウェアハウスを開く。様々なプログラムやソフトウェアが用途別にファイルでまとめられているが、唯一分類されていないのがあった。「MAcProⅡ」と名付けられたそれは、確かにどのファイルにも分類出来ない。

 エディスはMAcProⅡをタッチ、起動させる。

「開いたわ」

「よし。音声認証、深井大尉より雪風、応答しろ」

 すると、マルチディスプレイに表示。

〈こちらB1 雪風。目的不明〉

 エディスが口を開く。

「こちらフォス大尉。緊急。雪風、ビルダーと呼ばれる脅威についての見解を述べよ」

〈ビルダーは、ジャムと似て非なるものと判断する〉

「似て非なるもの……具体的に何が違うのか、説明を求める」

〈ジャムとビルダーは、両方とも『個体』という概念が存在しない。が、ジャムは自己と世界を認識しているのに対し、ビルダーは『攻撃してくるものは全て敵』と、単調な反応のみである。恐らく、ビルダーは世界を認識する能力が欠けているか劣っているかのどちらかである〉

「フムン……」

 零は思わず唸る。

 似て非なるもの、それがジャムとビルダー、しかしおれ達も攻撃してきたものを敵として攻撃する、似たようなものだ。と、零は思った。

「エディス、遮って悪いが、ビルダーはおれ達特殊戦をどう思っているか、雪風、想像出来るか?」

 零は、口を開きかけていたエディスを遮り雪風に質問をした。

〈恐らく、ビルダーは個々を見分ける力が弱いため、ジャムが『この機種を攻撃してはならない』と指示を出していると思われる〉

「どういう事?」

 エディスが零に質問する。どうやら今のやり取りの意味が分からなかったのだろう。

「先日、〈不可知戦域〉に閉じ込められた時、ビルダーが停戦協定を提案してきたのを話したよな?」

「ええ」

「今の雪風の予想通り、ビルダーが個体というのを理解出来ないなら、停戦協定なんて不可能な話だ。何せ、停戦協定の対象はおれ達特殊戦と、第307飛行隊だけだからな」

「確かに、その通りね」

「ビルダーの背後にはジャムがいる。それだけ明白なら、ビルダーを堂々と正面から攻撃出来る」

「堂々って……今まで攻撃してきたじゃない」

「あれは自衛のためだ。だが、これからはジャムに打ち勝つためにビルダーを叩く、戦いの意味が変わってくる」

 

 しかし、その時警報が鳴った。

 

 調布基地滑走路から、F/A-18C ホーネットの編隊が離陸する。同時に、基地防空隊がVADS2 20mm対空バルカン砲や93式近距離地対空誘導弾(近SAM)、11式短距離地対空誘導弾(短SAMⅡ)、アベンジャー防空システムを準備する。

「一体!?」

 零とエディスは格納庫を飛び出す。すると、上空でF-22A ラプターとF/A-18C ホーネットがドッグファイトをし、基地防空隊が対空バルカン砲や地対空ミサイルで、低空侵攻してきたF-35A ライトニングⅡやF-15SE サイレントイーグルを迎え撃っていた。

 しかし、F-35A ライトニングⅡとF-15SE サイレントイーグルのウェポンベイが開き、投下された航空爆弾のエアロブレーキが開く。

 そして滑走路に突き刺さり、起爆した。

 

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