それは、突然の襲撃だった。
滑走路が航空爆弾で破壊され、さらにビルダーのF-35B ライトニングⅡが、AGM-65 マーベリック空対地ミサイルで93式近距離地対空誘導弾(近SAM)やアベンジャー防空システムを破壊する。
「うわぁぁ!」
「メディッーク!」
F-35B ライトニングⅡの25mm機関砲ポッドや、F-35A ライトニングⅡの25mm機関砲GAU-13 イコライザーで、死者が増える。
そして、管制塔に、A-12 アベンジャーが放った滑空爆弾が命中、その破片でエプロンのMiG-31 フォックスハウンドやF-16C ファイティングファルコンがスクラップになる。
零は咄嗟にエディスを庇う。
調布基地は、基地としての機能を失いかけていた。
〔クリスティーネさん! タチアナ的にはいくら何でも無茶だと思うのです!〕
「無茶でもやる! このまま調布基地が破壊されたらどうなると思う!?」
クリスティーネがスロットルレバーを奥へ倒す。JAS-39C グリペンのF404ターボファンエンジンがアフターバーナーを焚き、加速する。
そして、北欧の局地戦闘機・SAAB JAS-39C グリペンは、一般道から離陸した。
〔ああもう! 一か八かなのです!〕
タチアナもスロットルレバーを奥へ倒す。そして、MiG-29M ファルクラムも一般道から飛び上がった。
〔ハンター6、FOX2!〕
F/A-18C ホーネットがサイドワインダーミサイルを発射する。が、F-22A ラプターはフレアを撒き、サイドワインダーミサイルをかわす。
〔くそっ!〕
〔6、基地に近過ぎる! 防空隊の邪魔になるぞ!〕
F/A-18C ホーネットは、F-22A ラプターを20mmバルカン砲で撃墜するために距離を詰めようとした。しかしその所為で、防空隊のアベンジャー防空システムが使えなかった。
93式近距離地対空誘導弾(近SAM)が91式携行地対空誘導弾(携SAM)を発射する。見事F-15SE サイレントイーグルが撃墜されるが、93式近距離地対空誘導弾(近SAM)はF-35A ライトニングⅡの25mmガトリング砲GAU-13 イコライザーで破壊された。
〔もう一度! ハンター6、FOX2!〕
F/A-18C ホーネットが、再びサイドワインダーミサイルを発射する。
そして、F-22A ラプターは撃墜された。
「いくら何でも無理ですよ!」
「分からないだろうが! それに、敵の第2波が近付いてきている! 少しでもクリスティーネ達の加勢にならないと!」
ノアがクフィル C2のJ79ターボジェットエンジンの出力を上げる。既にコンプレッサーでエンジンは始動している。
視線の先のエプロンに、瓦礫が散乱している。そこまでの距離は600mといった所か。
ノアはスロットルレバーを奥へ倒し、アフターバーナーを点火させる。
そして、増槽の無いクフィル C2は、整備班の制止を振り切り、格納庫から滑走、エプロンから飛び立った。
増槽を最初から着けていないJAS-39C グリペンとMiG-29M ファルクラムは、ビルダーの攻撃隊をヘッドオンで捕捉、サイドワインダーミサイルをリリースする。
「アリスリーダー、エンゲージ!」
〔3!〕
2機は逃げ遅れたF-35B ライトニングⅡに狙いを定め、追い掛ける。
ピィーッ!
ヘッドアップディスプレイ上のターゲットボックスとミサイルシーカー・マークが重なる。「ロックオン完了」という音がコクピットに響く。
「アリスリーダー、FOX2!」
JAS-39C グリペンの左主翼端からサイドワインダーミサイルが発射される。サイドワインダーミサイルのシーカーはF-35B ライトニングⅡのエンジン排熱を捉え、舵を切る。そして、F-35B ライトニングⅡに近付いて近接信管を作動させた。
「グッキル!」
〔タチアナも負けてられないのです!〕
そして2機は、残りを狩る。
そこへ、クフィル C2が合流してきた。
〔クリスティーネ、大丈夫か?〕
「ええ。ノアちゃん、クフィルなんてだいぶ久し振りじゃない?」
〔心配は無い。これは私の愛機だ〕
「307にしろ5戦隊にしろ、やる事が無茶苦茶なんだよ!」
「いいからさせてくれ!」
格納庫からエプロンへ引っ張り出された3機の戦闘機――FFR-41MR メイヴ「雪風」、FFR-40MR フェンリル「レイフ」、FFR-31MR スーパーシルフ「ミンクス」――は、APU(補助パワーユニット)でFNX-5011(スーパーフェニックス マークXI)やFNX-5010-J(スーパーフェニックス マークⅩ)を始動させる。
3機には、増槽や戦術偵察ポッドは着いておらず、6発のサイドワインダーミサイルだけだった。しかし、代わりに機体の各所に、ロケットブースターが取り付けられている。
「B1、離陸する」
雪風に装着されたロケットブースターが始動する。本来これは、F-100 スーパーセイバーやF-104 スターファイターを短距離離陸させるのに使う。が、今回は垂直離陸のために使う、前代未聞の事だった。
大量の煙と共に、3機は浮き上がる。そして、ロケットブースターを切り離し、アフターバーナーを焚いて急加速した。
〔もらった! アリス2、FOX3!〕
クフィル C2の30mm機関砲が唸る。曳光弾のビームがT-50 PAK FAを貫く。その横で、タチアナのMiG-29M ファルクラムがサイドワインダーミサイルでF-15SE サイレントイーグルを撃墜した。
しかしその後ろへ、F-35A ライトニングⅡが回り込む。
〔くっ!〕
クフィル C2はフレアを撒いてバレルロールを打つ。
〔ノアちゃん!〕
素早くJAS-39C グリペンがバックアップ、27mmリボルバーキャノン砲でF-35A ライトニングⅡを銃撃する。そしてF-35A ライトニングⅡは撃墜された。
が、それは罠だった。2機の後ろに、YF-23 ブラックウィンドウⅡがつく。
(しまっ――!?)
ノアは緊急脱出レバーに手を掛ける。
しかし、やられたのは2機ではなく、YF-23 ブラックウィンドウⅡだった。
振り返れば、FFR-41MR メイヴがそこにいた。
「基地周辺にストレンジャー無し!」
「滑走路の復旧急げ!」
一時的だが、脅威は去った。しかし百里基地と成田基地がビルダーの攻撃に晒されており、ここへ第2波が来るのも時間の問題だった。
ホイールローダーが滑走路上の瓦礫を片付け、タイヤローラーが地面をならす。少し凸凹しているが、戦闘機の離着陸なら出来る簡素な滑走路が出来上がった。
ミサイルや燃料の補充のため、戦闘機達が帰ってくる。JAS-39C グリペンとクフィル C2はフラップを降ろし、アプローチを開始する。後輪接地、JAS-39C グリペンはカナードを立て、クフィル C2はドラグシュートを広げて減速する。
MiG-29M ファルクラムが着陸する中、JAS-39C グリペンとクフィル C2はエプロンへ移動する。
そして、ありあとキャサリンは離陸しようと機体に乗った。しかし――
〔空襲警報発令! 空襲警報発令! 防空隊迎撃用意!〕
「またかクソ!」
「リアタックが早過ぎなんだ畜生め!」
防空隊が93式近距離地対空誘導弾(近SAM)にミサイルを補充し、VADS2 20mm対空バルカン砲が起動する。
「まずいよありあ!」
「分かってる」
エプロンに並んだF-2A バイパーゼロとF-4E ファントムⅡのキャノピーが閉まる。
ありあはハンドサインを出し、ミサイルの安全ピンを整備員に外させる。整備員が4本の安全ピンを見せ、ありあは機体から離れるよう指示、APUでF110Jターボファンエンジンを始動させる。
キャサリンのF-4E ファントムⅡに4発ずつ積まれたサイドワインダーミサイルとスパローミサイルの安全ピンも全て抜かれる。そして、火薬カートリッジでJ79ターボジェットエンジンを始動させる。パァーン、パァーンと何度か火薬を爆発させ、エンジン始動に必要な高圧空気を生み出してエンジンが動き出した。
(ファントム、お願い!)
やがて、キィィーンという甲高い音が鳴り出した。
「おい馬鹿! 敵はすぐそこまで迫っているんだ!」
「今飛んだって餌食になるだけだ!」
何人かの整備員や地上管制員、さらにパイロット達が止める。が、F-2A バイパーゼロとF-4E ファントムⅡは動き出す。滑走路へ向かいながら、操縦桿やフットペダルを操作してフラップやエルロン、ラダーをチェック、滑走路に並ぶ。
〔アリス4、テイクオフ〕
「アリス5、テイクオフ!」
2機はアフターバーナーを焚く。しかしそこへ、ビルダーのF-15 2040 イーグルが近付いてくる。
「まずい、離陸直後を狙うつもりだわ!」
JAS-39C グリペンから降り、待避壕へ向かうクリスティーネが言った。思わずタチアナは防空隊隊員から91式携行地対空誘導弾(携SAM)を奪うが、ノアが取り上げた。友軍誤射の危険があるからだ。
2機は走り出す。F-15 2040 イーグルは滑走路上空を直角に交錯、ベーパーを起こす程の急上昇を行い、今度は滑走路目掛け急降下する。
「っ!?」
振り返ったありあは覚悟する。が、F-15 2040 イーグルはいきなり左へブレイクした。
見れば、FFR-41MR メイヴ雪風がF-15 2040 イーグルと旋回戦を始めていた。
〔アリス4、5。今の内だ〕
零が言う。ありあは意を決し、サイドスティックを手前に引く。そして、F-2A バイパーゼロとF-4E ファントムⅡは飛び上がった。