妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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28話 セオリー

 F/A-18C ホーネットが敵爆撃機へ向かう。が、ATD-X X2 心神が後ろへ回り込んだ。受動警戒装置が警鐘を鳴らす。

 しかし、爆ぜたのはF/A-18C ホーネットではなかった。ATD-X X2 心神が黒煙を吐きながら落ちていく。振り返れば、JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5がいた。

〔アリスリーダーから全機へ! 爆撃機を本土に近付けさせないで!〕

 2機はパワーダイブ、B-1B ランサー爆撃機へ急降下する。

〔アリスリーダー、FOX2!〕

〔2、FOX2!〕

 JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5は搭載していたAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを全て放つ。が、直衛のT-50 PAK FAが体当たりして止めた。

〔くっ!〕

〔クリスティーネ! ブレイク!〕

 ノアの警告で、2機は左右に散開、食らいついてきた殲-20を振り切ろうとする。

〔駄目、離れてくれない!〕

〔こいつ!〕

 殲-20はJAS-39C グリペンの後ろに回り込む。ミラージュ2000-5はすぐ旋回するも、F/A-18FX アドバンストホーネットがそれを邪魔した。

〔クリスティーネ!〕

〔大丈夫よ! 何とかするわ!〕

 クリスティーネは首を回し、後方の殲-20を視認、そしてサイドスティックを操作して機体を急降下させる。

 殲-20も降下、しかしJAS-39C グリペンは機首を引き上げて減速、後方占位をかわそうとする。が、殲-20も機首上げ、2機は互角の機動を見せる。

〔何だ、噂の『ヘル・アリス』もこの程度か〕

 突然、無線に知らない男の声が混じる。そして、殲-20が爆散した。

〔!?〕

 クリスティーネが振り返ると、そこには6機の戦闘機が編隊を組んで飛んでいた。機種はバラバラで――F/A-18E スーパーホーネット、F-14D スーパートムキャット、ラファールC、EF-2000 タイフーン、殲-10A、Su-37 フランカーF――そして2機ずつにブレイク、ビルダーへと襲い掛かる。

 Su-37 フランカーFがアフターバーナーを焚いてダッシュ、ビルダーのT-50 PAK FAに襲い掛かった。

〔遅い!〕

〔馬鹿、突っ込み過ぎよ〕

〔そのためのバックアップでしょーが〕

 

 そして、あっという間にビルダーは狩られた。

 

 

 

「大尉、彼らは一体――」

「おれは知らない。ま、腕はいいというのは確実だ」

 メイヴ雪風は、FACとしての役割を終えた。否、迎撃を指示するターゲットがいなくなってしまった。

 

 

 

 調布基地に、続々と戦闘機が帰還する。勿論、未帰還機も多い。

 そこへ、JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5が帰ってきた。グリペンはカナード翼とエアロブレーキを作動させ、ミラージュ2000-5はドラグシュートを開く。

 エプロンへタキシング、クリスティーネはショックを受けたようにぼんやりとキャノピーを開く。

 そして、例の戦闘機達が着陸してきた。6機の戦闘機達は、JAS-39C グリペンの隣に並んで停まる。

 F/A-18E スーパーホーネットから、1人の男が降りてきて、JAS-39C グリペンに近付き、こう言った。

「クリスティーネ=クルデガルドはあんたか?」

「……え? ええ」

「ふーん、噂には聞いていたが、期待外れだったな」

「……はい?」

 クリスティーネは耳を疑う。

「国連軍 調布基地 第307飛行隊 1番機パイロット、J-37 ビゲンの時代含め、キルスコア(撃墜数)は30に登る……よっぽどの天才かと思ったが、あんたの戦い方は教科書通りだ。敵機が後方に回った時、自分は逃げに徹し僚機の支援を待つとか、初歩中の初歩。出来るパイロットっつうのは、自機のピンチを、僚機、さらには自分のチャンスに変換出来るパイロットだ。あんたは、教科書通りの『優等生』に過ぎない」

 メイヴ雪風から降りた零は、その言葉を聞いてその通りだと思った。しかし、自分は逃げてばっかりで、いざドッグファイトにもつれ込まれても機体の性能を過信した戦いをしてきた。この男からすれば、とんだド素人の戦い方だと言うだろう。しかし、それこそ零にとって「それがどうした、おれには関係無い」である。

 見れば、例の男にノアとタチアナが食い下がっていた。

「クリスティーネは充分エースだ! お前のような新参者がデカい口を叩くな!」

「そうなのです! あなたのようなアンポンタンに分かる事なんて1つも無いのです!」

 男も言い返す。

「緑髪は確かに筋はいいが、仲間を思いやり過ぎだ。実力を発揮出来てない。そこのお子ちゃまは、ファルクラムを過信し過ぎだ。空中戦がどうこうの論外だ。『ヘル・アリス』なんざ名ばかりのコールサイン、止めちまえ」

「お、お子ちゃま!?」

 タチアナはブチ切れる。が、クリスティーネが止めた。

「ターニャ。確かにあなたの言う通りかもしれない。でも、教科書通りというのは、歴代のパイロット達が築いてきた『生き延びる知恵』でもある。初歩的だろうと、これが私の戦い方よ」

 クリスティーネの言葉に、男はニヤリと笑った。

「ほう。だったらDACT(異機種間空中戦演習)で見せてもらおうか」

 

 

 

 その後、クリスティーネ達と零達は司令室に呼ばれた。

 7人――クリスティーネ、ノア、タチアナ、零、桂城少尉、イザベル=ガラント中尉、アルフォンス=デュラン少尉――はヴィロワ司令に敬礼する。

「今回の戦闘、お疲れ様でした」

 まずねぎらいの言葉から始まった。が、すぐに本題に入った。

「今呼んだのは、彼らについてです」

「彼ら……あの新鋭機の6人ですか?」

「ええ。今は新田原基地所属ですが、近々こちらに制式配属となります。第185飛行隊、あなた達『ヘル・アリス』と同等のキルスコアを有するエース集団です」

「それで、DACTをやれというのか?」

 零が言うと、ヴィロワ司令は頷く。

「その通りです。明日、GL-294空域にて6対6の近接格闘戦演習を実施します。中距離ミサイルによるBVR(目視距離外)戦闘は省き、文字通りドッグファイトのみです。演習管制のため、第5飛行隊の2番機、3番機、4番機、5番機、周辺監視及び警戒のために第303飛行隊(F-14B トムキャット)が同行します。フライトは明日1000時、ブリーフィングは0930時です」

 

 

 

 翌朝、調布基地のエプロンには、JAS-39C グリペン、ミラージュ2000-5、MiG-29M ファルクラム、FFR-41MR メイヴ、FFR-40MR フェンリル、FFR-31MR スーパーシルフ、F/A-18E スーパーホーネット、F-14D スーパートムキャット、EF-2000 タイフーン、ラファールC、殲-10A、Su-37 フランカーFが並んでいた。

「Hey! クリスティーネ大尉、今日はよろしくお願いしまーす!」

 プリフライトチェックを行っていたクリスティーネに、金髪の女が近付いた。

「あなたは?」

「185TFS(戦術戦闘飛行隊)3番機、EF-2000 タイフーンのパイロットの、シャロン=アルフォード中尉です!」

「そう、よろしくね、シャロンさん」

「それと、昨日は私のリーダーがご迷惑を」

「リーダー?」

「土岐代 玲二少佐です。F/A-18Eのパイロットなんですが」

 クリスティーネは、昨日の男を思い浮かべた。

「気にしないでいいのよ。やり返すから」

「Wow、クリスティーネ大尉は怖い女ですね」

 

 

 

 そして、調布タワーから離陸許可が降りた。

 FFR-41MR メイヴ「雪風」とFFR-40MR フェンリル「レイフ」はアフターバーナー点火、短距離ミサイルと増槽だけの身軽な機体は急上昇する。

 その後も続々と離陸し、演習空域へと向かう。

 

 

 

 ジェットエンジンの音が響く。が、ありあは顔を上げない。

 

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