やがて、12機は演習空域に達した。そして6機ずつにブレイクし、離れていく。
ある程度飛び、演習管制のB2 カーミラから旋回の指示が出た。アリス隊と3機の特殊戦機は一斉に左旋回、第185飛行隊(コールサイン・キャロル)をヘッドオンで捕捉する。距離30km、同高度だ。
〔ファイト・オン〕
カーミラから、演習開始の指示が出る。
キャロル隊が2機ずつに分かれ、アリス隊・ブーメラン隊に襲い掛かる。
雪風とジルウェットは上昇、キャロル隊のEF-2000 タイフーンとラファールCが食い付く。ジルウェットはVmaxスイッチをオン、アフターバーナーを焚いて突き放す。一方の雪風は水平飛行に移って左旋回、ドッグファイトスイッチをオンにし、桂城少尉がEF-2000 タイフーンとラファールCを視認する。
一気に雪風はベーパーを出す旋回を行う。揚力を失い、雪風は錐揉み状態へ。零と桂城少尉は一瞬ブラックアウトする。素早く中枢コンピュータ内のMADCが各翼を制御、雪風は体勢を立て直す。
零の視界が戻った時、雪風はEF-2000とラファールCをロックオンしていた。零はミサイルレリーズを押す。FCSは2発のAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを仮想発射、EF-2000 タイフーンはフレアを撒くも、8G旋回から抜け出せずサイドワインダーを喰らってしまった。ラファールCはフレアを撒きながら右旋回、サイドワインダーをかわす。しかしそこへ、ジルウェットが急降下、ラファールCに襲い掛かる。
〔わっ!〕
ラファールCの女性パイロットが驚く。そして、イザベルの声が響く。
〔ブーメラン8、FOX3〕
Su-37 フランカーFがソロで飛び、JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5が追い掛ける。
〔もらった! アリス2、FOX2!〕
ミラージュ2000-5がサイドワインダーを仮想発射する。しかし、Su-37 フランカーFはフレアを撒きながら急上昇、背面飛行の姿勢になりながらも上昇してサイドワインダーをかわす。
〔AHAHAHAHAHAHAHA!〕
〔駄目だ、もうGで性格ぶっ壊れた〕
Su-37 フランカーFの女性パイロットの狂った笑い声が響き、そして違う声が混じる。
〔これがフランカーの格闘機動性か!?〕
〔よそ見してる場合じゃないわよ。キャロル6、FOX2〕
いきなり「FOX2(短距離ミサイル発射)」がコールされた。ノアが振り返ると、雲の中から殲-10Aが飛び出してきた。
フレアを撒く余裕すら無かった。JAS-39C グリペンとミラージュ2000-5は、殲-10Aから仮想発射された4発のパイソン短距離ミサイルを喰らう。
〔お嬢ちゃん1人か! こいつは優しくしてあげないとなぁ!〕
F/A-18E スーパーホーネットとF-14D スーパートムキャットがバレルロールを打ちながら逃げ、MiG-29M ファルクラムが追い掛ける。
〔タチアナを子供扱いしていると、痛い目に会うのです!〕
〔だってよ、レイジ!〕
〔クリス、テンションブチ壊れだな〕
F/A-18E スーパーホーネットがエルロンロール、雲へと逃げる。
〔あっ! いつまでも逃げるなんて、男らしく無いのです!〕
MiG-29M ファルクラムも続く。
〔だから『お子ちゃま』なんだよ〕
キャロルリーダーこと、F/A-18E スーパーホーネットのパイロットが言う。雲の外のF-14D スーパートムキャットはエアロブレーキを開いて減速、そして雲の中へ突っ込んでMiG-29M ファルクラムの後ろに回った。
〔雲の所為で可愛いお尻が拝めないなぁ、残念だな、お嬢ちゃん〕
MiG-29M ファルクラムの後方警戒レーダーが警鐘を鳴らす。F-14D スーパートムキャットはMiG-29M ファルクラムの後ろに占位、ぴったり食い付いて離れない。
(しまったのです!)
MiG-29M ファルクラムは急降下、しかしF-14D スーパートムキャットは食らいつく。
〔せいぜい逃げなぁ、お嬢ちゃん! 雲を抜けたらそのお尻を舐め回してやるぜ!〕
〔キモいのです!〕
〔クリス、俺もそう思う〕
〔うるせー!〕
MiG-29M ファルクラムが雲を抜ける。タチアナはエアロブレーキを操作、操縦桿を引く。しかしF-14D スーパートムキャットが迫り来る。
〔ここまでだな! キャロル2、FOX――〕
〈B13 FOX3〉
それは突然だった。MiG-29M ファルクラム、F-14D スーパートムキャット、F/A-18E スーパーホーネットのメインディスプレイに、そう表示が出た。そして、一瞬で何かがF-14D スーパートムキャットを追い越し、3機のメインディスプレイに新たな表示が出る。
〈B13 FOX3 : Carroll2 KILL〉
〔えっ、はぁ!?〕
キャロル2、F-14D スーパートムキャットのパイロットが驚く。
そしてタチアナは、咄嗟に操縦桿を引き、アフターバーナーを焚く。MiG-29M ファルクラムは急上昇、F/A-18E スーパーホーネットを捉える。
〔アリス3、FOX2!〕
〔やってくれるな〕
F/A-18E スーパーホーネットはフレアを撒きながら急降下、MiG-29M ファルクラムとすれ違う。
〔逃げてばかりは駄目なのです!〕
〔覚えとけ、世の中逃げて利益になる事があるとな〕
その時、MiG-29M ファルクラムの受動警戒装置が警鐘を鳴らした。
(――!?)
〔キャロル5、FOX3!〕
Su-37 フランカーFが30mm機関砲をぶっ放した。
〔アリス3、スプラッシュ(撃墜)〕
B4 ズークからMiG-29M ファルクラムへ、そう告げられた。タチアナはやり切れない思いで演習空域を出た。
〔さて、3対3だな〕
キャロルリーダーこと、土岐代 玲二は3面ある液晶ディスプレイの内、電子戦モードのディスプレイを見る。ブーメラン隊は高高度で編隊を組み、降りてくる気配が無い。
土岐代はハンドサインを出し、F/A-18E スーパーホーネット、Su-37 フランカーF、殲-10Aは上昇した。
雪風のマルチディスプレイに、その様子が出る。
「おれとレイフが降りる。ジルウェットはここに残ってバックアップだ」
〔B8、了解〕
雪風とレイフが急降下する。
〔来るぞ、ブレイク・レディ、ナウ〕
F/A-18E スーパーホーネットは左へ、Su-37 フランカーFと殲-10Aは右へ旋回する。当然、レイフはF/A-18E スーパーホーネットに食い付く。雪風はエアロブレーキを開いて減速する。
〔単純過ぎてつまんねーな! キャロル5、FOX――〕
Su-37 フランカーFがレイフをロックオン、短距離ミサイルを発射しようとする。が、レイフの受動警戒装置がそれを探知、そしてレイフは機首を引き上げると、そのまま背面飛行で後ろ向きに飛んだ。
〔なっ!? クルビット機動!?〕
〈B13 FOX3〉
回避する間もなく、Su-37 フランカーFはレイフのガン攻撃で仮想撃破された。
〔もらったわ、『幸運の駆逐艦』〕
「それはどうかな」
殲-10Aが、雪風の後ろを取る。しかし雪風は主翼やカナード翼、水平尾翼を全て使って左急旋回。殲-10Aが離される。
零はスロットルレバーを奥へ倒し、同時にVmaxスイッチを押した。
FFR-41MR メイヴのスーパーフェニックス マークXIが安全設計限界を超える推力をひねり出し、急加速。巨大な前進翼が上方へ畳まれ、雪風はあっという間に殲-10Aを突き放す。
〔何だあれは!?〕
「ジルウェット、今だ」
B8 ジルウェットが急降下、殲-10Aに上から襲い掛かる。
〔ブーメラン8、FOX2〕
〔ブーメランの連中、何でもありか!?〕
殲-10Aはフレアを撒きながら急降下、ジルウェットはさらに加速して距離を縮める。
そして、F/A-18E スーパーホーネットへ、雪風とレイフが襲い掛かった。
〔こいつら、化け物か!?〕
F/A-18E スーパーホーネットは右急旋回、ガン攻撃モードのレイフをオーバーテイクさせる。ヘッドアップディスプレイ越しに捕捉、ガン・レクティクルとレイフが重なった。
〔キャロルリーダー、FOX3――〕
言い切る前に、レイフに逃げられる。
(あの動き、本当に有人機か!? だが飛び方は無人機というより、素人だ。経験値が足りてない)
土岐代はそう分析する。が、F/A-18E スーパーホーネットの受動警戒装置が突然鳴る。
振り返れば、雪風の真っ黒な巨体があった。土岐代は咄嗟に操縦桿を左へ倒す。
しかし、こちらの方が早かった。
〔ブーメラン1、FOX3〕