調布基地エプロンにて、各飛行隊の戦闘機のエンジンが始動される。第5飛行戦隊も例外ではなかった。
耐Gスーツを着た零は、雪風のプリフライトチェックを行う。
滑走路には、MiG-29M ファルクラムとF-2B バイパーゼロが並んでいた。管制塔から離陸許可が降り、タチアナとありあはスロットルレバーを奥へ倒す。MiG-29M ファルクラムのクリモフ RD-33ターボファンエンジンとF-2B バイパーゼロのGE/IHI F110Jターボファンエンジンがアフターバーナーを点火させる。
トゥブレーキ解除、2機は動き出した。MiG-29M ファルクラムはメインエアインテークを閉じ、サブエアインテークを全開にし、滑走を始める。
そして2機は機首上げ、離陸した。ギアアップ、フラップアップ、一気に高空へ。
ビルダーの大編隊を前に、哨戒隊のF-14B トムキャットとMiG-31 フォックスハウンドがAIM-54 フェニックス長距離空対空ミサイルとR-33長距離空対空ミサイルを放ち、牽制する。しかし、F-22AのAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルによる反撃で、哨戒隊が全滅してしまった。
東京都 防衛省跡に作られた国連軍本部の極東防空指令センターはパニック状態になっていた。ミッドウェー、平壌、北京の3ヶ所のピラーから同時に侵略されているからだ。直ちに全基地に非常事態宣言を発令、世界各地に点在する国連軍部隊にも応援を要請した。
第307飛行隊、第185飛行隊、第5飛行戦隊が編隊を組み、平壌タワーからの敵機をを迎撃に向かう。
ありあは搭載兵装を確認する。AIM-7 スパロー空対空ミサイル、AAM-3短距離空対空ミサイルが4発ずつ、胴体下に増槽が1本、20mmバルカン砲はフルの510発だ。ありあはちらりと後ろを見る。いつもならいないが、今回は後ろに人が乗っている。後席にWSO(兵器システム士官)として乗り込んだエディスが、フライトグローブを嵌めた左手を挙げ、グーサインを示した。
今日に限って、ありあのF-2A バイパーゼロは三菱重工でオーバーホールされていた(前回のDACTで、10Gに達する旋回を掛けたため)。そのため、急遽F-2B バイパーゼロが貸し出された。しかし、近代化改修がなされていないため、BVR(目視距離外)戦闘ではセミアクティブレーダーホーミングのAIM-7 スパロー空対空ミサイルに頼らざるを得ない。勿論ありあは実戦で使うのは初めてだった。
そこで、エディスが乗る事を提案してきたのだ。
『エディスさん、いくらなんでも無茶ですよ!』
『これでも、一度メイヴで実戦に出た事はあるわ。私が後席からスパローを誘導する。それに、空戦では少しでも目が多い方がいいでしょ?』
後席のエディスの太ももには、F-2 バイパーゼロのマニュアルのコピーが広がっている。
(AESAレーダーを単一目標追尾指向モードにセット、スロットルのロックオン目標選択レバーで選び、変調パルスモードへ……雪風はこれが自動化されていたからマニュアルを暗記する量が少なくて良かったけれど、本来はこうしなくてはならないものね)
やがて、広域自動索敵モードのJ/APG-2アクティブ電子走査アレイレーダーが敵機を捉えた。IFF発信、返答無し。僚機が続々と中距離空対空ミサイルをリリースする。そして、スパローの射程に到達した。
「FCSオーバーライド」
「了解」
エディスが、「兵装管理能力を後席に移す」と宣言し、ありあが許可する。
エディスはサイドスティックとスロットルレバーを握り、サイドスティックのレーダーコントロールスイッチを動かす。J/APG-2を単一目標追尾指向モードへ。スロットルレバーのロックオン目標選択レバーで敵機を選択、変調パルスモードを選んでミサイルレリーズを押した。
アクティブ電子走査アレイレーダーの特徴を最大限に生かし、AIM-7 スパロー空対空ミサイルを全弾放って、2機の敵機にAIM-7 スパロー空対空ミサイルを誘導する。
命中、同時にロックオンされた。F-2B バイパーゼロは増槽を捨て、ありあはFCS操作権を前席に戻してスロットルレバーのドッグファイトスイッチを押した。
エディスは腹に力を込める。再びの近接格闘に、自然と体が強張った。