妖精とアリスが出会う時   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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36話 JAM

 F-2B バイパーゼロは左へブレイク、F-22A ラプターを引きつける。エディスが首を回し、F-22A ラプターの位置をありあに伝える。受動警戒装置作動、ありあはフレアを撒いて急旋回。

「――!?」

 エディスには呻くどころか、呼吸をする余裕も無かった。激しいGで内臓が押し潰される。耐Gスーツが下半身を容赦なく締め付ける。

 F-2B バイパーゼロは一気に9G旋回、F-22A ラプターを引き離す。

〔アリス3、FOX2!〕

 援護に回ったMiG-29M ファルクラムが、R-73短距離空対空ミサイルを放つ。F-22A ラプターは回避する間も無くミサイルを喰らった。

 

 

 

〔行っけぇ!〕

 JAS-39C グリペンがアフターバーナーを焚いてダッシュ、ミラージュ2000-5がアシストに回る。2機はT-50 PAK FAを追い掛け、シザースを繰り返す。

〔もらった! アリス2、FOX3!〕

 ミラージュ2000-5が30mm連装機関砲を撃つ。が、T-50 PAK FAはコブラ機動で回避、ミラージュ2000-5の後ろに回り込む。

〔っ!?〕

 ノアは振り返りながら操縦桿を必死に操る。しかし、T-50 PAK FAを振り切れない。

〔ノアちゃん!〕

 JAS-39C グリペンがバレルロール、T-50 PAK FAを捉えた。

〔アリスリーダー、FOX3!〕

 JAS-39C グリペンの27mmリボルバーキャノン砲が唸る。T-50 PAK FAは左翼に被弾、黒煙を吐きながら落ちていった。

 クリスティーネはそれを見届ける。すると、隣にF/A-18E スーパーホーネットとF-14D スーパートムキャットが並んだ。

〔相変わらずキルまでの時間が長いな〕

〔あなたに嫌味は言われたくないわ。私は、私の戦い方を貫くだけ〕

〔ふん〕

 4機は一斉にブレイク、4機のATD-25DMUとドッグファイトを始めた。

 

 

 

 B6 ミンクスが、2機のF-22A ラプターに追い掛けられる。フレア散布、右急旋回。後席のフライトオフィサが敵機の位置を知らせる。

 ミンクスの中枢コンピュータは自動でジャミングを開始、後方のF-22A ラプターのレーダーFCSの破壊に成功した。しかし、まだ追い掛けてくる。

〔20mmで戦うようだ〕

〔どうも、そうみたいね〕

 一気にミンクスは錐揉み状態へ陥る。ミンクスのADCは飛行状態を分析、素早く各翼を制御して安定させる。すなわち、パワーダイブ。

 F-22A ラプターも追い掛けてくる。が、パワーダイブに移った次の瞬間に爆散した。

 フライトオフィサが振り返る。そこには、レイフがいた。

 そしてレイフは、狩る対象を探すため、アフターバーナーを点火させて加速、一気にミンクスから離れていった。アナスタチアは、無言でレイフを見送った。

 

 

 

 雪風は踊る。3機のATD-X X2 心神の追撃を振り切り、9G旋回。一気に突き放した。突き放されたATD-X X2 心神へ、Su-37 フランカーFと殲-10Aが襲い掛かる。3機は一斉にブレイク、Su-37 フランカーFは右旋回したATD-X X2 心神を追い掛け、ロックオンする。

〔キャロル5、FOX2!〕

 Su-37 フランカーFは2発のR-73短距離空対空ミサイルを放った。ATD-X X2 心神はフレアを撒くが、1発のR-73短距離空対空ミサイルを喰らい、右側のIHI X-5ターボファンエンジンが炎上する。Su-37 フランカーFはすれ違い越しに、30mm機関砲をお見舞いした。

 

 殲-10Aの受動警戒装置が鳴る。後ろには、2機のATD-X X2 心神がいる。パイロットの林 美琳はサイドスティックを右へひねり、急旋回を掛ける。

〔ちっ!〕

 美琳はチャフとフレアを撒く。

〔B1、FOX2〕

 その声と共に、2機のATD-X X2 心神が両方共爆ぜた。

 美琳が驚きながら振り返ると、そこにはFFR-41MR メイヴ雪風がいた。

 

 

 

 B11 ガッターレ、B12 オニキスはアフターバーナーを焚いて加速、Su-47 ファーキンを狩る。その時、2機のマルチディスプレイに新たな表示が出た。

〈WARNING: JAM〉

 直訳すれば、「ジャム注意」だ。しかも、点滅している。ただならぬ予感、2機のパイロットは気を引き締める。フライトオフィサは電子戦に備える。

 ヘッドアップディスプレイにターゲットボックスが現れる。BVR戦闘、AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイル発射。敵、AMM(アンチミサイル・ミサイル)実行。AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが迎撃される。

 2機は自動でECMを行う。が、敵もECCMを開始、反撃する。

 そして、すれ違った。フライトオフィサが首を回し、敵機を視認する。

〔ジャムだ。TYPE1、格闘タイプ〕

 フライトオフィサが言った。それは、紛れも無く、ジャムの格闘タイプ戦闘機だった。

 

 

 

 雪風のオートマニューバが自動で起動、突然左へ旋回した。

「雪風、どういうつもりだ」

 零はオートマニューバモードを解除、Vmaxスイッチを入れる。すると、ヘッドアップディスプレイが「自動航法・爆撃モード」になり、ターゲットカーソルが表示された。

「大尉、どうなっているんだ!?」

 桂城少尉が尋ねる。が、零にも分からない。

「雪風、一体どうしたんだ」

 しかし、雪風は応えない。とにかく零は、ヘッドアップディスプレイに示されている方へと機首を向けた。すると、マルチディスプレイに新たな表示。

〈JAM is here. Take action, Lt.〉

 ジャムがいる、行動しろ、深井大尉。

 それを見た零は、Vmaxスイッチを解除、雪風のあらゆるリミッターが外れた。

「少尉、電子戦用意。この先にジャムがいる」

「サー、電子戦用意」

 

 

 

 ガッターレとオニキスを援護しに、F-8E クルセイダーがやってきた。が、10秒も経たずに撃墜される。

〔やはりこちらの世界の戦闘機では無理か〕

 ガッターレのフライトオフィサが言う。

 オニキスは急旋回、TYPE1をロックオンしてAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを発射した。しかし、TYPE1は急激な旋回でサイドワインダーをかわした。

〔せめてAAM-Ⅲがあれば〕

 オニキスのパイロットが忌々しそうに言う。レイフがバックアップに回り、20mmバルカン砲でTYPE1を撃墜した。

 

 

 

 そして、F-2B バイパーゼロもTYPE1に追われていた。

(ビルダーのどの戦闘機よりも強い! これがジャムか!?)

 ありあは後ろに食らいついてきたTYPE1とジグザグ機動を行いながら、どう反撃するか考えていた。エディスはもう失神寸前だった。

 そしてありあは、あるレバーを引いた。

 F-2B バイパーゼロの垂直尾翼付け根から、カラフルなドラグシュートが引き出され、急減速。エディスの身体が前へつんのめる。

 ヘッドアップディスプレイの向こうに、TYPE1が見える。兵装選択、ガン。

「アリス4、FOX3」

 サイドスティックのガンコントロールスイッチを引いた。20mmバルカン砲が唸り、TYPE1の機体が抉れていく。そして、撃墜された。

 ありあはドラグシュートを切り離し、加速する。

 

 

 

 雪風はTYPE1を捉えた。AIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを放つが、当たらない。ジャムが相手では、FAF製ミサイルでないと当たらない。

 零はエンゲージを宣言、久々の対ジャム戦だった。

 左旋回するTYPE1を追い掛け、主翼のミサイルを全て捨てた。当たらないのなら、不要な重りだからだ。20mmバルカン砲の射程まであと少し、スロットルレバーを少し押す。

 そして射程内。零はガンコントロールスイッチを引いた。20mmバルカン砲から無数の銃弾が放たれ、TYPE1が粉々になった。

「大尉、シックスオクロック、TYPE1 2機、ブレイク・レフト!」

 桂城少尉が警告した。零は反応、サイドスティックを左へひねる。が、TYPE1 2機が爆ぜた。

 2人は驚く。振り返れば、見覚えのある戦闘機がいた。

〔一体どうなっているんだ!? どうして地球でジャムと特殊戦が戦っているんだ!?〕

 それは、FFR-31 シルフィード、ノーマルシルフだった。

 

 

 

 ジャムとビルダーが片付いた。

 編隊に隙間が多数、そして途中から紛れ込んだノーマルシルフ。さらに、平壌ピラーが〈超空間通路〉になっていた。

〔一体どういう風の吹き回しだ? 突然帰れるなんて〕

 ブリューイ中尉が言う。しかし、ブーメラン戦隊機としては、帰りたかった。

「エディス、どうする?」

 零はエディスに訊く。

〔これが罠かもしれないという懸念も、確かにあるでしょう。でも、それならノーマルシルフがいる理由にはならない〕

「それは怪しい所だ。おれ達を油断させる道具かもしれないし、ジャムだってスーパーシルフのコピーを作れる」

〔……でも、賭けてみる価値はあるわ〕

「賭……あんまり安心は出来ないな」

〔雪風はどう言っているの?〕

 零は、マルチディスプレイの表示を読む。

「『行くべきだ』と」

〔なら、話は簡単じゃない。あの〈超空間通路〉を抜けてフェアリイへ帰る。これが今ある選択肢よ〕

「だが、君はどうする?」

〔そうよね……私も、まだジャムと戦いたかった。けど、こっちで開業してみるのも手ね〕

〔だったら私もフェアリイへ行く。それなら話は簡単だ〕

 突然ありあが割り込んできた。

〔ありあ!?〕

〔アーチャー先輩!?〕

〔駄目よ、春夏秋冬少尉。ジャムは、あなたが考えている程易しい相手ではないわ〕

 しかし、ありあは続ける。

〔なら、フォス大尉はどうするの?〕

 零達は黙る。

 

 そして、零が口を開いた。

「ならついて来るんだな、春夏秋冬少尉」

〔深井大尉! いくらなんでも無関係な人を巻き込むなんて!〕

 エディスが抗議する。が、零は続けた。

「彼女とて、無関係ではない。おれ達の世界の地球の人間よりジャムを知っている。戦う覚悟があるかどうかだ」

 エディスは黙る。そして、ありあが応えた。

〔ジャムと戦う。クリスティーネさん、ノアさん、ターニャ、今までお世話になりました〕

 

 

 

 調布基地に、戦闘機達が帰ってきた。調布基地 中央官舎にある、各飛行隊状況のボードには、こう書かれていた。

【307SQ 4 Sl.HITOTOSE MIA

5SQ All Missing】

 

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