安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第十話 VS湖の主

 僕と湖の主の決闘、第二ラウンド。僕の凍結の息吹(フリーズブレス)を破ったんだ、敬意を持って獲物から主に格上げしてやろう。

「グアアアアァァァァァァァァ!!」

「無駄だよっ!」

 陸上でも尚猛烈なスピードで突っ込んでくる奴に対し、僕は真下(・・)に向けてブレスを吐く。これは、水分さえあればどんなものだって凍らせる『アイス』の最も代表的な力だ。そして僕の真下には、水辺ゆえに水分をたっぷりと含んだ土がある。さて、土中の水分が凍って起こる自然現象は?

 答えは簡単、俗に言う霜柱だ。けれどこれは、自然界で起こるような小規模なものではない。たっぷりの水と絶対零度の息吹が生み出す、最大級の代物だ。だから――――

ガキイィィィィィィン!!

 ――――奴のタックルにだって耐えられる、重厚な盾になる。もちろん長時間は持たないけど、そもそも持たすつもりもない。

「我を守りし氷の盾よ、我が敵を切り裂く刃となれ!!」

 僕の言葉に応じて重厚な盾となっていた霜柱は砕け散り、その鋭い破片が刃となって奴を襲う。これも、氷を操る能力(アイス)の力の運用法の一つ。凍らせるだけの能力じゃない。

「グルゥ!?」

 これまた予想外の攻撃だったらしく、驚いている。けれど、氷の刃のほとんどは奴の鱗に傷を付けただけ。一部は皮膚を切り裂いているが、致命傷には程遠い。……おかしいなぁ。普通の生物が耐えられるような一撃じゃないはずなんだけど。こいつら皆、恐竜の皮を被った怪物モンスターなんじゃないかな?滅茶苦茶タフだし。異様な生命力持ってるし。

「グルル、グラアアァァァァ!!」

 さらに怒り出したらしい。僕を見る目が血走っている。冷静さを無くせるのはいいんだけど、正直怖い。殺気がビシビシと伝わってくるし。

「これでも喰らえ、アイスパレット!」

 今度は空気中の水分を凍らせて、奴に向けて放ってやる。名付けて、氷の礫(アイスパレット)。即興で作った割には、上手くいったかな?

「グルルルル.....!!」

 訂正、ぜんぜん上手くいってない。出血量は増えたみたいだけど、致命傷にはなってないし、怒りに火を注ぐ結果になった。本当に、何なのアイツ?滅茶苦茶恐いんだけど。

「グアアアアァァァァァァァァ!!」

 また突っ込んできた。しかも、さっきよりもスピードが増している。迫る巨体。血走った目。血みどろの体。

「こっちへ来るなーーー!!」

 見た目がもう、普通にグロい。本当、何で生きてるの?もはやリアルにホラーになった湖の亡霊(リオプレウロドン)の突進を受け止めるなんて選択肢は既に無く、僕は横へ飛び退いた。

ズガアアアァァァァァァ!!

 …勢い余って、地面に突っ込むリオプレウロドン。血に濡れた体に土砂がこびり付き、よりおぞましい姿になった。勘弁して欲しい。

「こっちを向くな!……切り裂け氷刃、アイススラッシュ!!」

 今度は氷で刀を作り、奴の頭めがけて斬撃を放つ。刀そのものを斬撃に変えてしまうから一度に一発しか撃てないのが難点だけど、今までの中で一番威力は高いはずだ。

「まだまだぁ!潰せ氷槌、アイスハンマー!!」

 さらに奴の頭上に向かってブレスを吐き、巨大な氷の塊を作る。本当はハンマーのように柄を付けて振り回したかったけど、そんな余裕はないから、今回だけは効率重視。……見た目はハンマーっていうよりも落石とかペーパーウェイトっぽくなったけど、気にしないことにする。

「グル!?グラアアアァァァァァァ!?」

 さすがに生物の弱点(頭部)への集中攻撃は堪えたらしく、驚きや怒りの咆哮ではなく、悲痛な悲鳴をあげた。でもあの化け物にはまだ、あと一押し足りないだろう。だから――――

「――――こいつで最後止めだ。凍りつけ、フリーズブレス!!」

 出会って最初と同じ技で、今度こそ湖の主(リオプレウロドン)の体は凍りつき、遂に決闘の幕は下ろされた。




恐竜についての情報は、wikipediaから拾ってきています。
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