安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第二十二話 少女の事情

~SIDE 龍~

 

「えぇっと、もうちょっと詳しく説明できるかな?」

 

 全くもって意味不明だったから。

 

「はい。実はこの国を狙っている、野蛮な者たちがいるんです。このままでは、とても大きな被害が出ます。多くの民が、死んでしまいます。だから邪神様と魔竜様に、奴等を退けて欲しいのです!もちろん、タダでとは言いません。私のこの身を、生贄に捧げます!!」

 

 僕とナインが邪神と魔竜なのは、決定事項なのだろうか。生贄とか言ってるし。

 

「とりあえず望みは分かった。次に、何で君には名前がないの?」

「私が人々に忌み嫌われる『魔女』だからです」

 

 ……また理解不能な単語が出てきた。今、彼女は何と言った?魔女?そんな人が本当にいるの?いや、今はそれよりも、

 

「なんでその『人々に忌み嫌われる魔女』が、人のために自分を犠牲にするの?」

 

 人に疎まれ、忌諱された人間が恨みを持つのなら分かるけど、自分を苦しめた人間を庇うなんて、普通はしないし、出来ない。この自称魔女は、一体何を考えている?

 

「……私はもう、生きるのに疲れたんです。だから最後に、人の役に立って死にたかったんです」

 

 生きるのに疲れた、か。もしかしてこの子は、魔女狩りの生き残りか何かかな?黒髪黒目なんて、魔女狩りが行われたヨーロッパにはいないはずだけど。

 

「今までに何があったの?それだけじゃ君がどうして魔女と呼ばれているのかも分からないし、名前のない理由にもなってないよ」

「…………」

 

やっぱり、そんな簡単には喋ってくれないかな?

 

「……私は、魔女と呼ばれていたわけじゃありません。自分で魔女と名乗っていたのです。その理由は……私の祖先が使った、禁術にあります」

「禁術?」

 

 話してくれたと思ったら、またよく分からない方向に進み始めた。人としての禁忌に触れて魔女になるって言うならまだ分かるけど、禁術って?

 

「私の祖先は、魔女でした。その祖先が使った禁術は、『記憶を受け継ぐ魔法』です」

 

 とりあえず一つ、分かったこと。この子のいう『魔女』は恐らく、人喰いとかではなく『魔法使い』のことだ。それにしても、記憶を受け継ぐ……?

 

「それって、どういうこと?」

「私の祖先は、ひたすらに魔法を研究してました。魔法は奥が深く、調べれば調べるほどに新しい発見がありました。しかしある日、私の祖先は気付いてしまいました。……自分という人間の寿命が尽きるまでの短い時間では、魔法を究めることが出来ないということに」

「…………」

「そして祖先は、思いつきました。自分が生きている間に成し遂げることが出来ないなら、自分の子孫に託してしまえばいいと」

「その手段が、『記憶を受け継ぐ魔法』?」

「はい。そして私も、祖先の記憶に縛られています。私も魔法の研究を行ってきましたが、今の時代では実験に必要な道具が手に入りません。記憶は実験を行えと叫ぶのに、私は実行できない。これは、ものすごく苦しいのです。そして……私が子供を産めば、この呪いはその子を蝕みます」

 

 なるほど、よく分かった。つまり……

 

「ここで死ぬことで自分は苦しみから解放され、呪いの連鎖は解ける。この国の民は、そのついで、だね?」

「違います」

 

 ……あれ?

 

「私はこの国の民を救いたいと、本気で思っています」

「どうして?」

「償いです」

 

 償い?もしかして、この子は……

 

「研究のために、誰かを犠牲にした?」

「……はい。研究のために、友達を殺しました」

「…………」

 

 どうするべき、だろうか。ナインも厄介なものを押し付けてくれたなぁ。

 

「お願いします。図々しい願いだということは分かっています。けれど、どうかこの国を脅かす野蛮人を・・・、『元』を名乗る略奪者達を、追い返してください!!」

 

 へ?もしかしてこれって、『元寇』?それじゃあここは、日本?

 

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