~SIDE 龍~
元寇。それは、僕の
確かに、モンゴル……いや、この時代では元か。あの国は日本に従属を求め、拒否されたら武力制圧に出たのだから、野蛮といえなくもない。
「その元っていう国は、今までにもこの国に攻め込んできたことがある?」
「はい、以前に一度、港で激しい戦いを起こしていました」
つまり、彼女が退けて欲しいと願っているのは、二度目の元寇だ。
「それで犠牲を出したくないから、上陸前に船を潰して欲しい、と」
「はい。邪神様の仰るとおりです」
僕が習った歴史の授業によれば元の軍は、天候の悪化、というか、嵐によって撤退を余儀なくされたはず。僕だって不用意に歴史を変えたくは無いし、出来るだけ
「分かった。それで君は、生贄になるんだったよね?」
「はい。これは私自身の償いでもあります。だから、好きにしてください。煮ても、焼いても、切り刻んでも、食べてもいいです。……覚悟は、出来ています」
彼女は自分の研究のために、友達を殺したといっていた。ここで彼女が死んで、全ての研究が消えれば、友人の死が無駄になるということに気がつかないのだろうか?……最も、アラガミに喰われればある程度の知識は僕に吸収されるて、受け継がれるんだけど。彼女はそんなこと、知らないだろう。
……気に入らないなぁ。この怒りをこめて、最も重く、最も残酷な罰を与えてやろうか。彼女曰く僕は『邪神』らしいし。というか、『邪神』でも『荒神』でも、神の名を持っていることに変わりは無いし。
「フフフ、それじゃあ君には、
「え?」
さすがにこれは予想外だったのだろう。キョトンとしている。でも僕は既に、言質を取ってある。『好きにしてください』『覚悟は出来ています』そう言ったのは、君だよ。
「
「えっ!?……うぅ、ア゛アアアアァァァァ!!」
僕は彼女に腕を突き刺してP77偏食因子を投与する。これは、急激に生物の体細胞を侵食してオラクル細胞に変え、アラガミ化させる極めて危険な特殊な偏食因子。これの活動を抑制できるのは、安定した緩やかな侵食を行うP53偏食因子だけだ。
「……とりあえず裁きを受けたいっていうなら、その痛みが罰ってことでいいでしょ。その辺の拷問より、よっぽど苦しいと思うよ」
「ア゛アアアァァァァァァァァァ!!」
偏食因子もオラクル細胞の一部である以上、その本質は『喰らう』ことだ。細胞を侵食するということはつまり、『喰らって創り変える』こと。だから当然、その身には激痛が走る。それこそ、正気を保っていられなくなるほどの激痛が。……正気を保てなくなるのは、アラガミ化によって生まれる捕食衝動のせいでもあるんだけど。
「……ここらが潮時かな?P53偏食因子投与」
これ以上急激にアラガミ化して、暴れまわられても困るし。
「…………」
ぐったりとしている名も無き少女。まあ無理も無いけど。むしろ、これで平然としてる方が恐ろしい。
「さてと、準備に取り掛かろうか。ナイン、その子見てて」
「了解しました」
……そういえば、何かを忘れてるような気がするんだけど…………?