~SIDE 龍~
「マスター、元の船がやってきました」
「了解。ありがとう」
僕に報告してくれたのは、恐竜時代に創った眷属の一匹、ホーネット。ナインが食べた人間のデータは、僕を通して全眷属に小さくない影響を与えていたようで、一部が流暢に言葉を話すようになっていた。まぁ、全く話せない眷属や、もの凄く聞き取りづらい言葉を話す眷族も結構いるんだけど。
「それじゃあ、始めようか。歴史への介入を。……吐き出し召喚、アマツマガツチ!!」
「グギャアアァァァァ!!」
さて、僕が書いた
「(ナイン、あの子は変わりない?)」
「(はい。未だに眠っております)」
気になることは他にもあるけど、とりあえず今は今するべきことに集中しよう。あっちにはナインが付いてるし、問題ないだろう。
「吐き出し召喚、グボログボロ10体!」
鮫のような外見をした水生アラガミを、海へと放つ。
……僕だって、慈善事業をする気は無い。転覆の後まで考えて行動している。つまり、船に乗っていた人間達の処理。
僕もさすがに、意味も無く積極的に殺しをする気は無い。だって、命は一つしかない、かけがえの無いものなんだから。悪人でも善人でも、人間でも動物でも、命は平等だ。けど、生きていれば命を奪う時はある。まさに、今回のように。僕はそんなとき、残った相手の体を再利用してやるべきだと思う。供養とかも大事だとは思うけど、人が家畜を殺してその肉を得るように、危険な生物を駆除した人間がその素材を余すことなく使うように、命を奪ったのなら、その肉体は最大限活用するべきだと思う。
だから、僕はただ目的のために人を……いや、生き物を、ただ殺して終わる気は無い。人が育てた野菜を刈り取って喰らい、残りカスを肥料にするように、動物を殺して肉を食い、その皮で服を作るように、僕達は殺した生き物の総てを喰らう。それが、僕の命に対する礼儀であり、殺したことに対する贖罪だ。まぁ、
「僕達が言えることじゃないけどね」
一度は感情の赴くままに虐殺を行った身だし。もちろん、その屍は全て残さず喰らったけど。というか、動物のほとんどは殺しも捕食も本能のままに行っている。一つ一つの命に価値を見出す生き物なんて、人間くらいのものだろう。けど、だからこそ僕は、命に価値を見出す。それはつまり、人間の心を持っているという証明に他ならないから。
「マスター、嵐の中でも元の船、進んでますよ」
「……えっ?」
たしかにホーネットの言うとおり、アマツマガツチが起こした嵐の中を、船は沈むことなく進んでいる。よほど頑丈なのか、よほどの航海士が乗っているのか。どっちでもいいけど、このままでは僕の書いた
でもそれはあくまで、このまま進んだ場合の話だ。そうならないように、手は打たせてもらおう。
「グボログボロ隊、船に突撃せよ!」
「「「グオオオォォォォォォ!!」」」
嵐で転覆しないっていうなら、物理的に沈めてやろうじゃないか!
「形態変化、銃身。
銃になった左腕から、圧縮された空気の塊が打ち出される。これなら嵐の一部として済ませられるだろう、たぶん。
「グボログボロ隊、海に落ちた人間から喰らっていけ!ただし、船は残しとけよ!」
証拠を残しておかないといけないからね。元の船が
「さてと、一件落着かな?」
「(主、彼女が目覚め、暴走を始めました!)」
……落ち着いて、ゆっくりしたいんだけどなぁ。