安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

32 / 84
第二十六話 歴史介入

~SIDE 龍~

 

「マスター、元の船がやってきました」

「了解。ありがとう」

 

 僕に報告してくれたのは、恐竜時代に創った眷属の一匹、ホーネット。ナインが食べた人間のデータは、僕を通して全眷属に小さくない影響を与えていたようで、一部が流暢に言葉を話すようになっていた。まぁ、全く話せない眷属や、もの凄く聞き取りづらい言葉を話す眷族も結構いるんだけど。

 

「それじゃあ、始めようか。歴史への介入を。……吐き出し召喚、アマツマガツチ!!」

「グギャアアァァァァ!!」

 

 さて、僕が書いた筋書き(シナリオ)どおりに事が運ぶといいんだけど。とりあえず僕は、自分に出来ることをしようか。

 

「(ナイン、あの子は変わりない?)」

「(はい。未だに眠っております)」

 

 気になることは他にもあるけど、とりあえず今は今するべきことに集中しよう。あっちにはナインが付いてるし、問題ないだろう。

 

「吐き出し召喚、グボログボロ10体!」

 

 鮫のような外見をした水生アラガミを、海へと放つ。

 ……僕だって、慈善事業をする気は無い。転覆の後まで考えて行動している。つまり、船に乗っていた人間達の処理。

 僕もさすがに、意味も無く積極的に殺しをする気は無い。だって、命は一つしかない、かけがえの無いものなんだから。悪人でも善人でも、人間でも動物でも、命は平等だ。けど、生きていれば命を奪う時はある。まさに、今回のように。僕はそんなとき、残った相手の体を再利用してやるべきだと思う。供養とかも大事だとは思うけど、人が家畜を殺してその肉を得るように、危険な生物を駆除した人間がその素材を余すことなく使うように、命を奪ったのなら、その肉体は最大限活用するべきだと思う。

 だから、僕はただ目的のために人を……いや、生き物を、ただ殺して終わる気は無い。人が育てた野菜を刈り取って喰らい、残りカスを肥料にするように、動物を殺して肉を食い、その皮で服を作るように、僕達は殺した生き物の総てを喰らう。それが、僕の命に対する礼儀であり、殺したことに対する贖罪だ。まぁ、

 

「僕達が言えることじゃないけどね」

 

 一度は感情の赴くままに虐殺を行った身だし。もちろん、その屍は全て残さず喰らったけど。というか、動物のほとんどは殺しも捕食も本能のままに行っている。一つ一つの命に価値を見出す生き物なんて、人間くらいのものだろう。けど、だからこそ僕は、命に価値を見出す。それはつまり、人間の心を持っているという証明に他ならないから。

 

「マスター、嵐の中でも元の船、進んでますよ」

「……えっ?」

 

 たしかにホーネットの言うとおり、アマツマガツチが起こした嵐の中を、船は沈むことなく進んでいる。よほど頑丈なのか、よほどの航海士が乗っているのか。どっちでもいいけど、このままでは僕の書いた筋書き(シナリオ)が狂う。

 でもそれはあくまで、このまま進んだ場合の話だ。そうならないように、手は打たせてもらおう。

 

「グボログボロ隊、船に突撃せよ!」

「「「グオオオォォォォォォ!!」」」

 

 嵐で転覆しないっていうなら、物理的に沈めてやろうじゃないか!

 

「形態変化、銃身。荒神弾丸(アラガミバレット)装填(リロード)。元の国から来た哀れな獲物共、おまけだよ。受け取りな!エアブロウ、発射(ファイア)!!」

 

 銃になった左腕から、圧縮された空気の塊が打ち出される。これなら嵐の一部として済ませられるだろう、たぶん。

 

「グボログボロ隊、海に落ちた人間から喰らっていけ!ただし、船は残しとけよ!」

 

 証拠を残しておかないといけないからね。元の船が嵐によって沈んだ(・・・・・・・・)って言う証拠を。

 

「さてと、一件落着かな?」

「(主、彼女が目覚め、暴走を始めました!)」

 

 ……落ち着いて、ゆっくりしたいんだけどなぁ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。