安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第二十九話 暴走のち鎮静

~SIDE 龍~

「焼き払え、ファイアストーム!!」

「薙ギ払エ、D・ビームブレス!!」

 紫炎が渦を巻き、名の通り炎の竜巻が荒れ狂う。そして、すぐ近くではナインが破壊力満点の黒いブレスを吐いている。

 ……一度は僕も暴走しかけたけど、周りを見れるくらいまでは落ち着いた。まぁそれでも、あの触手の塊を許す気も、手加減する気も起きないんだけど。

「ギアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ヒュン...........ドゴン!!

 暴走体が放ったレーザーが僕の背後で爆発する。本当に、危ない奴だ。直撃したら、また体の一部が吹き飛ぶ。まぁ、既に痛覚は遮断してあるから何も感じはしないし、今の僕ならそうそう死ぬことも無いけど、だからといって頭無しや腕無しのになりたくはないし。

「燃え上がれ、影炎!!」

 今度は僕の声にあわせ、暴走体の足元から紫の火柱が上がる。度重なる炎の連撃を受けて、暴走体の体は既にボロボロ。そろそろ潮時かな?

「貫け、炎槍突撃!!」

 紫炎を凝縮して手に槍を創りだし、飛び上がって上空から暴走体に突っ込む。しかしこの技は、これで終わりではない。

ドオオオオォォォォォォン!!

 この炎槍は、ハンニバルの炎操作能力によって炎を凝縮することでできている。では、その凝縮を解いたらどうなる?答えは簡単。無理やりに凝縮されていた炎は元に戻ろうとし、爆発する。

「……主、無事でしたか?」

「今更取り繕っても遅いからね?ナイン」

 今更冷静に振舞っても、さっきまでの暴走は無かったことにはならない。僕も人の事言えないけど。

「マスター、ちゃんと生きてるんですか?アレ」

「え?……あぁ、大丈夫じゃない?たぶん」

 安全だと判断したのか降りてきたホーネットが指差した場所には、もはや消し炭としか呼べない様になった暴走体の体がある。あれも一応アラガミだし、戦闘不能にはなっても完全に死ぬことは無いだろう。いくら徹底的にボコボコにしたとはいえ、その程度で壊れるほどコアは脆くないし。

「・・・アレ?ワタシハ、ナニヲ・・・?」

あ 、起きた。人としての姿に戻りきっていないからか、言葉は聞き取りづらいけど、正気には戻ったと見ていいだろう。

「えぇっと、人の体に戻れる?」

 今は中途半端に人と触手が混じってて、今まで以上にグロい。しかも、ゴキ、とか、グキャ、とか音を立てて、滅茶苦茶気色悪い。早く人に戻るか、それができないならいっそ触手のままでいてもらいたい。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「申し訳ありません、邪神様!!」

 ……彼女みたいなタイプの人間は、正気に戻っても尚扱いづらい。人型に戻った途端に土下座なんてされたら、さすがに僕だって引くよ?

 ついでに言えば、彼女が暴走したのは僕の不手際でもあるから、謝られると凄く居心地が悪い。

 

「こっちにも責任はあったから、頭上げて?」

「もったいないお言葉です。……ところで、野蛮人はもう来ましたか?」

「元の艦隊なら、僕等が嵐を起こして沈めたよ」

「! ……本当に、ありがとうございます!!」

僕にも利益があったわけだから、こうやって感謝されるのも居心地が悪い。それに、嵐を起こしたのも眷属、元の人間達を食ったのも眷属。僕は命令しただけで、自身は何もしていないんだし。……ところで、

「君はその体に疑問は無いの?」

「はい?……確かに、よく分からないことは多々あります。しかし、それを邪神様に尋ねることは不敬に当たりませんか?」

 ……彼女は、僕を何だと思っているのだろう?

「分からないことがあるなら、遠慮なく聞きなよ。僕はその程度で怒るような人間じゃないから」

「そもそもマスターは、人間じゃありませんけどね」

「お前はちょっと黙ってろ。……それじゃあ簡単に、その『アラガミの体』について説明するね」

「はい、お願いします!!」

 こうして簡単ながら、アラガミによるアラガミのためのアラガミ講座が始まる。

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