安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第三十七話 魔法

~SIDE 名無しの少女~

 

「邪神様、おかえりなさい!」

「ただいま~。ちゃんと終わったよ~」

 

 邪神様が帰ってきました。ただ、今の言葉から察するに、私が邪神殿様と同調して全て見ていたことには気付いてないみたいです。気を許していると言えば聞こえはいいのですが、敵意にも気付かないのではないかと不安にもなります。まあ、邪神様が不意打ち程度で大したダメージを負うとは思いませんが。

 

「ところで、邪神様。私を食べませんか?」

「!?!?!?」

 

 あ、邪神様がパニックになってしまいました。やっぱり、完全に吹っ切れたわけではないんですね。後悔が尾を引いている様子はありませんが、まだ人を傷つけることには躊躇いがあるみたいです。

 

「えぇっと、あのね、君も一応女の子なんだから、そういう発言をするのは……。」

「???」

 

 一体、邪神様は何を言っているのでしょう?それと、一応は余計です。アラガミになっても、私は正真正銘の女の子です!!

 

「主、恐らくこの娘は、純粋に肉を喰らえと言っており、他意はないのでしょう」

「あぁ、そうなの?それならよかった……って、それも全然よくないよ!?」

 

 よく分かりませんが、私の予想が外れたわけではなさそうです。しかし、困りました。

 

「これでは、邪神様に魔法を捧げられません」

「何の話?突然にそんなことを言われても困るんだけど……」

 

 魔法は邪神様達を傷付けることができる、けれど邪心様達にとって未知の代物です。だからあえてそれを習得することで、対策を練って欲しかったのですが……。まあどうせ、私から得られる魔法なんて数が限られていますけど。まだまだ研究段階で、ほとんどが実用不可ですから。

 

「主、なにも体全て喰らうわけではありません。コアとオラクルのある限り、娘は再生します。何も気にすることはありません」

「それはそうなんだけど……」

 

 邪神様が、歯切れ悪く抵抗します。それにしても、魔竜様は分かっていませんね、邪神様が躊躇うのは人を殺すことではなく、人を傷つけること。そして邪神様は、人の傷を見ることも苦手なのですよ。

 

「それでは邪神様、魔竜様を通して情報だけを受け取ってはどうですか?」

 

 これなら邪神様は()を傷付けず、()の傷を見ることなく、私が持つ魔法の情報を得ることができます。

 

「……君がそれでいいって言うなら、僕はもう何も言わないけど」

「それじゃあ、決定です。魔竜様、お願いします」

 

 邪神様って、意外と押しに弱いんですね。

 

「じゃあ僕は、奥に行くから。ナイン、よろしくね」

「了解しました」

 

……これでようやく、私も邪神様の役に立てそうです。

 

 

~SIDE OUT~

 

 

~SIDE 龍~

 

「……これが、あの子が言ってた魔力ってやつかなぁ?」

 

 僕がモーストの奥の方へ行ってしばらくしてから、感じたことの無い未知のエネルギーと、いくつかの知識が送られてきた。

 知識の方は十中八九、魔法を発動させるための術式だろう。そして恐らく、このエネルギーが魔力。オラクルとは、似て非なる力。

 

「邪神様~!成功しましたか?」

「うわぁっ!?」

 

 ……びっくりした。本当に、びっくりした。これでもし傷口が残っていたら、卒倒してたかもしれない。幸い、完全に再生しきっていたけど。僕の感受性は人間と変わらないんだから、心臓に悪いことはしないで欲しい。

 

「あれ、驚かせちゃいましたか?もう傷は残ってませんよ?」

「それでも、突然出てこられたら驚くよ。……それで、このよく分かんないエネルギーが魔力なのかな?」

「はい、たぶんそうです。組み合わせ次第で、いろんな現象を起こせるはずです。私が完成させられたのは単純な攻撃魔法だけですけど。転移とか補助とかの魔法も理論上では可能なんですけど、まだ実用段階ではないので」

 

 今まで彼女が、どの程度の魔力をどのように流して変換するかを試行錯誤していたのは僕も知ってる。途中でオカルトチックな方向に脱線したりもしたけど、基本的には彼女が研究していたのは魔力の運用方法だ。それだけ研究して出来上がったのがこれだけなら、転移や補助の魔法の開発というのはよほど難しいのだろう。

 

「それで、僕も手伝った方がいいのかな?」

「いえ、その必要はありません。邪神様は魔法から身を守れるよう、実際に魔法を使って魔法を知り、慣れてください。研究は私の仕事です」

「了解。それじゃあ、頑張ってね」

「はい!」

 

 あくまで、難しいのは開発だけ。彼女が術式を確立さえできれば、僕達がそれを使うことは容易だ。だからこそ、彼女にばかり大変な仕事を押し付けてるようで悪い気がするんだけど、彼女は自分がやると言って譲らない。これが、研究者のプライドって奴なのかな?

 とりあえず、今は余計なことは気にせずに、

 

「僕は言われたとおり、魔法に慣れておきましょうかね」

 

そうしなきゃ、魔法を研究してくれている彼女に申し訳が立たないし。

 

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