~SIDE 龍~
「ふぅ、粗方習得しきったかな。」
僕達アラガミは、喰らったものの持つ力を取り込み、自らのものとする。ただ、今回の魔法は彼女の一部を喰らっただけだから、僕が取り込んだものも一部だけ。経験まで得ることはできなかった。だから何度も使って習得する必要があったけど、ようやくそれも終わり。
彼女の一部しか喰らってないこの身では魔力総量で勝つことはできないけど、魔法自体はたぶん同等程度に使えるようになったと思うからよしとする。別に、負け惜しみしてるわけじゃない。決して。
「さて、ここ一ヶ月以上訓練場に閉じ篭ってたし、一度外に出ようかね」
あまり室内にばかりいたら健康に良くないし。アラガミに健康も何も無いけど。
「あれ?何か送られてくる?」
それは、まるで自分という器が広がっていくような感覚。オラクルの総量が、魔力の総量が、知識が、そして、使える魔法の種類が、増えていく。
「なるほど、あの子が新しい魔法を開発して、ナインが喰らったと。……そして僕は、またいくつも魔法を習得しなければならないと」
僕が魔法を習得している間に巫女が新たな術式を研究し、僕が完全に習得したころ彼女は術式を完成させる。それは、決して終わることのない「いたちごっこ」。僕が外に出られるのは、いつになるのだろうか?
……彼女のことをもっとたくさん喰らわせて、経験まで得てやろうか。コアさえ残しておけば、彼女という人格が死ぬことはないし。
「物騒なこと考えてないで、彼女が開発するよりも早く習得できるように頑張ろうか。……プロテクション!!」
攻撃魔法の次は防御魔法。これを習得し終わるころには、補助魔法の類が送られてくるんだろうか?手札が増えるのは嬉しいんだけど……。なんだかなぁ。
~SIDE OUT~
~SIDE 名無しの少女~
「邪神様、喜んでくださりましたかね?」
今さっき新しい防御魔法の術式が完成したので、魔竜様に喰らってもらいました。でも、喰らった情報はやり取りできるのに自力で手にした情報は共有できないなんて、アラガミも意外と不便ですね。
「娘、少しは休んだらどうだ?主といいお前といい、根を詰めすぎだ。」
「魔竜様、心配してくださるのはありがたいですが、私は休みませんよ。アラガミに休息は不要ですし、私はこんなことでしか邪神様の役に立てませんから」
そういえば、私がアラガミ化してからは、魔竜様の私に対する態度が柔らかくなった気がします。呼び方も子娘から娘に変わりましたし、私のことを気にかけてくれるようになりましたし。
「お前がそう言うならかまわん。主も、我等への供給は毎日行ってくださるからな。だが、深夜零時までにオラクル切れを起こしたら、どうなっても知らんぞ」
「御忠告ありがとうございます。でも、自分の限界くらいは見極められますよ」
確かに、邪神様からの供給が行われる午前零時よりも前にオラクル切れを起こしたら碌なことにならないでしょうが、私は自分のペースを見失うようなことはしません。
「そうか。ならば我は何も言わぬ。……無理をして主を悲しませるなよ?」
「えぇ、分かっています」
こんな私でさえも、邪神様は家族として扱ってくれます。そんなあの方を悲しませるようなことは、私にはできません。
私が望むのは、邪神様を喜ばせることと、邪神様の役に立つこと。ただ、それだけですから。私が無理をして邪神様を悲しましてしまっては、本末転倒。元も子もありませんからね。