~SIDE 龍~
「おーい、巫女、起きてる?」
「…………」
ダメだ。まだ意識が戻っていない。一応、零時迷子が発動したときにオラクルは供給して回復させてあるんだけど。やっぱり、魔力も回復しないとダメなのかねぇ?
「マスター、いっそのこと叩き起こしたらどうですか?」
「それはさすがに……いや、いっか」
僕の体に風穴開けて、おまけにコアまで傷付けてくれたんだから、少しぐらい仕返ししたって罰は当たらないだろう。たぶん。
「とっとと起きろバカ巫女!!」
「……なんか、バカ猫みたいに聞こえますね」
ホーネットが何か言ってるけど、無視だ。横腹思いっきり蹴飛ばしたけど、大丈夫かな?
「…………」
大丈夫どころか、目覚めてすらいない。……全力で蹴り飛ばしてやろうか。今度は顔面。
「マスター、熱湯でもかけてみてはどうですか?」
「お前、絶対楽しんでるだろ」
「バレましたか」
そりゃそうだ。表情こそ分からないけど、声が明らかに笑っていたもの。もしかしたら、自分では気付いていなかったのかもしれないけど。
「起・き・ろ!!」
ゴスッ!!
「…………マスター、あんな提案をした私が言うのも難ですが、やりすぎでは?一応、自称巫女様は女ですよ?」
「……うん、そうだね」
確かにちょっと、やりすぎたね。さっき以上に力を込めて顔面を踏みつけたら、彼女の顔が床にめり込んだもん。女の顔とか肌の傷とか、後でグチグチ言われそうだなぁ。簡単に再生できるんだけど。乙女心ってやつ?
「ッ!…………え?……邪神、様?」
「随分と驚いてるみたいだねぇ。一応聞くけど、僕があの程度で死ぬと思った訳?」
「!? いや、でも、あの時、邪神様の、その、コアが……」
ありゃ、パニック起こしちゃった。まぁ、文脈が正しい分マシかな?何が言いたいのかは大体分かるし。
「君にはまだ伝えてなかったけどね、僕は他のアラガミとは違って、コアすら再生することができるんだよ。要するに、コアを抜かれようが砕かれようが死なないってこと」
それでも、体やコアを一片も残さず消し飛ばされたら死ぬけどね。まぁ、11回までなら生き返れるんだけど。
「だから、君が持っていた後悔やら罪の意識やらは、み-んな誤解。僕は生きてるんだから。……眷属に眷属が編み出した力で負けたのはショックだったけどね。最後の鎖は何だったのさ?」
「……本当に、本当に邪神様なんですよね?死んでいないんですよね!?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃん。巫女は自分が仕える神すら信用できないの?」
「!? そんなことはありません!!」
「そう。なら、これで一件落着だね。……って、そうじゃなくて。最後の鎖の魔法は何?僕、あんな魔法知らないんだけど?」
彼女が使った他の魔法は既に知っているものやその派生系(?)がほとんどだったけど、あの鎖の魔法だけはどのカテゴリーにも属していなかった。
「あれはですね、バインドという拘束魔法です。まだ試作段階なので、邪神様には伝わっていないと思いますが。」
「試作段階、ねぇ?」
あの一回に限って言えば、完成されてたと思うんだけど。確かにあれがマグレだったって可能性もあるけど、十中八九、僕に勝つための切り札として、あえて伝えずに温存していたな。そして恐らくこのことは、ナインも知っている。その上で模擬戦の案を出したのだろう。
「……これからも種類が増えていくことを考えて、未知の魔法にも対応できるようにしておかないとなぁ。不意打ちで落とされたら話にならないし」
「まるで違う術式はともかく、改変された魔法となら何度も出会いそうですしね。それに、私以外にもまた魔法の研究を始める人も現れるかもしれませんし」
まあ、アラガミとしての力を縛っていなければ、未知の魔法に対処することもできそうだけど。あの時だって、形態変化を使えば難なく状況を変えられたわけだし。