安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第四十八話 術式補助演算機

~SIDE 名無しの少女~

 

 私達は複雑な計算式の下に術式を構成し、そこに魔力を流して魔方陣とすることで初めて、魔法を発動させることができます。

 しかし、いくら私達が規格外とはいえ脳内キャパシティは有限。ありとあらゆる術式を全て頭に入れるのは無理です。……邪神様なら、出来てしまいそうな気もしますが。魔力のコントロールも上手く、術式の改変までできていましたから。

 

それはさておき。

 

 私はある日、ふと思いつきました。自分が全ての術式を覚え、使い分けることができないのなら、その役目を誰かに任せてしまえばいいと。

 その日から私は、行き詰っていた転移魔法の術式開発を放り出して、ある物の作成を始めました。それは、魔法術式補助演算機(デバイス)です。名前の通りこれは、高度な計算を短時間に行い、即座に術式を展開するための装置です。その他にも魔力の貯蔵や、術式をはじめとするさまざまなデータの記憶、さらに通信機器としての役目までこなす優れものです。……まだ試作段階ですが。

 

「……今更ですけど、邪神様がこれを食べたらどうなるんでしょう?」

 

 私たちアラガミは喰らったものの力を取り込むことができます。そして邪神様の捕食吸収能力は私達よりも数段上です。もしかすると邪神様がデバイスを食べたら、高度な演算能力と記憶能力を持つのでしょうか?

 ……もしそうだとすれば、邪神様は道具要らずですね。はさみや針、糸、包丁の類も必要ないのではないでしょうか。一度食べてしまえば、どんな道具でも、いつでもどこでも再現できる。便利な能力ですね。

 

「……なんだか、考えてたら切なくなってきました。本当に規格外ですね、あの方は。」

 

 とりあえず、まだ前例(捕食歴)が無い以上無駄になることはありませんから、早急にデバイスを完成させましょう。そんな簡単な話ではありませんが、私ならできるはずです。否、できなければなりません。私は代々深い魔法の知識を受け継ぐ魔女であり、邪神様の巫女なのですから。この名にかけて、絶対に完成させて見せます!!

 

 

~SIDE OUT~

 

 

~SIDE 龍~

 

 ……何だろう?手軽さとバリエーションが売りの自在法の存在理由が脅かされている気がする。

 

「あの子は今、何を開発してるのかなぁ?」

 

 難しい術式を開発中とは聞いたけど、具体的なことは何一つ聞いていない。

 

「これでもし結界魔法とか創ってたら、ちょっと笑えないよね……」

 

 今僕が開発と実験を成功させたのは、新たな自在法、封絶。時空そのものを隔離する、まさに最高の結界。その名の通り、空間を封じて外界との因果関係を絶つわけだから、封絶を解除しなければ、中で起こった破壊は皆簡単に修復ができる。それ故、この中で何が起こっても何の証拠も残らない。

 

 ……自在法だから開発も実用も割と楽だけど、これと全く同じ事を魔法でやろうとすれば、かなりの労力がかかるだろう。

 

「そういえば、彼女の望む先には何があるんだろうね?」

 

 彼女が魔法を開発した先に待っているもの。僕はそれを知らない。そこに目的がないなら、いずれ彼女は生きる意味すら見失う可能性だってある。まぁ、どうせ魔法の開発や改良に終わりなんて無いだろうから、この疑問には答えなんて存在しないんだろうし、この懸念にも意味は無いんだろうけど。

 

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