安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第四十九話 女王蜂

~SIDE 龍~

 

「邪神様邪神様邪神様~!ついに完成しましたよ~!!」

「五月蝿い」

 

 邪神を連呼しすぎだし、それだけの説明じゃあ何が完成したのかさっぱり分からん。

 

術式補助演算装置(デバイス)です!これで、瞬時に魔法を発動させられます!!」

「とりあえず、興奮しすぎ。もう少し落ち着いて話して。内容が全く把握できないから。そもそも僕は、デバイスなんて言葉を聞いた事すらないんだから」

「あっ、はい。すみません。この機械は術式を保存していて、好きなときに好きなものを呼び出して使うことができるため、魔法発動にかかる時間がグッと短くなります。さらに、データ保存や通信機器としての役目も果たせる優れものです!!」

「へ~、それは凄いね~!」

 

 新しい術式の開発はどうなったの、という疑問は口に出さない。そんな雰囲気じゃなかったから。

 

「しかし、術式展開の高速化か。たしかにこれで、魔法の実用性は上がるね。独創性やバリエーションでは自在法に劣るけど」

「自在法?何ですか、それは?」

 

 あぁそういえば、彼女にはまだ教えていなかったっけ。……というか、まだ誰にも教えていないな。すっかり忘れていた。

 

「簡単に言えば自在法って言うのは、オラクルで術式を構成する魔法だよ。計算に基づいた術式に魔力を流すことで発動する魔法と違って、術式を構成するオラクル自体が魔力に方向性を持たせるから、術式の発動も開発も改良も楽なんだよ」

「!! 邪神様は私が試行錯誤している間に、そんな凄いものを御造りになられたのですか!?」

 

 一応、僕の自在法に元ネタがあるのに対して、彼女とその祖先は一から魔法を組み上げてきたんだ。僕よりも巫女の方が、よっぽど凄いと思うんだけど。

 

「……あ、話が逸れてしまいました。それで邪神様、どうぞこれを」

 

 彼女が僕に渡してきたのは、一つの宝石。

 

「これが、デバイス?」

「はい!……まだ、個としての名前はありませんが。」

「ふぅん。しかし、小さくて使い辛そうだね。……そうだ。ホーネット、いる?」

「マスター、呼びましたか?」

 

 緑の蜂型眷属ホーネットが、僕の下へとやって来る。

 

「ホーネット、これ喰って」

「え?邪神様が食べるんじゃないんですか?」

 

 おい、巫女。お前はこれを僕が食べる前提で創っていたのか。

 

「捕食するのは構いませんが、名無しの言うことにも一理あります。どうしてご自分でお食べにならないので?」

「魔法を使える眷属自体が限られてるんだから、僕が喰らって全眷属にデータを回す必要もないでしょ。それに、眷族が喰らった情報は僕にも送られてくるから、自分で食べる必要もないし。あと、一番の理由は、この小さい宝石じゃ使いづらいから、ホーネットにデバイスになってもらおうと思って」

「「私(ホーネットさん)がデバイスにですか!?」」

 

 二人とも結構驚いている。というか、息ピッタリ。どうでもいいけど。

 

「そう。幸いアラガミのホーネットなら、姿を変える事だって出来るし、僕と一体化(ユニゾン)することだってできるしね」

「マスター、お言葉はありがたいのですが、一つ問題があります」

「問題?」

 

 何か問題になりそうなことあったっけ?

 

「私は機動力に特化した代わりに、打たれ弱い種族の最弱種です。マスターの武器などという大役、務まるとは思えません」

 

 なるほど、問題はホーネット族最弱種ホーネットの耐久力の低さか。それなら、

 

「君の耐久力さえ上げれれば何の問題も無いわけだ」

「はい?……はい、そうです」

 

 それくらいなら、何の問題ない。

 

「ホーネット、ちょっとこっち来て。……そう、そこで大人しくしていてね。接続(コネクト)!」

 

 僕はホーネットに触れ、手とホーネットのオラクル細胞を結合させた上で、オラクルを流し込むことで体のつくりを改変する。

 

「マスター、一体何を!?」

「落ち着いて。もう少しで終わるから」

 

 オラクルの増量と種族変化、完了。

 

「邪神様、ホーネットさんに何を?」

「簡単に言えば、強化だね。あと、こいつはもう『ホーネット』じゃないよ」

「「???」」

 

 やっぱり、こんな説明じゃ分からないか。

 

「オラクルを流し込んで、種族を変えた……というより、ランクアップさせたからね。今のこの子の種族は、ホーネット族最()種のクイーンだよ。見た目は変わってないけどね」

「ホーネット族、最強種……?この、私がですか……?」

「そう。ホーネットには……いや、もうこの呼び方じゃあダメだね。クイーンには、今まで世話になったから、そのお礼。それに、これで耐久力にも問題は無いでしょ?」

「!!」

 

 ちょっと衝撃が強すぎたかな?

 いくらホーネット族自体の耐久力が低いと言っても、最強種ともなればそこそこに戦える。まあ、他種族の最強種に比べればやはり耐久力は低いけど。

 

「それじゃあ急な話だけど、これからも眷属として、そしてデバイスとしてよろしくね、クイーン?」

「はい!!」

 

 これからは修行も、クイーンと一緒かな?

 




ホーネットとクイーンに、見た目の差異はありません。同じホーネット族の中でも、キラーやデスジャケットなんかの色は違うのですが……。
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