安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第五十四話 クロスオーバー

~SIDE 龍~

 

 自称巫女とクイーンがクローンの作成とか言ってモーストの一室に篭ったあの日から、一体何年くらい経っただろう。

 僕自身もモーストに篭っているせいか、時間感覚がおかしくなっている気がする。外は一体、何時代だろうか。もう既に、鎌倉時代は終わっていると思うけど……。まあ、それはさておき。

 

「完成したなら同調会話(テレパシー)なんか使わずに、直接呼びにくればいいのに」

 

 ついさっき、『クローン達が完成したから来て欲しい』と言われたから、僕は彼女達がいる部屋に向かっている最中だ。しかし、アラガミのクローンってどうなるのだろう?人間ですら、同じ遺伝子、同じ記憶を持っていても生活環境とかによって性格とかは変わるのに、喰らったものによってDNAそのものが変わるアラガミでは、変化しすぎて原型を留めないような気もするんだけど。というか確かクローンの定義は、「全く同じ遺伝子を持ったもの同士」だったはず。そういう意味ではもう、アラガミを素材に使った時点でクローンとは言えないようにも思える。

 

「あ、マスター!待ってましたよ!」

「クイーンか。それじゃあ、自称巫女とクローンがいるのはこの部屋のであってるんだね?」

「はい。きっと驚くと思いますよ?」

 

 ……驚く?一体、何を用意したんだろう。嫌な予感しかしない。

 

「さぁ、行きましょう!」

 

 僕はクイーンに連れられて、部屋の中へと入っていく。……ところで、僕は誰に説明してるんだろう?電波?

 

 

 

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

 

 

「…………何コレ?」

 

 目の前の光景に対して僕が持った感想は、『驚き』よりも『呆れ』。絶句しなかっただけマシだと思う。だって、そこにいたのは、この世界には(・・・・・・)存在しないはずの者達(・・・・・・・・・・)だったのだから。

 

「どうしたんだい、我等が父?……ハッ、もしや、私のマリアンヌに見惚れていたのかい?いくら我等が父の頼みでも、マリアンヌだけは渡せないよ!」

「そんな、フリアグネ様ったら……」

 

 やけにイチャついてるのが気になるけど、そこにいたのは線の細い美男子‘狩人’フリアグネとその燐子(りんね)マリアンヌ。

 

「父上は、私達に嫉妬しているのよ、お兄様。」

「そうなの、ティリエル?」

 

 ブラコンシスコンとかの枠を超えた、幼き貴族のような少年少女‘愛染の兄妹’ティリエルとソラト、その他諸々。

 

「……クイーン、どうして紅世の徒(ぐぜのともがら)がいるの?」

 

 彼等をひっくるめた呼び名が、紅世の徒。そして‘狩人’とか‘愛染の兄妹’とかっていうのは、彼等の真名。僕達で言う苗字みたいなものだ。ついでに言っておくと、燐子は徒が生み出す下僕のような存在。‘狩人’フリアグネみたいに燐子を溺愛する輩は、そうそういない。

 本来紅世の徒は、人を喰らい、人がこの世に存在するために必要なエネルギーを奪い取って顕現する、『灼眼のシャナ』の世界の化け物だ。まぁ、悪い奴ばかりでもないけど。

 それがどうして、今僕の目の前にいる?そして何故、僕が父親扱いになっている?

 

「邪神様、どうして私が女王様をお借りしたと思います?」

「どうして……?」

 

 そういえば、考えてなかった。貸してくれって言われたから貸しただけで。

 

「マスター、今こちらの世界にいる眷属の中で、最も長く保存空間にいたのが私です」

「……それって、まさか!?」

 

 ほんの一時期保存空間にいたナインでさえも、終末捕食を含めた僕の知識を知っていた。それなら、一億年以上保存空間にいたクイーンは……。

 

「そのまさか。私はマスターの記憶からかなりのデータを吸収しました。そして今回は、」

「ちょうどいい機会なので、それをクローンに使わせてもらいました」

 

 なんて恐ろしいことを……。というか一体、何をどうやったら紅世の徒なんかが生まれるんだ?

 

「ねぇ、どうやって紅世の徒なんて創ったの?普通の生物じゃないんだから、いくら変幻自在のアラガミでも生み出すのは難しいと思うんだけど」

「邪神様、大切なことを忘れてません?」

 

 大切なこと?

 

「邪神様の記憶に最も深く焼き付いている彼等の姿は、人化の自在法を使った結果ですよ」

「!!」

 

 そうだ、思い出した。紅世の徒には人としての姿とは別に、本質の姿があった。記憶の本を読み返さないと全部は分からないけど、例えば、フリアグネの本質は鳥。薄白い鳥だったはずだ。とはいえもちろん、鳥を喰らわせただけでは駄目だろう。ただの鳥モンスターしか生まれない。でも、僕が用意したコアに自称巫女が取り込ませたのは、魔力を豊富に含んだ彼女自身の肉体。ならば知識と欲望を持った化け物が生まれてもおかしくはない。魔力もオラクルも、紅世の徒が扱う存在の力も、超常的なエネルギーっていう点では同じだし。

 

「ちなみに、邪神様が父親で、私が母親ですよ。邪神様のコアと、私のオラクル細胞からできているんですから」

「……それをクローンと呼べるの?ただの体外受精じゃない?」

 

 もしも仮に彼等がクローンの定義にはまっていたとしても、巫女のクローンって扱いになると思う。だって、僕が提供したのはコア。人間の器官に当て嵌めるなら脳か心臓だろうけど、この場に限って言えば胚、もしくは卵だ。そこに彼女の細胞を取り込ませたんだから、やっぱりそれは彼女のクローンだと思う。ついでに性別は違うけど、提供物的に言えば僕が母親で彼女が父親になるはずだ。別に、訂正しなくていいけど。むしろ、訂正しないで欲しいけど。

 

「別に、細かいことはいいんです」

 

 いいのかよ。前々から思ってたけど、あんたは本当に科学者か?

 

「とりあえず、彼等を保温空間に送ってください。私は魔法研究を再開します。あぁ、女王様も連れて行ってくださって結構ですよ」

「「…………」」

 

 ……ねえ、本当に僕等を敬う気ある?

 




~あとがき~

 クロスオーバーとは言いながら、彼らは紅世の徒をオリジナルにしただけのアラガミです。その為、主人公の自在法同様、彼らは存在の力ではなく、オラクルを操ります。……分かりやすく例えるなら、BRSのA級エイリアン達に魔法的な特殊能力をつけた感じでしょうか。

 ……はてさて、誰が第何期に登場するのでしょうか?
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