~SIDE 龍~
「随分久しぶりに届いたね、新魔法」
「それだけ開発に時間がかかったんでしょう。一時期スランプに陥るくらいですから」
「まぁ確かに、結構複雑な術式みたいだしね。ところでクイーン、インプットは終わってる?」
「はい。いつでも使用可能ですよ」
それじゃあ早速一度、使ってみようか。
「クイーン、セットアップ、転移魔法作動!」
「イェスマスター、転移魔法を作動します」
一瞬の浮遊感。
「さて、とりあえずは成功かな?」
「……非常に小規模ですけどね。計算通りではありますが、転移で移動距離が50メートルというのは、どうかと思いますよ」
「最初から大規模なことやるわけ無いでしょ。確かにこの魔法、世界すら飛び越えるらしいけどさ、それで失敗したら帰ってこれるか分かんないし、巫女の祖先の二の舞でしょ?」
「それはそうですが、デバイスとしては働き甲斐が無いといいますか……」
確かに、魔法の効果が小規模ってことは魔法に使う魔力とかも少ないから、演算する側としては物足りないんだろう。はっきり言って、僕にはどうでもいいことだけど。
「この魔法だけは慎重にならざるを得ないからね。少しずつ移動距離を増やしていこうか」
いきなり長距離跳ぼうとして、彼女の先祖みたいに知らない世界の知らない時代に跳ばされるなんて嫌だし。……僕は既に、同じような経験をしてるけど。
「マスター、術式も改良されているのですから、事故なんてそうそう起きないでしょう」
「まぁ、それもそうだね。でも、万が一ってことがあるじゃない?」
変なフラグ立ちそうで怖いけど。まぁ、事故ったら事故った時だ。
「それじゃあ次は、100メートル跳びましょうかね」
「……本当に、少しずつなのですね」
なんか、クイーンに呆れられたような気がする。まあいいや。
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「とりあえず、不備なしだね」
「世界移動はしていませんので、なんとも言えませんが……」
クイーンの言う通り、結局世界の移動まではしていないけど、単なる長距離転移は問題なく行えた。
「さすがに、世界移動はテストにかかるリスクが大きいからね。かといって、眷族を跳ばすのも気が引けるし」
場合によっては、転移先が海の中とか、マグマの中ってこともありえるのだ。そしてさらに、帰ってこれる保証が無い。そんなハイリスクを冒したくないし、それを擦り付ける気にもなれない。まあ、その内に意思のない人形で試せばいいだろう。もしくは、何が起こっても大丈夫そうな眷族でもいいけど。
「とりあえずは、帰還方法を確立しようか」
「それはいいアイディアだと思いますが、どうやってですか?」
フフフ、クイーンよ。僕が編み出した技術を忘れたのかい?
「オリジナルになる魔法の術式はここにあるからね。僕はこれを基に、僕の下へ……いや、保存空間に対象を帰還させる自在式を作るんだよ」
「なるほど、その手がありましたか」
……なんて言うか、リアクション薄いなぁ。もうちょっと大袈裟に驚いてくれてもいいと思うんだけど。
「クイーンはしばらく休んでていいよ」
「分かりました。それでは、少し外を見てきます」
そういえば、蝶とナインは今頃どうしているだろう?変なことをしたり、問題を起こしていないといいけど……。