安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第五十八話 その頃、彼等は

~SIDE ナイン~

 

「ふむ、今日も異常無しか」

 

 今、我は主に何の命令も与えられていない。それ故モースト周りの警備をしているのだが、今まで一度も不審な輩に出会ったことが無い。おそらく見回りを始めて、100年以上は経っているはずなのだが。

 

「まあよい。我等の糧になる者もいないが、主や我等の手を煩わせる者もいないのだ」

 

 我としては闘争の中に身を置きたいのだが、主は我等にも餌にも感情移入なされるからな。こちらから餌共を襲うわけにはいかぬ。

 

「主は喜ぶであろうが、我には退屈だ」

 

 これが、主の好む平穏というものなのだろう。我には物足りぬが、主が望むのならば仕方あるまい。

 

 

~SIDE OUT~

 

 

~SIDE 蝶~

 

「……あれが人間ですか」

 

 生まれたときから持つ知識で知ってはいましたが、実際に見るのは初めてです。母様曰く、愛すべき愚かな種族。ナイン様曰く、価値の無き餌。もしくは、下等種族。父様曰く、愚かで面白い、変り種。どれが本当に正しいのか、私には分かりません。

 

「観察、してみましょうか」

 

 元々は人間が生み出したのだという道具や、周りの自然にも感動を覚えましたが、人間という種族の観察は今まで以上の何かを私にもたらしてくれる気がします。

 

「あまり遠くへは行けませんが、少し観察するくらいなら良いですよね……?」

 

 母様にばれたら怒られるでしょうが、父様は何も言わないでしょう。何せ、私を外の世界に送ったのは父様ですから。

 

「……あ、帰って行きます」

 

 あの人間、こんな所でコソコソと何をしていたのかも気にはなりますが、追う訳にもいきません。さすがに拠点であるモースト様や、その周囲で見回りを行っているナイン様から遠く離れすぎるのは危険ですし、恐らく父様にも怒られてしまいます。

 ……もう既に、ナイン様の活動範囲外には出てしまっていますが。そうしなければ、人間の観察もできませんでしたので。

 

「私も今日はもう、帰りましょうか」

 

 父様なら、またいつでも外に出してくれるでしょうし。今日の人間観察は、これでお終いです。

 それにしても本当に、あの人間はこんなところで何をしていたのでしょう?一応、父様に報告した方がいいのでしょうか?でも、そんなことをしたら、私の観察対象はナイン様に食べられてしまいますし……。

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