安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第五十九話 召喚と帰還

~SIDE 龍~

 

「移動先の座標を固定して、オラクル残量に反応するオート術式に……」

 

 現在、転移魔法を基にして、召喚と帰還の自在法を開発中。魔法の改良でもいいんだけど、やっぱり思う通りに現実を改変する自在法の開発の方がやりやすい。

 

「早いうちに帰還の自在法だけでも、完成させないと」

 

 何時でも何処にいても僕の下に戻ってこれる自在法があれば、心置きなく転移魔法で眷属を別世界へ跳ばす事ができる。僕?行くわけ無いじゃん。

 

「……世界を超えた転移魔法のテストのためには、世界を超える帰還の自在法が必要。そして世界を超える帰還の自在法が確実に作動するか確認するためには、世界を超える転移魔法が必要。まったく、この世は(まま)ならないねぇ」

 

 某三つ目の参謀じゃないけど、本当に儘ならない。結局、絶対の安全なんてないんだから。

 

「まぁ、なるようになるでしょ。とりあえず今は、自在式を完成させないと……」

 

 無駄なことに思考を割いてる暇は無い。僕はさっさと、完成させよう。……さすがに、そんな簡単にはいかないけど。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ふぅ、こんなもんかな?」

 

 僕の目の前で浮かんでいるのは、似通った二つの自在式。

 

 一つは、帰還の自在式。僕が望んだ時か、自在式を刻まれた本人が望んだ時に瞬時に、保存空間に転移できる。そしてさらに、この自在式を刻まれた者のオラクル残量が極度に減ったときや大きなダメージを受けたときには、自動で作動するようになっている。保存空間まで来れば治療ができるし、追撃を受けることも無い。

 

 もう一つは、召喚の自在式。転移魔法や帰還自在式の応用で、僕が始動キーを言ったとき、眷属が僕の下に強制転移される。

 

「さて、早速テストしようか。吐き出し召喚、プリニー!」

 

 残念ながら、今は蝶も巫女もクイーンもナインも忙しい。だから、適当に暇そうな眷属を一匹呼び出した。

 

「オ、オイラに何をする気ッスか?」

 

 出てきたのは、出来の悪いペンギンのぬいぐるみのような魔族、プリニー。魔界ヒエラルキーの最下層に属する、哀れな雑用係だ。ちなみに、どういう原理か投げると爆発する。

 

「ちょっとした実験。まだ何も危険なことは無いから、大丈夫だよ」

「そうッスか~。いやぁ、焦って損したッス」

 

 『ッス』が口癖のペンギンもどきは、僕の言葉の真意に気付かない。『まだ』ってことは、後には危険なこともやるってことなのに。

 とりあえず、完成したばかりの二つの自在式をプリニーに刻む。刻むって言っても、実際はただオラクル細胞にデータを送るだけ。実験が成功したらこのデータは、供給の要領で全眷属に送られる予定だ。まぁ、それはさておき。

 

「まず、実験1。保存空間に帰れるように願ってみて」

「分かったッス」

 

一瞬

 

「……消えた、ねぇ」

 

 さっきまでいたプリニーは、本当に一瞬で消え去った。たぶん、今は保存空間にいるんだろう。というわけで、

 

「実験2。召喚自在式を起動。召喚自在法、発動!」

 

また、一瞬

 

「……あれ?……ッス。オイラ、どうしてまたここにいるッスか?」

 

 ……口癖、忘れかけてるし。別にいいけど。 

 そういえば、まだ何の実験をするのか説明してなかったな。まぁいいや。理解できるかどうか分かんないし。

 

「それじゃあ、実験3。僕が起動させてみようか。帰還自在法、発動!」

「ご主人、オイラどう」

 

 ……成功。行き先が保存空間だったって保証は無いけど、さっきののんびりした様子から見て十中八九間違いないだろう。何か言いかけてた気もするけど、気にしない。

 

「一々呼ぶのも面倒だねぇ。仕方ないけど。……召喚自在法、発動!」

 

 せっかくできた自在法だし、名前付けたいなぁ。全部終わった後で。

 

「あいたたた、何するッスか!?」

「ほう?主人に歯向かう気かい?」

「滅相も無いッス。申し訳ありませんッス」

 

 腰低いな、コイツ。さすがは全魔界の底辺に位置する魔族。

 

「さて、最後の実験を始めようか。……ちょっとばかり危険だけど」

「…………危険……ッス、か?」

 

 少しずつジリジリと、下がっていくプリニー。でも、逃がさないよ?大ダメージを与えないと、最後の実験にならないんだから。

 

「形態変化、銃身。荒神弾丸(アラガミバレット)装填(リロード)。そんなに怖がらなくても大丈夫、死にはしないよ。……たぶん」

「言ったッスよね!最後にボソッと、たぶんって言ったッスよね!?」

「五月蝿いなぁ。それじゃ、覚悟してね。雷槌、発射(ファイア)!」

 

 僕の銃口から放たれた電撃の弾丸が、プリニーに付着する。

 

「? なんだ、大した威力なんて無いじゃないッスか~」

 

 甘い、甘すぎるよペンギンもどき。

 

「……そろそろかな?」

 

ズドオオオォォォォォォン!!

 

「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁッス!?」

 

 雷槌は攻撃対象に付着した後に膨張して、内部にいるものに激しい電撃でダメージを与える弾丸。あまり至近距離で撃つと自分も巻き添えくらうのが難点だけど、それを除けばなかなかいい弾丸だ。威力も強いし、攻撃範囲も広いし。

 

閑話休題

 

「……と、いないね(・・・・)

 

 広がった雷と上がった土煙が晴れたとき、そこには何も無かった。

 

「跡形も無く消え去った可能性も無くはないし、念の為確認しておこうか。召喚自在法、発動!」

 

ポテッ

 

「あちゃー、やりすぎちゃったかー」

 

 出てきたプリニーは、白目剥いて泡吹いて倒れている。しかも、身体はコンガリと焼けている。まぁ、死んではいないはずだけど。

 

「仕方ないなぁ。治癒自在法ヒール!」

 

 FFとかディスガイアとか、その辺の魔法はみんな自在法として創り直した。巫女が作り出した魔法の術式を元に、同じ効果を再現する魔法を創るのは面倒だったから。

 ちなみに、ヒールは名前の通り対象の傷を治し、回復させる魔法だ。FFのケアルと大差ない。というか、今のところ一切の差が無い。これから改良予定だけど。

 

「……な、なんてことをするんスか!?」

「黙れ」

「ごめんなさいッス」

 

 ……本当に腰低いな、コイツ。さすがに呆れるぞ。

 

「そんなどーでもいいことは置いといて、と。プリニー、もっと広い世界を見てみたいと思わない?」

「全力で辞退するッス!」

 

 即答かい!……それじゃあ、仕方がない。

 

「承諾無しで、旅立ってもらおうか。大丈夫、強く念じれば保存空間まで帰れるはずだから。……世界を渡れ、転移魔法発動!!」

「扱いが雑ッス~!賃金アップを要」

 

 よし、転移は無事成功だ。また何かを言いかけてた気もするけど、気にしない。帰還の自在法も埋め込んであるから、しばらくしたら、また保存空間に帰って来るだろう。

 もしも帰って来れなくなったとしても、プリニーなら何だかんだで生きていけるはずだ。純粋な戦闘力は低いけど、何故かあれにはギャグ補正がついてるし。そんな機能、付けた覚えはないんだけど。

 

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