安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第六十七話 出逢い 後編

~SIDE 龍~

 

「はじめまして、邪神様」

 

 僕の目の前で、紫色の髪をした女性が跪いている。彼女が、モーストの言っていたヴァンパイアなのかな。正直、ただの人間にしか見えないんだけど。

 

「こちらこそ、はじめまして。あと、そんなに畏まる必要はないよ。ヴァンパイアさん」

「………………」

 

 あれ?何で黙っちゃうんだろう?僕が子供みたいな見た目をしてるから驚いた、とか?まぁいいや。

 

「僕が知っているのは、君が僕達を信仰するヴァンパイアってことだけ。だからまずは、君について教えてほしいんだけど?」

「……分かりました」

 

 どうして、返答までに間があったんだろう?何か、言いたくないことでもあるのかな?重大な秘密とかなら、暴露する必要はないんだけど。

 

「忍さん、疑いたくなる気持ちも分からなくはないですけど、この方が私達のマスターです」

 

 ……え?僕、疑われてたの?やっぱり、この見た目のせいかなぁ。せめて、高校生くらいのサイズまで成長できればいいのに。

 

「まず、私達は夜の一族と呼ばれています。確かに吸血鬼の血を引いていますけど、ヴァンパイアという呼び方は、できれば……」

 

 吸血鬼と、ヴァンパイア。普通に考えれば英語か日本語かの差でしかないんだけど、きっと彼女の中では明確な差があるんだろう。龍とドラゴンが、別の存在を指しているように。

 

「私達は人間を襲うことはしません。しかし、定期的に異性の血を吸わなければ体調を崩してしまいます」

「ですから、雄でもあり雌でもある私達の血液を採集しているのです」

 

 アラガミって雄でも雌でもないイメージが強かったけど、喰らった存在の情報を吸収して自分に反映してるなら、雄の要素と雌の要素、両方持っててもおかしくはないんだよね。事実、僕も女体化できたし。

 ……って考えると、自分を雌だって言ってるクイーンとかも、雄にだってなれるわけだ。

 

「マスター、何か失礼なことを考えませんでしたか?」

「いえ、何も」

 

 同調(リンク)していなくても、僕と全ての眷属は常に繋がっている。あんまり迂闊なことは考えられないね。

 

「まぁ、いいでしょう。私たちが彼女に血液を提供する代価として、彼女達からは髪の毛を回収していました。モースト殿の言葉が若干流暢になったのも、彼女たちの髪の毛を長年食べ続けた結果です」

 

 吸血鬼だって、人の言葉を話す存在だ。その身体の一部を食べ続けていたというのなら、モーストの言葉が聞き取りやすくなったことにも説明が付く。

 まぁ、それはともかく。

 

「説明して貰えたことは嬉しいんだけど、というか説明を求めた僕が言うのもアレなんだけど、君達は何の為にここ(・・)に来たの?」

 

 そもそも、説明自体はクイーンが同調会話(テレパシー)でしてくれれば良かったんだ。それなのに彼女が直々に僕の下を訪れたってことは、何か目的があるはず。

 

「私達は化物の血を引く者、ただそれだけでも迫害の対象となります。その上に人を襲っていたならば、今以上に厳しい人生を歩むことになったでしょう。それを免れることができたのは、邪神様方のお陰です。ですから、この機会に直接お礼を伝えたかったのです」

「そ、そうなんだ……」

 

 長々と細かく説明されたけど、どう反応すればいいんだろう?眷属へのエネルギー供給は零時迷子を使った全自動式(オート式)だし、実際に身体を切り取られていたのはモースト。僕はそのシステムの基盤っていうだけで、自分の意思で彼女達に施しをしたわけじゃない。それなのに、お礼なんて受け取っていいんだろうか。

 

「マスターの考えていることはよく分かりますが……。実際、マスターがいなければ彼女達を救うことはできなかったのです。もっと自信を持っていいと思いますよ?」

「うん、ありがと」

 

 まぁ確かに、基盤になっていただけでも十分な貢献か。そこに、僕の意思があろうと無かろうと。

 

「さて、お礼は受け取ったけど……。僕に恩があるって言うなら、一つ頼みごとを聞いてくれないかな?」

「「はい?」」

 

 あ、クイーンと彼女の声が被った。面白い。

 

「私達にできることなら協力します。ところで、邪神様のお望みとは……?」

「マスター。私、気になります」

「地味にネタを挟まないで!?」

 

 後でアイスクリームでも作ってやろうか……って、そうじゃなくて。

 

「僕を、学校に通わせて?」

 

 

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