~SIDE 龍~
「はじめまして、邪神様」
僕の目の前で、紫色の髪をした女性が跪いている。彼女が、モーストの言っていたヴァンパイアなのかな。正直、ただの人間にしか見えないんだけど。
「こちらこそ、はじめまして。あと、そんなに畏まる必要はないよ。ヴァンパイアさん」
「………………」
あれ?何で黙っちゃうんだろう?僕が子供みたいな見た目をしてるから驚いた、とか?まぁいいや。
「僕が知っているのは、君が僕達を信仰するヴァンパイアってことだけ。だからまずは、君について教えてほしいんだけど?」
「……分かりました」
どうして、返答までに間があったんだろう?何か、言いたくないことでもあるのかな?重大な秘密とかなら、暴露する必要はないんだけど。
「忍さん、疑いたくなる気持ちも分からなくはないですけど、この方が私達のマスターです」
……え?僕、疑われてたの?やっぱり、この見た目のせいかなぁ。せめて、高校生くらいのサイズまで成長できればいいのに。
「まず、私達は夜の一族と呼ばれています。確かに吸血鬼の血を引いていますけど、ヴァンパイアという呼び方は、できれば……」
吸血鬼と、ヴァンパイア。普通に考えれば英語か日本語かの差でしかないんだけど、きっと彼女の中では明確な差があるんだろう。龍とドラゴンが、別の存在を指しているように。
「私達は人間を襲うことはしません。しかし、定期的に異性の血を吸わなければ体調を崩してしまいます」
「ですから、雄でもあり雌でもある私達の血液を採集しているのです」
アラガミって雄でも雌でもないイメージが強かったけど、喰らった存在の情報を吸収して自分に反映してるなら、雄の要素と雌の要素、両方持っててもおかしくはないんだよね。事実、僕も女体化できたし。
……って考えると、自分を雌だって言ってるクイーンとかも、雄にだってなれるわけだ。
「マスター、何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「いえ、何も」
「まぁ、いいでしょう。私たちが彼女に血液を提供する代価として、彼女達からは髪の毛を回収していました。モースト殿の言葉が若干流暢になったのも、彼女たちの髪の毛を長年食べ続けた結果です」
吸血鬼だって、人の言葉を話す存在だ。その身体の一部を食べ続けていたというのなら、モーストの言葉が聞き取りやすくなったことにも説明が付く。
まぁ、それはともかく。
「説明して貰えたことは嬉しいんだけど、というか説明を求めた僕が言うのもアレなんだけど、君達は何の為に
そもそも、説明自体はクイーンが
「私達は化物の血を引く者、ただそれだけでも迫害の対象となります。その上に人を襲っていたならば、今以上に厳しい人生を歩むことになったでしょう。それを免れることができたのは、邪神様方のお陰です。ですから、この機会に直接お礼を伝えたかったのです」
「そ、そうなんだ……」
長々と細かく説明されたけど、どう反応すればいいんだろう?眷属へのエネルギー供給は零時迷子を使った
「マスターの考えていることはよく分かりますが……。実際、マスターがいなければ彼女達を救うことはできなかったのです。もっと自信を持っていいと思いますよ?」
「うん、ありがと」
まぁ確かに、基盤になっていただけでも十分な貢献か。そこに、僕の意思があろうと無かろうと。
「さて、お礼は受け取ったけど……。僕に恩があるって言うなら、一つ頼みごとを聞いてくれないかな?」
「「はい?」」
あ、クイーンと彼女の声が被った。面白い。
「私達にできることなら協力します。ところで、邪神様のお望みとは……?」
「マスター。私、気になります」
「地味にネタを挟まないで!?」
後でアイスクリームでも作ってやろうか……って、そうじゃなくて。
「僕を、学校に通わせて?」