安全主義者と戦乱の日々   作:天翔青雷

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第七十四話 誘拐

~SIDE 龍~

 

「はぁ、何でこんなことになってるんだろ」

 

 一応、僕はすずかの護衛のつもりだったんだけど、一つ重大なことを忘れていた。僕は戸籍上、かつて生き別れたすずかの兄だ。アラガミだということを隠している以上、すずかの前で夜の一族をも軽く凌駕するような動きはできない。まして、一般人であるアリサの前でなら尚更だ。

 ……誰に聞かせるわけでもなく長々と言い訳してきたけど、僕の身に起こった事は、いや、僕たちの身に起こった事は、たった一言で説明できる。誘拐、だ。

 

「二人とも、大丈夫?」

 

「アンタ、この状況が大丈夫だと思えるわけ!?」

 

 まぁ、アリサの言う通りか。誘拐されてる時点で、大丈夫とは言い難い。猿轡までは噛まされてないけど、目隠しされてるし、手足は縛られてるし。僕に限って言えば、目隠しに大した意味なんてないんだけど。周りの情報を得る手段なんて、いくつだって持っているし。

 

「ツッコミができるだけ、精神的には安定してるって言えると思うけどね」

 

 すずかなんかは、完全に黙り込んじゃってるし。こっちは本気でマズいかもしれない。

 

「ガキ共、黙れ!今ここで殺されてぇのか!」

 

 誘拐犯の一人が騒いでる。けど、ここでアリサ達を殺すってことはないと思う。ボクとすずかだけが拐われたなら、それは夜の一族を狙ったものだろうから、殺されることだってありえる。でも、彼女は普通の人間だ。他と違うところを挙げるとすれば、彼女が大企業の令嬢ってこと。月村も大金持ちだから、これは身代金目的の誘拐だろう。なら、そう簡単に人質を殺すなんてことはしないはず。よっぽどのバカならともかく。

 

「……合流地点、到着」

 

「おう、楽な仕事だったな。ガキ三人攫うだけでボロ儲けできるとは思わなかったぜ」

 

 ……もしかしてコイツ、僕達三人組がどういう存在かすら認識してない?僕達を攫うだけで大金が貰える、その理由すら考えてない気がする。

 合流地点って言ってたから、僕達を誰かに引き渡して報酬を貰うんだろう。そして恐らく、そいつが今回の黒幕だ。

 

「おいガキ共、オレについて来い!妙な真似したら、撃ち殺すからな!」

 

「……生け捕り、条件。殺し、報酬なし」

 

「チッ、分かってるよ。面倒くせぇ」

 

 本当に分かっていたのか、甚だ疑問だ。誰がこんな命令をしたのか知らないけど、もう少しマシな人間を雇って欲しかったね。まぁ、こういう人間のほうが利用はしやすいんだろうけど。

 ……というか、さ

 

「目隠しされた状態で、僕達はどうやって貴方についていけばいいので?」

 

「…………今、外す」

 

 もう一人よりはマシだけど、この人も心配だ。今、僕達の目隠しのこと忘れてたっぽいし。さっきまで以上に沈黙が長かったこと以外の根拠はないけど。というか、外していいのか。手を引けばいいだけの話だと思うんだけど。

 

「おう、クライアントさんよぉ。ご依頼通り、ガキ三人を連れてきやしたぜ」

「……任務、完了」

 

 彼等に連れられて着いたのは、ボロボロの廃墟の中。その奥には、一人の男と一つのアタッシュケースがあった。

 

「ご苦労。これが、今回の報酬だ。」

 

「あぁ、ありがたく頂いて行くぜ」

 

 僕達を攫った男達は、アタッシュケースを持って帰って行った。……あの中身が偽札とかだったら面白いのに。

 

「おや、待たせてしまったかな?やはり、客人は丁寧にもてなさねばな」

 

 男がそう言った途端、その背後からゾロゾロと武器を持った人間たちが現れた。

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