―――そうですか彼の話を聞きたいと。成程、彼について一番詳しく客観的な私なのは少し皮肉ですね。
彼は少々尊敬されすぎているから客観的に話せるのは個人的な友人である私になるのですか。
私も彼もそれぞれ周囲から浮いていたからこそ友になったのですが…やはり友人の話息子のあなたにするのは気恥ずかしいですね。
しかしどうして急に彼の話を聞きたいと?…なるほど彼女に聞かせてあげたいのですか。
いえ、おかしいだなんて思ってませんよ。それはとも素晴らしい愛のある…おっとその言葉を言うなと?失礼しました。
それでは語りましょうか…そうですね、魔界のことを語るならまずこのような語り方がいいのかもしれませんね。
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――――魔界、それは闇に閉ざされた魔境。
人々の脅威たる忌むべき存在――悪魔と呼ばれている者たちが跳梁跋扈し、悪徳をよしとする邪悪な価値観がまかり通り力あるものが全てを得る、混沌と暴力、不条理に満ちた社会とすらいえないような地。それは魔界に住むすべての住人とって「あたりまえ」でありそれに疑問を抱く者はいなかった。
―――ある若い魔界貴族の後継者以外には。
彼は子どものころから疑問を抱いていた。
「何故我々はもっと仲良くできないのだろう」
ほかの悪魔が聞いたら馬鹿にされるか首を傾げられるようなことを彼はずっと考え続けていた。やがて彼は青年と言える年頃になったがその考えは変わらなかった。
―――やがて彼はある存在を目指すようになる。
それは「魔王」。すべての悪魔の頂点に立つ魔界の王。しかし彼は普通の悪魔のように権力欲や名声、力を誇示するために悪魔の王を目指したのではなかった。
子どものころからの夢、それを皆にわかってもらいたいのだ。
強いものから弱いものを守れる強い王になりたいのだ。
そんな王を目指した青年の名前はクリチェフスコイ。後に魔界でもっとも偉大な魔王と呼ばれる賢王である。
この話は若きクリチェフスコイとその友や家臣たちの物語である。
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…少し気取りすぎたでしょうか?え、いいから本題入れ?すいませんなにしろ私にとっても思い出深い話でしたものでつい興が乗ってしまいました。年を取るとどうも話が冗長になっていきませんね。
ふふふ…あの頃の若さや情熱は今はもうだいぶ落ちましたが、思い出すと楽しいものですね。
「フン、オレ様は若いからそういうことは良くわからん、いいから話を続けろ大天使」
えぇラハール殿。あなたの父の話はここからが本番です。
4で魅力すぎたクリチェフスコイやD2のクリチェフスコイ派が好きで書いてみました。
大学が忙しいんで超不定期、気の向くままですが気になったら読んでみてください。